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オルバヘルスケアHD、医療機器販売商社として医療現場を支える 新規事業、海外事業を通して持続的な収益拡大を図る

スピーカー自己紹介 前島洋平

前島洋平氏(以下、前島):代表取締役社長の前島です。本日はお忙しい中、当社グループの会社説明会をご視聴いただき、ありがとうございます。

私の略歴です。私は少し異色の経営者で、もともと内科医をしていました。専門は腎臓内科で、岡山大学医学部を卒業後、大学院を修了し、アメリカのボストンにあるハーバード大学医学部附属病院に研究留学をしました。

帰国後は、助手や講師を経て、岡山大学で慢性腎臓病の寄附講座の教授を務めました。その後、私は現在の会社の創業家の出身という背景から、事業承継を目的として2014年に当社へ移り、翌年、社長に就任しました。

現在も臨床を行っており、毎月1回から2回ほど土曜日も含めて診療を行い、実際に医療現場を見る機会を持っています。また、当社では医工連携にも取り組んでおり、その関係で一般社団法人日本医工ものづくりコモンズの理事などの職務も務めています。

Contents

前島:本日は、会社紹介、事業概要、企業理念、医療機器販売業の業界説明、当社の強みと弱み、業績概要と株主還元、最後に長期展望「VISION2030」と成長戦略についてご説明します。

医療・介護機器販売業 事業内容①

前島:会社紹介、事業概要、企業理念についてご説明します。当社は主に3つの事業で構成されています。医療器材事業は、医療機器の販売が中心です。カワニシ、サンセイ医機、日光医科器械、カワニシバークメドといった事業会社が担当しています。

次にSPD事業については、医療材料流通のスペシャリストということで、ホスネット・ジャパンが担当しています。そして介護用品事業は主に在宅介護を対象としており、介護用品のトータルサポートを行う事業で、ライフケアが担当しています。

医療・介護機器販売業 事業内容②

前島:当社の事業セグメント別の売上高と営業利益についてです。93.2パーセントが医療器材販売事業で、SPD事業が4.6パーセント、介護用品事業が2.2パーセントという状況です。

介護用品事業に関しては、在宅介護関連で電動ベッドや車椅子のレンタル、杖や補聴器の販売も手がけています。

オルバグループの展開地域

前島:当社グループの展開地域についてご説明します。当社はもともと岡山に本社を構えていることもあり、中四国、近畿、東北、そして関東にも展開しています。

全国に55拠点を有しており、2023年にはタイにて合弁会社タイオルバヘルスケアを設立し、海外事業をスタートしました。また、オルシードという会社は、2025年1月に新しく設立された会社です。こちらの事業については後ほどご説明します。

企業理念・「オルバヘルスケア」の由来

前島:当社の企業理念および社名の由来です。当社の企業理念(パーパス)は「ビジネスを通じて、医学・医療・介護の発展に貢献し、国民の健康長寿に寄与する」です。

オルバは、もともとはカワニシホールディングスという名前でした。2021年の創業100周年を機にオルバヘルスケアホールディングスに変更しています。

オルバは、楕円形を指す「オーバル」と軌道を意味する「オービット」を組み合わせた造語です。その意味として「地域のヘルスケアにおいて、人と技術がつながり、ひとつの円になる未来を目指し、グループの軌道を示す」という想いを込めています。

企業理念(社員憲章)浸透の取り組み

前島:当社の企業理念浸透の取り組みについてご説明します。スライドの左側に示された社員憲章は、2019年に改訂しました。

しかし、これを浸透させることが難しいため、現在、より簡単な方法として、ほぼ毎月発行する社内報の中で4コマ漫画を掲載し、そこで企業理念を取り上げ、社員に理念をわかりやすく共有するなどの取り組みを継続しています。

