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クイック、中長期的な成長が見込まれる人材紹介市場において、専門特化型支援で独自のポジションを確立

自己紹介

川口一郎氏(以下、川口):みなさま、本日は株式会社クイックの個人投資家向けWebセミナーにご参加いただきありがとうございます。代表取締役社長の川口です。本日は私からクイックの会社概要と成長戦略についてご説明しますので、どうぞよろしくお願いします。

私の経歴についてご説明します。1979年に現在のリクルートホールディングスに入社し、1999年にプライム市場上場企業であるトランス・コスモスの常務取締役に就任しました。その後、2005年にクイックに入社し、人材紹介事業部門の本格的な立ち上げに参加しました。

そして2019年に、代表取締役社長に就任しました。

大切にしている言葉として、少し青臭い表現かもしれませんが、「きれいで、いい仕事をする」を非常に重視しています。みなさまご存じの二宮尊徳(金次郎)が「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」というようなことを言ったとされています。

現代の企業に置き換えて考えると、道徳は企業理念を、経済は業績を意味すると言えるでしょう。「理念なき、倫理観なき業績拡大は罪悪である。そして、実績が伴わない倫理観は寝言である」という厳しい言葉ですが、高い倫理観を持ちながら業績拡大を図るという重要性を説いているのだと思います。

当社は、お客さまに感謝され、評価される「きれいで、いい仕事」を行い、その結果として高い業績を上げるプロ集団を目指しています。本日は、その「きれいで、いい仕事をする」ことと、当社の成長戦略がどのように結びつくのかをご説明したいと思います。

本日お伝えしたいこと

川口:限られた時間の中で本日お伝えしたいのは、クイックという会社がどのような企業であるのか、そして今後の成長性についてです。最後に、株式情報についてもお話ししたいと思います。

目次

川口:アジェンダです。会社概要と主要事業のご説明、市場環境と戦略的成長、株式情報についてお話しします。最後に、みなさまからのご質問にお答えしたいと考えています。

クイックの概要

川口:まず、会社概要と主要事業についてご説明します。クイックの概要です。クイックは人材紹介を中心とした人材ビジネスや情報を取り扱う会社で、創業は1980年9月19日です。

社名の由来についてよく聞かれますが、創業者でありグループCEOの和納が会社を設立する際、大変お世話になった恩師の誕生日が9月19日であり、「919」ということからクイックという名前になりました。人と人の関係を大切にし、それを事業としてかたちにしていこうという思いが込められています。

それから、拠点数は世界7ヵ国に20拠点以上あり、従業員は2,021名で、平均年齢は30.5歳と、非常に若く活力のある組織です。

売上高は2025年3月期で325億円、営業利益は45.3億円となり、ROEは20.92パーセントという数字が示されています。

経営理念 / 事業理念

川口:経営理念は、「関わった人全てをハッピーに」です。株主や従業員、その家族、取引先、求職者、各種メディアの読者など、クイックに関わった方々の幸せにつながるようにといった思いを込めた理念としています。

クイックの事業理念は、経営の4要素であるヒト・モノ・カネ・情報の中から「『人材』『情報』ビジネスを通じて社会に貢献する」と定義しています。

当社への評価 ~社外・従業員からも一定の評価~

川口:当社の経営理念をはじめとした取り組みの結果、「JPX 日経中小型株指数」に4年連続で選出されています。この中小型株指数は、投資者にとって投資魅力が高い会社をJPXの投資基準に基づいて選定したものです。

また、転職や就職時の口コミサイト「OpenWork」を運営するOpenWork社の「働きがいのある企業ランキング2025」では、全国2万484社の中で20位、人材サービス部門の中では6,007社の中で2位に選ばれています。

スライドに記載のとおり、若手社員の登用や挑戦を積極的に支援する文化、ハイブリッドワークやフレックスタイム制度、副業制度などを導入し、柔軟な働き方をサポートしている点が評価されたものと考えています。

1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):ここで1つ質問したいのですが、このOpenWorkで非常に高評価を得ているということで、評価が4.4という数字になっています。4.4という数字は、私が見る中でも非常に高い数字です。

内容を確認すると、「企業理念に共感した」「社員の人柄がすばらしい」といった意見が多いようです。このような高評価を実現した背景について、もう少し詳しく教えていただけますか?

