Outline
山田則子氏:みなさま、こんにちは。株式会社ユーラシア旅行社社長COOの山田です。どうぞよろしくお願いします。
ユーラシア旅行社は、来年創業40周年を迎える旅行会社です。ヨーロッパはもとより、アジア、アフリカ、中南米、北極圏から南極大陸に至るまで、安全に渡航可能な世界170ヶ国を舞台に、ユーラシア独自の企画にて旅を展開しています。
本日は、中期経営計画(2026/9-2029/9)を作成しましたので、ご報告します。
全体の構成は、「1.中期経営計画の前提」「2.中期経営計画の全体像」「3.事業成長戦略のアクションプラン」「4.財務戦略」の4部構成です。
1.中期経営計画の前提 2026年創業40周年 コロナ禍からの完全復活、ファン拡大へ
まず、「1.中期経営計画の前提」について、ユーラシア旅行社の「沿革」や「理念体系」をお伝えします。
ユーラシア旅行社が誕生したのは1986年です。少し旅行業の歴史をひもとくと、1964年に東京で1回目のオリンピックが開催されました。その後、市場が拡大し、特にアウトバウンド市場が大きく成長しました。
そして、海外渡航者数も増加しました。当然ですが、その時点で大手旅行会社はすでに存在していて、その後、「安・近・短」と呼ばれる旅が全盛期を迎えます。そうした時代背景の中で誕生したのが、ユーラシア旅行社です。
私たちは創業直後から、「安・近・短」といわれる旅とは一線を画する旅を提供してきました。どちらかといえば手間暇がかかり、手配に試行錯誤が必要な旅を通じて、世界を広げ、そして深めてきたと自負しています。
旅行商品には特許がないため、商品の造成だけで競合他社と競い合うと、常にいたちごっことなってしまいます。そのため、私たちは市場で勝ち残るために、時代ごとに戦略を変えながら企業の仕組みを整えてきました。
また、旅行産業は常に地政学リスクや自然災害に直面する産業でもあります。それゆえ、当社は誕生直後から「旅行業界における持続可能な経営というのはどのようなものなのか」という課題を問い続けながら歩みを進めてきました。
私たちは世界170ヶ国を扱っており、世界中のすばらしい地域をお客さまにご案内したいという熱い思いを持っています。同時に、170ヶ国・全大陸を扱うことで、地政学的リスクに対応しているという側面もあります。
創業間もない頃から無借金経営を続けており、これも万が一の非常時に備えた対応策として実践しているものです。経営戦略の根底には、非常時に備えた厚い財務基盤の確立があると考えています。そのため、地道で堅実な経営を行うことが、私たちの精神の根底にあります。
2026年は創業40周年を迎えます。完全復活を果たすために、現在、ファン拡大に全社一丸となって取り組んでいます。
1.中期経営計画の前提 ユーラシア旅行社の理念体系
我々の企業理念は、「豊かさの追求」です。この豊かさには、物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさも伴わなければならないと考えています。
我々が提供する旅にはかたちがありません。しかしながら、旅を提供するにあたり、世界中の現地の方々やホテル、レストランなど、多くの方々にご協力をいただいています。
そのため、事業運営においては、旅にご参加いただくお客さまはもちろん、ステークホルダーを含むすべてのみなさまが、身も心も豊かになるような豊かさを追求していきたいと考えています。
そしてまた、我々のパーパス(存在意義)は、「人生を深める本質的な機会の創造」です。私どもは単に旅という「商品」を販売しているのではありません。提供するのは、異文化という「リアルの体験の場」です。効率を追求し、瞬時に大量の情報を得ることができる現代だからこそ、非効率な出会いが持つ「本質的な価値」に着目し、その場で生まれる発見が、お客さまの価値観を広げ、人生の質的向上に直結する。私たちは、旅というリアルな体験が持つ計り知れない可能性を信じ、お客さまが人生を豊かに歩むための一助となる。そんな存在でありたいと考えています。
1.中期経営計画の前提 ユーラシア旅行社の理念体系~「ビジョン2029」
ユーラシアの中期経営計画「ビジョン2029」です。