医療機器の国内市場規模

前島:医療機器販売業の業界説明と当社の強みと弱みについて解説します。スライドは日本の医療機器の国内市場規模に関する図です。2025年度の市場規模は3兆9,000億円弱と予測されています。また、グラフ上部の折れ線グラフは成長率を示しており、年間2パーセントから3パーセントの成長率が見込まれる市場です。

新型コロナウイルス感染拡大の影響はありましたが、その後回復し、市場は安定的に拡大を続けています。さらに、手術件数が増加し、新規製品の導入が進んでいることにより、市場規模が拡大しています。

そして、スライド右側に輸入超過について記載があります。医療機器は海外製品が多く、現状では2兆円の輸入超過となっています。

増井麻里子氏(以下、増井):経済アナリスト、経営コンサルタントの増井です。スライドのグラフでは右肩上がりとなっていますが、御社の決算短信を見ると、医療器材事業の手術関連消耗品が約4割を占めています。手術件数について、今後どのように推移するとお考えですか? 人口減少を踏まえると減少が予想されるようにも思います。

前島:人口が減少する一方で、高齢化により患者数が増加する傾向があります。また、早期診断法が進化することにより、早期に診断される症例が増え、早期治療の症例も増えるのではないかと考えています。そのため、全体としてはまだ増加傾向にあるのではないかと私は見ています。

増井:その場合、大掛かりな手術よりも比較的軽度な手術が増えるのでしょうか?

前島:そうとも考えられますが、ある程度の手術は引き続き必要になると思います。それに加え、リスクが低い状況で手術を行えるケースが増えると考えています。また、ロボット支援手術のように低侵襲で、入院期間が短くなる手術が増加する可能性もあると思います。

医療機器販売商社とは何か?

前島:当社は医療機器販売商社として、「医療機器メーカーとは、どう違うのか?」と「なぜ“医療機器販売商社”が必要なのか?」というポイントに分けてお話しします。

このようなご説明をする理由は、従来、投資家の方々が当社を「どのような手術機械を製造しているのか」とメーカーと混同されるケースがあったためです。加えて、当社をはじめとする医療機器販売商社の存在意義についてもお伝えしたいと考えています。

①医療機器メーカーとはどう違うのか?

前島:医療機器メーカーと販売商社の違いについてスライドに示しています。医療機器メーカーは、研究開発や製造を行うほか、製品の上市や出荷、流通責任、品質管理も担います。また、医療機器の承認や認証のための申請も重要な機能の1つです。販売する製品は自社製品となります。

一方で、医療機器販売商社は自社では製造を行わず、複数のメーカーの製品を取り扱います。また、医療機器がただ現場に届けられるだけではうまく使えない場合があるため、医療現場で適正に製品を使用できるよう支援を行います。

医療機器販売商社は、自社では製造を行わず、製品を仕入れて販売する点でメーカーとは異なります。

取扱い製品例(多様な診療領域 & 85万種類以上のアイテム)

前島:取り扱い製品例についてご説明します。当社は、多様な診療領域の医療機器を85万種類以上取り扱っています。

まず、超音波メスなど手術で使用するものや、人工膝関節やペースメーカのように長期間体内に埋め込む医療機器です。人工呼吸器や手術支援ロボットも、現在では臨床現場で多く使用されています。

そしてAI活用として、人工知能を活用した医療機器もあります。スライドにあるのは喉の画像からインフルエンザの診断を行う医療機器です。加えて、マスクや手袋、手術ガウン、ガーゼといった製品も取り扱っています。

②なぜ“医療機器販売商社”が必要なのか?

前島:なぜ医療機器販売商社が必要なのかという、存在意義についてです。スライドに4つのポイントを挙げています。

1つ目に、医療機関のニーズに合致した製品を販売商社が選定し、提案します。多様なメーカーがある中から、最適な選択肢を提示します。

2つ目は、多様なメーカーの多品種・少量使用の製品を、手術や患者さまにあわせて検討し準備します。当然、医療機関に相談の上で検討を進めます。

3つ目は、迅速な供給を実現するための物流・在庫管理です。緊急手術の場合、医療機器メーカーからいちいち機器を取り寄せると時間がかかり大変です。そこで、販売商社がその機能を肩代わりしています。

4つ目は、各医療機関スタッフへの個別の運用支援です。医療機関の数が多いため、医療機器メーカーが個別対応するのは難しいのが現状です。このような日常的なサポートを、販売商社が担っています。

増井:商社の役割はかなり大きいと感じましたが、メーカーと商社の役割分担は、業界内でけっこう明確なのでしょうか?

