本日の内容
柴山法彦氏(以下、柴山):みなさま、こんにちは。コスモ・バイオ株式会社代表取締役社長の柴山です。本日は週末にもかかわらず、私どもの説明をご視聴いただき、誠にありがとうございます。
それでは、さっそく会社の説明に入りたいと思います。本日お話しする内容はスライドに示したとおり、大きく4つの部分に分けてお話しします。
まず、会社の主力事業である商社事業について、次に製造・研究開発について、3つ目に業績・配当について、最後に企業価値向上への取り組みについてです。これら4つについてご説明します。
はじめに・・・コスモ・バイオとは
柴山:それではまず、コスモ・バイオという会社についてご説明します。当社では、目的・理念として大きく「生命科学の進歩に資する」を掲げ、事業を行っています。ライフサイエンス、いわゆる生命科学の研究に使用される試薬や機器、サービスを提供する事業を展開しています。
そのため、当社の人材は、みな「ライフサイエンスに、研究を『支える立場として』かかわりたい」という理念に共感し、賛同して集まってくれる方々です。コスモ・バイオは、そのような人たちが働いている会社です。
会社概要
柴山:会社の概要です。所在地は東京都江東区にあり、主力事業として、大学や公的研究機関、製薬企業などの研究者の方々に対し、研究に必要な試薬や機器、関連サービスを提供しています。
設立は1983年8月で、事業開始から42年が経過しています。会社の規模は、従業員数が連結で177名、個別では142名と、それほど大きな企業ではないと思われます。
グループ企業としては、ビーエム機器株式会社があります。この会社は、機器の消耗品や機械などを主に取り扱っています。また、COSMO BIO USA, INC.はアメリカのサンディエゴを拠点とし、アメリカ国内や輸出に関する事業を行っています。
さらに、株式会社プロテインテック・ジャパンは、当社の最も有力な仕入れ先の1つと共同で設立した合弁会社です。この会社は主にマーケティング活動を中心として活動しています。以上の企業が、当社のグループ企業に含まれます。
あゆみ(パート1:商社)
柴山:こちらが沿革となります。1983年に設立したとお伝えましたが、設立当初は現在のコスモ石油、当時の丸善石油の子会社として事業を開始しました。その後、2000年に石油会社から独立し、2005年にJASDAQへ上場するという流れで事業を展開してきました。後半部分については、後ほどあらためてご説明します。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):先ほどの沿革について、丸善石油の子会社として設立されたとのお話がありましたが、当初から現在のようなバイオの専門商社として事業を行っていたのでしょうか? 設立のきっかけを含めて教えていただけますか?
柴山:設立のきっかけは、当時の丸善石油、現在のコスモ石油のアメリカ支社で秘書を務めていた方の旦那さんが試薬の事業を行っており、そこから「日本国内で売ってみないか?」というような話があり、それが最初のきっかけとなったと聞いています。
当時、日本の研究者が海外の試薬を使うことはあまりなかったようですが、その話を日本に持ち帰り、研究者の方々にいろいろな話をしたところ、「それはおもしろいね」となり、そうした先端的なアメリカの製品を日本に導入することがビジネスになるということで、事業のスタートに至ったと聞いています。ですので、最初から研究用試薬の販売を手がける事業として始まりました。
コスモ・バイオの役割
柴山:コスモ・バイオの役割について、スライドに示しています。バイオ事業というと、スライドの絵にあるような研究者のイメージを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。例えば大学や病院、製薬企業などで研究をされている方々がいることは、みなさまもよくご存じかと思います。
