INDEX
金子浩幸氏(以下、金子):みなさま、こんにちは。株式会社マツオカコーポレーション取締役の金子浩幸です。本日はよろしくお願いします。
本日は資料に従い、当社グループの紹介、2026年3月期第2四半期の決算内容、新中期経営計画「BEYOND 2028〜Stitch the Future~」の内容、最後にサステナビリティ活動と直近のトピックスについてご説明します。
マツオカコーポレーションの概要
金子:まずは、マツオカコーポレーションの概要です。当社グループは広島県の上下町(現・広島県府中市上下町)で呉服店として歩みを始めました。1956年に会社を設立し、おかげさまで来年で70周年を迎えます。
縫製メーカーとして事業を拡大し、1980年代から1990年代にかけて競合他社に先駆けて海外へ進出しました。
1990年に中国、2004年にミャンマー、2007年にバングラデシュ、2015年にベトナム、2018年にはインドネシアへ進出し、現在は5ヶ国でアパレル縫製品を製造する縫製工場を展開しています。
さらに、中国とベトナムではラミネーションフィルム製造や生地加工を行う工場も展開しています。
2017年に国内の縫製メーカーとして初めて東証一部に上場し、現在はスタンダード市場に市場変更しています。
マツオカコーポレーションの概要
金子:現在、当社グループは2つのセグメントで事業を展開しています。1つは縫製事業で、国内外のアパレルメーカーの生産を受託し、縫製加工のOEMサービスを提供しています。
もう1つはラミネーションフィルム事業で、自社で開発・生産した機能性フィルムを生地に貼り合わせ、透湿防水機能に優れた加工生地を製造・販売しています。
主要な顧客はアウトドアウェアメーカーであり、お客さまの要望する機能と環境規制の遵守を兼ね備えたフィルムの開発を進めています。
両セグメントを合わせた工場数はアジア5ヶ国で全13工場、従業員数は全体で2万人を超えています。特に縫製事業においては、人の力が事業の根幹を支えており、従業員数の増加が事業規模の拡大と密接に結び付いています。
事業概要
金子:続きまして、事業概要です。縫製事業は3つの取り扱い品目に分かれています。
カジュアルウェアは売上高の54.1パーセントを占めており、みなさまもご存じの特定大手SPAとの取引が、このカテゴリに該当します。
ワーキングウェアは売上高の9.1パーセントを占めており、現在では野外作業に欠かせない酷暑対応のファン付きウェアも含まれるカテゴリです。このカテゴリは売上を伸ばしています。
インナーウェア・カットソーは売上高の19.8パーセントを占めており、バングラデシュの工場で生地を編むことから染色、縫製まで一貫して生産しています。
ラミネーションフィルム事業は売上高の14.7パーセントを占めています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):売上構成についてご説明いただきましたが、カジュアルウェアが売上の54.1パーセントを占めるとのことで、御社の取引先には大手SPA企業が含まれると記載されています。こちらについて、差し支えない範囲で教えていただきたいのですが、その中でもファーストリテイリング社向けが割合としてかなり占めていると推察されます。具体的にどの程度の割合になるのでしょうか?
また、同社とのお付き合いの期間や、最近御社が受注している中での取引カテゴリ、特にどの分野が多いのかについても教えていただけると幸いです。さらに、発注を受ける立場として難しい部分もあるかもしれませんが、今後のお取引拡大の見込みや割合がどのように変わっていくかなど、お話しできる範囲で教えていただけるとありがたいです。
金子:カジュアルウェアに占める比率ですが、シーズンによって多少変動はありますが、おおむね7割程度となっています。
坂本:かなり高いですね。
金子:また、別のカテゴリであるインナーウェア・カットソーについても、同じ企業さまから受注していますので、グループ全体ではだいたい65パーセント前後で推移していると認識しています。
お付き合いの期間ですが、2000年前後から受注を開始し、約25年になります。先方さまの成長に伴い、当社グループも共に拡大している状況です。
もちろん、一極集中についていろいろなご意見をいただくこともありますが、先方さまはすばらしいスピードで成長を遂げられている企業であるため、新中期経営計画でもしっかりとニーズに応えることで、当社グループの事業もさらに拡大したいと考えています。
坂本:品質面でかなりのこだわりがある企業なので、その部分を御社が担うことで、ノウハウが蓄積される側面もあるのでしょうか?