この中期経営計画である2026年から2029年を経て、我々は、時代に左右されない、成長性と収益性に優れた強い企業、デジタルとリアルを融合し最上の人生体験を提供できるような企業に進化を遂げたいと考えています。
そしてその結果、年齢や性別、国籍を問わず、人生を豊かに生きるヒントを提供できる、持続可能な成長を遂げることができる企業となりたいと考えています。
1.中期経営計画の前提 ユーラシア旅行社の理念体系~ユーラシアバリュー
ユーラシア旅行社のバリューです。
我々は、お客さまの夢と感動と生きがいにつながるような商品とサービスづくりに心をつくします。
また、社会や投資家のみなさまに期待され、応えていく健全な企業経営を行います。
我々が築き上げてきた自社のバリューは、「リアルの追求」「テーマのある旅においてオンリーワンブランド」「知的好奇心を満たす価値提供」「組織と知力とサービス力」「全社員添乗員」「公平で透明な経営」「安心安全の旅」「本物の体験」「個人では困難なプロフェッショナルな交渉術」などがあります。
2.中期経営計画の全体像 経営環境の認識
続きまして、「2.中期経営計画の全体像」です。「経営環境の認識」「中期経営計画『ビジョン2029』の全体像」「財務目標」です。
はじめに、我々を取り巻く「経営環境の認識」についてです。
自社を取り巻く環境は厳しく、事業環境において旅行産業は参入障壁が低いため、競合には異業種からの参入も多いです。
外部環境もインフレ、円安など仕入れ価格の高騰に直結する要因があります。
また市場や顧客の状況も情報化社会の中、顧客が多くの情報をもち、また嗜好も多様化しており、要望も高度化しています。すなわち、旅行業界の経営環境は、非常に厳しい状況であるといえます。
続きまして、ユーラシア旅行社の旅行業界におけるポジショニングです。現在、旅行業者は約1万社ほど存在しています。
縦軸には「高額・ラグジュアリー感・秘境」と「安価・気楽さ・近場」を、横軸には「グルメやリラクゼーション、買い物、レジャー、スポーツ観戦、自由時間」と右側に「好奇心、冒険心を満たす、視野を広げる」を配置しました。また、斜め軸には、左下に「オンライントラベル(OTA)」や自由度が高いものを設定しています。
この左下のゾーンは、参加者数が多く、AIによる大量処理が可能なエリアです。一方、右上の領域は「企画提案型」、我々が主に活動している、比較的空いているゾーンとなります。
私たちはよく「専門店ですね」と言われることがあります。大手旅行会社は、国内旅行、海外旅行、修学旅行、MICE(会議、報奨・研修旅行、国際会議、展示会やイベント)、現地のアクティビティ、さらには地方創生に至るまで、多岐にわたる取り扱いを行っています。
一方で、私たちは専門店として、コンサルティング力が求められる旅を、高い専門性を持って提供しています。
それゆえ旅行産業を取り巻く環境の厳しさは、我々にとってチャンスとも考えられます。
その理由は、「情報化が加速しても充当できない価値あるリアル情報や体験の提供」「AIでは充当できない高付加価値サービスの提供」「世界170ヶ国 安心安全の旅の提供」には、価値があり求められる市場があると考えるからです。
我々の優位性の源は、「リアルを得意とし170ヶ国の企画運営力」「旅の企画・仕入手配・集客販売・添乗はもとよりオウンドメディア、イベント運営など、すべて自社で創出、完結することで自社のポリシーを徹底」「全社員が世界中の添乗経験者」「経営の透明性、公平性」です。
そして、我々の現在の経営環境下における課題・めざす姿は「コロナ後の資本市場、事業環境でより明確なポジションをとる」「強固な組織の再構築で企業成長を促す」「優位性ある自社のリアルにDX(デジタル・トランスフォーメーション)を融合し革新的成長を遂げる」です。
2.中期経営計画の全体像 中期経営計画「ビジョン2029」の全体像
「中期経営計画の『ビジョン2029』の全体像」です。
資本コストや株価をより意識した経営の実現、ROE10パーセント以上の高収益性を目指します。
そして、企業価値向上のために、「中期経営方針」と「中期成長戦略」を策定しました。
中期経営方針は「①市場、社会での明確なポジションを得る」「②事業運営 知力活力溢れる強固な組織の構築」「③デジタル関連投資で革新」です。