ただし、私たち自身は研究者ではなく、研究者の方々が使用する道具、スライドに示されているようなものを網羅的に揃えて販売する事業を行っています。
具体的に扱っている製品は、スライド右側の写真にあるような、小さいバイアルに入った試薬やプラスチック製の消耗品、大型の機械などであり、研究で使用される道具全般を揃えることが私たちの事業です。
坂本:こちらについて、研究試薬というお話をされていて、研究に使われるものだということは私も理解しています。ただ、具体的にどのように使うのか、このスライドの絵に表示されている内容も含めて、用途について教えてください。例えば、新薬の開発や化粧品、食品の開発などに使われると想像できますが、一例を挙げてわかりやすく説明していただけるとありがたいです。
柴山:新薬を開発する研究を例に挙げると、人体に対していきなり薬を投与することはできません。まずは細胞などに対してどういう作用があるかについて、実験して調べる必要があります。
そのために細胞を用意し、細胞を培養するための環境を準備する必要があります。また、細胞に薬を入れた際に、それがどのような作用を及ぼすかを可視化する必要があります。このように、試薬はさまざまな場面で使用されており、製品になるまでの過程では不可欠なものです。
医薬品として市場に出るまで、開発には10年から20年という長い期間がかかります。その間に行われるさまざまな実験は、すべて試薬がなければ進めることができません。
このように、試薬は培養や可視化といった過程を含む、あらゆる場面で必要とされるものだと考えています。
事業の特徴1 圧倒的な品揃え~コスモ・バイオの“頼りがい”の基礎~
柴山:私たちのビジネスの特徴についてですが、まず圧倒的な品揃えが挙げられます。スライドには「“頼りがい”の基礎」と記載しています。
当社は世界中から1,000万品目を超える製品を、500以上のサプライヤーから調達し、販売しています。これにより研究者の方々は、コスモ・バイオで調べることで、自分たちが必要とする試薬、消耗品、機械などを「コスモ・バイオで調べれば、なんでも揃う」と感じていただけると思います。
仕入れ先は私たちに対して「日本で販売したいなら、コスモ・バイオを頼ればいい」と頼りにしていただけることが、幅広い製品の取り揃えにつながっています。
一方で、私たちは主に基礎研究の分野を中心にサポートを行っています。基礎研究とは非常に裾野の広い領域であり、多くの研究者がそれぞれの分野で多様な研究を行っています。同じような研究をすることはなく、各研究者が自分の興味に沿った異なる内容を研究するため、当然それぞれ異なる製品を必要とします。
そのため、研究者や仕入れ先の方々の要望に応えるために製品を拡充した結果、1,000万品目を超える品揃えとなりました。このようにして、研究者や仕入れ先から信頼される基礎を築いたのが、まずは品揃えの部分です。
事業の特徴2 商品情報の管理・発信
柴山:品揃えがあっても、最終的にユーザーのもとに届かず、情報自体が発信されなければ、研究者の方々に知っていただくことはできません。そのため、情報を適切に処理し、発信することを非常に重要な取り組みとして力を入れています。
検索サイトのような仕組みを整備し、1,000万品目の中から自身の求めるものを適切に選択できるようにしています。また、試薬については法令を遵守することが多々求められるため、関連法令の情報を可能な限り漏れがないように充実させています。
さらに、学会や展示会で新製品の情報を発信し、研究者の方々に興味を持っていただく取り組みや、カタログやニュースレターを発行し、研究者の方々に情報をお届けすることも非常に大事な取り組みとして力を入れています。
事業の特徴2 たくさんの商品から、どうやって選ぶの?