金子:おっしゃるとおりです。
OEMメーカーとしての強み
金子:当社グループの強みは、OEMのビジネスモデルにおいて発揮されます。アパレルメーカーのみなさまや大手SPAのお客さまが企画された衣料品の縫製加工を受託し、製造・生産を行っていますが、単なる生産の受託にとどまりません。
5ヶ国での生産背景、生地素材メーカーを含む幅広いサプライチェーン、さらに長年の海外生産で培われた技術力を基に、お客さまごとの異なるニーズに応じて、高品質、最適なコスト、納期対応、納品量を提案しています。
これにより、安定的な受注の獲得と、お客さまとの長期的な信頼関係の構築につなげています。
また、各工場がそれぞれ異なる特性を持つことから、お客さまが重視する要素に応じて柔軟な生産提案が可能であることも、当社グループの強みの一つです。
さらに、複数の国に生産地を展開しているため、政変や貿易摩擦、関税などの地政学的な問題に対しても、一定程度回避・対応できる点が評価されていると考えています。
決算ハイライト 2026年3月期2Q 連結決算業績
金子:続きまして、2026年3月期第2四半期の決算についてご説明します。売上高は348億円で、前年同期比1.2パーセント減と、わずかながら減収となりました。
営業利益は9億円、経常利益は25億円で、前年同期比30.2パーセント増となりました。親会社株主に帰属する中間純利益は12億円で、前年同期比16.4パーセント増となっています。
また、当社グループの本業の実力値を示す独自指標である為替差損益調整後営業利益は26億円で、前年同期比15.7パーセント増となりました。
縫製事業では、堅調な受注を背景に、ベトナムやバングラデシュを中心とした新工場の生産キャパシティを拡大するとともに、安定生産を維持することを両立できました。その結果、販売枚数は2,736万枚となり、前年同期比15.3パーセント増加しました。
一方、ラミネーションフィルム事業では、前期は顧客のヒット商品の影響で非常に売上が伸びましたが、その反動がありました。また、今期に入り、中国経済のさらなる低迷に伴い需要が鈍化し、一部顧客で在庫調整が行われたことから、受注が減少しました。その結果、販売ヤード数は875万ヤードとなり、前年同期比13.8パーセント減少しました。
セグメント別業績
金子:セグメント別の業績についてご説明します。縫製事業の売上高は297億100万円で、前年同期比3.4パーセント増加しました。セグメント利益は26億6,600万円で、前年同期比59.1パーセント増と大きく伸長しました。
第2四半期は夏の猛暑によって、ファン付きウェアの需要が非常に高まりました。この需要を背景に、ワーキングウェアの受注が大幅に増加しました。
縫製事業における為替差損益調整後営業利益も、前年同期比48.8パーセント増と成長しています。
ラミネーションフィルム事業の売上高は51億2,600万円で、前年同期比21.4パーセント減となりました。セグメント利益は5億400万円で、前年同期比48.4パーセント減となっています。厳しい状況が続く中でも、新商品開発や中国国内での新規顧客開拓を進めています。
2026年3月期 業績予想
金子:2026年3月期の通期業績予想についてです。売上高740億円、営業利益25億円、経常利益47億円、親会社株主に帰属する当期純利益30億円と、5月に発表した当初の予想から変更はありません。
第2四半期の売上高はわずかに減収となりましたが、これは製品の引き取り時期のずれが影響したものです。ただし、この影響は当期末までには概ね収束する見込みであり、売上高・利益ともに通期では当初予定どおりの水準に達する見通しです。
なお、為替差損益調整後営業利益の通期予想は、前期比18.1パーセント増の50億円を見込んでいます。
坂本:今期の通期売上高予想は740億円、経常利益は47億円となっています。下期偏重の認識としていますが、これは前回もお話に出たように、冬用ウェアの単価が高いことなども影響していると考えています。このような要因を踏まえ、現在上期を終えたタイミングで通期業績予想は確度が高いと私としては感じていますが、その確度について今一度お聞かせいただけますでしょうか。
金子:まず売上高についてですが、ご指摘のようにもともとやや下期偏重型で推移していました。近年はその差が縮まり、平準化する傾向が見られましたが、今期は納期のずれにより再び下期偏重型の傾向が強まっていると考えています。