中期成長戦略は「①既存事業の革新と成長による拡充」「②新規事業の拡大」「③DX(デジタル)×リアル(人)での新たな価値提供」です。
主要な経営課題は「①新規顧客獲得」「②未来にむけた新規事業の開拓」「③DXの推進」です。
2.中期経営計画の全体像 財務目標
「財務目標」です。
4年間の中期経営計画期間中に、ROE10パーセント以上を達成することが最終目標です。
財務目標は、利益の計画と、配当の計画から成ります。
税引後当期純利益は、中期経営計画期間末に、2025年9月比203.5パーセントを計画しています。
また、配当計画は、DOE10パーセント以上を計画しています。
なお、中期経営期間中の採用に関しては、グループ全体で毎年10名程度の純増を計画しています。
財務目標をどのように実現するのか、アクションプランについて、次にご説明します。
3.事業成長戦略 アクションプラン 事業の全体像
次に、「3.事業成長戦略のアクションプラン」です。
「事業の全体像6つの事業」「6つの事業のベースとなる価値観」「既存事業戦略」「新規事業の戦略」「DXの戦略」についてご説明します。
まずは、「事業の全体像6つの事業」です。
ユーラシア旅行社には6つの事業がありますので、順にご案内します。
詳しくは後ほど説明しますが、まず主力事業として、添乗員が同行する「(1)ユーラシアの旅」「(2)世界のクルーズ事業」「(3)オーダーメイドの個人旅行」「(4)オーガナイザー事業」が挙げられます。そして、コロナ禍後に開始した事業として、「(5)インバウンド事業」および「(6)世界の橋渡しビジネス」があります。
当社の売上や利益の約90パーセントは、添乗員が同行する「(1)ユーラシアの旅」によるものです。また、添乗員が付かない個人旅行においても、こだわりのある旅を選ばれる方が多くいらっしゃるのも特徴だと思います。
右上のグラフで、水色になっている部分がコロナ禍の期間を示しています。この時期は行動制限があるなど、業務を縮小していましたが、現在はV字回復を続けています。
また、最も重要な戦略は、テーマのある旅や秘境の旅において、業界でトップブランドを目指すことです。同時に、そのマーケットを拡大し続けることが重要な戦略だと考えています。
私たちは顕在市場がまだ一部にとどまっていると考えており、潜在市場を開拓し、さらには市場そのものを創造していきたいと考えています。
そして、成長戦略として、「①既存事業」に関しては、革新と成長です。
具体的には、「1.優れたブランドイメージを再構築すること」「2.需要喚起 SIT(スペシャル・インタレスト・ツアー)市場の掘り起こし、デジタルインフラの構築」「3.ハイタッチなサービスの増強」「4.戦う上でのデジタル環境づくり 社員の知力、サービス力向上、全社視点の人材の育成」です。
「②新規事業」に関しては、さらなる拡大です。
具体的には、「1.インバウンド市場の拡大に伴う増大」「2.量産体制に向けた組織の構築」です。
「③DX投資」に関しては、業務改善と収益拡大です。
具体的には、「1.無形資産『人の経験値』活用で顧客体験を改革」「2.データ活用による販路改革で収益率を向上」「3.AIとデータの活用で「顧客の今」にアプローチ」です。
3.事業成長戦略 アクションプラン「6つの事業」のベースとなる価値観 1/2 創業以来サステナブルな旅づくりを先取り
ユーラシア旅行社の創業以来の価値観についてお伝えします。我々は、創業以来、「安・近・短」といわれる旅行やショッピング目的の旅と一線を画した旅を提供してきました。「自然・人間・文明」をテーマに、世界170ヶ国をじっくり巡る旅の提供が主力です。創業以来サステナブルな旅づくりを先取りしてきました。
「アンダーツーリズム」という言葉がありますが、これは著名な観光地ではなく、「魅力があるにもかかわらず訪問者が少ない土地や文化に目をむける旅」、すなわち「オーバーツーリズム」の対極に位置する考え方です。
我々は創業当初から、観光客がまだ少ない地域へのツアーを数多く造成してきました。1ヶ国で10日間から15日間滞在し、地方を巡りながらスローフードを楽しむなど、地産地消を掲げた「アグリツーリズモ」を体験する旅も提供しています。