前島:メーカーは主に研究開発や製造、そして3つ目のポイントとして、国への届け出といった機能を担っています。その点で、メーカーと商社の役割は大きく異なります。また、私ども商社は、医療機器の承認や認証に関する機能を社内に有していないことが多いです。

私たちは、医療機器を医療現場で使用可能にするサポートに注力しています。また、さまざまなメーカーの医療機器から選定する機能を有している点も特徴的だと思います。

増井:いろいろなメーカーの商品を取り扱い、現場のニーズなども多く拾えるのではないかと思うのですが、メーカーと協力してオリジナル商品の開発をすることはあるのでしょうか?

前島:メーカーは主に大きな市場を見ているため、ニッチなニーズには対応しきれないことがあります。そこで、当社は医工連携という活動を進めています。メーカーが対応しにくい臨床現場のニーズに応える取り組みを行い、そのような製品を作ることに挑戦しているところです。

まとめ:医療機器販売商社の機能と社会的意義

前島:まとめとして、医療機器販売商社の機能と社会的意義についてです。

私たち医療機器販売商社は、メーカーと医療機関の間に立ち、商品の安定供給や器材の選定支援、緊急手術への対応や適正使用支援、さらには最新医療情報の提供や機器のメンテナンスなどの機能を担っています。そして、患者を支える医療チームの一員として、我が国の医療現場を支えるインフラとしての役割を担っています。

増井:充実した商品のラインナップに加え、緊急手術への対応に際しタイムリーに商品の供給をするなど、多岐にわたる業務をされています。これだけの体制を整えるのは非常に大変かと思いますが、この点が競合に対して参入障壁になっているのでしょうか?

前島:おっしゃるとおりです。この仕事、すなわち医療機器販売においては、人の生命に関わる重要な業務で、医療機器メーカーや病院などの医療機関との信頼関係は、一朝一夕で築けるものではありません。

単に商品を運んで納品すればいいのではなく、医師や看護師といった医療現場のニーズにあった医療機器を手配し、手術現場で正しく使用されるための納品時の説明なども行います。そのため、一定の医療知識や商品の知識が社員には求められます。

そのような理由で、当社は社員教育も重視しています。

増井:反対に、他の地域への進出は難しい面もあると思いますが、以前ご登壇いただいた際には、そのような場合にはM&Aを検討されるとお話しされていました。その後、状況に変化はありましたか?

前島:基本的には、大きな市場を視野に入れるとM&Aを行うことになります。しかし最近では、例えば関西の医療機関の先生が関東に移られる際に、当社は関東にも事業グループがあることから、新たにその先生が勤務される病院との取引を開始するというケースも出てきています。

あるいは、隣県などへの新規事業展開も行っています。

広域医療機器販売商社の状況

前島:スライドは広域医療機器販売商社の状況です。全国には地域ごとに1,000社以上の医療機器販売商社があり、大手の会社も存在します。今後、M&A等による業界再編が進む可能性も考えられます。

当社グループでは引き続き地域医療に密着し、高齢化社会への対応を図りながら医療介護に貢献していくほか、M&A等も視野に入れ、さらなる成長を目指していきます。

当社の「強みと活用」「弱みと対策」

前島:当社の強みと活用、弱みと対策についてです。まず、強みとして挙げられるのは、中四国圏でシェアNo.1であることです。顧客や仕入先からの信用が当社の基盤となっており、その結果として安定的な利益を確保することで新規投資を実施することが可能となっています。

