■スペースシャワーSKIYAKIホールディングスの事業概要
2. 事業環境
同社が展開する音楽エンタテインメント関連事業の市場規模としては、同社資料によるとライブエンタメ市場が6,857億円、音楽配信・音楽ソフト市場及び音楽著作権市場が4,763億円、有料放送市場が8,250億円、クリエイターエコノミー市場が1兆6,552億円など合計5兆3,593億円となっている。市場成長性としては、音楽配信・音楽ソフト市場及び音楽著作権市場が横ばい、有料放送市場が低い見込みだが、ライブエンタメ市場やクリエイターエコノミー市場などについては今後も高い成長性が見込まれている。同社にとって事業環境は良好と言えるだろう。
3. 事業戦略
同社は事業戦略の基本方針として、コンテンツが成長すればソリューションの収益も増加し、ソリューションが成長すればコンテンツの獲得機会も増加していくという考え方に基づき、両セグメントのシナジーによる新たなIPやサービスの創出、両セグメントを拡充するための投資の実行により、事業全体を加速度的に成長させる方針としている。
(1) コンテンツセグメント
コンテンツセグメントの注力戦略としては、イベント、アーティスト、エンタテインメントカフェなどを中心とする自社IPのブランド力向上、及び有望な新人アーティスト・クリエイター発掘の強化を推進する。自社IPのブランド力向上では主催イベント水平展開や新規イベント創出、アーティストIPの強化・拡大、エンタテインメントカフェ既存業態新規出店や新業態カフェ開発などにより、ジャンルごとに自社IPを強化するほか、良質なコンテンツの制作、SNSを中心とした各メディアでの発信、SpotifyやApple MusicをはじめとするDSP(Digital Service Provider)への積極展開、「Bitfan」や「Bitfan Pro」を活用したEC・ファンクラブ・アプリサービスなど、内製による自社サービスの強化を図る。有望な新人アーティスト・クリエイター発掘の強化では、ライブハウス「WWW」「WWWX」などアーティストやクリエイターが集まるベニュー(施設)の提供拡大、レーベル・マネジメント機能の拡大などにより、10年先を見据えた有望なアーティストの獲得・育成や自社IPの開発につなげるなど、自社アセットを最大限に活用したコンテンツエコシステムを拡大させる。
事業別戦略として、ライブ・コンテンツ事業のイベント関連では主催フェスの拡大及び水平展開、新規フェスの立ち上げ、ファンクラブ・EC・アプリなどグループのソリューション機能と連携した新規サービスの開発などを推進する。2025年10月には、国内最大級のヒップホップフェスティバルである「POP YOURS 2026」を2026年4月に幕張メッセで開催することを発表した。5周年を迎える今回は初の3日間開催(従来は2日間開催)で会場のキャパシティーも拡大し、過去最大規模での開催となる。ライブハウス関連では新規大型店舗の出店、新人アーティスト発掘や新規イベントIP開発の場としての体制強化などを推進する。アーティストマネジメント及びレーベル・エージェント関連では、グループの強力なインフラを活用した新人アーティストの獲得・育成、自社所属アーティストの強化と海外市場への進出、原盤・出版を中心としたストック収益基盤の確立、自社フェスやIPと連動したヒット曲創出、新たな音楽シーンへの参入などを推進する。有料放送及びオンデマンド関連では、放送番組を起点としたIP獲得、他社プラットフォームへのコンテンツ供給拡大、クオリティ維持やコストコントロールによる利益水準の維持などを推進する。エンタテインメントカフェ事業では継続的に新規出店するほか、新規事業も検討する。
(2) ソリューションセグメント
ソリューションセグメントの注力戦略としては、プラットフォーム開発、音楽配信、映像制作、イベント制作を中心として、オンライン・オフラインを問わない多様なグループ内ソリューションをベースに、ジャンルを問わず多種多様なクライアントの獲得を推進する。また新規ビジネスとして、フェスを中心にイベントのDX化を図るアプリサービスを開発して同社主催イベントを問わず提案活動を行っていくことを検討しているほか、新規事業としてエンタテインメント領域に特化したオンライン上でのクライアント向けファイナンスサービスなどを検討している。
事業別戦略として、プラットフォーム事業ではファンクラブ・EC・イベントなどのソリューションを360度で提案する。またジャンル及び案件の規模ごとに最適なチーム編成を行い、既存クライアントとのリレーションを維持しつつ、圧倒的に効率化したセールスプロセスで新規クライアント獲得を推進する。さらにクリエイター向けのセミナー開催及びイベント協賛、クリエイターとファンのニーズに応じた機能の継続的開発などを推進する。ディストリビューション事業では優良IPを保有する日本企業の配信面のサポート、ストリーミングを最大化させるための各種マーケティング活動の強化などを推進する。クリエイティブソリューション事業では、新規大型イベント制作の受託案件の獲得、イベント開催時のアーティストブッキング力の強化、デジタルプロモーションに関するコンサル能力向上、自社ブランド(イベント・放送など)の広告クライアントとのリレーション維持、グループ内の案件のセールス体制強化(クロスセルのハブ組織へ)、音楽映像制作No.1ポジションの維持、ライブ映像・広告映像の受託制作強化、売上拡大などを推進する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)