ただし、しっかりと受注をいただき、生産も順調に進んでおり、納期の問題だけであるため、通期の売上高については達成できると考えています。受注がなくなるわけではありません。
為替の影響及び「為替差損益調整後営業利益」について
金子:当社グループでは昨年より為替差損益調整後営業利益を開示しています。当社グループの収支構造についてですが、利益収入の約7割が米ドルで構成され、残りの3割が日本円などのドル以外の通貨となっています。
当社グループは日本企業であり、日本のお客さまが多いことから、日本円収入なのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、収益の約7割が米ドルによるものです。
工場運営経費の支出においては、収入として得た米ドルを必要な分だけベトナムドンやバングラデシュタカなど、工場所在国の通貨に両替して支払います。そのため、当社グループの現預金残高についても、約5割が米ドルとなっています。
現行の会計基準では、日常的な営業取引の決済から発生する為替差損益も、営業外収益または費用に集計・表示される仕組みとなっています。
しかし当社グループでは、これらの日常的な営業取引から発生する為替差損益を営業利益と一体のものと捉え、その金額を営業利益に加えた「為替差損益調整後営業利益」を、本業の実力を示す指標として継続開示しています。ぜひ、こちらも参考にしてください。
なお、2026年3月期第2四半期の為替差損益調整後営業利益は、前年同期比で15.7パーセント増加しました。
現中期経営計画「ビジョン2025」の振り返り
金子:ここからは2027年3月期、来期からスタートする「新中期経営計画 BEYOND 2028〜Stitch the Future〜」についてご説明します。
まずは現中期経営計画「ビジョン2025」の振り返りです。「ビジョン2025」の発表時に掲げた売上高700億円、経常利益35億円の業績目標は、2025年3月期に前倒しで達成しました。これを受け、今期2026年3月期の計画を売上高740億円、経常利益47億円と上方修正しました。
コロナ禍の影響などからサプライチェーンが変化していく厳しい状況の中で取り組んだ「ビジョン2025」では、「欲しいときに欲しいものを欲しい量」でお客さまにお届けすることを可能にするサプライチェーンを整備してきました。
また、我々の技術に支えられた「良質なものづくり」に関しては、お客さまから一定の評価をいただいていると考えています。
現中期経営計画「ビジョン2025」の振り返り
金子:5年の期間にわたる「ビジョン2025」では、3つの工場を新設したことや、それによってASEAN諸国等での生産を拡大した成果が非常に大きいと認識しています。一方で、データ経営の高度化や組織体制強化においては、まだ整備が途上である課題が残っていると分析しています。
私たちはグローバルな事業展開を前提に、持続性のある成長を目指すべきステージを迎えていると、あらためて認識しています。
アパレル業界を取り巻く環境への認識
金子:ここであらためて、アパレル業界を取り巻く環境についてご説明します。昨今のアパレル業界では、消費者のみなさまが価値価格バランスをさらに重視する傾向が強まり、ブランドやサステナビリティへの関心も一層高まっています。
サプライチェーンにおいては、地政学リスクや人件費の上昇が進む中で、アパレル業界では品質・コスト・納期に加え、透明性や信頼性がこれまで以上に重要視されています。
一方で、世界のアパレル市場は今後も引き続き拡大が見込まれています。市場成長による需要拡大を取り込むためには、グローバル市場での競争において業界構造の変化に対応し、提供価値を磨くことが「選ばれる工場」として不可欠であると考えています。
新中期経営計画の位置づけと基本方針
金子:新中期経営計画の位置づけについてです。「選ばれる工場」であり続けるという事業の目指す姿と、社員一人ひとりが責任を持って行動し、組織全体でアカウンタビリティを果たす文化を育てるという理想を実現するため、新中期経営計画の3年間を持続的成長が可能な事業基盤を確立する期間として位置づけています。
新中期経営計画の位置づけと基本方針
金子:新中期経営計画の基本方針は、以下の4項目です。まず、「工場稼働の最大化・生産の拡大」ですが、これは拡大している工場の生産能力を最大限活用するということです。
次に、「拡大を支える基盤への重点投資」として、具体的にはシステムへの投資、製造管理の改善、顧客対応能力の向上を目的とした投資を行います。
財務面では、「『資本コストや株価を意識した経営』への転換」を推進していきます。