2つ目の強みとして、成長の源泉となる人材育成とDX投資が挙げられます。約1年にわたる新入社員の教育により、顧客のニーズを的確に把握しているほか、ICTツールを活用した営業活動の後押しも行っています。電子カタログ、物流統合システム、経費精算システム、名刺管理システム、RPAの活用なども行っています。

一方で、弱みと対策についてです。まず、低利益率については、卸売業の業界特性ともいえます。これに対してタイをはじめとした海外展開や、自社開発商品などの高付加価値な事業に取り組むことで克服を目指しています。

次に、大都市圏での低シェアについてです。高い参入障壁により進出が難しい中で、新規事業による全国向け販売を進めており、特に自動精算機事業では約4割が関東圏での販売となっています。このように対策を講じています。

根底にある「創業100年を超えても、新たなチャレンジをし続ける企業文化」を大切にしながら、これからも活動を続けていきたいと考えています。

成長の源泉 人材育成

前島:人材育成についてです。当社グループの競争優位性の源泉として、まず人材力があります。当社には、30年の歴史を持つ社内教育制度「OLBA Academy」があります。

また、当社は社員教育カリキュラムをシームレスに構築しています。例えば、ベーシックコースからマネジメントコース、さらにはエグゼクティブコース、各種資格取得支援など、多岐にわたる教育を提供しています。

そして、最近ではエンゲージメントサーベイを実施しており、社員エンゲージメントの向上を図るためにも、引き続き社員教育に力を入れていきたいと考えています。

増井:指導論文コースとは、企業研修としては非常に珍しい取り組みだと思います。このコースを設置した目的について教えてください。

前島:このコースの目的は、自ら積極的に考え、行動し、その成果を共有することにあります。特に対象となるのは、入社2年目の若手社員です。彼らが日々担当している業務の中から課題を見つけ、それに対する解決策を考えて実行し、どのようになったかという結果を共有しています。

その中で、論理的に考える力や文章を書く力、人前で発表する力を鍛えています。最終的には、PDCAサイクルを回すことを学び、新しい提案などを通じて一人前の社員に成長してもらうことを目標としています。

増井:内容はどのようなものが多いのですか?

前島:「こういった製品を販売したいんだけど、どう取り組むか?」や「業務を効率化したいんだけど、どうしたらいいか?」、さらに「ITを活用したいんだけど、どうするか?」などです。社員は営業だけでなく、管理部門の者も所属しているため、さまざまな課題を取り上げています。

増井:少し経営塾的な印象も受けました。

前島:まだ2年目の社員ではありますが、そうした部分もあるかもしれません。

近年の市場環境・当社の対応方針

前島:業績の概要と株主還元についてです。まず、近年の市場環境と当社の対応方針として、世界的なインフレや円安の影響により、海外製品が多い医療機器の価格が上昇傾向にあります。これに対し、営業活動の拡大や仕入れ改善などの対策を講じています。また、代替品の提案を織り交ぜながら、販売価格への転嫁交渉も粘り強く進めています。

次に、医療機関では人員不足やデジタル化の遅れ、さらに設備投資の抑制といった課題があります。こちらは、新型コロナウイルス関連補助金が減少したことや、人件費や資源価格の上昇により、一部の医療機関で経営環境が悪化している状況があります。これに対し、新規ビジネスによる医療業務の効率化を提案したり、医療機関以外への販売を展開したりしています。

そして、高度医療機能の集約化が進むと見ています。特定の大規模病院に高度で専門的な医療、すなわち医師、看護師、医療設備を集約することで、質の高い医療提供体制を維持する方向になると考えています。当社の主要顧客は地域の基幹病院のため、医療機器メーカーとの協力体制を強化しつつ、今後も医療機関をサポートしていきたいと考えています。