柴山:たくさんの商品からどのように選ぶのか、つまり、その中での出会いの場を提供することが、私たちのビジネスの真髄、本質だと思います。先ほど述べたように、500社、1,000万品目というシーズがあります。そして、大学や研究に携わる方々には非常に多種多様なニーズがあります。
そうしたニーズに対して、私たちは商品力、物流力、情報力を駆使し、それをうまくマッチングさせ、物流を通じて物が流れる環境を作り出すことこそが、私たちのメインのビジネスです。
事業の特徴3 商品仕入れ・商品管理のノウハウ
柴山:試薬はその性質上、商品管理が非常に重要です。特に、当社が扱うライフサイエンス用の研究用試薬には、化学物質だけでなく、生体の内部から取り出した成分なども含まれます。
これらは、例えば温度管理が不十分だと傷みやすいといった性質を持っています。そのため、温度管理が重要であることはもちろん、法令で定められた取り扱いを遵守する必要があります。これを確実に行うには、高度なノウハウが求められます。
ライフサイエンス専門商社としての当社の役割(まとめ1)
柴山:こちらは、私たちのライフサイエンス専門商社としての役割をまとめたスライドです。
商品力としては、世界中のサプライヤーから多くの製品を取り揃え、圧倒的な品揃えを提供しています。
また、情報力として、専門的な情報を専門的な人たちが整理し発信する体制を整えています。
さらに、物流においては煩雑な手続きや対応ノウハウが必要となる製品を滞りなく流通させる役割を果たしています。これら3つの役割が、当社のメインとなるビジネスの基盤です。
メーカー機能を備えた商社へ
柴山:続いて、製造および研究開発についてご説明します。当社は2006年からメーカー機能を有しており、市場にない付加価値の高い試薬やサービスを自社で製造しています。自社製品の製造は為替の影響を受けにくいという特徴があり、安定した利益確保につながっています。
商社の場合、どうしても商権が伴います。商権を失うと販売がなくなってしまいますが、自社で製造を行うことで商権の影響を受けにくくなります。このように、為替と商権の2つの側面から安定性を高められるという利点があります。また、最近の取り組みとして、事業領域の拡大によりさらなる成長を目指すことを大きな目的としています。
あゆみ(パート2:製造・研究開発)
柴山:こちらは先ほどの沿革に続く部分ですが、当社は2005年に上場しました。その際に得た資金を活用し、2006年に株式会社プライマリーセルを子会社化して製造・研究開発に着手しました。その後、2016年にはペプチドの受託製造や鶏卵バイオリアクターといった事業を取り入れ、2017年に現在の札幌事業所を開設しました。
あゆみ(パート2:製造・研究開発)
柴山:当社の製造・開発事業は、大きく3つに分かれています。それぞれについては後ほど詳しく説明しますが、まず1つ目は、2006年にプライマリーセルを子会社化し、製造・研究開発機能を持ち始めました。この機能では、試薬の製造を行っています。
2つ目は、その10年後の2016年に開始したペプチド抗体受託製造です。これは試薬の製造と原料の供給という二つの役割を持ち、作った製品を利用する場面や目的が若干異なります。
そして3つ目は、同じく2016年に開始した鶏卵バイオリアクター事業です。これは試薬の範疇を超え、どちらかというと原料供給を目的に開始しており、ようやく事業化に向けて動き始めた状況です。
坂本:先ほどご説明いただいた原料供給について、これまで御社が行ってきた試薬供給との違いについておうかがいしたいです。製品の形態や市場規模、利益率といった観点から、原料供給と試薬供給の違いをわかりやすく教えていただけるとありがたいです。
また、原料供給ビジネスに参入された戦略的意義についても、併せて教えていただけると理解が深まりますので、ぜひお願いします。
柴山:まず、試薬と原料の違いですが、試薬の場合は研究者がお客さまであり、原料供給の場合はメーカーがお客さまになります。
試薬は多様なニーズに対応するかたちで、少量・多品種の販売となっています。それを自分たちで製造するという方法もありますが、製品の幅広い取り揃えが必要になります。一方、原料の場合はお客さまがメーカーであり、原材料として供給するかたちになります。そのため、製造という面では品目を絞り込むことができます。
また、原料としての供給には安定性が求められます。安定的な供給が可能であれば、それは収益の安定化につながり、為替の影響を受けにくい事業として展開することが可能です。さらに、原料を適切に供給することで利益率も向上し、戦略的にも重要な位置づけを持つ事業となります。
坂本:この原料供給と試薬供給の両方を展開することで生まれるシナジーについて、もう少しおうかがいしたいです。例えば、お客さまが一部重なっている部分があるのか、あるいはお客さまのニーズを汲み取り、試薬を製造しつつ原料を供給することが可能なのか、といった点について教えていただけますでしょうか?
