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注目株「タイミー」今が買い?好調な決算でも株価が下がった理由と投資家が持つべき視点とは=栫井駿介

2024年9月12日、スキマバイトサービス「タイミー」を運営する株式会社タイミー<215A>が上場後初となる四半期決算を発表しました。注目を集めていた同社の株価は、決算発表後に大きく下落。現在は決算発表前から30%近く下がった水準にあります。

タイミーは2024年7月の上場前から多くのメディアにも取り上げられ、多くの投資家から熱い視線を浴びてきました。特に、若き創業者である小川嶺CEO(26歳)のビジョンや、急成長を続ける業績に期待が集まっています。

今がタイミー株を買う好機なのか、それともさらなる下落リスクがあるのか。スキマバイト市場の拡大や、タイミーの独自のビジネスモデルに期待を寄せる声も根強くある中で、高成長を続けるタイミーの株式は、果たして長期的な買いなのか、それとも慎重に見極めるべきなのか。その答えを探っていきましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

タイミーはどんな会社?社長の経歴は?

タイミー<215A>日足(SBI証券提供)

タイミー<215A>日足(SBI証券提供)

タイミーは、2017年8月に設立された「スキマバイトサービス」を提供する企業です。同社の主力サービス「タイミー」は、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするプラットフォームで、従来の求人サイトや人材派遣とは異なるアプローチを取っています。

タイミーの特徴は、1日単位の直接雇用契約を可能にし、履歴書なし・面接なしで即時にマッチングを行う点です。また、勤務終了後にワーカーへの賃金を即日払いする仕組みも備えています。これにより、短時間や不定期な労働を希望するワーカーと、一時的な人手不足に悩む企業のニーズを効率的に結びつけています。

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出典:タイミーホームページ

創業者であり代表取締役を務める小川嶺氏は、1997年生まれの若手経営者です。小川氏は、自身の単発アルバイト経験から感じたフラストレーションを解消するためにタイミーを構想しました。「一人ひとりの時間を豊かに」というビジョンのもと、新しい「はたらく」インフラの構築を目指しています。

経営陣には、元三菱UFJ銀行出身の八木智昭氏(取締役CFO)や、元DeNA共同創業者の渡辺雅之氏(社外取締役)など、金融や IT 業界での豊富な経験を持つメンバーが名を連ねています。

タイミーは設立から急速に成長を遂げ、2024年7月末時点で登録ワーカー数が860万人、登録クライアント事業所数が28.6万拠点を突破しています。主に物流、飲食、小売業界でのニーズが高く、今後は介護や保育など他業種への展開も視野に入れています。

小川社長は Forbes Japan の「日本の起業家ランキング2024」で2位に選出されるなど、注目を集めています。同社は「はたらく」領域でのパラダイムシフトを目指し、労働力不足や多様な働き方のニーズに応える新たなソリューションとして、今後も成長が期待されています。

業績推移と時代背景

タイミーの業績は、創業以来急速に成長を続けています。決算説明資料によると、売上高は2019年10月期の0.8億円から、2023年10月期には161億円へと飛躍的に増加しています。特筆すべきは、この急成長の中で早期に黒字化を達成し、利益を伴った成長を実現している点です。

2023年10月期の営業利益は19億円、当期純利益は18億円を計上しており、売上高営業利益率は12.1%と高水準を維持しています。多くのスタートアップ企業が赤字体質のまま上場するなか、タイミーが黒字を実現しながら成長していることは、同社のビジネスモデルの健全性と経営陣の手腕を示しています。

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出典:2024年10月期第3四半期決算説明資料

タイミーの成長を支える主な要因として、以下のような背景が挙げられます。

  1. 深刻な労働力不足:日本の生産年齢人口は減少傾向にあり、多くの業界で人材確保が課題となっています。タイミーのサービスは、この問題に対する効果的なソリューションとなっています。
  2. 働き方の多様化:正社員以外の働き方を選択する人が増加しており、柔軟な勤務形態へのニーズが高まっています。タイミーは、この潜在的な労働力を効率的に活用する手段を提供しています。
  3. デジタル化の進展:スマートフォンの普及により、タイミーのようなモバイルアプリを通じた求人・求職活動が一般化しています。
  4. コロナ禍の影響:パンデミックにより、多くの企業が柔軟な人材配置を求めるようになり、タイミーのサービス需要が増加しました。
  5. 即時性へのニーズ:現代社会では、即時的なサービスや即時払いへの要望が高まっており、タイミーのビジネスモデルはこれに適合しています。

タイミーの流通総額(ワーカーに支払われる賃金報酬等の合計額)は、2023年10月期で545億円に達し、前年同期比で160.7%増加しています。また、登録ワーカー数や登録クライアント事業所数も順調に拡大しており、プラットフォームとしての価値が高まっていることがうかがえます。

タイミーの成長は、日本社会が直面する労働市場の構造的な課題と、テクノロジーの進化がもたらした新しい働き方のニーズが交差する地点で生まれたものと言えます。同社のサービスは、企業の人材需要の変動に柔軟に対応しつつ、個人の多様な就労ニーズも満たすという、まさに時代が求めるソリューションとなっています。

Next: タイミーの強みは?好調な決算でも株価が下がったのはなぜ?

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