ブラスは、全国で直営型の貸切ゲストハウス「結婚式場」の運営を中心に、婚礼衣裳のレンタルや外食事業を主軸として展開している企業である。同社は「それぞれの新郎新婦にとって最高の結婚式を創る」というミッションを掲げ、一組一組の顧客に寄り添った質の高いサービスを提供しており、ブライダル市場において独自のポジションを確立している。事業構成としては、売上高の約98%をウエディング事業が占める単一セグメント体制となっており、東海エリアから始まった展開を現在は関東圏や関西圏、さらにはハワイでのウエディングプロデュース事業へと拡大させている。特にすべての店舗において「1チャペル・1バンケット・1オープンキッチン」を基本とした完全貸切型のゲストハウスにこだわり、他の披露宴と重なることのないプライベート感あふれる空間を提供している。
同社の強みは、第一に施設全体を一組の顧客が独占できる完全貸切型のビジネスモデルにある。他社の大規模施設では複数の披露宴が並行して行われることが多い中、同社はあえて1施設1会場に限定することで、自由度の高い演出と顧客満足度の向上を実現しており、これが好意的な口コミによる安定した集客につながっている。2025年のオリコン顧客満足度調査「ハウスウエディング」ランキングで総合第1位&ウエディングプランナー第1位を受賞している。第二の強みは、新規接客から打ち合わせ、挙式当日のアテンドまでを一人のウエディングプランナーが担当する「担当一貫制」である。このシステムにより、顧客との深い信頼関係が構築され、ニーズの多様化や個別化が進むブライダル需要に対して、きめ細やかで質の高い提案を可能にしている。第三の強みは、こうした独自のモデルを支える人材と教育体制となる。結婚式が好きという想いを持つ人材を厳選して採用しており、デビュー前には合宿形式の集中的な研修を実施するなど、属人性に頼りすぎない組織的なナレッジ共有と高い専門性の育成を両立させている。
直近の業績について、2026年7月期の第1四半期は売上高3,173百万円(前年同期比0.2%減)、営業損益は163百万円の損失(前年同期は74百万円の利益)で着地した。売上高については出店投資を再開し成長軌道へ回帰したことで概ね計画通りの着地となったが、利益面では食材費やエネルギー価格の高騰、最低賃金の引き上げによる人件費の増加、さらには事業の安全と品質確保を目的とした店舗修繕費や備品費の計上が先行したことが主な要因となっている。ただ、将来の成長に向けた必要な投資としても位置づけられており、サービスの付加価値強化といった取り組みを進めている。主要指標では、施行件数は732件(同4.6%減)と減少した一方で、受注は堅調に推移して944件(同8.4%増)、平均単価も4,032千円(同2.1%増)に上昇した。通期の連結業績予想については、売上高14,594百万円(前期比7.6%増)、営業利益773百万円(同2.8%増)を見込む。足元の受注の強さと単価の上昇、さらには業務効率の改善や仕入コストの見直しを継続する。
市場環境では、コロナ禍以降、挙式披露宴披露パーティの市場規模(約1.2兆円)は回復基調にある。婚姻件数は50万組前後と横ばいで推移するなか、市場規模に対する上位5社合計シェアは約16%、同社は1.1%のシェアとなっている。業界の寡占化が進んでない中で、今後もシェアの拡大にも注力していく。また、ナシ婚層が結婚式を挙げた場合の挙式披露宴パーティの市場規模は2.4兆円と潜在的な市場規模は現在の約2倍と想定されている。
今後の成長見通しについては、関東エリアを中心とした積極的な「新規出店」が最大の成長ドライバーとなる。同社はブランドの認知拡大に向け、毎年1店舗ペースでの安定した新規出店を計画しており、2025年9月には東京都豊島区に「ブラスブルー東京」をグランドオープンさせた。さらに、2026年夏には千葉県柏市に「アコールローリエ」、2027年春には埼玉県さいたま市に「ブラス大宮(仮称)」の開業を予定しており、東海エリアに次ぐ収益の柱として関東圏でのドミナント展開を加速させている。関東圏は地方に比べて出店コストは高いものの、集客力や単価水準が非常に高く、投資回収の面で大きな期待が持てるポジティブな市場として捉えられている。また、既存地域においても、コロナ禍を経て安定的に推移する結婚式需要に加え、インフレ対応としての価格転嫁の余地も残されており、単価向上によるさらなる収益性の改善が見込まれる。成長スピードは着実ながらも、一歩ずつ確実に出店を重ねることで、中長期的な売上と利益の拡大を図る方針である。
株主還元は、株主に対する利益還元を経営の重要課題と位置づけ、安定的かつ持続的な配当を継続することを基本方針としている。2026年7月期の年間配当金は、前期実績と同額の8円(配当性向9.1%)を予想しており、成長投資のための内部留保を確保しつつ、安定した還元を実施する姿勢を示している。また、株主優待も導入しており、半年以上の継続保有の株主に対して、保有株数によってクオカード500~3000円分、自社ギフト1000~5000円分を贈呈している。さらに特筆すべきは、2026年3月に上場10周年を迎えることを記念して実施される上場10周年記念特別優待だ。この特別優待では、2026年1月末および7月末の株主名簿に記載された株主に対し、保有株式数に応じて最大でデジタルギフト6,000円分と自社ギフト10,000円分がそれぞれ贈呈される(※今季限りの特別優待)。同社は今後も企業価値の向上に努めながら、株主への還元機会を大切にしていく考えだ。
総じて、ブラスは完全貸切型と担当一貫制という独自のサービスモデルによって、顧客から高い支持を得ている高付加価値型のブライダル企業である。足元では原材料費や人件費の高騰といった外部要因による利益の圧迫が見られるものの、それらを補って余りある新規受注の伸びと単価の上昇が確認されており、事業の底堅さが証明されている。特に今後は、未開拓の余地が大きい関東圏での出店加速が本格的な業績拡大のフェーズへと同社を導くことが期待される。上場10周年の節目を迎え、IR発信の強化や魅力的な記念優待の実施など、投資家との対話にも積極的な姿勢を見せており、PBR0.9倍近くに迫る中、今後の成長と株主還元の両立に向けた動向に注目していきたい。