川口:ありがとうございます。まず、採用活動には非常に力を注いでいます。毎年、新卒採用において2万名以上の応募をいただき、その中から適性検査と4回から5回の面接を通じて、当社の採用基準を満たし、経営理念や組織文化、そして当社が大切にしている価値観に共感してくださる方に入社していただいています。

そのため、入社前と入社後のギャップが非常に少ない会社であると自負しています。

また、風土の醸成については2つのポイントを重要視しています。1つ目はオープンでフランクな風土の醸成です。社員同士がオープンマインドで率直に話し合い、意見を言い合える風土を大切にしています。

2つ目は役職機能論です。役職は機能としての役割を果たすものであり、上下関係を強調するものではありません。社員一人ひとりが組織の一員として独自のミッションを持ち、マネージャーや部長も組織を構成する一員であるとの共通認識を持ちつつ、新入社員もそのミッションを担う仲間としてチームワークを重視して運営しています。

さらに、話が少し長くなりますが、教育についてもお話しします。例えば、人材紹介業においては約30名の教育担当者やトレーナーが在籍しており、彼らが自ら最適な階層別プログラムを作成し、トレーナー業務も兼任しています。

また、新入社員はグループ分けされ、世界文化遺産である富山県平村(現・南砺市)の研修所を利用します。この施設は世界文化遺産への登録前から、かやぶき屋根の建屋として保有していたものです。ここでグループCEOの和納が、囲炉裏を囲みながら新入社員たちに経営理念や仕事に対する姿勢、スタンス、今後の期待について語ります。

昼間には、時期に応じて田植えや障子の張替え、茅刈りなどを新入社員が共同で行います。特に茅刈りは、地域における高齢化が進む中で村の方々に貢献する活動となり、社会貢献にもつながっています。このような取り組みは新入社員にとって非常に大きなイベントとなっています。

最後に、知恵と知識の共有を重視しており、全国のコンサルタントが手掛けた良い仕事や価値ある取り組み、ノウハウを編集者が取材・編集し、独自の共有サイトにアップロードしています。これにより、知識・情報・知恵を全体で共有する仕組みを大切にしています。このような一連の取り組みが高い評価につながっているのではないかと考えています。

Ken:先ほど応募者数が2万人というお話がありましたが、やはりOpenWorkなどの高評価が影響していると感じることはありますか?

川口:それについてはあまり意識したことがありませんが、おそらく影響が広がっているのではないかと思います。

事業内容

川口:事業内容についてご説明します。人材領域では、人材サービスが売上高の70パーセントを占めており、特に人材紹介業が大半を占めています。そのほか、リクルーティング事業や海外事業も含まれます。

また、情報分野では、地域情報サービスとHRプラットフォーム事業を展開しており、5つのセグメントで構成されています。

事業構成 ~採用支援を中心とした人手不足を解消する事業を展開~

川口:売上高は325億円で、そのうちの70パーセントが人材サービス事業です。この人材紹介については、後ほど詳しくご説明します。

スライドの紫色の部分はリクルーティング事業を表しており、求人広告を取り扱い、企業の採用支援を行う事業です。主力の「Indeed」では代理店として業界トップクラスの実績を上げており、同じアグリゲーションサイトとされる「求人ボックス」についても2年前から契約を結び、すでにトップ5に入っています。

当社は求人広告を扱うだけでなく、採用戦略の立案といった上流工程から、リクルーターの教育、選考方法、内定辞退を防ぐための後工程に至るまで、採用に関する一連の支援を強化しています。

事業構成 ~採用支援を中心とした人手不足を解消する事業を展開~

川口:次に、3つの事業分野をご紹介します。1つ目は地域情報サービス事業です。こちらは北陸エリアで金沢情報、富山情報、新潟情報といったフリーペーパーを発行しており、転職や家作り、結婚に特化した対面型のコンサルティングサービスを提供しています。

当社調べでは、北陸エリアにおけるフリーペーパーとしては実績がNo.1であり、地元密着型の人材紹介会社としてもNo.1の実績を上げています。

次に、スライドの赤みがかった部分であるHRプラットフォーム事業です。こちらは、上場企業の人事担当者の約90パーセントが登録している日本トップの人事向け情報サイト「日本の人事部」を運営しています。また、日本トップクラスの規模を持つ人事向けイベント「HRカンファレンス」も運営しています。

