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大豊建 Research Memo(5):2026年3月期は営業減益も、経常・最終利益は増益の計画

■今後の見通し

● 2026年3月期の業績見通し
大豊建設の2026年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比2.4%減の140,000百万円、営業利益が同6.0%減の5,200百万円、経常利益が同23.0%増の6,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.4%増の4,000百万円と、減収ながら経常利益及び当期純利益は増益を確保する見通しであり、期初計画を据え置いている。営業利益計画の中間期進捗率は、建築事業の収益性改善などにより17.2%と前年同期の11.3%を上回っており、計画過達が期待される。

2026年3月期は、前期に引き続き収益性の確保及び施工体制の最適化を重視した選別受注の方針を継続する構えであり、受注高は前期比11.8%減の133,200百万円の計画である。事業セグメント別では、土木事業は同社が強みとする「シールド工法」や「ニューマチックケーソン工法」などの専門性の高い案件を中心に、下期の受注拡大を目指す方針であり、同5.0%増の63,000百万円となる見通しである。他方で、建築事業は既に多くの繰越案件を抱えており、無理のない施工体制の維持を優先するためにあえて新規案件の受注を抑制する姿勢であり、同23.2%減の69,300百万円とする見通しである。

利益面について事業セグメントごとに見ると、建築事業については前期から推進してきた選別受注の成果により、利益率の高い案件への入れ替えが進展している。売上総利益率は、採算性の向上により前期比1.8ポイントの改善が期待される。他方で、土木事業については繰越案件の中で大きな割合を占める大型JVにおけるサブ工事の利益率改善が課題となっている。そのため、土木事業の売上総利益は前期実績を下回る見通しであり、全体の収益性をやや圧迫する要因になると見込まれる。また、コスト面では人件費が継続的な賃上げの影響により増加基調にあることなどから、全社ベースの営業利益率は同0.2ポイントの低下が見込まれる。

他方で、経常利益については前期を1,195百万円上回る計画となっている。これは主に、同社が出資している特定目的会社(SPC)を通じて手掛けている物流施設の開発事業において、同施設の売却に伴い下期に配当収入が発生し、営業外収益を押し上げる見通しによる。

現時点では、土木事業のサブ工事案件の収益性や人件費の増加などコスト面について課題は残るものの、建築事業では利益率の高い案件への入れ替えが進んでおり、採算性の改善が進んでいる。継続的な事業構造改革の推進により、収益基盤の強化が期待される。

■中長期の成長戦略

中期経営計画のアジャスト版を公表、外部環境の変化を踏まえて事業基盤の強化を図る

同社が2023年5月19日に公表した2024年3月期から2028年3月期までの中期経営計画では、人的資本経営の強化及び事業構造の変革を基本方針として掲げ、企業価値と生産性の向上を目指してきた。人的資本経営では、働き方改革への対応を進めており、現場の人員配置を見直すことにより、4週8休の勤務体制を段階的に導入するとともに、2024年4月から始まった罰則付きの時間外労働の上限規制に対応した施工体制を整備している。また、新たな人事制度の策定・運用、エンゲージメントサーベイの定期的な実施による従業員のモチベーションの可視化などを通して、組織全体の現状を把握し、生産性向上を図っている。事業構造の変革については、同社が強みを有する技術分野のさらなる拡大、グループ内のシナジーの活用、収益性を重視した選別受注の継続、新たな事業領域への挑戦などを進め、経営の質的向上に取り組んでいる。

しかし、計画を開始してから2年の間に建設資材及び人件費の急騰、品質確保にかかる追加費用の発生などにより、採算が大きく悪化し、業績目標への未達となった。こうした状況を受け、基本方針自体は維持しつつも、外部環境の変化に対応できるように内容の見直しが行われ、2025年5月9日に中期経営計画のアジャスト版を新たに公表した。

中期経営計画の定量目標は、2028年3月期に売上高1,600億円、営業利益67億円、営業利益率4.2%、当期純利益46億円、ROE7%程度を掲げており、これらの実現に向けた重点施策が示されている。直近3年間の重点課題は内部統制の強化である。具体的には、物価変動を契約に反映できるように物価スライド条項を標準化すること、受注の選定やリスク管理を含めたマネジメント体制の強化、モニタリング機能を充実させた施工管理体制の再構築などが挙げられる。

事業セグメント別に見ると、土木事業では利益率の低い繰越工事が残っていることが課題となっており、進捗管理の徹底や設計変更交渉の強化を通じて、利益率の改善に取り組んでいく。また、同社が得意とする「シールド工法」や「ニューマチックケーソン工法」を生かした工事や、JVスポンサーや単独案件などの受注に注力し、収益力の回復を図る。建築事業では、資材価格の高騰による影響を受けた工事が2025年3月期までに完了しているため、選別受注の継続とともに、施工ミスを未然に防止するための施工管理体制のさらなる強化を通じて、安定的な利益の確保を目指す。

なお、2028年3月期以降については、得意分野において高収益体制を確立させるとともに、施工管理人員の増員による受注キャパシティの拡大、強みを持つ分野の深掘り、新たな競争力の源となる技術の獲得などを目的とするM&Aによる事業規模の拡大、などを通して長期的な事業基盤の強化に取り組む方針である。同社の中期経営計画は、厳しい事業環境の変化を踏まえたうえで柔軟かつ戦略的に方針を策定しており、収益基盤の強化と中長期的な成長により企業価値向上を目指す構えがうかがえる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)

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