柴山:いろいろなパターンがありますが、まず医薬品などの最終的な製品に至る過程で研究を行い、そこからスタートして容量を増やし、原料として必要とされるケースがあります。
私たちは研究者の方々と非常に密接な関係を築いており、研究者からのさまざまな成果が見える立場にあります。そのため、「この製品を原料として供給したらおもしろい」といった情報も比較的入手しやすい状況にあります。
このように、私たちは両者の成長性や当社の実力で対応可能な範囲を見極めながら選定を行うことができるため、原料供給において有利な立場にいる点が大きな特徴であると思います。
坂本:密接な関係があることで多くの製品が開発されそうな気がしますが、例えば、ある程度一定の原料の処理をして研究を行う際に、「処理部分まで御社でお願いします」のような対応もあるのでしょうか? それとも「原料だけ供給してください」のようなかたちなのでしょうか?
柴山:両方あります。原料だけ供給できるものについては、例えば抗体のように、最初から製品として容量を多くすれば済むものは当然そのまま流通させます。しかし、一定の加工が必要な場合に私たちが受託することは、今のところあまり実績はありません。ただし、そうした加工については、札幌の事業所を活用しながら進めていくという方向性も、今後考えられると思います。
何を製造しているのか①:初代培養細胞ほか、研究用試薬
柴山:製造で行っている内容ですが、先ほどお伝えしたように、大きく3つあります。1つ目は培養細胞です。初代培養細胞やその他の研究用試薬を製造しています。この事業は、もともとプライマリーセルという会社を子会社化したことから始まりました。「プライマリーセル」という社名が示すように、初代培養細胞を生体から取り出して販売することが最初の事業でした。この事業は現在も進めています。
細胞については、生きた状態で研究者の方々に届ける必要があります。もちろん種類にもよりますが、新鮮な状態で届けることが求められます。他のさまざまな試薬は海外から輸入して販売することが可能ですが、細胞に関しては、新鮮なまま海外から輸送して販売するのが難しい場合が多くあります。そのため、私たちはこれらの細胞を自社で製造し、日本国内に供給することに注目し、この事業をスタートしました。
研究用試薬の製造にも取り組んでいます。研究者の方々が「こんな製品が欲しい」や「これはおもしろい」といった情報を受け取った際、それを研究用試薬として利用できるように製造を行っています。あるいは、それを活用したサービスにも対応しています。
何を製造しているのか②:ペプチド受託製造
柴山:2番目の事業はペプチド受託製造です。ペプチドと聞いてもすぐにはわからない人も多いかもしれませんが、タンパク質についてはみなさまご存じかと思います。タンパク質はアミノ酸から構成されていることはご存じの方も多いかと思います。
自然界には約20種類のアミノ酸があり、それらが特定の順番で並ぶことでタンパク質を構成しています。タンパク質は、数百ものレベルで大きくアミノ酸が配列した分子ですが、ペプチドはその配列が少ないものを指します。したがって、ペプチドは化学合成、つまり人工的に合成することが可能です。
それをお客さまである研究者の方々から「20種類あるアミノ酸をこういう順番で並べてほしい」というようなオーダーを受け、そのオーダーに沿って製造するものを「カスタム合成」と呼んでいます。当社では、カスタムによるペプチドの受託製造を行っています。
研究者の方々が取り組んでいる「研究したい対象のタンパク質のある特定の部位についてのペプチドを作ってほしい」というオーダーもあります。
また、この後ご説明する予定のネオアンチゲンと呼ばれる、がん患者のそれぞれの特性に応じた異なる部分をペプチドとして合成し、それを免疫細胞に覚えさせることで、患者の体内に戻した際にその細胞ががん細胞を攻撃するというがん免疫療法に用いられている治療法にも関連しています。このような治療法においてもカスタムペプチドの重要性が増しており、当社では最近特にこの分野に力を入れています。
坂本:こちらについてですが、このペプチドのカスタム合成および抗体作製受託では年間1万5,000本以上の製造キャパシティを有しているとのことです。業界としてはどの程度の規模感に相当するのか教えていただけますでしょうか? また、今後の成長戦略があれば教えてください。