最後に、組織・人財への投資方針として、「グローバル・ガバナンス強化」を掲げています。
以上の4つの基本方針をもとに、新中期経営計画では3年後の2029年3月期に売上高900億円、経常利益60億円、ROE9.0パーセントを目指します。
その先には、「選ばれる工場」としてさらなる進化とROE10パーセントを目指していきます。
坂本:新中期経営計画のビジョンとして「選ばれる工場」が示されました。競合他社について、中国やASEAN諸国、南アジアの縫製工場が1つに括れそうですが、これらと比較して御社が顧客から選ばれるための具体的な差別化戦略について教えてください。
例えば、品質、コスト、納期、企画提案力、先ほどお話のあったサステナビリティなど、どの点を強化されていくのかをお話しいただけると、イメージが湧きやすくなります。よろしくお願いします。
金子:これは、どれか1つに絞るのが非常に難しいのですが、品質、コスト、納期、企画力といった総合力がお客さまから求められています。
その中で、当社グループの強みとしてさまざまなお客さまに対応できる点があります。例えば、ファッションアパレルのお客さまの場合、比較的納期のクイックレスポンスが求められる傾向があります。一方で、最近伸ばしているワーキングウェアのお客さまについては、在庫を持ち、しっかり販売される事業のため、クイックレスポンスよりも比較的低コストを重視されることが多いです。
したがって、要素はさまざまですが、それぞれのお客さまによってバランスが異なるという状況です。
当社グループは、中国をはじめとして最も西側はバングラデシュまで、5ヶ国に工場を展開しています。そのため、お客さまのニーズのバランスに応じて最適な生産ができることが、当社グループの強みだと認識しています。
もう1つの強みは、自社工場を持っている点です。競合するアジアの他社にも自社工場を持つ企業は多いですが、当社グループより展開している国が少ない場合が多いです。
あとは、日本の競合他社はどこかとよく聞かれますが、実は商社が多いです。ただし、商社は多くの場合、自社工場を保有していません。
坂本:外注していますよね。
金子:おっしゃるとおりです。したがって、自社工場とのクイックな連携に関しては、我々のほうが強みがあると考えています。
坂本:反対に、商社から御社へ注文が入ることもあるのですか? それとも自社でしか業務を行わないのですか?
金子:商社から受注することもありますが、最近はアパレルメーカーからの受注のほうが圧倒的に多いです。
経営目標 (財務・非財務)
金子:続きまして、経営目標についてです。財務目標では、売上高900億円の成長、経常利益60億円、純利益40億円、ROE9.0パーセントへの収益性向上を実現しつつ、財務健全性の面では、自己資本比率を45パーセントから55パーセントの範囲で維持します。
また、非財務目標としては、連結従業員数2万4,000人の人財雇用により事業基盤を支えます。縫製事業では7,800万枚、ラミネーションフィルム事業では1,500万ヤードまで生産量を拡大、もしくは維持します。
新中期経営計画 BEYOND2028 ~Stitch the Future~
金子:続きまして、4つの基本戦略についてご説明します。スライド右側に記載の重点施策を実行することで、持続的な企業価値の向上を目指していきます。
事業戦略の1つ目は、「生産規模を追求し、利益を最大化」を推進します。2つ目は、「選ばれる工場」を目指して提供価値を磨き続けることです。
財務戦略では「資本効率を高める経営への転換」を目指し、人財戦略では「人的資本への重点的な取り組み」を進めます。
これらの戦略を実現するための重点施策については、次ページ以降でご説明します。
坂本:前のスライドにも関連しますが、2029年3月期における連結従業員数は2万4,000人で、2026年3月期より3,300人増員する計画かと認識しています。こちらについて、どの地域に重点的に従業員を配置する予定でしょうか?
また、人材教育は御社が非常に大切にされている部分だと認識しています。中国に移転される際も、「技術者の方も一緒に」というお話をよくうかがいました。工場を稼働するためのスタッフを育成したり、運営するための人材育成を継続して行われています。
御社はASEAN諸国では5ヶ国で事業展開されていますが、人材のスキルが向上するとともに、他社との人材の取り合いが発生することもあるかと推測します。そのような状況にはどのように対応されているのでしょうか?
