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株価ピークから7割下落「ラクスル」に復活の兆候?長期投資のプロから見た今後の成長性とリスク=佐々木悠

CMでお馴染みのラクスル<4384>の株価が上昇しています。2024年6月11日の決算を受けて、翌日の株価は最大13%上昇しました。しかし、中長期で見ると2021年に3,655円をつけた後、下落し続け24年6月現在は1,000円前後で推移しています。今回は、ラクスルのビジネスモデルと今後の成長を解説し、今こそ投資チャンスなのか考えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

ラクスルの目の付け所

ラクスル<4384> 日足(SBI証券提供)

ラクスル<4384> 日足(SBI証券提供)

まずは、ラクスルの歴史を説明します。
ラクスルは2009年、印刷の新しい発注の仕組み作りを目的として創業されました。創業者の松本恭攝(やすかね)氏は、起業前に外資系コンサルティング会社にてコスト削減のプロジェクトに従事していました。その中で、印刷費が最もコスト削減率が高いことに気づき、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をビジョンに掲げ、ラクスル株式会社を設立しました。

印刷業界全体の市場規模は約5兆円であるにもかかわらず、その市場は非効率でした。
印刷会社1社あたりの印刷機の平均稼働率は50〜60%程度と言われています。これは、印刷会社の多重下請け構造(大手の印刷会社が印刷案件を受注し、手が回らないところを中堅中小の印刷会社に依頼する構造)が原因であり、稼働が安定しないのです。そして、印刷機にも得意・不得意があり、自社で印刷できないものを他社へ依頼する間に非効率性が高まり、平均稼働率が下がるという業界全体の悪循環が起きていました。

それに対し、ラクスルはインターネットを介し全国の顧客から印刷の注文を集め、印刷会社に対して発注する仕組みを作りました。印刷会社に対しては、印刷機の非稼働時間を使って印刷する仕組みを開発し、稼働率の向上につなげます。また、印刷を依頼する側に対しても、細かい印刷の指定ができたり、小ロットからの印刷対応もできるため、利便性が高いサービスになっています。

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出典:ラクスル 採用サイト

これが、ラクスルが解消した印刷業界における非効率性の改善という基本的な付加価値です。

売上高は好調を維持 利益は2〜3年で急成長

次に業績の推移を見てみましょう。

ラクスル<4384> 業績(SBI証券提供)

ラクスル<4384> 業績(SBI証券提供)

2018年に上場した後、売上高は右肩上がりで成長しています。
しかし、利益は2020年まで厳しい状況でした。この1つの要因となったのがハコベルというサービスです。これは、トラック版のラクスルのようなサービスで、稼働していないトラックと荷物の運搬需要をマッチングさせるサービスです。しかし、登録トラックの数が順調に推移せず、広告宣伝などの投資が増加した結果、ラクスル全体の足を引っ張るような事業となってしまいました。

しかし、このハコベルは2022年に株式譲渡及び第三者割当増資によって分社化されました。ここでラクスルの株式保有比率は49.9%となり、業績に与えるマイナスの影響は少なくなりました。今後は、ハコベルの株式を買ったセイノーホールディングスと協力しながら成長を促すようです。

そして、2023年は大きく売上利益ともに増加しています。2024年もその好調を継続する見込みです。その理由を解説します。

Next: ラクスルの成長は続くか?長期投資家が持つべき視点

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