柴山:キャパシティそのものについて具体的な情報はないため断言はできませんが、私どもでは国内最大規模であると考えています。この分野では多くのキャパシティを持っています。
今後の成長性としては、先ほどお話ししたネオアンチゲンや、特殊なアミノ酸を組み込んだペプチドなど、特徴的なペプチドの供給を進めており、この分野でさらなる成長が見込めると考えています。
ペプチド受託製造 (最近のトピックス)
柴山:ペプチドの受託製造に関する最近のトピックスとして、札幌事業所における製造機能強化の取り組みとして、生産設備の増強やペプチド製造プロセスのDX化を実施しました。ChromaJean社のペプチド生成プラットフォームを導入し、それによる生産効率の向上を実現しています。
通常ペプチドは、カスタムで製造されるためにそれぞれ性質が異なり、化学合成の段階では純粋な状態ではありません。製造直後の状態から、できるだけ単一に近づける精製の過程があり、その精製条件を個々のペプチドに合わせて設定する必要があります。この作業は職人技と言われるほど難しいものです。
そこに精製条件を決定するプロセスをAIを活用してサポートしているのが、ChromaJean社のプラットフォームです。これを導入したことで、生成条件を決定するスピードが向上しただけでなく、人に依存せず誰でも対応可能な状態となり、作業時間が短縮されました。その結果、熟練者が難しい製品に専念できる環境を整えることができ、当社にとって大きな成果につながりました。
何を製造しているのか③:遺伝子組み換えタンパク質
柴山:3つ目として、鶏卵バイオリアクターによるタンパク質製造についてです。鶏卵バイオリアクターは、ゲノム編集という技術を活用し、ニワトリの卵をバイオリアクター(=生きた工場)として機能させるものです。
ニワトリを「生きた工場」と表現するのは適切ではないかもしれませんが、私たちが必要とするタンパク質を、その卵の白身部分に安価かつ大量に生産する革新的な技術です。この技術は産業技術総合研究所と共同で開発しました。その技術を用いて製造を行っています。
卵はスライドの図にあるように、卵黄と卵白の部分があります。卵白には非常に多くのオボアルブミンが含まれています。このオボアルブミンの遺伝子を、ゲノム編集技術を用いて自分たちが求めるタンパク質に置き換えることで、オボアルブミンの代わりに必要なタンパク質を生成する技術です。
この技術によって、安価に大量生産が可能となります。この大量生産の特性を活かし、原料供給のかたちで進めていく取り組みです。
坂本:鶏卵バイオリアクターという技術で、どのようなものを作っているのか、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか?
また、この技術を使用して作るタンパク質の中に、少量で甘みを感じる「ブラゼイン」というものがあると聞いていますが、これは将来的にどのような規模感で展開される予定でしょうか。「ブラゼイン」は少量で甘みを感じる特性があるため、かなり需要が見込まれるのではと考えます。この点について、収益見込みなどがあれば教えてください。
柴山:その点については、次ページ以降をご覧いただくとわかりやすいと思います。
何を製造しているのか③:遺伝子組み換えタンパク質
柴山:当社は、ユーザーであるメーカーに対して、先ほどの技術を用いたタンパク質を原料として供給します。具体的には、製薬メーカー、化粧品メーカー、食品メーカーへの供給を想定しており、それぞれ最終的には消費者のもとに流れるビジネスモデルを考えています。これらの市場は非常に大きいと考えています。
鶏卵バイオリアクターによるタンパク質製造(最近のトピックス)
柴山:お話に出た「ブラゼイン」は、甘みを感じるタンパク質です。タンパク質でできた甘味料であり、通常の砂糖とは異なる仕組みで甘みを感じる成分です。
特に最近の健康志向において、砂糖を使わずに甘みを得られる点が重要なポイントとなっています。また、化学合成品ではなくタンパク質であるため、安全性の面でも非常に良いと考えられます。
このように、「ブラゼイン」は健康志向の糖代替物質として、非常に注目されています。