増井:前島社長ご自身が医師であることもあり、医師から見た市場環境についてお考えがあればお聞かせください。

前島:私も時々、病院の幹部の方々とお話しする機会がありますが、非常にコストがかさんでいるため、医療機関が経営に苦労しているという話をよく耳にします。そのような中で、当社もなにかしら貢献していきたいと考えています。

そのため、十分にデジタル化されていない医療業務の効率化を図る取り組みや、単に医療機器を販売するだけでないビジネスの展開をしています。また、医療現場のスタッフがしなくてもよい作業を代替するロボットの提案、さらに手術に参加する人員を減らすことができる器材などを提案しています。

増井:ニュースでよく、一般の診療所や歯科診療所は比較的黒字で、大きな病院ほど経営が厳しいところが多いと見かけます。診療所レベルの規模でも、設備投資が進んでいるところが多いのでしょうか?

前島:クリニックや診療所については内科などが多いです。ただし、一部の眼科や整形外科のクリニックでは、継続的に器材の購入を行っています。

増井:やはり御社にとっては病院の設備投資のほうが重要なのでしょうか?

前島:顧客としては大規模病院が多いのですが、専門的なクリニックも重要な顧客です。

(前期)業績のトピック:当社の状況

前島:当社の業績に関するトピックと状況について、3点ご説明します。1点目に、主力医療器材事業において、関西支店を設立しました。関西エリアでの顧客獲得が進み、神戸営業所を関西支店へ昇格しました。その結果、関西エリアの主力である整形外科消耗品の売上高は前期比で10.6パーセント増加し、成長を遂げています。

2点目は、好調な消耗品販売です。手術件数の増加に伴い、消耗品販売も増加しており、手術関連消耗品や循環器領域の消耗品も前期比でプラスとなっています。

3点目は、備品販売の伸び悩みです。備品は消耗品ではないもので、医療機関の経営環境悪化に伴う設備投資の抑制や機器更新の先延ばしなどが影響し、当初の見込みよりも大幅に販売が減少しました。自動精算機や低熱分解型アップサイクルユニットの販売にも取り組んでいますが、予算は未達成に終わっています。

(前期)2025年6月期 連結業績

前島:2025年6月期の連結業績についてです。売上高は過去最高となりましたが、利益は減少しました。

売上高は1,227億200万円でしたが、営業利益は19億7,900万円、経常利益は19億6,200万円、親会社株主に帰属する当期純利益は14億3,000万円と、いずれも前期比で減少しています。

(前期)2025年6月期 業績まとめ

前島:前期の業績まとめです。ROEは12.1パーセントと比較的高い値となっています。また、PBRは若干1倍を割り込んで0.97倍です。配当利回りは4パーセントと比較的高い水準で、DOE(株主資本配当率)も4パーセントと同様に高い状況となっています。

【連結売上高】過去推移と2026/6期予想

前島:スライドは過去4年間と今期の予想です。売上高は右肩上がりで成長しており、今期についても1,279億円の予想となっています。

【連結営業利益】過去推移と2026/6期予想

前島:営業利益については、これまで順調に成長していましたが、前期は19億7,900万円という結果でした。今後、再成長を図るため、今期の目標を20億円と設定しています。

増井:営業利益が前期に減少した要因は何でしょうか?

前島:医療機関の経営が厳しい状況にあり、設備投資や備品の購入が控えられた結果、利益率の高い備品の販売が振るいませんでした。また、当社としては社員の給与のベースアップといった人的投資や、サイバーセキュリティ対策を含むシステム投資などにより、販管費が増加した状況もありました。

増井:今期、業績回復が見込まれる要因とは何でしょうか?