「日本の人事部」では会員数が39万人を突破しており、さらに、「HRカンファレンス」では年間4万人の人事関係者にご参加いただいています。

最後に海外事業についてです。海外事業では、海外に進出している日系企業の採用支援を行っており、アメリカ、イギリス、オランダ、メキシコ、タイ、ベトナムに拠点を展開しています。

海外拠点一覧

川口:スライドは海外拠点の一覧です。赤字で示されているドイツのデュッセルドルフには新会社を設立しており、来年3月から営業を開始する予定です。

このように、当社は事業への投資を重ねて拠点を増やす計画を進めており、積極的に海外展開を図りたいと考えています。

市場環境について ~中長期的に成長余地のある市場~

川口:市場環境と戦略的成長についてです。その前に、日本の労働人口の今後の推移と、よく勘違いされる人材紹介と人材派遣の違いについて事前にご説明します。

スライドの表では、2022年を基点とした労働需給シミュレーションを示しています。労働需要、つまりどれだけ働く人が必要かというデータが青字で示されていますが、2040年までは需要が着実に増加すると予測されています。

一方、労働供給、すなわちどれだけ働ける人がいるかというデータが赤字の線で示されています。2022年時点で労働人口は6,600万人でしたが、2040年までに大幅に減少すると見込まれており、その結果、赤字と青字のギャップにより、2040年には1,100万人の労働力供給不足が予測されています。このように、日本は構造的な人材不足の時代に突入したと言えるでしょう。

人材紹介と人材派遣の違い

川口:紹介と派遣の違いについてですが、私たち紹介会社では、求職者から「転職をしたい。サポートをして欲しい」というかたちでご登録をいただき、その方の経歴や実績、志向、希望を詳しくヒアリングします。一方で企業からは、求めている人材像について詳しくヒアリングを行い、双方のマッチング度が高い転職希望者や求人案件をご紹介します。

また、両者の間に介在しながら、選考や入社に至るまでフォローを行い、無事入社が決まれば、企業から紹介手数料やコンサルティングフィーをいただくという成果報酬型のビジネスモデルです。

当然ですが、求職者が企業に就職する場合、雇用元はその企業となります。一方で派遣の場合、派遣で働きたい求職者は人材派遣会社に登録をします。派遣会社は契約している企業に派遣スタッフとして労務を提供し、企業は派遣会社に対して派遣料金を支払います。

この派遣料金には、派遣スタッフの給与や社会保険料に加え、手数料が上乗せされています。なお、派遣スタッフの雇用元は人材派遣会社となります。

紹介は原価がほとんどかかりませんが、派遣の場合は売上高に派遣スタッフの給与や社会保険料が含まれるため、売上規模は相当大きくなります。ただし、派遣と人材紹介を比較する際には、営業利益額や営業利益率をご参考にいただくことで、ビジネス構造の大きな違いをご理解いただけるかと思います。

一般的な人材紹介事業(分業制)

川口:人材紹介事業について詳しくお話しします。一般的な人材紹介事業は分業制を採用しています。

求職者対応や企業対応について、スライド中央にある男女のイラストをご覧ください。分業制の場合、このコンサルタントたちは「企業対応の専任」と「求職者対応の専任」で人材紹介機能をパーツ化しており、それぞれのパーツで戦力化を繰り返します。

そのため、パーツごとの戦力が早期に整備され、売上や利益を迅速に会社にもたらすという点で、非常に効率的かつ合理的な体制となっています。ほとんどの企業がこの分業制を採用しています。

人材紹介事業の特徴 ~一気通貫制による質の高いサービス提供の追求~

川口:しかし、当社は分業制を採用せず、1人のコンサルタントが担当領域内で企業対応と、そこで働きたいという求職者対応の両方を担います。これが1つ目の特徴です。

人材紹介事業の特徴 ~一気通貫制による質の高いサービス提供の追求~

川口:この一気通貫制の2つ目の特徴についてですが、スライドの真ん中にある男性と女性のイラストをご覧ください。それぞれが同じチームで働くコンサルタントであると考えていただければと思います。

