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カルディを急成長させた無料コーヒーの魔力とは?強気の出店攻勢に死角はあるか=長浜淳之介

コーヒーサービス誕生秘話

カルディの店名は、アフリカ大陸東部のエチオピアの高地で、飼っていたヤギが興奮して走り回っているのをいぶかしく思ったヤギ使いのカルディが原因を調べたところ、赤い木の実を食べたことを発見した。この赤い木の実こそがコーヒーの豆の原料であり、コーヒー産業の起源となったという、伝承に由来する。カルディの手提げ紙袋のデザインは、かかる伝承を表現したものである。

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伝承を元にしたデザインの紙袋(カルディHPより)

80年代は従来のスーパー、家電量販など量販店による画一的で無機質な売場のあり方に異議を唱えた全く新しいタイプの複合型チェーン店が相次いで生まれている。たとえば、80年にはドン・キホーテが東京都府中市に誕生、86年にはヴィレッジヴァンガードが名古屋で創業、87年にはロフトの前身であるシブヤ西武ロフト館が開業している。カルディはそういった高度成長期以降のモノが行き渡り成熟した日本の消費者に、これまでになかった考え方品揃えでライフスタイル提案を行ってきた企業の1つだ。

92年にオープンした下北沢店では、営業不振を打開するため、夏の盛りに来店した顧客におもてなしの気持ちを込めてアイスコーヒー無料サービスをスタート。これが好評を博し、1日の売上が2ヶ月で2倍以上に急増。店頭で顧客に各コップに注いだコーヒーを渡して店内に勧誘する、「コーヒーサービス」というカルディ独特のサービスが生まれた。

コーヒーサービス(カルディHPより)

コーヒーサービス(カルディHPより)

顧客は紙コップを持っている間は店内をぶらついているので、滞留時間が長くなる。そこで1品買うつもりが、2品、3品とついつい買い足してしまう人も多い。目当ての商品を買ったらレジに直行する顧客は極めてまれだ。コーヒーが無料で飲めるため、喫茶代を得した気分になり財布の紐が緩んで何か買ってしまう人も多い。つまり潜在的な顧客を真の顧客に変え客単価を上げる効果を持っている。自社で販売するコーヒー豆の試飲にも当然なっており、常時約30種類と豊富に揃ったコーヒー豆の販売促進にも役立っている。

コーヒーサービスと共に目を引くのは、西洋の図書館をイメージした木工の店舗インテリアである。照明を抑えた、落ち着いた雰囲気で商品が選べるようになっている。取って置きの目玉商品をわざと奥のほうのわかりにくい場所に陳列したり、人の目線に触れにくい棚の上のほうや下のほうに置いたりすることもあるようだ。頻繁に陳列を変更し、商品を入れ替えて常に店の鮮度を保っている

カルディのインテリア例(三立木工HPより)

カルディのインテリア例(三立木工HPより)

冷蔵・冷凍のケースは最低限にとどめ、常温で陳列、保存できる商品を意識的に出しているのもユニークだ。今日のスーパー、コンビニ、ドラッグストアの食品売場がこぞってチルドや冷凍の食品比率を高めているのに対して、独自の路線を貫いている。鮮度管理の技術を要する生鮮食品も置かない。それで電気代を節約でき、商品管理が楽で、経験の少ない従業員でも現場が回せて、スピーディな出店が可能となるメリットがある。

カルディ店舗の一例(撮影:長浜淳之介)

カルディ店舗の一例(撮影:長浜淳之介)

駅ビルのテナントとして入居したのは、97年のマルイファミリー溝口(川崎市高津区)が初進出でカルディ快進撃の切っ掛けとなった。2003年には、初の大型ショッピングモールへの出店を、イオンモール熱田(名古屋市熱田区)にて果たしている。

商品の仕入れに関しては、96年に幅広い輸入商品を扱えるよう、オーバーシーズという食品輸入商社を設立。99年には、オーバーシーズ・ヴィナルテを設立して酒類の直輸入を始めた。さらには、2006年には日本国内の食品を取り扱う、もへじを設立。もへじでは、伝統のおいしさと製法、お手頃価格の実現に努めている。国内外のメーカーと提携したオリジナルの商品も多く、カルディらしさが表現されている。

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