「トヨタ生産方式」の成せる業
ではもっと長期的な話をしたいと思います。
やはりEVも技術開発が進んで航続距離が伸びる可能性も十分にあります。また、自動運転やカーシェアリングが発達して、自動車の台数自体が減ってしまう可能性もあります。
となると、自動車業界が今後拡大していくことはなかなか考えられません。
その中でトヨタがどう生き残っていくかという話になりますが、ここでトヨタの本質的な強さが浮かび上がってきます。
トヨタの強みには、技術力やブランド力も確かにありますが、一番は「トヨタ生産方式」と呼ばれる生産能力にあると私は考えています。簡単に言うと、同じものを作るにしてもより低いコストで作ることができるということです。
低いコストで作ることができるということはその分利益が大きくなるということで競争力も高くなりますし、利益を研究開発にあてることができます。トヨタがハイブリッド車を開発できたのも、それまでにトヨタ生産方式で培ってきた利益があったからこそ研究開発にお金を振り向けられたということもあるでしょうし、今も新しい技術の開発を行っています。
トヨタの利益率は他の自動車会社と比べても高く、さらにそれが継続的なものとなっています。
テスラが一時利益率でトヨタを上回りましたが、また逆転しています。
この継続的な利益が将来の技術に大きなプラスの影響を与え、長くトヨタが生き残っていく秘訣になると思います。
将来主流になる自動車が何であっても、トヨタ生産方式によって低コストで作って利益を出す体質ができています。利益を出すことができればそれを次に振り向けることができます。
実際にEVが勝つのかということは分かりませんが、トヨタはそもそも勝ち続けられる仕組みを内在していると言えます。その源泉がトヨタ生産方式ということになります。
トヨタに学ぶ長期投資
トヨタ生産方式は簡単にできるものでなく、長い積み重ねで生まれたものです。これがトヨタに限らず日本企業の強みとも言えるかもしれません。長期投資をされる方はトヨタの今後を追うことが非常に有用となると思います。
【バフェットの言葉】
株式投資は単純明快です。誠実で有能な経営陣が率いる優れた企業を見つけ、その内在価値より安い価格で株を購入する、そして永遠に保有すれば良いのです。
トヨタの株価は確かにこの1~2年で非常に大きく上がってきましたが、利益にも反映されていて、PERは13倍弱、PBRも1.3倍ほどで必ずしも高くありません。それに対してROEは16倍くらいとかなり高い水準となっています。
今のような高収益体質を続けられるのであれば、群雄割拠の自動車業界で生き残ってさらに利益を生み続ける可能性は十分にあります。
もちろん、円高などによって一時的に利益が落ち込むこともあると思いますが、それで株価が下がったのならむしろ投資のタイミングになるかと思います。
長期投資では、このように良い企業をじっくり見極めながら安くなった時にコツコツ買うということを繰り返していけばおおよそ間違いはないと思っています。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
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』(2024年6月1日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。