例えば、求職者Aさんの対応を男性コンサルタントがするとします。男性コンサルタントは、求職者Aさんの実績や経験、志向を詳しく把握します。そして、Aさんに最も適した企業を探します。その際、企業D社が大変適していると判断される場合もありますが、企業D社が女性コンサルタントの担当企業であることもあります。

このような場合、男性コンサルタントと女性コンサルタントがコラボレーションし、協力しながら求職者Aさんと企業D社とのマッチングを進めます。このプロセスは、逆の場合でも同様です。

それぞれのコンサルタントが協力し合い、企業と求職者双方にとって理想的なマッチングを図るのが、一気通貫制の特徴です。このコラボレーション、すなわち協力の比率が売上の80パーセントを占めています。

このように、クイック独自の一気通貫制は、1人のコンサルタントが企業対応と登録者対応の双方の機能を担う点に特徴があります。そして、実際のお手伝いにおいては、組織としてコラボレーションしながら、双方にとってマッチング度の高い求人・求職者のマッチングを実現する仕組みとなっています。

人材紹介事業の特徴 ~特定業種・職種に特化した領域を展開~

川口:クイックの人材紹介のもう1つの特徴は、特定の業種や職種に特化したサービスを提供している点です。例えば、建設業界の人材については、有効求人倍率が5.76倍となっています。当社の場合、施工管理技士という、大規模な建設工事で必須となる国家資格を持つ職種を対象としたサービスで、業界トップシェアを誇っています。

看護師については、超高齢社会の進展に伴い、そのニーズがさらに高まると考えています。また、情報処理や通信技術者に関しては、有効求人倍率は全国平均で1.4倍ですが、東京でITエンジニアに限ると、民間調査によると3.5倍というデータもあります。

これらはあくまで事例ですが、今後も求人倍率が高水準で推移すると予測される領域であり、かつ高い専門性が求められる分野において、当社は事業を展開しています。

転職回数動向

川口:次は転職回数の動向についてです。こちらは、1人のビジネスパーソンが生涯で何社経験をするかというデータを基にした内容です。アメリカの場合は11.54社、イギリスの場合は4.79社、日本では3.63社となっています。

転職回数において、日本では平均的な転職回数が2.63社です。また、1社の平均勤続年数は、アメリカで3.9年、イギリスで9.4年、日本では12.4年となっています。

みなさまもご存じのとおり、社会や経済の活性化を考えると、ある程度の流動率は必要です。私たちは日本の生涯転職回数を考慮すると、アメリカの水準に達する必要はないと考えていますが、イギリス並み、もしくはそれをやや上回る転職回数になるのではと考えています。

人材紹介事業の市場環境について

川口:先ほどお話ししたとおり、日本の平均転職回数は2.63回です。しかし、終身雇用の衰退や雇用の流動化、ジョブ型雇用の拡大、副業の解禁などもあり、今後平均転職回数は増加すると見込まれています。

今、日本の企業は世界的な大競争の中で、新たな機能や技術を持つ製品を開発し、サービスを提供しようとしています。これまでの日本企業であれば、自社で研究開発を十分に行い、製品として市場に出すのが一般的でした。しかし、現在ではいかに早く優れたサービスを提供するかが重要になっています。

そのため、外部から経験やノウハウ、実績を持つ人材を採用し、迅速に製品化につなげようとする動きが広がっています。このような背景から、日本を代表する優良企業や注目される企業では中途採用がすでに当たり前になりつつあります。

このような流れの中で、個人にとっては転職機会が増加するだろうと私たちは考えています。

Ken:一度御社経由で転職を経験した方が、次の転職の際に再び御社を利用することはありますか?

川口:結論から言うと、そのようなことはあります。当社は個人のキャリアをデータベースで管理し、求職者の履歴や志望を確実に把握しているため、次の転職の際にも「クイックならまた良いサービスを提供してくれるだろう」というかたちで、頼られる存在になっていきたいと思っています。現在でも一定数の事例があります。

さらに、良質なサービスを提供することで、「私の友人や知人も転職を考えているので紹介してよいですか?」というかたちでご依頼をいただくケースも増えています。

Ken:ちなみに、求職者の方が再び転職を考えた際に、御社に直接連絡をするのが最も多いパターンでしょうか?

