インドの主要株価指数SENSEXが史上最高値圏での推移を続けている。米国の高い関税率やパキスタンとの紛争といった「逆風」が相次ぐなか、個人を含む国内投資家が買い向かう構図となっている。そんなインドでかねてから活躍する、もしくは今後展開を拡大する日本企業にあらためてスポットライトをあてるタイミングが訪れていると考え、以下に代表的な銘柄を挙げておきたい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2025年11月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
復活のインドで活躍する企業
インドの主要株価指数SENSEXが史上最高値圏での推移を続けている。米国の高い関税率やパキスタンとの紛争といった「逆風」が相次ぐなか、個人を含む国内投資家が買い向かう構図となっている。
インドSENSEX 週足(SBI証券提供)
その背景には、1つに同国のモディ政権が9月22日から消費税にあたる「物品・サービス税(GST)」を大幅に引き下げたことがある。自動車や食品、日用品など400以上の品目で減税し、家計や企業を支援する。バターやチーズといった乳製品、パスタなどは12%から5%に、耐久消費財は排気量1200cc未満の小型車やエアコン、テレビなどを28%から18%にする。
また、インド準備銀行の政策が今年2月、6年ぶりに利下げサイクルに入ったことも大きい。4月と6月に追加利下げを実施し、現在は政策効果を見極めるとして利下げを止めている。そうしたこともあって、インド準備銀行は10月に25年度の成長率見通しを前年度比6.5%から6.8%に引き上げた。
さらに注目したいのは、ここにきてインドの石油大手がロシア産原油の輸入停止を発表していることである。既知のとおり、インドは露産原油を大量に輸入し、トランプ米政権からウクライナ侵略の戦費を支えていることを非難されていた。つまり、輸入停止となれば今後の関税交渉において一定の進展が見られる可能性が高まる。総じて、インド経済は25年度の前半が「陰の極」の状態であったと考えられ、後半以降に状況が大きく改善する公算が大きい。
そんなインドでかねてから活躍する、もしくは今後展開を拡大する企業にあらためてスポットライトをあてるタイミングが訪れていると考え、以下に代表的な銘柄を挙げておきたい。
住友不動産<8830>
同社は、インドの商都ムンバイに新たに2つのオフィスビルを開発する。金融機関が集積する地区で新たに用地を押さえ、2030年以降をメドに竣工する計画。同国における建設予定のビルは計5つとなり、累計投資額は1兆円規模となる見込み。年間の売上高が1兆円余りという民間不動産会社の投資計画としては、かなりのインパクトと言える。
すでに数千億円を投じ、ムンバイにオフィスビルや複合施設を建設する3つのビル群の開発計画を進めている。19年に土地を取得した1つ目のオフィスビルは26年秋に竣工予定で、既に大手外資系金融機関の入居が決まっている。調査会社モードーインテリジェンスによると、インドのオフィス市場は29年に1,170億ドル(約18兆円)と24年の3.5倍に拡大する見通し。オフィス開発の海外の主戦場は欧米からインドなど新興国に移りつつある。
足元は、柱のビル賃貸が空室率の低位維持に伴う賃料の上昇で拡大基調。仲介も伸びており、営業増益基調が続く。26年3月期は、売上高が前期比3.5%増の1兆500億円、営業利益は同8.6%増の2,950億円、純利益は同9.6%増の2,100億円と、前期に引き続いて過去最高を更新する見通し。
住友不動産<8830> 日足(SBI証券提供)
株価は先週12日に上場来高値(7,380円)を更新。足元の予想PERは16倍台で割高感はない。
Next: まだあるインド活況で成長が見込める日本企業…投資するなら?
スズキ<7269>
インド自動車工業会(SIAM)が先週14日に発表した10月の乗用車販売台数(出荷ベース)は46万739台で前年同月より17%増。9月下旬から始まった減税の効果が月間を通じて反映された。
最大手のマルチ・スズキは17万6,318台で11%増。11月2日には、インドの四輪車販売が累計3,000万台を突破したと発表している。累計3,000万台の達成は日本(25年3月に達成)に続き2か国目。日本では軽自動車の規格で販売される「アルト」や「ワゴンR」がけん引する。
インドは、自動車普及率が人口1,000人あたり約33台といまだ低水準であり、今後の拡大余力は計り知れないほど大きい。また、同社は期初時点で世界景気の減速懸念などの事業リスクとして400億円程度を織り込んでいたが、当初想定ほどの影響は出ないとみて、先に影響額を200億円程度に引き下げている。
26年3月期は、売上高が前期比4.7%増の6兆1,000億円、営業利益は同22.2%減の5,000億円、純利益は同23.1%減の3,200億円を見込んでいるが、2Q時点の進捗率は営業利益で55.3%、純利益で68.4%に達している。
スズキ<7269> 日足(SBI証券提供)
株価は10月下旬に上場来高値を更新し、以降も玉撮りでもみ合う展開。足元の予想PERは14倍前後で、最終的な上ブレ着地を前提とすれば割安水準にあると言える。
アシックス<7936>
同社は、インドにおける売上高について「2026年は約140億円まで拡大したい」としている。
25年のインドでの売上高は100億円を達成する見込みであり、それをさらに広げる。インドでは高所得層の増加とともに付加価値のあるシューズへの需要が拡大。同社は現在、インドにおいてアシックス製品と高級ブランド「オニツカタイガー」の製品を扱う専売店を併せて143店舗展開しているが、これを30年までに約300店舗に倍増するという。
足元は、インバウンド(訪日外国人)らに人気の高級ブランド「オニツカタイガー」が堅調に推移し、ランニングシューズも大きく伸びている。そこで、先週12日には2025年12月期の連結純利益が前期比41%増の900億円になる見通しだと発表。最高益を見込んでいた従来予想から30億円も上方に修正した。来期についても、26年春夏の大手卸からのプレオーダー(予約注文)が前年同期より2~3割増えているという。
アシックス<7936> 日足(SBI証券提供)
株価は8月19日に上場来高値を更新して以降、調整含みの展開を続けている。足元では3,500〜3,600円処の節目まで値を下げてきており、そろそろ反発機運が強まってきておかしくない。
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『
田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2025年11月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による