極力、現地と直接取引を行うことで、旅行代金の一部が地上手配費として現地に直接支払われるため、地元の経済に還元されやすい仕組みを考慮しています。また、直接手配を行うことで最新情報が手に入りやすくなります。そのため、円滑な手配が可能であり、安全面も含めてお客さまに満足度の高い旅を提供することにつながっていると考えます。
3.事業成長戦略 アクションプラン「6つの事業」のベースとなる価値観 2/2 コロナ禍を経て、さらにサステナブルな旅づくり・企業活動
コロナ禍後もさらなるサステナブルな旅づくりを進めてきました。当社が企画した旅が、環境省の国立公園オフィシャルパートナーシップや文化庁の日本遺産オフィシャルパートナーシップに該当すると評価され、現在提携しています。
3.事業成長戦略 アクションプラン 6つの事業 その1「ユーラシアの旅」事業 1/2
ここからは、6つの事業のその「(1)ユーラシアの旅」について深掘りしていきます。こちらは添乗員が同行する「ユーラシアの旅」となっており、現在、170ヶ国、約360コースを設定しています。
文明を見つめたり、大自然や民族、生き物に出会ったりすることができ、1回の旅でおおよそ15日間滞在するプランもございます。また、1国を2回、3回、4回と再訪しても楽しめる旅も用意しています。さらに、未知なる大地をテーマにした旅も提供しており、V字回復の要因になっています。
ご覧いただきたいのは、右側にある日本エリアのグラフです。薄い水色で示されているコロナ禍において海外旅行事業が縮小する中、日本エリアは増加していました。
ちなみに、当社では日本を170ヶ国のうちの1ヶ国と捉えています。コロナ禍前と比較して、売上高・利益ともに約2倍から3倍に増加し、その後も横ばいで推移しています。日本エリアには、今後もまだまだ期待できると考えています。
続いて、「ユーラシアの旅」におけるターゲットについてお伝えします。「ユーラシアの旅」の顧客ターゲットは、衣食住足りて、人生において心の満足を求める円熟層です。
これは年齢を基準にセグメント化しているわけではなく、シルバー世代を特定のターゲットとしているわけでもありません。自己啓発意欲が高く、知的好奇心を持つ方々を主な対象としています。
人生経験が豊富な方々にも多数ご参加いただいています。また、まとまった休暇を取りやすいシーズンには、20代から40代の若い方々にもご参加いただいています。
旅のコンセプトは、「世界を知り尽くす つぶよりの旅」としています。
旅行業界はすでに成熟産業といえる状況です。その中で、私たちが生み出す商品が勝ち残るためには、いかにポリシーを貫くか、またその商品が市場でいかに適切に評価されるかが非常に重要だと考えています。そのため、私たちは知的好奇心を満たすこと、そして旅本来の豊かさを追求することにこだわっています。
「ユーラシアの旅」において価値を担保する仕組みを構築してきましたが、オペレーション戦略が特徴的であると考えています。一般的に旅行会社では分業制を採用していることが多く、企画、手配や仕入、お客さま対応、添乗員業務などを別々の会社に委託し、他社を介して販売するケースが多いです。しかし、ユーラシア旅行社では、旅の企画から仕入手配、集客、添乗までを一貫して自社スタッフが対応しています。これにより、旅全体を把握することが可能となり、安全の確保や品質の維持にもつなげることができると考えています。
また、店舗については永田町1店舗のみとし、本気度の高いお客さまと向き合う方針を取っています。現在では、日本中および世界中がインターネットでつながっており、ネットでのコンサルティングも行っています。当社では本気度の高いお客さまと直接向き合うことに重点を置いており、店舗展開を広げる戦略ではなく現状の仕組みを維持しています。
3.事業成長戦略 アクションプラン 6つの事業 その1「ユーラシアの旅」事業 2/2
6つの事業のその「(1)ユーラシアの旅」のツアーの特徴や他社との違いについてご説明します。
「ユーラシアの旅」では、あえて手掛けていないものがあります。それは、「安・近・短」のツアーやリゾート地です。
また、シナジーのない業者との委託販売・受託販売についても対応していません。私たちはコンサル営業を行っていますので、この点でシナジーがないと販売は難しい傾向があります。