狙っている市場としては、砂糖全体を置き換えることは考えていません。砂糖市場は非常に大きいですが、そこではなく、甘味料、特に機能性タンパク質を利用した数千億円規模ともいわれる甘味料市場の一部でも切り替えることができれば、当社にとって非常に大きな収益の柱になると考えています。
そのような分野に進出していくことを企図しつつ、これからの展開を進めていきたいと考えています。
連結業績ハイライト(2025年12月期第3四半期)
柴山:業績についてご説明します。当社の決算期は12月で、第3四半期は9月に終了しています。その時点での業績ですが、売上高は前年同期比6.4パーセント増の78億8,500万円、営業利益は25.4パーセント減の2億7,500万円となっています。
売上高については比較的堅調に推移していますが、当社は輸入販売をメインとするビジネスのため、為替レートの影響を大きく受けています。
また、今年は投資に取り組んでおり、人材採用やDXの推進に会社全体で力を入れています。これらの取り組みによる経費が増加したことが、利益減少の主な要因となっています。
四半期別動向(売上高、営業利益)>
柴山:四半期別の動向です。当社の特徴として、第1四半期でその年の大部分の利益を稼ぎ、2、3、4四半期では利益が少なくなるという傾向があります。
通期業績見通し
柴山:通期の業績見通しです。売上高は6.6パーセント増を見込んでおり、スライドに記載のとおりです。下期の為替予想は152円/USドルとしています。
株主還元について
柴山:株主還元については、2024年夏に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針」を決議し、ROEを8パーセント以上に引き上げ、株主資本コストの低減を実現させることで、できるだけ早い時期にPBR1倍以上の株価水準を目指すという方針を掲げています。
その方針に基づいて、自己株式の取得や配当方針の見直しなどを行っています。配当方針については、従来は配当性向30パーセントから40パーセントでしたが、新たに株主資本配当率(DOE)を導入し、それが3.5パーセント、または配当性向60パーセントのいずれか高いほうを配当する方針としています。昨年は自己株式の取得も行いました。
株主還元について
柴山:株主還元については、今期も昨年と同様に、1株当たり年間合計50円を予定しています。
企業価値・株主価値向上の取り組み ‐エグゼクティブサマリ‐
柴山:企業価値向上への取り組みとして、「資本コストや株価を意識した経営方針」を公表しており、そのまとめとSDGsへの取り組みについて簡単にご説明します。
ROE8パーセント以上を達成し、CoE(株主資本コスト)の低減を実現することで、早期にPBR1倍を達成し、それを上回っていくことを目指しています。
ステップを4つ、0から3までに分けて考えています。まず第1段階として、ステークホルダーとのエンゲージメントの強化があります。
私たちは、なぜ株価が上がらないのかという課題に取り組んでいます。例えば、「ブラゼイン」のような取り組みが十分に株主の方々に伝わっていない点が課題と考えています。この状況を「情報の非対称性」と捉えており、それを解消し、きちんと伝えることが重要であると考えています。これがステップ0に該当します。
そのようなIR活動をきちんと進めること、そしてステップ1として、まずは株主還元に取り組むことが重要です。具体的には、バランスシートの最適化により、配当を当面の間安定的に、これまでより多く出す方針です。
加えて、先ほど触れたDXの取り組みを通じたIT活用によるグローバル化、新規ビジネスの創出による収益拡大を目指し、成長を実現するプロセスを進めています。現在、その方針に基づき取り組みを進めている最中です。
企業価値・株式価値向上に向けて
柴山:こちらのスライドには、先ほどのご説明をわかりやすく段階的に記載しています。
SDGsへの貢献:試薬の役割
柴山:最後に、SDGsへの貢献という点についてお話しします。私たちのビジネスそのものがSDGsに貢献しているという内容です。さまざまな試薬は、先ほどご説明したように非常に広い分野で使用されています。そのこと自体が、SDGsに役立っています。
SDGsへの貢献:試薬の役割
