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JFEホールディングス、環境対策と経済性の両立を図る 「GXスチール」拡販、革新電気炉は28年度に稼働予定

JFEグループの概要

佐藤友香氏(以下、佐藤):本日は、JFEホールディングスの北野嘉久社長にお越しいただきました。北野社長、よろしくお願いします。

北野嘉久氏(以下、北野):JFEホールディングスの北野です。よろしくお願いします。

佐藤:鉄鋼大手のJFEホールディングスですが、現在の事業内容をあらためて簡単に確認します。

JFEホールディングスは、100パーセント子会社の事業会社3社を傘下に持ち、鉄鋼、エンジニアリング、商社の3事業を展開しています。

各事業会社の事業内容と連携

佐藤:3つの事業会社があるということですが、JFEグループは「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。」という企業理念のもとで、それぞれの事業を結び付けてグループシナジーを最大限に発揮しています。それぞれのパーパスはスライドに記載のとおりです。

事業利益と粗鋼生産量の推移

佐藤:次に、足元の業績を確認していきます。先月6日に発表した第2四半期決算では、中国からの安価な鋼材の供給により販売価格に下押し圧力がかかり、採算が悪化しました。まずは、足元の業績をどのように評価されていますか?

北野:JFEグループでは、約3年ごとに中期経営計画を策定し、実績をフォローしています。このグラフは、5次中期以降の事業の状況を示しており、当社の実力ベースの事業利益と粗鋼生産量の推移を表しています。

7次中期までの平均粗鋼生産量は、国内内需の減少や中国の輸出増加の影響を受け、中期ごとに減少しており、事業環境の厳しさが浮き彫りになっています。

一方で、7次中期においては、構造改革と量から質への転換による効果が寄与して、事業利益は向上していることがわかります。

2025年度も引き続き厳しい事業環境が続いていますが、後ほど詳しくご説明する8次中期の主要テーマを着実に進めることで、きわめて厳しい事業環境下においても利益を創出できる体制を整えていきます。

JFEグループの長期ビジョン

佐藤:今後の戦略についてです。今年5月に長期ビジョンとなる「JFEビジョン2035」と、2025年度から2027年度の3年間にわたる第8次中期経営計画を発表しました。

長期ビジョンの公表は今回が初めてということで、10年後の利益目標を3倍以上とする高い目標を掲げています。なぜ長期ビジョンを発表したのか、またどのようなビジョンなのか教えてください。

北野:今回、初めて10年先を見据えた長期ビジョン「JFEビジョン2035」を策定しました。

長期ビジョンでは、カーボンニュートラル技術の実装に必要な設備投資額を2036年度から2050年までの期間で4兆円規模と推定しています。この高額な投資を実現するには、セグメント利益7,000億円を達成することが求められるため、目標を設定しました。

さらに、この目標を達成するためのバックキャストとして、第8次中期経営計画の最終年度である2027年度には3,650億円を達成する計画を策定しています。これらを支えるために、8次中期経営計画期間中の総投資額の約6割に相当する1兆円を成長投資に振り向ける予定です。

また、「カーボンニュートラルに向けた技術開発のトップランナー」を目指して取り組んでいきます。現在、カーボンニュートラルの製鉄法は世界でも実用化されていません。しかし、鉄鋼業界は産業界全体の約40パーセントのCO2を排出しているため、カーボンニュートラルに向けた超革新技術の開発は鉄鋼業界の使命であると考え、取り組んでいく所存です。

佐藤:ただ、トランプ大統領の影響もあり、世界的にカーボンニュートラルや環境対応がいったんスローダウンするような動きも見られています。これについては、歩みを止めないという理解でよいでしょうか? 

北野:おっしゃるとおりです。世界的に動きが停滞している原因をよく見てみると、環境対策と企業としての経済性の両立ができていないためだと、我々は見ています。ここについては、国や業界と連携して、経済性が成立するようにさまざまな施策を国とともに進めています。したがって、この歩みを緩めることはないと決意しています。

第8次中期経営計画

佐藤:2035年に向けた長期ビジョンについてお聞きしましたが、その中での中期経営計画について、今期から3ヶ年の第8次中期経営計画がスタートしています。

主力である鉄鋼事業については、2027年度のセグメント利益目標として、24年度実績の約2倍を目指しています。この主力の鉄鋼事業に関して、3つの重点施策を掲げているとのことですね。