さらに、当社は世界中に展開していますが、「ユーラシアさんはけっこう危険なところも行かれるのですか?」といったご質問をいただくこともあります。実際には外務省が定める危険渡航レベル2以上の地域は原則として扱っていません。
我々はレベル1以下を基準として活動しています。正直、レベル2以上のエリアはブルーオーシャンともいえますが、我々の能力に基づいた安全リスクマネジメントを最優先しています。そのため、レベル1以下に留めている状況です。
また、我々にはユニークなこだわりがあります。世界中を対象に活動しているため、170ヶ国の中で、個人での手配が難しい場所がまだ多数存在します。
さらに、最大公約数的なアプローチではなく、特化したテーマに絞って展開しています。最大公約数というのは、多くの方に人気のある場所を指しますが、そのようなトレンドに左右されない方針を取っています。例として、グアムやパラオといったすばらしいリゾート地ですが、当社を通じてツアーを組む場合は、そこで戦跡ツアーを実施するなど、独自の提案を行っています。
わかりやすい総額表示を心掛けており、燃油サーチャージや空港税をはじめとする税金なども、旅行代金とご提示した金額から追加費用が発生しないよう努めています。
燃油サーチャージが導入されてから25年以上経つと思いますが、私たちはその時点からすぐに対応を始めました。
現在は円安の影響もあり、旅行代金に含まれない費用が「いくらぐらいかかるのか?」などといった追加費用が不安の要素になることもあるかと思いますが、「ユーラシアの旅」ではすべて込みの価格でご提供しています。
また、パンフレットや月刊誌、オウンドメディアはすべて自社で作成しています。先ほど全社員が添乗経験者とお伝えしたとおり、私たちは現地を訪れて感じたことを自らの言葉でまとめ、月刊誌を作成しています。また、撮影してきたものをオウンドメディアで配信しています。
ただし、なによりもお客さまの旅の安心安全が最優先です。そのため、社員の教育・育成に大変力を入れています。
そして、既存サービスの革新、DXを導入することを施策として成長を考えています。
3.事業成長戦略 アクションプラン 6つの事業 その2 世界のクルーズ事業
ここまではユーラシア旅行社の「(1)ユーラシアの旅」という事業を中心にお話ししましたが、それ以外の事業について簡単にご紹介したいと思います。
まずは、「(2)世界のクルーズ事業」です。この事業における施策は、外国船籍、リバークルーズ、帆船などを再開拓することです。
クルーズは、乗ってしまえばどの船も同じように思われがちですが、当社では大量仕入れや大量販売は行わず、旬のものも選びながら提供しています。最近では、南仏で帆船に乗ってヨットレースを観戦するツアーを仕入れ、ご案内しました。
そして、リバークルーズについても、パイオニアであると言えるかと思います。また、秘境ツアーとして南極や北極なども手掛けています。
3.事業成長戦略 アクションプラン 6つの事業 その3 個人旅行事業/その4 オーガナイザーの旅事業
次に、「(3)個人旅行事業」についてご説明します。この事業では、自由にアレンジ可能なモデルプランを提供し、専任スタッフがお客さまの理想の旅づくりをサポートしています。
この事業における施策は、他社との不毛な価格競争には足を踏み入れず、付加価値で勝負です。
また、「(4)オーガナイザーの旅事業」は創業時から手掛けており、これまで培った人脈を活かして運営しています。例えば、もとミシュラン三つ星シェフがフランス郊外に別荘を所有しており、そこにお客さまをご案内することがありました。さらにその時は、田舎のマルシェで新鮮な野菜や肉や魚をお客さまと一緒に購入し、それを使って楽しく料理する特別な体験もご提供しています。
この事業における施策は、著名な先生やインフルエンサー同行のツアーなど専門性や人脈を生かした旅づくりです。
3.事業成長戦略 アクションプラン 6つの事業 その5 インバウンド事業/その6 橋渡し事業
「(5)インバウンド事業」は、着実に成長を見込めると考える分野です。市場拡大はみなさまのご推測どおりですが、当社の「インバウンド事業」は、コロナ禍でも大切にしてきた世界とのネットワークを通じて、「訪日旅行をしたい」といった声をいただいたところからスタートした経緯があります。