金子:過去に工場を進出させ、展開してきた際には、最初のフィージビリティ調査が非常に重要なポイントとなっていました。
ご指摘のように、当社グループの工場は多くの人々に支えられていますので、工場を建設した後で人が集まらないという事態は非常に致命的です。そのため、これまで他の企業が進出していない地域や、工業団地でも当社グループが第1工場目、あるいは第2工場目、第3工場目として先駆けて進出することが重要です。
また、例えば農村地帯などで人は多くいるものの、地域の経済発展がまだ進んでいないような場所をしっかりと見極めるようにしています。その上で、当社グループの工場に来ていただける環境を整えつつ、逆にその地域に対して貢献できるような場所を選択して進出しています。
新中計期間における増員は主に、生産規模を拡大するバングラデシュと新工場を建設するインドネシアが中心です。
坂本:他社より早く進出することと、多くの人を確保し働いてもらうだけでなく、定着も重要だと考えられますが、その点の取り組みについて教えてください。
金子:教育は重要な取り組みの1つです。手に職をつけていただくことが非常に重要であると考えています。おっしゃるとおり、過去の歴史ある中国の地域から指導者を派遣することも行っています。他にも、最近ではミャンマー進出から20年が経ち、優秀な技術者が多数育っています。そのような人財を各国に派遣しています。
また、福利厚生にも力を入れており、ほとんどの工場で昼食を提供しています。さらに、医務室などの施設をしっかりと整備するよう努めています。
事業戦略① 重点施策:生産地拡大による、サプライチェーンの強化・拡充
金子:基本戦略の1つ目である「生産性を追求し、利益を最大化」について、1つ目の重点政策は「生産地拡大による、サプライチェーンの強化・拡充」です。
2026年3月期におけるASEAN諸国等での生産地比率は72パーセントを見込んでおり、目標水準に到達しています。今後は生産規模の拡大が中心となります。
ASEAN諸国等を中心に生産量を拡大し、縫製事業の売上高を817億円、前年比プラス23パーセントと、過去最大の売上規模を目指しています。
具体的には、生産枚数の増加として、バングラデシュでは生産設備を拡張して1,000万枚の増産を予定しています。インドネシアでは新たに縫製工場を建設し、300万枚の増産を図る予定です。ベトナムでは、大型工場であるアンナム工場で60万枚の増産を計画しています。
中国においては、新たな生産設備を導入しつつ、従来の衣類・アパレルから寝具などの生産へ転換を進めていきます。
事業戦略① 重点施策:生産地拡大による、サプライチェーンの強化・拡充
金子:このスライドは、2026年3月期に対する2029年3月期の各セグメントおよび各国の増産目標と売上増加目標を示しています。主に、バングラデシュとインドネシアでの拡大を計画しています。
事業戦略① 重点施策:ラミネーションフィルム事業の“稼働最適化”と”開発力強化”
金子:2つ目の重点施策は、「ラミネーションフィルム事業の"稼動最適化"と"開発力強化"」です。ラミネーションフィルム事業においては、外部環境の変化が激しく、非常に柔軟な対応が求められています。現在、中国での生産が中心となっていますが、今後は生産および技術をベトナムへ移管する予定です。
また、顧客開拓の面では、現在欧米のアウトドアウェアメーカーが顧客の中心となっている一方で、今後は中国国内の有力メーカーへの販売を強化し、稼働の最適化を図りたいと考えています。さらに、人財と設備への投資を通じて、フィルムの開発力を一層強化していきます。
現在、ラミネーションフィルム事業は外部環境の影響を受け、一時的に低調な推移となっていますが、この回復に向けて営業力と開発力のさらなる強化を図っています。また、この事業は中長期的に非常に成長ポテンシャルを有していると考えており、今後の回復と拡大を見込んでいます。
事業戦略② 重点施策:工場毎の技術・品質の成長とアイテム対応力の強化
金子:続きまして、基本戦略の2つ目「『選ばれる工場』に向けて提供価値を磨く」についてご説明します。
重点戦略の1つ目は「工場毎の技術・品質の成長とアイテム対応力の強化」です。シャツ、インナーウェア、ボトムスなどの同一アイテムのオーダーを、その生産に適した工場に集中させることで、従業員の習熟度と品質を同時に向上させるための生産計画の精度を追求します。
また、工場を育成工場、中堅工場、旗艦工場に分け、それぞれの役割を明確にしています。現在も旗艦工場から育成工場へ技術者を派遣しており、技術とノウハウの底上げを図っています。これにより、グループとしての育成および生産効率を最大化する計画です。
事業戦略② 重点施策:スマートファクトリー化による製造管理の高度化
金子:2つ目の施策は、「スマートファクトリー化による製造管理の高度化」です。生産・在庫・収益の状況をタイムリーに見える化し、即時の分析と改善を可能にするため、MES(製造実行システム)とERP(総合基幹業務システム)の導入を進めます。
これにより、製造現場での課題を特定し早期改善を図るとともに、棚卸資産管理の精度とスピードの向上、収益の基盤となる生産量や生産性の可視化と精度向上を目指します。また、この情報は海外の各工場だけでなく、日本の本社にも同時に共有され、即時改善を後押しすることが可能となります。