北野:おっしゃるとおりです。鉄鋼事業では「経済的持続性」と「環境的社会的持続性」の両立が必要です。

経済的持続性に関しては、大きく2つ掲げています。1つ目は「国内生産体制の再構築」です。需要に見合ったスリムで強靭な生産体制を構築するため、高炉7基の現在の体制から「高炉5基+革新電気炉1基体制への移行」を進め、さらにスリム化を図る一方で、高付加価値品比率の向上を目指していきます。これに関しては、成長投資をしっかりと実行し、比率を上げていく所存です。

2つ目は「海外事業拡大」ですが、こちらは「成長地域トップクラスのパートナーとのインサイダー型事業拡大」という方針で進めていきます。

一方、環境に関しては、2028年度に倉敷地区で稼働予定の革新電気炉の建設を着実に進めていきます。さらに、超革新技術の開発もスピードを緩めることなく、研究開発を推進していきます。また、GHG排出量を大幅に削減した「GXスチール」の拡販も進めていきます。

高付加価値品戦略

佐藤:国内生産体制において高付加価値品比率を6割まで引き上げるとのことですが、具体的にどのような製品を、どのように増やしていくのでしょうか?

北野:高付加価値品戦略は、国内における大規模成長投資により実行していく考えです。後ほど述べますが、JFEエンジニアリングの洋上風力用モノパイル製造工場が、本年度中に本格製造を開始します。このモノパイル向けの大単重厚板を供給していきます。

また、電動車やデータセンター向けの高性能電磁鋼板についても製造能力を従来比で3倍に高める予定です。これらの施策も成長投資および設備投資によるものです。着実に実行し、高付加価値品比率を2027年度に60パーセントに高める計画です。

佐藤:データセンター向けの需要についても、かなり引き合いが強いということですね。

北野:おっしゃるとおりです。現在、引き合いは多い状況です。

海外事業拡大

佐藤:鉄鋼事業の2つ目の重点施策として挙げている「海外事業拡大」について、昨年インドを強化するとお話しされていましたが、進捗はいかがでしょうか? 

北野:海外事業拡大の要点は、世界トップクラスのパートナーとともに、当社の技術力を活かしたインサイダー型事業を推進すること、そして成長市場において鉄鋼需要を捕捉していくことです。

成長市場としてまずインドを捉えており、インドでNo.1の鉄鋼メーカーであるJSWスチール社との協業を推進していきます。現在、すでに高性能電磁鋼板の製造・販売事業を共同運営しており、能力を増強するための設備投資も決定し、実行していきます。

これにより、電力用電磁鋼板においてインド国内で圧倒的なシェアを持つNo.1サプライヤーとなることを目指しています。また、先般12月3日に公表した一貫製鉄所の合弁会社設立について、JSWスチール社と合意に至りました。

一方、北米では、北米No.1のNucor社と協業しており、現在2件のジョイントベンチャーを運営していますが、さらなる協業について検討している最中です。

商社事業については、成長の主軸が海外にあることから、成長投資枠を設けています。今後もサプライチェーンの構築やM&Aの展開を進めていく予定です。

インド一貫製鉄所運営参画

佐藤:インドにおける一貫製鉄所の合弁会社設立についてですが、これは今月のことですね。どのような取り組みなのか、詳しく教えていただけますか?

北野:今月3日、インドのJSWスチール社と共同で運営していくことに合意しました。この参画の意義としては、1つ目はインドが成長市場である点が挙げられます。内需は年率8パーセント成長しています。

2つ目は、参画する製鉄所が自社鉱山を保有していること、さらに拡張用の土地がすでに取得済みであることです。現状の鉄鋼生産能力は年間450万トンですが、2030年には1,000万トン体制へ拡張する計画を持っています。

この拡張計画に対し、当社の技術力を活用し、高級鋼製造工場を建設していきたいと考えています。現在、JFEスチールでは東日本と西日本の製鉄所を2拠点持っていますが、JFEにとって第3の一貫製鉄所をインドで運営していくという計画です。

超革新技術の開発

佐藤:鉄鋼事業のもう1つの重点施策について、環境対応や持続性の観点から、グリーン鋼材の開発や超革新技術の開発がありますが、どのような技術開発に取り組んでいるのでしょうか?

