■ムサシの中長期の成長戦略
現在、同社の収益の中心は選挙システム機材である。安定成長しているが、国政選挙などの実施の有無によって需要にばらつきが生じるため、ある意味でシクリカルな事業とも言える。そのため、文書のデジタル化事業や業務用ろ過フィルターなど、選挙サイクルに左右されない分野を強化し、収益基盤の安定化を図る計画である。
今後の事業展開においては、文書のデジタル化事業、業務用ろ過フィルター、工業用検査機材、印刷システム機材、金融汎用システム機材、選挙システム機材の6分野に注力し、業績拡大を図る方針である。各分野における注力製品やサービスは以下のとおりである。
1. 文書のデジタル化事業
(1) 民間企業の需要
民間企業では、コロナ禍の影響で在宅勤務が急増し、テレワークへの移行が進行した。テレワークの環境整備に伴い、文書や資料の電子化需要が拡大したが、この流れはアフターコロナにおいても継続している。さらに、法的整備の面からも、文書のデジタル化は必要な要素となっている。
(2) 官公庁・自治体の需要
官公庁・自治体においても、「デジタル庁」の新設をはじめ、政府は行政のデジタル化に向けた取り組みを推進しており、文書や図面、資料などの電子化需要の拡大が予測される。政府は、2026年度を目安に公文書の管理を全面的に電子化する目標を掲げている。
現状では、職員が作成する文書の大半が紙媒体であるため、紙での保存が行われている。しかし、これらを電子化することで、分類や整理にかかる労力が大幅に軽減されるという利点がある。したがって、行政のデジタル化推進に伴い、文書などの電子化に対する予算が優先的に割り当てられる見通しであり、同社はこれに対し積極的に営業活動を展開する計画である。
(3) デジタルアーカイブへの展開:「RoDA」の活用
同社は、文書のデジタル化事業で蓄積した経験と技術を活用し、デジタルアーカイブシステム「RoDA(ローダ)」を独自開発した。「RoDA」を利用することで、様々なスキャナーやデジタルカメラで作成された高精細な画像を効率的に圧縮し、高精細な状態で円滑に閲覧することが可能である。
貴重な文化遺産をインターネットに公開することで、一般利用の促進や研究連携を図りたいという需要は高いが、「RoDA」はこれらのニーズに対応できる。さらに、資料を電子化することで、スローファイアー(酸性紙劣化)による破損や散逸の危機から保護することが可能となる。同社はシステム開発から運営管理、コンテンツ作成までを一貫して支援しており、ワンストップでユーザーの課題解決に対応できる点が特長である。
「RoDA」は、美術館・博物館・図書館などで所蔵される貴重な文化資産に加え、災害や生活記録、企業保有のデジタル資産などを「次世代に伝承する」ためのツールとして様々な分野で導入が開始されており、今後の展開が期待される。
最近の採用事例としては、「宮内庁書陵部所蔵資料目録・画像公開システム」「おおさかeコレクション」「昭和女子大学図書館デジタルアーカイブ」「熊本災害デジタルアーカイブ」などがある。
2. 業務用ろ過フィルター
同社は、富士フイルム(株)の業務用ろ過フィルター「ミクロフィルター」の販売代理店事業を展開している。
富士フイルムの「ミクロフィルター」は、この市場では後発(先発は主に外資系企業)であるものの、独自の非対称膜構造による優れたろ過機能やロングライフ(長寿命)を強みに、売上を伸ばしている。同社における当該事業は2018年1月に開始され、順調に拡大した。2021年3月期はコロナ禍の影響により売上高が減少したが、2022年3月期には647百万円(前期比20.0%増)、2023年3月期は698百万円(同7.9%増)と回復した。2024年3月期は半導体業界の影響を受け、593百万円(同15.0%減)に減少したが、2025年3月期には再び半導体業界を中心に需要が回復し、売上高は732百万円(同23.4%増)となった。2026年3月期は、米国関税による半導体・電子部材向けの影響を考慮し、721百万円(同1.5%減)と予想している。需要の構造が、これまでの食品・飲料向け中心から、半導体向けなどのエレクトロニクス業界向けに移行しつつある点は特筆される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)