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オーバル Research Memo(3):2026年3月期中間期は、増収増益の好決算。営業利益は過去最高水準

■オーバルの業績動向

1. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期第2四半期(中間期)における世界経済は、米中関係の緊張やトランプ政権の関税政策、中国の景気減速の懸念など、先行き不透明な状況が続いた。わが国では、賃金上昇やインバウンド需要の下支えにより回復基調を維持しているものの、円安、物価高による個人消費への影響、関税問題による企業収益の下押し懸念から、景気の持続的改善には依然として不透明感が残っている。

このような経済環境下、同社グループでは当期より新たに中期経営計画「Imagination 2028」をスタートし、これまで整えた基盤を生かし、さらなる成長に向けて邁進した。その結果、2026年3月期中間期の連結業績は、受注高7,117百万円(前年同期比10.4%減)、売上高7,373百万円(同3.4%増)、営業利益919百万円(同33.3%増)、経常利益957百万円(同53.3%増)、親会社株主に帰属する中間純利益600百万円(同42.2%増)と、増収増益決算であった。受注高の減少は、システム部門で前年同期に複数の大型案件が集中したことの反動減である。一方、売上高は、センサ部門やサービス部門が堅調に推移し、オーストリアのAnton Paarからのライセンス契約に伴う一時金の収入や一部製品の値上げにより増加した。各段階の利益は、売上増や原価率の改善により、いずれも大幅な増益となった。特に営業利益は、前年同期を大きく上回り、過去最高水準となった。Anton Paarからの一時金は、知的財産のライセンス対価であり、材料費はかからないことから売上原価率は低下し、増収増益につながった。また、製品値上げについては、同社の製品に競争力があるとともに、一般的に材料高を価格転嫁する気運が高まってきたことを示すものだ。以上から、2026年3月期予想に対する各段階利益の進捗率は60%を上回り、順調な決算であったと弊社では判断する。

事業部門別の業績を見ると、主力のセンサ部門では、受注高は4,914百万円(前年同期比7.3%増)であった。国内は主要顧客の化学関連業界向け及び石油関連業界向けが好調に推移し、海外は電気自動車用の電池関連業界向けにおいて、韓国では低迷しているものの、中国では回復基調にある。中国では、船舶関連業界向けも好調に推移した。売上高は4,997百万円(同4.2%増)であった。これは、受注高と同様に、国内では化学関連業界向けが堅調であり、海外では中国における電池関連業界向けが回復基調かつ、船舶関連業界向けが好調であり、さらにAnton Paarとのライセンス契約に基づく契約一時金の売上計上があった。近年は、Anton Paarの一時金計上の有無が、売上高の増減に大きく影響している。

システム部門では、受注高は626百万円(前年同期比66.3%減)と大幅に減少した。これは、国内で前年度に大口案件が集中した反動である。また、売上高も871百万円(同5.5%減)であった。国内では、前期に受注した大口案件の進捗により一定の計上があったものの、直近の受注高減少の影響を受けた。海外では、東南アジア地域では回復基調にあり、当期は大口案件の工事進行に応じた売上を計上した。なお、同事業の案件は長期間にわたることから、工事の進捗基準より売上高を計上しているが、大口案件の影響により期毎の増減が大きい。

サービス部門では、受注高は1,576百万円(前年同期比4.9%増)、売上高は1,504百万円(同6.6%増)であった。主要顧客である石油関連業界は、業界再編や脱炭素社会に向けた動きにより、市場環境は厳しい状況が継続しているなかで、攻めのサービスを目指して保全サポートサービス及び他社製品の校正サービスを強化したことから、化学関連業界向けや石油関連業界向けの受注・売上が堅調に推移した。なお、サービス部門は他部門に比べて景気に大きく左右されない部門であり、売上高は増加基調を続けている。

高い安全性を確保

2. 財務状況と経営指標
2026年3月期中間期末の資産合計は、23,820百万円(前期末比672百万円減)となった。このうち、流動資産は12,612百万円(同839百万円減)であった。これは、主に電子記録債権が118百万円、棚卸資産(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品の合計)が149百万円、契約資産が342百万円、仮払金が169百万円それぞれ増加したが、現金及び預金が507百万円、受取手形及び売掛金が1,142百万円それぞれ減少したことによる。また、固定資産は11,208百万円(同166百万円増)であった。これは主に、無形固定資産が49百万円、繰延税金資産が50百万円それぞれ減少したが、有形固定資産が146百万円、投資有価証券が158百万円それぞれ増加したことによる。

一方、負債合計は7,704百万円(前期末比468百万円減)となった。このうち、流動負債は3,872百万円(同682百万円減)であった。これは主に、支払手形及び買掛金が97百万円、短期借入金が153百万円、契約負債が140百万円、未払金が170百万円それぞれ減少したことによる。また、固定負債は3,831百万円(同213百万円増)であった。これは主に、長期借入金が237百万円増加したことによる。長期・短期を合計した借入金は、1,703百万円(同84百万円増)であった。また、純資産合計は16,116百万円(同204百万円減)となった。これは主に、利益剰余金が398百万円増加したが、自己株式の増加が452百万円、為替換算調整勘定が162百万円減少したことによる。

以上の結果、自己資本比率は65.9%に上昇し、最新データである2025年3月期のプライム・スタンダード・グロース市場に上場する精密機器業界平均の59.5%を上回る高い安全性を確保していると弊社では評価する。一方、2025年3月期のROAは6.0%、ROEは6.7%で、収益性指標では業界平均を下回っており、今後は収益力の強化が課題である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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