北野:まず、超革新技術の開発についてですが、2035年までに技術の確立を目指しています。現在、千葉地区で革新電気炉、カーボンサイクル高炉、直接還元製鉄の3件の実証実験を展開中であり、その成果をもとに、革新電気炉は2028年度に倉敷で稼働予定です。大型電気炉を年産200万トンで稼働する計画です。他の2件についても、現在鋭意テスト中です。

GXスチール(JGreeX)の拡販

北野:グリーン鋼材についてです。業界団体である日本鉄鋼連盟は、本年10月にGHG排出量を大幅に削減した鋼材を「GXスチール」と定義しました。この「GXスチール」の拡販をJFEスチールでも推進していきます。

2023年度からその販売を展開しましたが、現時点ではまだ少量にとどまっています。これをさらに拡販するための課題に取り組んでいきます。これには、環境対策と経済性の両立を図ることが重要です。

環境対策を進めるには、大規模な設備投資が必要です。個社として財務基盤を強化することはもちろんのこと、倉敷の革新電気炉に代表される事例のように、政府による設備投資補助が実現しています。このような補助を今後も推進していく必要があると考えます。さらに、安価で安定的な電力と水素の供給網の構築が必要であり、これは個社だけでは解決が難しいため、国や関連企業との連携が重要です。

また、「GXスチール」を作る際には、コストが増加してしまいます。このコストアップ分をどのように環境価値として世の中に認めていただくかが、「GXスチール」の価値創造という課題であると認識しています。これについては環境価値の見える化や標準化を、国や鉄鋼連盟とともに進めています。また、「GXスチール」の使用促進政策も、国および鉄鋼連盟と連携して進めているところです。

エンジニアリング事業 重点施策

佐藤:ここまで主力の鉄鋼事業の重点施策についてうかがいましたが、続いてはエンジニアリング事業についてです。こちらの成長戦略や重点施策には、どのような事項を掲げているのでしょうか? 

北野:エンジニアリング事業の特徴は、多様な事業ポートフォリオを強みとして収益基盤を強化している点です。その中で、環境的社会的持続性の達成を目指し、サーキュラーエコノミーの実現を通じて事業の拡大を図っていきます。具体的な事例については次にご説明します。

エンジニアリング事業 -重点トピックス

まず、洋上風力モノパイルの製造についてです。岡山県笠岡市に洋上風力着床式基礎(モノパイル)製造拠点の建設が完了し、本年下期から本格的に製造を開始します。これにより、国の施策である洋上風力発電の電力供給量増大に応えることを目指しています。

一方、環境面では廃棄物発電事業を推進しています。この事業では、設備の設計・調達・建設(EPC)にとどまらず、オペレーション・アンド・メンテナンスを含む事業運営までを長期にわたり一貫して提供するサービスを展開しています。国内では相当な量を進めており、さらに海外ではベトナムにおいてこのような一貫サービスを開始しています。

京浜土地活用

佐藤:続いて、京浜エリアの製鉄所跡地についてですが、土地活用が進んでいるとのことです。今後のビジョンについて教えてください。

北野:京浜エリアの土地活用のビジョンは、スライドに示しているとおり、「公共・公益性の高い土地への利用転換」です。すでに稼働を開始しているのは、この写真にある廃プラスチックリサイクル事業の拠点です。

さらには、国主導で進めている液化水素の受入基地の建設や企業向けの研究開発拠点については、すでに建設工事を開始しています。

一方、電力事業やデータセンター事業については現在検討中です。また、首都高速の出入口を新設予定であり、この出入口を新設することによりアクセスを向上させる計画です。こちらは、現在、国および関連自治体と協議を進めている段階です。

株主還元方針

佐藤:では、ここで株価を確認していきましょう。現在は1,950円近辺で推移しています。株主還元の考え方についてお話しください。

北野:株主還元は、経営にとって非常に重要なテーマの1つであると認識しています。

今年度発表した第8次中期経営計画では、従来の配当性向30パーセントに加え、安定的な配当を実施する観点から80円を下限とする方針を掲げました。厳しい事業環境ではありますが、成長戦略を確実に実行し、より多くの配当を実現できるよう取り組んでいきます。

北野氏よりご挨拶

佐藤:最後に、今後の展望と株主へのメッセージをお願いします。

北野:本日ご説明したように、当社はカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向けた課題に挑戦していきます。これは、日本の産業競争力の復活のチャンスとして捉えて取り組んでいるところです。そのために、経済と環境の両立を実現することがポイントであり、社会と国民の理解が必要だと考えています。

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