地価値下がりが経済直撃
米国の大手投資銀行ゴールドマン・サックスは、住宅不況の影響について、次のように予測している。
1)土地販売額15%減・住宅価格5%減のケース 22年のGDP1.4%押し下げ
2)土地販売額30%減・住宅価格10%減のケース 22年のGDP4.1%押し下げ
上記モデルを少し説明すると、次のようになる。
(1)は、国有地の土地販売額が15%減となり、同時に住宅価格が5%減となれば、これだけで22年GDPを1.4%押し下げる。
(2)は、土地販売額30%減で住宅価格10%減となれば、22年のGDPが4.1%押し下げられる。
これら2つのモデルでは、土地販売額の値下がりがGDP押し下げ要因として強いことが分かる。土地販売益が主要財源になっている結果だ。その肝心の地価は今年、どの程度まで下落するのか。これが、中国経済の成長率のカギを握る。
中国の民間不動産調査機関の中指研究院によれば、主要300都市の2021年における土地売却は、価格ベースは9%の下落になった。格付け会社S&Pの予測によれば、22年の地価は21年よりさらに20%も落ち込む。23年は同5%の値下がりを予測している。
この予測を前提にすれば、今年の地価下落は20%である。となれば、前記2つのモデルのうち、ほぼ中間点になる。つまり、GDPの引き下げ圧力は3%見当と見られる。
ここからは、1つのパズル解きとなるが、昨年のGDPが8.1%成長であったので、これを前提にして3%ポイントを差し引けば、今年の経済は5.1%成長というメドが立つ。むろん、厳密な計算でないから荒っぽいものだが、一応の目安になろう。
ゼロコロナが消費を圧殺
だが、ここからさらに差し引かねばならない項目がある。個人消費の停滞である。
「ゼロコロナ」の出口が見えないことだ。ロックダウン(都市封鎖)も3年目に入り、経済的な混乱ばかりか、社会不安さえ取りざたされるようになった。
他の国は、新型コロナを巡りパンデミック(世界的大流行)からエンデミック(風土病)局面への移行段階になってきた。中国だけは、これと逆行している。新規感染者を確認しだい、それ以上広がらないようにするべく、ロックダウンや大規模な検査などの措置を次々に打ち出している。
こうしたやり方によって、感染者数は最低限でとどまり続けてきた。しかし、その結果、専門家は感染力が強いオミクロン株への脆弱性が増している点を指摘している。
現在の中国で、他国同様に「ウィズコロナ」を実施すれば、1日で約63万人以上の感染者が出ると予測されている。ロックダウンによって、コロナ真空地帯が生まれ自然感染者は極端にすくないと推測されている。人口の大半が新型コロナに対する免疫を獲得していない以上、中国でオミクロン株は容易に急拡大するはずというのだ。
こういう状況になると、中国はワクチン接種の遅れているアフリカ地域より遅れて、「地球上で最後」にロックダウン解除となろう。
中国のロックダウンが、最後の解除国となれば個人消費への影響はさらに大きくなるであろう。昨年12月の小売売上高は、前年比1.7%増と20年8月以来の低い伸び。同11月は3.9%増だった。パンデミック前の小売売上高は、前年比8%台の増加率である。このレベルと比べれば、絶句するほどの落ち込みである。
この状態が、地球最後のロックダウン解除まで続くとなれば、中国経済は徹底的に打ちのめされるに違いない。