前島:まずは既存エリアでのシェアアップを図ることです。そして、関西エリアなどで新たな市場を開拓し、消耗品の販売増加を目指していきます。また、価格転嫁や仕入れの合理化を進めることで、営業利益率の向上に取り組みます。

加えて、先ほど触れたICTを活用した社内ツールの刷新により、社内の労働生産性向上にも挑戦します。さらに、海外ビジネスや新規事業を成長させていくことで目標を達成したいと考えています。

配当の基本方針

前島:配当の基本方針です。当社は増配または維持を目指しています。成長投資に備えるとともに、内部留保にも取り組みます。

1株当たりの配当金は、増配あるいは維持という方針のもと、前期は80円となっており、2026年6月期も引き続き80円の配当を予想しています。また、DOEは4パーセントと比較的高水準となっています。さらに、配当利回りも4パーセントと、同様に高水準で推移しています。

PBR向上の取り組み

前島:PBRについては1倍前後で、もう少し向上させたいと考えています。スライドにPBRをROEとPERに分解して示しています。特にROEを高めるためには、売上高や純利益率、つまり収益性を向上させることが重要です。

また、PERについては、期待成長率を引き上げることを目指しています。具体的には、海外事業比率を向上させる、新規事業にしっかり取り組むこと、そして今回のようなIR活動を通じて当社の認知度や理解を深めていただくことを考えています。

株主優待 QUOカード

前島:株主優待についてです。株主優待は「QUOカード」で、1年以上株式を保有いただいた株主のみなさまに対し、保有年数および所有株式数に応じてスライドの額面の「QUOカード」をお贈りしています。

VISION2030 持続的成長と株主還元の取り組み

前島:「VISION2030」と成長戦略についてです。当社では、2030年のありたい姿として「VISION2030」を設定しています。

1つ目は、国内最高の医療機器商社を目指すことです。2つ目は、営業利益の20パーセントを海外事業から上げること、そして3つ目として、30以上の新製品やサービスを生み出すことを掲げています。

主力市場は医療・介護業界です。当社は創業104年を迎えますが、この分野は国の医療制度の下、安定的な需要があります。

成長戦略では、新規事業の拡大を進め、医療介護事業の収益をもとに海外事業を含めた新規事業への投資をし、事業を創出しています。

また、株主還元として増配または配当の維持を掲げており、2000年の上場以来、減配はありません。

中期経営計画(2028/6期:売上高1420億円、営業利益27億円)

前島:中期経営計画についてお話しします。当社では、社員憲章、企業理念を共有することを基盤として、生産性の向上を図るために次のような取り組みを行っています。

まず、現業強化・効率化です。また、最近ではロジスティクス・イノベーション、すなわち物流のイノベーションに取り組んでいます。具体的には、新たに物流倉庫を建設することや、仕入先メーカーとの物流連携を進めること、さらに域内物流のハブ機能を担うことにも挑戦しています。

スライド右側の「OLBA-DX」では、CRM、セールス・フォース・オートメーションやビジネスインテリジェンス、さらには倉庫物流に関連したシステムである「Li-Flo」を生み出し、活用しています。また、今後グループウェアの更新やノーコードツール展開も進める予定です。その背景にはITスキルアップがあり、社員のITパスポート取得やDX人材の育成を進める取り組みを行っています。

そして、新規事業育成をはじめ、外部との連携を促進しています。

また、やはり人が重要であるため、サステナビリティの観点から、人材育成をはじめ、働き方改革や健康経営といったさまざまな課題に取り組んでいます。

このような取り組みにより、2028年6月期には売上高1,420億円、営業利益27億円を目標としています。

新規事業①「テマサック」販売好調

前島:新規事業のご紹介です。「テマサック」はクリニック向けの自動精算機で、前期には1年間で255台が導入されました。10月末時点で、全国で848台が導入されており、そのうち4割が関東圏です。また、山形県を除く46都道府県で販売実績があります。こちらはレセプトコンピューターと連携し、各種キャッシュレス決済にも対応しています。

増井:前回のご説明で、「テマサック」についてコロナ禍で需要が高まったというお話がありました。現在も販売が好調なのはなぜですか?

