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富士製薬 Research Memo(2):高い独自性を持つ女性医療特化のスペシャリティファーマ

■会社概要

1. 会社概要
富士製薬工業は、医療用医薬品の開発・製造・販売を主事業とする日本の製薬メーカーである。1965年4月に設立され、本社を東京都千代田区三番町に置く。子会社及び海外拠点を含むグループ体制で運営されており、2025年9月末時点での連結従業員数は1,760名(うち富士製薬工業969名、OLIC (Thailand)791名)に上る。1995年6月に株式を店頭登録し、現在は東京証券取引所プライム市場に上場している。販売・流通拠点は、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の主要都市に展開し、富山県には製造工場及び研究拠点である富山研究開発センターを有する。また、グローバル展開の一環として、タイの子会社OLIC (Thailand)を通じた海外での製造・販売体制も整備しており、アジアを中心に事業基盤を拡大している。

設立以来、同社は一貫して女性医療領域に注力してきた。当初は約45年間にわたり後発医薬品(ジェネリック)を中心に事業を拡大してきたが、2008年に月経困難症治療薬『ルナベル(R)配合錠』の新薬の発売を転機として、同社は単なる後発品メーカーから新薬を手掛ける企業に転換し、ホルモン剤や不妊治療薬、経口避妊薬、更年期障害治療薬など、女性のライフステージに寄り添う幅広い医薬品を提供するスペシャリティファーマとしての地位を確立した。

現在は、「女性医療」を中核として、バイオ後発品の開発・販売を担う「バイオシミラー」、そして富山工場及びOLIC (Thailand)を中心とする製造受託事業「CMO」の3つの事業領域を展開し、専門性の深化と事業ポートフォリオの拡張を通じて、国内外の医療現場に持続的な価値を提供している。

2. 沿革
同社は、1954年に東京都豊島区で創業した富士薬品商会を起源とし、1959年に富山県水橋町(現 富山市水橋地区)に製剤工場を設け、有限会社富士製薬工業として設立された。1965年には株式会社へ改組し、本格的に医療用医薬品の開発・製造・販売を開始した。1974年には婦人科領域向けホルモン剤を発売し、女性医療分野へ本格的に参入した。創業者・今井精一(いまいせいいち)氏は、創業当初より「多くの人が必要としていながらも支援の行き届いていない分野に貢献したい」という信念を抱いており、女性医療こそその理念を体現する領域であると考えていた。女性医療は市場規模が小さく、ホルモン剤など管理が難しい高専門性領域であったため、他社が参入をためらう分野であったが、同社は「満たされていないからこそ挑戦する」という方針を掲げ、独自の技術開発と製品供給に取り組んだ。この決断が、後のスペシャリティファーマとしての独自性と専門性を確立する礎となった。その後、診断用医薬品(造影剤)の発売などを通じて事業領域を拡大し、1995年には株式を店頭登録。2005年には設立40周年を機にコーポレートアイデンティティを刷新し、企業ブランドの再構築を進めた。2012年にはタイの医薬品製造受託会社OLIC (Thailand)を子会社化し、海外展開とグローバルCMO事業を強化。翌2013年には富山研究開発センターが竣工し、研究開発体制を拡充した。

現在は、長年培った女性医療を中核に、バイオシミラー及びグローバルCMO事業を成長の柱として位置付け、東京証券取引所プライム市場上場企業として、専門性と国際競争力を兼ね備えたスペシャリティファーマへと進化している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)

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