川口:正確なデータはありませんが、私の感覚では、過去にお手伝いをした方を再度サポートしたり、その方からの紹介を通じた依頼だったりが成約全体の約10パーセントを占めているのではないかと思います。

というのは、優れたサービスを提供してご満足いただいたとしても、家庭環境の変化や企業側のさまざまな変化により、再び転職を検討せざるを得ない方が出てくるものです。そのような方が転職を検討する際、私たちがどれだけ質の高いサービスを提供できたかによって、成約数はさらに増加していくものと思います。

領域深化と横軸展開

川口:当社は領域を特化し、その範囲を拡大しつつありますが、最初のターゲットは製薬業界でした。製薬業界には、業界特有の職種が多数存在します。例えば、新薬が開発されると、その情報を全国の病院や医師に提供する医薬情報担当者(MR)といった役割があります。

さらに、新薬が上市する前には患者さんを対象としたモニタリングを実施し、その効果を検証するモニター開発の仕事があります。また、薬事業務や品質保証・保全業務など、特有で高度な専門性を求められる職種も数多く存在します。このような領域において、当社は最初に注力し、一定の市場シェアを獲得しました。

それから看護師、化粧品やラグジュアリー業界、建設プラントへの展開を進めています。建設プラントでは、施工管理技士を中心とした業務を得意としています。

現在、ハイキャリア&エグゼクティブとして年収1,000万円以上の層を対象に支援しています。また、バックオフィスとして企業の経理や総務など管理部門の領域にも事業を広げています。各領域で深化を図り、質の高い業務を提供してシェアを拡大するという方向性で事業を展開しています。

各専門サイトの運営

川口:スライドには、当社の得意分野を記載しています。各領域に特化した専門サイトを運営し、各領域で業界トップクラスの登録者数と求人数を誇っています。

Ken:ここで、各業界のトレンドについて教えてください。特に建設業界では、施工管理技士の採用数をKPIに設定し、業績とともに開示するケースや、サブコン、ゼネコンなどで人手が不足しているといった話をよく耳にします。そのような点も含めてお教えいただけますか?

川口:ご存じのとおり、現在首都圏では高層ビルの建設が進んでおり、施工管理技士のニーズは非常に高い状況です。さらに、橋や架線設備、道路、上下水道といった公共インフラの耐用年数が50年を超えるものが増えており、その修繕や改修を行わなければ、日本のインフラ自体が深刻な事態に直面します。

このため、このような領域でも求人ニーズが高まり、非常に高い倍率で求人が出るだろうと考えています。

Ken:建設業界以外では、人手不足の状況はどのように進んでいますか?

川口:「爆発的に」という表現が適当かどうかはわかりませんが、ITエンジニアのニーズは非常に高まっています。特に、私たちは経営コンサルタント業界の支援を多く行っていますが、ITコンサルタントの求人は非常に増えています。ITエンジニアから転じてコンサルタントとなるケースが多いため、そのような求人の増加が顕著です。

また、自動車業界では、自動運転や電動化などを含むIoT化に関連し、ITエンジニアだけでなく電気・電子系エンジニアの採用も非常に多くなっています。全体的に、私たちは求人倍率が高く、専門性の高い領域に注力していますが、とりわけ今挙げた2つの領域で需要の増加を実感しています。

成長戦略の整理

川口:成長戦略の整理です。成長が見込まれる人材紹介市場において、専門特化型の支援を通じて独自のポジションを確立し、人への投資や事業への投資を通じて領域を拡大し、業績を伸ばしているのがクイックです。

業績推移

川口:業績推移です。スライドのグラフは、過去10年間の業績と今後3年間の中期経営計画を示したものです。コロナ禍の一時期と2025年度は営業利益がやや下がっていますが、2025年度は将来に向けた積極的な先行投資を現在進めている影響により、あえて営業減益としています。

また、中期経営計画は3ヶ年を記載していますが、ローリング方式を取り入れているため、年度ごとに事業計画を柔軟に変更していく考えです。来期以降も大規模な投資を継続しながら、着実に売上と利益を作り出していきたいと考えています。

Ken:一部、繰り返しとなる部分もあるかもしれませんが、同業他社との差別化や競合優位性についてお聞かせください。本日のお話をうかがう中で、業界に精通した方々がコンサルタントとして多い印象を受けました。

さらに、一言で表現すると「人の良さ」が、求職者側とのコミュニケーションにおいて大きな効果を発揮しているようにも感じます。それ以外に、競合優位性についてどのようにお考えですか?