柴山:どのような場所で使われているかというと、例えば化粧品の開発、水道の水質維持、さらには医療などがあります。
さまざまな素材の開発をはじめ、試薬はあらゆる分野で使用されており、こうした点から私たちは社会に貢献していると考えています。
SDGsへの貢献:取り組み例
柴山:それ以外に、会社独自の取り組みとして「公開講座応援団」や「iGEM」といったものへの支援を行いながら、科学やライフサイエンスへの興味を世の中に高める取り組みも同時に進めています。
質疑応答:鶏卵バイオリアクター技術の優位性について
坂本:鶏卵バイオリアクター技術についてもう少しうかがいたいと思います。こちらは安価で大量生産が可能な技術であると記載されていますが、従来の製造方法、例えば微生物や動物免疫を使用する方法と比較して、鶏卵を使用することによってどのように安く大量生産が可能になるのかをうかがいたいです。設備投資や製造コスト、生産効率を含めた優位性について教えていただけると、理解が深まると思います。
柴山:他の製造方法や製品もさまざまあるため、一概に比較することはできません。例えば、抗体医薬品という言葉をご存じかと思います。
抗体医薬品は、実際には組み換えタンパク質として製造されます。それを単純に培養液1リットルあたりにどれだけ含まれるか調べると、およそ10グラムのタンパク質を製造できます。従来の方法では、そのような量になります。
また、その培養液は当然ながら用意する必要があります。最近では比較的安価になったかもしれませんが、動物細胞を使って培養する場合、1リットルの培養液が、それなりに高価です。例えば、当社が研究試薬として販売しているものでは、およそ1万円から2万円ほどの価格です。その価格で作られたものなので、単純に1リットルを用意しただけでも1万円から2万円の価値があります。
一方で、卵で生成されたものは、通常の卵と同じ方法で作られます。つまり、鶏卵です。ニワトリを飼育し、市販されている卵、例えば10個で高くても約350円という価格になるわけです。1リットル分の卵はおおよそ30個に相当するため、1,000円程度で1リットルを得ることができます。その中にはおよそ16グラムのタンパク質が含まれているという特徴があります。
さらに、細菌など他の細胞で生成された場合、多くのタンパク質が混ざってしまうことがありますが、卵の中に含まれるタンパク質はせいぜい数十種類程度です。そのため、目的のタンパク質を分離することが比較的容易に行えます。
また、大量生産を行う際には、通常であれば培養設備を整備する必要があります。特に他の物質や細菌が入り込まないように非常に厳重な設備が必要です。しかし、卵の場合、中に菌が入らないため、そのような厳密な対策が必要ありません。
卵は安全です。私も今朝食べてきましたが、卵は安全であり、その中のタンパク質が1つだけ異なることにすぎません。例えば、「ブラゼイン」の場合、卵白の中に「ブラゼイン」という食べられる甘味料が含まれているだけで、そのもの自体が安全です。このような特徴から、非常に安価で大量生産が可能です。
ニワトリは数を増やすことが容易であるため、ニーズに応じて規模を拡大し、適切なサイズで製造が可能です。この点が技術的に非常におもしろいと考えています。
また、そのタンパク質の性質を変えることで、さまざまな製品を作り出すことが可能になります。これにより、さまざまな分野へ展開できると考えており、とても期待している部分です。
質疑応答:自社技術の競合と技術的優位性について
坂本:この技術には国内外に競合他社が存在するのでしょうか? また御社としての技術的な優位性があれば簡単に教えてください。
柴山:この技術は、産業技術総合研究所が保有する特許技術となっています。同じ方法を用いた事業を行っている会社は海外には存在しません。類似する手法としてウイルスによるものがありますが、タンパク質の製造効率や安全性の観点で、当社の技術が非常に優れていると考えています。
質疑応答:ブラゼインの現状と今後の展望について
飯村美樹氏(以下、飯村):個人投資家の方からの事前質問でも、この「ブラゼイン」に関して非常に注目が集まっているようです。「商業化に向けた次のステップとして規制承認の取得スケジュールやパートナー企業との提携計画はどのように進めていく予定でしょうか? また、初回の生産規模や供給開始時期の見通しをお聞かせいただけますか?」というご質問です。