この結果、納期の短縮、安定供給力の向上、コスト削減、品質強化を同時に実現します。
事業戦略② 重点施策:スマートファクトリー化による製造管理の高度化
金子:すでにバングラデシュのIMBD工場とベトナムのタンチュオン工場をパイロット工場とし、スマートファクトリー化のシステム導入に向けた準備を進めています。導入後は検証稼働を行いながら、新中期経営計画期間中に徐々に他の工場にも展開していく予定です。
財務戦略③ 重点施策:資本政策・キャッシュマネジメントの高度化
金子:続きまして、財務戦略についてです。PBR1倍以上の達成を目指し、資本効率と企業価値を高める経営を推進していきます。
投下資本利益率が資本コストを超えることを出発点とし、株主の期待を持続的に上回る成長と価値創造を目指していきます。ROE10パーセント以上を長期目標とし、資本効率の向上を図っていきます。
なお、新中期経営計画期間内ではROE9.0パーセント以上を定量目標として設定しました。厳格な投資判断と評価、キャッシュマネジメントの高度化を実行し、資本効率の向上につなげていきます。
また、成長戦略の発信を中心に、株主のみなさまとの対話と情報開示をこれまで以上に強化していきます。
財務戦略③ 重点施策:キャッシュ創出力強化による成長投資と株主還元の両立
金子:事業成長によって得られた資金を計画的かつ効率的に配分するため、キャピタルアロケーションの方針を設定しました。
営業キャッシュ・フローを中心とした配分可能資金を150億円から200億円と想定しており、そのうち55パーセントから65パーセントを将来のさらなる成長への再投資や事業基盤投資に配分します。これは3年間でおおむね100億円規模になる見込みです。
また、得られたキャッシュの一部を株主のみなさまへ還元します。新中期経営計画では、配当性向を35パーセントを目安とし、業績に応じて株主還元の強化を検討していきます。
また、M&Aの案件や成長を加速させるための資金、さらにパンデミックや天災などの不測の事態に備えるリスク対応資金も確保します。
財務戦略③ 重点施策:キャッシュ創出力強化による成長投資と株主還元の両立
金子:3年間の設備投資の概算についてご説明します。MES・ERPなど工場効率化のためのシステム投資に6億8,000万円、生産能力拡大のための新工場新設および生産設備拡張投資に71億5,000万円、工場の安定稼働と製品の安定供給のための工場維持投資に26億7,000万円を計画しており、合計で105億円となります。
工場の拡大投資とシステム投資は、当社グループ事業成長の基盤となる投資です。これら成長投資額の計画は78億3,000万円で、全体の投資計画の75パーセントを占めています。
坂本:投資計画について、非常に詳細に記載いただいており、投資家として大変助かります。投資額が具体的に記載されていることで、非常にイメージしやすくなっています。
その中で、一番投資額が大きいと思われる工場の拡大投資についてお聞きします。バングラデシュ、ベトナム、インドネシアを中心に生産拡大を計画されているとのことですが、各拠点での具体的な増産計画や投資配分について、ざっくりとした内容で構いませんので、おうかがいできますか?
金子:生産量の増加については、バングラデシュで1,000万枚、インドネシアで300万枚を見込んでいます。そのため、設備投資もこれらが中心となると考えています。
特にインドネシアでは新たな工場を1つ新設する予定で、約40億円の投資を計画しています。一方、バングラデシュでは既存工場の設備拡大に20億円を投じる予定です。これらが投資の中心となると見ています。
財務戦略③ 株主還元方針
金子:株主還元方針についてです。新中期経営計画の初年度である2027年3月期より、配当性向の目安を5パーセント引き上げ、35パーセントとします。
また、配当に加え、財政状態や株価の状況に応じて、機動的に還元実施を検討します。
人財戦略④ 重点施策:ASEAN諸国等での事業拡大に対応したグループ人財戦略
金子:人財戦略、人的資本への重点的な取り組みについてです。当社グループでは、「全てのグループ人財がいきいき働く」をマテリアリティとし、多様なバックグラウンドや知識、経験を持つ人財をワンチームにまとめ、ともに挑戦し、学び合う職場環境を整備してきました。
新中期経営計画では、さらなるグローバル成長を支える組織基盤の強化を図るため、「ASEAN諸国等での事業拡大に対応したグループ人財戦略」を重点施策としました。
各国の技術人財が国境や工場の垣根を越え、現場での指導や改善活動を行える「横断型」スキームの構築を目指していきます。
サステナビリティのための取り組み
金子:最後に、サステナビリティ活動についてご紹介します。当社グループは「服を着る人も作る人も幸せになる社会をつくる」をサステナビリティ指針として掲げています。
我々の事業は、創業以来、グループ全従業員2万人の生活基盤を支えると同時に、会社にとっては、従業員のみなさまによって我々の「ものづくり」が支えられてきたという背景があります。
グループ工場の安定稼働と収益確保は、働いてくださる人々の尊厳を守るために不可欠な土台であり、当社グループにとって重要なサステナビリティ活動の根幹であると考えています。