現在、訪日客はさまざまな国からいらっしゃいます。例えば、ラトビア、ルーマニア、ポーランド、マルタ、ウガンダ、チリ、アルゼンチン、ベネズエラ、メキシコなど、訪日旅行がまだ少ないと思われる国々からのお客さまもいらっしゃいます。当社は世界中に細かなネットワークを持っていますので、そのような方々にも多くのご案内をしています。
私たちは成長を続ける中で、国際貢献というのはおこがましいかもしれませんが、ささやかながら、国際交流や相互理解につながるような旅の事業を展開していきたいと考えています。
また、ユニバーサルツーリズム、例えば海外から車いすで日本を訪れたいというご要望もいただいており、私たちはバリアフリーのルートをプランニングし、これまでに6ヶ国ほどのご案内を実現しています。
それ以外にも、日本のさまざまなコンテンツを持つ企業や個人を支援する「(6)橋渡し事業」として、海外進出の後押しを行っています。
具体的には「ユーラシアさんは世界中、あちこち強いんでしょう?」「ちょっと中央アジアの『〇〇スタン』で仕事したいんだけど⋯」などといったお声をいただく中で、私たちは率先して一歩踏み出し、アドバイス業務やファシリテーションを通じて積極的に取り組む先陣役を担っています。
3.事業成長戦略 アクションプラン DXの戦略 DX×ユーラシア旅行社
私たちの今後の「DXの戦略」としては、デジタルの活用が不可欠だと考えています。現在もRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の開発などに取り組んでいますが、今後はデジタルをさらに活用し、適切な投資を行いながら、企業のさらなる成長を目指していきます。
また、DXの導入によりオペレーションの効率化を図り、コスト削減や付加価値の向上を進めたいと考えています。さらに、SNSやAIを活用し、新規ならびに既存のお客さまへのリーチを強化することで、売上拡大を目指します。
さらに、AIや最新のデジタル機器を活用することにより、お客さまの満足度を向上させることができると考えています。その結果としてリピート率を高め、さらなる売上向上に積極的に取り組んでいきます。
4.財務戦略 現状分析と課題認識、対応策
最後に「4.財務戦略」についてです。
2025年7月31日の中期経営計画のアウトライン公表にあたり、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についても見直しました。
7月の時点では、当社のROEは5パーセントから6パーセント程度で推移していました。一方、市場から期待される利回りは8パーセントから10パーセント程度と推定しており、両者の間にはギャップが存在していました。
また、7月時点では、当社のPBRは1倍前後で推移し、1倍を下回る期間もありました。
このような現状認識の下、当社の企業価値を向上させ、市場の期待利回りを超えるためには、ROE、PER、PBRといった指標の向上、とりわけROEを向上させることが課題であると認識しました。そこで、ROE向上についての対応策を策定し実行していきます。
4.財務戦略 改善に向けた方針
企業価値向上を目指し、資本コストや収益性、株式の流動性の改善を図るため、以下の施策に取り組みます。
株主や投資家のみなさまの期待収益率を超えるため、企業価値を向上させることが目標となります。この目標を達成するために2つの財務指標の向上を目指します。
1つ目は、ROEの向上であり、中期経営計画の確実な実行によりもたらされます。具体的には、ROE10パーセント以上という高い財務目標を掲げ経営にあたるとともに、ROE向上を早期に実現させるための配当方針を明確に定めて実行します。
もう1つの財務指標として、広義の資本コストの抑制を目指します。当社は、中期経営計画策定時点において無借金であり、当面、借入による資金調達の必要がありません。そのため、非財務的なコーポレートアクションを強化することで、広義の資本コストを抑制し、企業価値の向上を図ります。
4.財務戦略 ①ROE10%以上の高収益性を目標とした経営
中期経営計画で掲げた各種施策を徹底し、迅速に市場の求める価値提供へ対応できる体制を構築するとともに、資本政策と収益向上によりROE10パーセント以上の達成を目指します。
ROE向上を通じて企業価値を高めるために、利益の向上を図ります。