前島:当初はコロナ禍において、非対面・非接触が感染防止に有効ではないかと評価されていました。その後は、使い勝手の良さやクリニックでの会計業務の省力化という点が評価されています。

そして、Webマーケティングや各種展示会への積極的な参加を通じて販売を伸ばしています。また、国のIT導入補助金を有効活用したことも成長の要因です。

増井:まだ成長の余地があるのですね。

前島:市場は依然として広大で、さらなる成長を目指していきたいと考えています。

新規事業② 株式会社オルシード設立

前島:今年はオルシードを設立し、低熱分解型アップサイクルユニット「OLSTECH」の販売を開始しました。こちらは大阪大学の環境安全研究管理センターとの共同開発です。主な特徴として、以下の3点が挙げられます。

1つ目は、低熱かつ低酸素下で処理を行うことで、CO2やダイオキシンの排出を大幅に抑制するSDGs対応の機器であることです。2つ目は、有機ゴミを約300分の1にサイズダウンし、そこから得られる粉末を道路の舗装や農業用資材として再利用できることです。3つ目は、省スペースで低ランニングコストの運用が可能である点です。

この背景には、医療や介護現場において日常的に大量に廃棄されるナイロン手袋やオムツの処理の課題があり、ゴミの輸送や焼却を必要としない点で環境負荷低減にも貢献しています。当初は自治体向けのアプローチが中心でしたが、最近ではアパレル業界や食品業界の企業からも関心を寄せていただいています。

さらに、こちらは医療器材事業以外の収益機会という位置付けで、販売と納品を加速させ、収益の拡大を目指していきます。

新規事業③ タイ事業(2023年1月~)

前島:海外事業についてです。こちらはタイで展開している事業で、2023年からスタートしたタイオルバヘルスケアという会社です。現在、全自動錠剤分包機をタイの国立病院に販売しており、第1号が納品され、第2・3号も納品準備中です。

また、タイでも高齢化が進んでいることから、リハビリ用機器の販売を計画しており、日本のメーカーと協力して販売準備を進めています。さらに、整形外科の領域においては、埋め込み型の整形インプラントの販売に挑戦しているところです。

タイのFDAやBOI(投資委員会)、日本のジェトロ、さらにタイのNSTDAという、日本の産業技術総合研究所のような施設とも連携しながら、事業展開を図っています。

ESGへの取り組み

前島:ESGへの取り組みについてです。E(環境)については、「OLSTECH」の販売などを通じて対応していきます。

S(社会)については、人的資本投資や健康経営に取り組んでいます。私は内科医でもあることから、社員の健康経営活動に注力し、最近では女性活躍推進の一環として、社外メンター制度も導入しています。さらに、エンゲージメントサーベイを実施し、社員のエンゲージメントを向上させる取り組みも行っています。

G(ガバナンス)については、経営の透明性、効率性、健全性の確保に努めています。社員憲章に「いかなるときも、フェアーな競争と取引を心掛ける」と掲げられているように、社員一人ひとりの倫理意識の向上にも日々取り組んでいます。

本日の説明のポイント

前島:本日のご説明のポイントです。医療機器市場は安定的な成長が期待されます。また、多種多様な医療機器が存在するため、それを取り扱う医療機器販売商社が必要です。

当社の業績は堅調に推移しており、上場以来減配はありません。現在、新規事業や海外事業にも取り組んでおり、今後も持続的な収益拡大を目指していきます。

質疑応答:「30以上の新製品・サービス」の進捗について

飯村美樹氏(以下、飯村):「『VISION2030』に『30以上の新製品・サービス』とありますが、こちらの進捗を教えてください。また、達成に向けてどう進めていくのでしょうか?」というご質問です。

前島:「VISION2030」の「30以上の新製品・サービス」に関しては、現状ではおおよそ半分程度まで到達しています。そのために、当社は国内外の医療・医療機器系のベンチャー企業との情報交換やサポートを行うだけでなく、医療のみならず医療の周辺分野における新規サービスの開拓にも取り組んでいます。

また、臨床現場からのニーズを具現化するため、医工連携にも取り組んでいます。当社の自社製品が関わっている場合もありますが、他企業との連携によって新しい製品を生み出すためのコンサルティング業務なども行っています。