川口:当社の強みは、領域特化と、それによる独自の一気通貫制で人材を揃えている点にあります。他社からも「なんて人が良い集団なのか」とよく言われます。当社は、個々のエッジの強さではなく、チームワークを非常に重視しています。

また、他責よりも自責性を大切にするメンバーが多いため、メンバー間の協力やコラボレーションは、クイック独自の文化であり、大きな強みだと考えています。

Ken:上司や部下、同僚との間で、非常にコミュニケーションが取りやすく、声をかけやすい環境であるということですね。

株式情報 (25.12.11時点)

川口:2025年12月11日時点の株式情報です。スライドには、2021年6月以降6ヶ月ごとの株価をプロットした折れ線グラフが示されています。PBRは2.47倍、PERは13.07倍、配当利回りは4.02パーセント、時価総額は487億円規模です。

株式分割の実施

川口:株式分割の実施についてです。投資家のみなさまが少しでも投資しやすくなるよう、2025年11月30日を基準日として普通株式1株を3株に分割しました。分割前の株式購入に必要な資金は25万3,200円でしたが、分割後は8万4,400円と、8万円台になっています。

Ken:東証からの「資本コストや株価を意識した経営」といった要請もありますが、現在の株価水準に対して、経営陣としてどのような認識を持ち、社内でどのような議論がなされているか、差し支えない範囲で教えていただけますか?

川口:現在の株価については、当社にとって企業価値向上の余地は非常に大きいと捉えています。その要因や今後の方針についてお話しすると、当社は一定のIR活動をしているつもりですが、さまざまなリサーチを通じて、個人投資家や機関投資家のみなさまに対するIR活動がかなり控えめであるという認識に至りました。

これからは本格的かつ積極的に、IR活動を進めていきたいと考えています。

また、キャピタルアロケーションの開示についても検討しています。150億円の現預金の使い道について、これまでは資本政策や財務戦略の観点から、中長期的にどのような方針で活用していくのかについて開示を行っていませんでした。

これは自己資本比率が高いことに加え、事業戦略に注力してきた結果ではありますが、今後は適切なタイミングで確実に開示していきたいと考えています。

26年3月期配当予想

川口:配当についてです。株主還元に関しては、株式分割により、1株あたりの配当予想は中間配当が50円、期末配当が18円となります。スライドには、わかりやすく分割前に換算した数値を記載しています。年間配当は104円を見込んでいます。

配当性向は52.6パーセント、DOE換算でも10パーセントを超える水準です。株主のみなさまに利益を確実に還元する方針を継続しています。今後も株主還元策については、十分に意識して進めていきたいと考えています。

株主優待制度

川口:最後に、株主優待制度についてです。300株以上をお持ちの方が対象となりますが、スライド記載のとおり、株主優待制度をご用意しています。また、中長期で保有いただいている株主さまへの感謝の気持ちを込めて、3年以上継続して保有されている方には、さらに手厚い優待を提供しています。

現在、株価は上昇傾向にありますが、まだ企業価値向上の余地は大きいと考えています。本日の説明をお聞きいただき、クイックの中長期的な成長性に関心を持っていただければ幸いです。本日はお忙しい中、ご視聴いただきありがとうございました。

質疑応答:登録者の確保について

分林里佳氏:「求人は増えているとのことでしたが、登録されている人材の確保についてはどうでしょうか? 苦労されることはありませんか?」というご質問です。

川口:これは、最大の事業拡大のポイントといえます。そのポイントは2点あり、1つ目は専門サイトの運営です。そのサイトでの登録者数はある程度確保していますが、今後、新たなサイトの開設や既存の各サイトのコンテンツの拡充を予定しています。

また、これまでは専門特化していたため、リスティング広告というWebプロモーションが中心でしたが、今後、タイミングを見ながらテレビCMを含めたマスプロモーションも積極的に検討していきたいと考えています。