また、当社グループの工場はお客さまの要望に応じて国際監査を継続的に受けています。これは基準を上回る生産現場の信頼性を証明するものであり、「国際基準に耐えうる強い工場」である我々の品質・倫理観の土台を形成しています。
サステナビリティのための取り組み
金子:具体的な取り組みとして、これまでの職場環境の整備や福利厚生の提供に加え、太陽光パネルの設置などで再生エネルギーの活用を進めてきました。
新中期経営計画では、女性雇用の継続的な拡大や女性管理者の積極的な登用、業務の見える化と標準化を通じてマニュアル化を促進していきます。
また、CO2排出量削減の活動展開とモニタリングを強化し、製造責任を果たしていきます。
さらに、デジタルトレーサビリティの実現により、永続的な信用と透明性の確保を目指します。
お客さまや地域からの信用、そして透明性を強みとして、グローバルサプライチェーンにおける最も信頼されるパートナーを目指していきます。
地域貢献 地元スポーツへの協賛活動
金子:また、スライドに示した、本社所在地である広島県で活躍するスポーツチームに対して、協賛活動を行っています。
直近の主なトピックス
金子:最後にトピックスの紹介です。当社グループではコーポレートスローガン「できる、を創る。」を新設するとともに、コーポレートロゴを刷新しました。ブランディングムービーもご用意していますので、ぜひご覧ください。
また、建設を進めていました新社屋も完成し、新たな本社での業務を先月11月より開始しました。新しいオフィスで、役職員一同が一丸となり、新たな気持ちで新中期経営計画の達成と企業価値向上に向けて、現在も邁進しています。
私からの説明は以上です。長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。
質疑応答:原材料やコスト高騰への対応について
飯村美樹氏:「資源高や人件費高騰の影響が大きいと思いますが、実際のところはいかがでしょうか?」というご質問です。
金子:正直、影響はあります。ただし、内訳があります。例えば原材料です。縫製品ですので、多くの場合、生地などになるのですが、当社グループはOEM事業を展開しており、お客さまからご指定いただいた素材を代理購買した上で、縫製加工という付加価値を加えて納品するという事業を行っています。
したがって、原材料については、価格が高騰しても、納品価格に多くの場合反映することが可能です。
ただし、燃料費や輸送費、人件費などの高騰は、当社グループの工場運営経費に直接影響を及ぼします。そのため、これらのコストは当社グループ内部で対応しなければなりません。
これまでにも、さまざまな自動機器を導入するなどの対策を行ってきました。以前「ハンガーライン」というシステムを動画でご紹介したこともありました。今回の新中期経営計画におけるMESの導入を進める施策は、こうしたコスト上昇への対応の一環でもあります。
今後もこれを継続していきたいと考えています。
質疑応答:ROE向上に向けた取り組みについて
坂本:スライド18ページで説明があったROEについてですが、ここは個人投資家が注目する部分ですし、東証でも上げることを推奨しています。御社は現在でも高い水準で、さらに2028年には9パーセント、その後10パーセントを目指すという目標を掲げています。この目標に向けて、ROEを向上させる方法はいくつか考えられます。
資本の回転を良くする方法もあれば、売上や利益を伸ばす方法もありますが、御社では具体的にどのような方法を取られるのでしょうか? 自社株買いや自己資本比率を調整する施策、または利益の拡大でしょうか。そのあたりの取り組みについて、もう少し詳しく教えてください。
金子:基本的な方法は、多くの企業で共通するものがあると考えます。当社グループにおいては、売上と利益をしっかり確保していくことが最も重要です。
現在の中期経営計画の中で大型投資を行いましたので、これに伴い工場の稼働率を高め、利益率の向上を図っていきます。これが最も優先される取り組みだと考えています。
一方で、総資産額の縮小を図る試みとして、おっしゃっていた自社株買いについては、状況を見ながら機動的に判断していきたいと考えています。
特に当社グループは5ヶ国で事業を展開しており、これがビジネス上の大きなメリットとなっています。一方で、新興国の場合、外貨の取り扱いの規制が厳しく、バランスシート上は非常にキャッシュリッチに見えても、日本円に還元するには少し時間がかかることがあります。そのため、場合によっては、還元が少し時間差を置くかたちになる可能性もあります。
とはいえ、ここ数年間、売上と利益の拡大を続けていますし、これからもさらに成長させていく所存です。したがって、機会を見て、そのような施策についても検討していきたいと考えています。
質疑応答:新規顧客のターゲットとアプローチ方法について
坂本:「新規顧客のターゲットや新規顧客へのアプローチ方法を教えてください」というご質問です。御社は、もちろんラミネーションフィルム事業についても営業活動があるかもしれませんが、縫製事業において、発注元とどのようなコミュニケーションを取っているのか、教えてください。
金子:多くの場合、我々のアパレル業界のネットワークの中でご紹介いただくことが多いです。加えて、現在半年に1回、展示会を実施しています。
坂本:これは、どちらで行っているのですか?