中期経営計画では、40周年記念関連商品やサービスを強化します。また、デジタルマーケティングの強化により収益増加を図ります。新規事業であるインバウンド旅行を軌道に乗せることで収益の向上につなげます。
人的資本の向上を図り、社員のスキルアップやモチベーションアップにより収益向上を目指します。
当社はブランド力の向上、ノウハウの戦略的な活用を積極的に行うことで、収益向上を強化します。
合わせて、DX投資を戦略的に行うことで、資本効率の改善も図っていきます。
加えて、株主資本の水準の適正化、とりわけ株主資本の水準を引き下げた場合には、ROEが改善します。中期経営計画では、その点も考慮し、DOEを基準とした配当政策を採用しました。
4. 財務戦略 ① ROE10%以上の高収益性を目標とした経営
中期経営計画では、ROE10パーセント以上という目標を達成するため、まずは利益成長経路を描き、当期純利益の計画を制定しています。
4年間の中期経営計画期間内に、ROE10パーセント以上を達成する計画です。
4.財務戦略 ②配当方針の明確化
配当方針の明確化についてです。
ROEの向上には、分子の利益を増やすこと、または分母の自己資本を減らすことが必要です。
今後、中期経営計画の達成により利益が成長しても、従来の配当水準では自己資本も増加し、ROE向上の妨げになる恐れがあります。
そこで、この問題を解決する1つの手段として、このたびDOE(株主資本配当率)を指標とした配当目標を設定するとともに、DOEの水準を高く設定することで、将来の利益成長率が自己資本の増加率を上回りやすくすることで、ROEがより向上する仕組みを取り入れました。さらに、短期的には、配当性向を100パーセント超とすることで、分母の自己資本が減少し、ROEの改善を早期に改善することが可能になります。
また、ROEが資本コストを超える状況では、事業への再投資を選択することが企業価値を高めると考えられるため、長期的には企業価値を判断基準に配当と再投資のバランスを調整します。
4.財務戦略 ②配当方針の明確化
DOEを指標とした配当目標の算定についてご説明します。
当社では、当期配当額を前期末連結株主資本で割った比率をDOEと定義しています。
そのため、前期末連結株主資本に、目標DOEである10パーセントを乗じることで、当期の目標配当額が計算できます。
前期末連結株主資本を基準とすることで、当期の配当金額を事前にかつ容易に予想できるという利点があります。また、業績に左右されず安定配当が可能になるという利点もあります。
4.財務戦略 ②配当方針の明確化
DOEを指標とした配当金の予想と計画についてです。
新たに設定した配当目標であるDOE10パーセント以上により計算した2026年9月期の予想配当額は、50円と計算され、2025年11月6日決算短信にて公表しました。
その後も、中期経営計画期間の2029年9月期まで、DOE10パーセント以上を配当目標とする計画です。
利益の増加を図るのみならず、この配当政策を採ることによっても、ROE10パーセント以上という目標の達成を図っています。
4.財務戦略 ③企業価値向上にむけ、継続的な成長と株価の維持のための非財務的なコーポレートアクション
IR活動については、従前より機関投資家とのone on one ミーティングを積極的に実施してきました。また、個人投資家からの問い合わせにも丁寧に回答するよう心掛けています。
株主や投資家のみなさまはじめ市場との対話にあたっては、取締役がIRを担当しています。
2025年9月期第2四半期決算からは、Webメディア「ログミーFinance」による決算説明資料の公表を開始しました。発信メディアを拡大し、市場との対話の頻度を高めています。
積極的にIR活動を行うことにより、株主や投資家のみなさまとの情報の非対称性を低減させ、また、当社株式の魅力を発信することで、株主や投資家のみなさまの信頼を得て、資本コストの低減を図ります。
加えて、配当政策を株主や投資家のみなさまに明確にお示しすること、また、中期経営計画を公表し実行することも、株主や投資家のみなさまの信頼を得て、結果として資本コストの低減に寄与すると期待しています。
私からのご説明は以上です。ご清聴いただきありがとうございました。