さらに、今日ご紹介した「テマサック」や「OLSTECH」といった、これまでにはなかった新たな製品領域の開拓にも取り組んでいるところです。

飯村:「OLSTECH」に関しては、医療現場以外からの引き合いも多いとのことです。

前島:実は自治体からも関心を示していただいており、現在、離島に設置する試みを行っているところです。また、アパレル業界では衣料の原材料の端切れなどが大量に出てきて、これを燃焼させると多量のCO2が発生します。それを避ける処理方法として関心を持っていただいています。

飯村:これまでそのような製品はまったくなかったのでしょうか?

前島:これは小学校の理科で習う乾留という現象を原理としており、低酸素下で熱を加えることで、燃焼することなくそのものがボロボロになり粉末化していく仕組みです。この技術を大阪大学の先生たちと共同開発し、具現化しました。現在のところ、同じような商品は存在しないかと思います。

飯村:これからさまざまな業界で注目されそうですね。

質疑応答:今後の配当方針について

飯村:「今後の配当について、しばらくは80円を維持する方針でしょうか?」というご質問です。

前島:当社では配当について、増配または維持を基本方針としています。今後は業績の推移を見ながら配当金額を決定していきたい考えです。現状、来期は80円を予想しています。

増井:DOE4パーセントとはかなり高い水準だと思います。この水準を目安にされているわけではないのでしょうか?

前島:DOEについては、特に4パーセントにするといった具体的な数字を設定しているわけではありません。結果としてこのような水準になっている状況です。市場の平均が2パーセント台と聞いたこともあるため、比較的高い水準で配当ができていると考えています。

増井:配当利回りについても、特に基準は設けていないのですか?

前島:現在、配当利回りは4パーセントですが、これを維持するような確固たる目標は設定していません。ただし、できる限り高い水準を保てればと考えています。

質疑応答:今後の海外事業の展開について

飯村:今後の成長について、「海外事業はタイのほかにどこか候補がありますか?」というご質問です。

前島:まず、タイの事業は当社にとって初めての海外事業のため、これを発展させたいと考えています。現在は営業体制や顧客先の開拓からスタートしています。さらに、タイの事業では販売だけでなく、製造にも挑戦したいと考えています。そのため、タイのFDAやNSTDAなど、現地の機関とも連携しながら進めているところです。

タイで製造の基盤が整えば、医療機器をタイ周辺のベトナムやASEAN諸国に展開することや、将来的には日本へ輸出する逆輸入も可能になればと考えています。

増井:「テマサック」や「OLSTECH」を海外展開することは考えていますか?

前島:「テマサック」はクリニック向けの自動精算機で、アジア圏でも競合が多い可能性があります。そのため、現在は積極的なASEAN展開は検討していない状況です。

「OLSTECH」については、例えばタイなどで需要がある可能性もあるため、現地調査を行った上で検討していきたいと考えています。

増井:市場がありそうな気がしますね。

前島:これはメーカー的な事業であるため、収益性も比較的期待できると考えています。また、世界的な温暖化などの解決策の1つになるのではないかとも思います。

飯村:現場の声を拾い上げた結果、そのような開発に結びついたということですね。ほかの領域への展開も含め、今後の展開が楽しみです。

質疑応答:事業ごとの売上高構成について

増井:「事業ごとの売上高構成比には近年変化がありますか? また、変えていきたいところはありますか?」というご質問です。

前島:売上高の約9割は医療器材事業が占めており、この傾向は今後も続いていくと考えています。ただし、一部で海外事業からの売上が発生する、あるいは売上構成が変化する可能性もあると思います。また、今後高齢化が進むことで、介護事業がさらに拡大する可能性もあります。

前島氏からのご挨拶

前島:本日はご視聴いただき、ありがとうございました。本日の説明会を通じて、私たち医療機器販売業の事業について少しでもご理解いただけたら幸いです。

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