柴山:現状は、大量生成の方法の確立と安全性試験の実施を目指し、それに向けてニワトリの数を増やしている段階です。
大量生成の方法が確立した段階で、日本やアメリカで認可を取得する方向で進めています。アメリカではすでにFDA(食品医薬品局)の認可を受けた製品があるため、アメリカのほうが先に実現する可能性があると考えています。
販売時期については、取得の問題もあるため、現時点では未定です。前回のプレスリリース後、すでに多くの食品メーカーからお問い合わせをいただいています。今後、さまざまな企業と広くパートナーシップを組みながら進めていきたいと考えています。
質疑応答:M&Aの計画について
坂本:今日のお話にはDXや人材への投資というテーマがありましたが、「M&Aの計画のようなものがあれば、お話しできる範囲で教えてください」というご質問です。
柴山:計画そのものについては、現時点で具体的にお話しすることはできませんが、当然そのようなことも視野に入れています。先ほどの「ブラゼイン」や他のITに関することも同様ですが、自分たちだけで開発を進めるのが難しい分野が多々あります。
そのような場合、M&Aという手法を活用して時間を買うことができれば、それを選択肢として検討していきたいと考えています。
質疑応答:拡充したい人材と定着の課題について
坂本:人材への投資というお話がありましたが、「定着の課題はないでしょうか?」というご質問です。私からも拡充したい人材についてうかがいたいです。
柴山:当社では新規事業を積極的に展開していきたいと考えています。そのため、新しい事業にチャレンジできる人材を揃えていきたいと考えています。
また、定着に向けて働き方の充実を図っており、在宅勤務やフレックスタイム制度などを整備していますので、働きやすい環境を提供できると考えています。
さらに、やりがいも重要であると考えています。新規事業に携わることで社会に貢献できる実感を得られるため、やりがいにつながるのではないかと考えています。
質疑応答:ブラゼインの開示による社員のモチベーションへの影響について
飯村:先ほど「ブラゼイン」について、砂糖のすべての代替となることまでは考えていないというお話がありましたが、非常に大きな世の中の変化をもたらす可能性があり、その点で社員のみなさまのモチベーションや社内のムードにも大きな影響があるのではないでしょうか?
柴山:そのように考えています。開示を行った後や、DXの推進にあたり社員とさまざまな会話をする機会がありますが、そうした場面でも「ブラゼインはこれからどうなっていくんだ」といった社内からの意見が非常に強くなっています。
私たちはもともと、会社の理念として「ライフサイエンスの発展に資する」という目標を掲げており、その理念に共感して入社してくれる社員が多くいます。そのため、新しい成果につながる活動は、彼らのモチベーションにもつながると考えています。それが会社の定着の一助となればうれしい限りです。
質疑応答:2022年以降の利益減少要因および為替変動と価格転嫁について
坂本:今期は業績が回復する見通しではありますが、2022年頃から利益が減少している点について、その要因を教えていただけますか? また、輸入試薬の割合があるため、為替変動が経営に与える影響が大きいと思われますが、価格転嫁は進んでいますか?
柴山:2022年以降数年間は、為替の変動が激しく、その影響を価格に転嫁するのが難しい状況が続いていました。一方、昨年から今年にかけては、為替がほぼ150円程度で安定しています。
去年から今年にかけて成長投資の費用がかかったことで利益を押し下げています。これらの投資が成果につながり、今後それをプラスに転換することが重要だと考えています。
柴山氏からのご挨拶
柴山:私たちは、「ライフサイエンスの発展に資する」ことを目指し、賛同する方々が集まって取り組んでいる会社です。その中で、これからの10年では、先ほどの新規事業を含め、市場の成長を上回る大きな発展を遂げ、私たち自身が成果を世の中に提供していくことを目指して活動していきます。今後ともご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。