金子:日本国内です。実は今週開催していました。これは、いわゆるアパレルメーカーの展示会のような新商品を紹介するものではなく、工場の紹介や、どういったものが作れるかとか、どういったものの生産が得意かといった技術を、みなさまに知っていただく機会を提供しています。
このような活動を半年に1回、継続的に行うことで、受注につながる可能性を高めています。取引先ごとのお付き合いになりますので、「小売店さんに行って、これを買ってください」といった方法ではなく、発注者の方々とコミュニケーションを図ることで、新たな顧客を獲得している状況です。
質疑応答:生産工場の自動化と効率化の取り組みについて
坂本:工場の新設や効率化についてのお話をうかがいました。全自動化はまだまだ難しいかもしれませんが、かなり人を減らしながら効率化が進んでいると考えています。この点に関して、次の工場を作る時の目玉のようなものがあれば教えてください。これまでの積み重ねや発展についてでも構いませんので、よろしくお願いします。
金子:おっしゃるとおり、1つの洋服を全自動で作るというのはなかなか難しい状況です。
ただし、部分的な自動化は着実に進んでいます。自動機器としては、例えばシャツのカフや襟だけ自動で縫えるものを、すでにかなり前から導入しています。
また、ハンガーラインについても導入済みです。これは縫製ラインにハンガーが通るレールがあって、いちいち席を離れることなく「ものづくり」が可能となる仕組みです。
今後に向けては、先ほど申し上げたMESを導入していきます。このシステムは縫製ラインのハンガーラインだけでなく、その前後工程にもセンシング機能を持たせ、効率的な生産を実現するという取り組みです。これまでもこうした取り組みを進めてきましたが、次の新中期経営計画では、このMESを中心に、さらに自動化を推進していく予定です。
金子氏からのご挨拶
金子:あらためまして、本日はご視聴ありがとうございました。当社グループはBtoBの企業であるため、視聴者のみなさまや消費者のみなさまに直接お目にかかる機会は非常に少ないですが、当社グループのお客さまを通じて、みなさまに良質な洋服をお届けし続けることを、さらに拡大・進化させていきたいと考えています。今後ともご支援をよろしくお願い申し上げます。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:国内マーケットの縮小は避けられないと思いますが、事業への影響はありますでしょうか。
回答:当社グループは縫製工場でOEM生産を行う企業グループであり、国内の縫製業に関しては、ほぼ縮小と寡占化が進んでいる認識です。ご質問の「国内マーケット」がアパレル消費市場であれば、その縮小については同意しますが、当社顧客である大手SPA企業さまは海外事業拡大を目指しているので、まずは、その商品調達ニーズにお応えすることが重要だと考えています。
<質問2>
質問:今後3年間で実施する工場の拡大投資71.5億円は、ファーストリテイリングなど主要顧客のフォーキャストをいただいての投資判断でしょうか?
回答:主要なお客さまから、例えば契約書のような明確なフォーキャストはいただいていません。しかしながら、商談などの営業活動から、将来の商品調達ニーズを確認し、その確度を高めた後に投資判断を行っています。
<質問3>
質問:中国などの地政学リスクは想定していますか。
回答:地政学リスクが実際に顕在化する可能性については、完全否定はできないと考えます。一方で、当社グループは5ヶ国に工場を展開しており、現中期経営計画内で発生した政変や天災等にも、生産地振り替えなどによって概ね問題なく対応できていることから、新中期経営計画においては過度な業績下振れのリスクを織り込んでいません。