2つ目は、求職者データの積極活用です。「ビズリーチ」のような求職者のデータベースをもとに、当社のコンサルタントがスカウトを行っていますが、おかげさまでクイックのコンサルタントは組織として非常に高い評価をいただいています。

サービスの質をさらに高めながら、求職者データをより効果的に、積極的に活用していきたいと考えています。

質疑応答:M&A戦略について

Ken:M&A戦略についてもう少しうかがいたいと思います。御社はキャッシュをかなりお持ちなので、時価総額が比較的低い上場企業も対象になるのではないかと考えています。そのあたりも含めて、M&Aの戦略を教えていただけますか?

川口:M&Aについては、仲介会社から多くの案件が寄せられています。現在、当社からも狙いを定めてアプローチさせていただく件数が増えてきています。

これから日本は構造的な人材不足の時代に突入していきますので、紹介や求人広告といったチャネルだけではなく、上流工程から入社後のオンボーディングまで、一連のプロセスにおいてのサポートがさらに重要になると考えています。

そのような上流から下流までをカバーし、当社にない機能を持つ企業群、また当社がまだ進出していない領域で優れたサービスを提供している企業群、さらにはAI化の分野において、AIの技術者や自社開発のノウハウを持つヒューマンリソースを有する企業についても、積極的にアプローチしていきたいと考えています。

現在、M&A資金の目安として、約60億円を用意しており、案件次第で確実にアプローチを進めていきたいと考えています。

質疑応答:人材市場の競争環境について

Ken:「人材業界について、業種によってはかなりレッドオーシャンだと思います。計画で上がっているものは勝ち筋があるのでしょうか?」というご質問です。

川口:人材紹介や人材派遣を含め、競争は非常に厳しい状況です。このような状況の中で、大規模な従業員数や体制を備えた企業がサービスを提供する一方で、許認可が比較的容易に取得できることから少人数で事業を運営する企業も増えていくと考えます。

なぜなら、規模を拡大しようとすると、採用や教育、プロモーション、システム開発などに多額の投資が必要となります。そのため、今後、大規模化を目指す企業と小規模で専門性を活かして事業を行う企業との分化が本格的に進むと予想しています。

質疑応答:人材コンサルタントの独立や引き抜きについて

Ken:「社員やコンサルタントの評価が高いと、独立や引き抜きの懸念はないですか?」というご質問です。

川口:おかげさまで、当社のコンサルタントには、多数のアプローチをいただいていると聞いています。しかし、当社は企業文化や一緒に働く仲間たち、そして体制としてのやりがいと満足度を十分に整備しているため、離職率は他社と比べてかなり低い水準にあります。

同業他社のお話に関連するところでいうと、「なぜクイックはそんなに定着率が高いのですか?」という質問もよく寄せられます。企業文化として、「きれいで、いい仕事をする」という信念が根づいているため、同業他社へ転職するケースはあまり多くないのが現状です。

質疑応答:リクルート文化の影響について

Ken:「川口社長がリクルート出身ということで、社是にはリクルート創業者の江副氏の影響がありますか?」というご質問です。

川口:これはあります。採用にこれだけ力を注ぐのは、やはりリクルートの文化を見ているからです。さらに、オープンでフランクな風土もリクルート文化を継承した要素があり、企業運営においては良い点も課題もありますが、良い点はむしろ積極的に取り入れていきたいと考えています。そのため、影響があるかないかと言えば、かなりあると言えます。

川口氏からのご挨拶

川口:当社は「関わった人全てをハッピーに」という経営理念を掲げ、「きれいで、いい仕事をする」ことに努めています。特に、人材紹介では転職のお手伝いをすることで個人の人生に大きく影響を与えるため、「きれいで、いい仕事」を追求しています。

その中で、仕事のやりがいや満足感、また社会への貢献を実感しながら、あるべき日本の人材紹介会社を作りたいと考えています。そして、これからはさらに成長し、影響力を拡大していきたいと思います。

当社は、これまであまりマスプロモーションを行っていなかったため、知名度が低いかもしれませんが、今後、中長期的に着実に成長していきますので、ぜひご期待ください。ご視聴ありがとうございました。

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