会社概要
名倉宏之氏:代表取締役社長の名倉です。今回は、当社の会社概要、2025年11月期の決算概要、2026年11月期の業績予想、2026年度から2028年度中期経営計画の概要などについて説明します。
まず、会社概要について、当社は1916年に紙を抄く際に使用する網を製造する国内唯一の会社として創業し、今年で110年目を迎えます。
抄紙用網の事業からスタートし、網の用途拡大や技術の応用により徐々に事業領域を広げ、現在では4つのセグメントを主要な事業として運営しています。
当社グループの事業
産業用機能フィルター・コンベア事業は、抄紙用網の製造・販売を行う「製紙製品分野」と、ふるい分け・ろ過・搬送用の工業用金網の製造・販売を行う「産業用コンベヤーベルト・フィルター分野」で構成されています。
電子部材・フォトマスク事業は、金属材料・複合フィルム材料をエッチング加工した製品の製造・販売を行う「エッチング加工製品分野」と、半導体などの製造に用いられるパターニング原板であるフォトマスクの製造・販売を行う「フォトマスク製品分野」で構成されています。
環境・水処理関連事業は、プールおよびろ過装置の設計・販売、天然ガスパイプラインの腐食・ガス漏れを防ぐ絶縁継手の販売などを行っています。
不動産賃貸事業は、当社が保有する不動産を店舗・マンション・駐車場等として賃貸しています。
2025年11月期 連結業績
次に、2025年11月期の決算概要を説明します。売上高は、環境・水処理関連事業にて、前期まで不採算の案件を抱えており、新たな大型案件の受注については慎重に検討し控えていた影響により、前期と比べ7億9,600万円減少し、278億4,200万円となりました。
営業利益は、売上高が減少したことにより、前期と比べ2億5,600万円減少し、6億6,800万円となりました。
経常利益は、為替差益を計上したものの、営業利益が減少したことにより、前期と比べ1億8,600万円減少し、9億4,400万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純損失は、電子部材・フォトマスク事業での減損損失の計上15億7,900万円や、産業用機能フィルター・コンベア事業での特別退職金の計上5億4,400万円の影響により、前期と比べ13億4,800万円減少し、7億2,600万円となりました。
2025年11月期 業績増減要因
営業利益の増減要因について、売上高は前期と比べ7億9,600万円減少しました。売上原価は前期と比べ1億3,100万円減少しました。売上原価率の増減で分析しますと、電子部材・フォトマスク事業ではここ数年の設備投資による減価償却費負担の増加により、売上原価率が上昇しています。一方で、環境・水処理関連事業では、不採算のプール大型案件が前期までで完工しており、大幅に原価率が改善しています。
販売費および一般管理費は前期と比べ5,200万円減少しました。主に人件費が増加している一方で、人材派遣費や研究費などの経費が減少したためです。
セグメント別
セグメントごとの概要です。産業用機能フィルター・コンベア事業については、製紙製品分野では、国内は紙の需要が減少するなか、製紙会社の生産能力削減の動きも顕著になっています。海外は板紙や衛生紙、不織布などの需要は堅調ですが、特に欧州で景気後退により減少した需要が回復していません。このような状況下、国内および海外の売上高は前期と比べ減少しました。
産業用コンベヤーベルト・フィルター分野では、需要が堅調であり売上高は国内海外ともに前期並みとなりました。
営業利益は、人件費や製造費の上昇の影響により、前期と比べ減少しました。
電子部材・フォトマスク事業については、AI関連の最先端製品の需要は旺盛ですが、車載や産業機械向けの需要は軟調となっています。
そのような状況下、エッチング加工製品分野については、新規量産案件の獲得に向け努めていますが、試作から量産に至るまでに時間を要しており、売上高は前期と比べ減少しました。フォトマスク製品分野は通信デバイス向けなどが好調であり、売上高は前期と比べ増加しました。
営業利益は、減価償却費など製造費が増加したことにより、前期と比べ減少しました。
環境・水処理関連事業については、前期まで不採算の案件を抱えており、新たな大型案件の受注については慎重に検討し控えていた影響により、売上高は前期と比べ減少しましたが、不採算の案件がなくなったため、営業利益は前期と比べ増加しました。
不動産賃貸事業は、既存物件が順調に稼働しています。
2026年11月期連結業績予想
次に、2026年11月期の業績予想を説明します。
売上高は、ほぼ前期並みの276億円となる見込みです。営業利益は電子部材・フォトマスク事業において減損損失を計上した結果、減価償却費負担が軽くなることや、産業用機能フィルター・コンベア事業の静岡工場にて早期退職優遇措置制度の時限的拡充実施により、人件費負担が軽くなるため、前期と比べ2億3,200万円増加し、9億円となる見込みです。
2025年11月期配当・2026年11月期配当
配当方針である配当性向30パーセント以上かつDOE2.4パーセント以上となる配当額を検討した結果、2025年11月期の期末1株当たり配当は開示予想どおりの、1株当たり14円としました。これにより、中間配当の1株当たり14円を合わせた年間配当金は、1株当たり28円、DOEは2.4パーセントとなりました。
また、2026年11月期の配当予想は1株当たり28円としており、配当性向は120.6パーセントとなる見込みです。
2023年度〜2025年度中期経営計画振り返り
次に、2026年度から2028年度の次期中期経営計画について説明します。
前中期経営計画策定時、コロナ禍から徐々に市況が回復するという予測に基づき、経営重点課題の筆頭に収益力の回復を掲げました。同時に、ESG経営への取り組みや個人の自律意識向上といった、サステナビリティや人的資本を意識した経営にも注力していきました。
産業用機能フィルター・コンベア事業については、製紙製品分野における需要減少により売上高・営業利益ともに目標を達成することができませんでした。なお、産業用コンベヤーベルト・フィルター分野については、国内での需要が堅調であり、目標に近い実績となりました。
電子部材・フォトマスク事業については、通信デバイス向け需要などが好調であり、売上高・営業利益ともに目標を達成しました。ただし、フォトマスク製品分野では、描画装置や検査装置などが老朽化しており、その更新が事業継続の課題となっています。2025年度までに各工程の主要な装置を1台更新しており、その減価償却費負担が重くなっています。
この先を見据えますと、老朽化した装置はメーカーによる保守サービスが終了してしまうリスクがあり、主要な設備の更新を続けていくことが事業継続には不可欠となります。
2025年度に減損損失を計上したものの、中長期では需要増加への期待と事業の成長像を描くことができるため、事業と投資を継続するべきであると経営判断しました。
環境・水処理関連事業については、コロナ禍で工事が遅れた大型案件を多数同時期に施工しなければならなくなったことにより、工賃の大幅な上昇や業務の逼迫が発生しました。
一部競技用プールの施工においては、海外からの資材輸入があり、円安に伴う資材の急騰も発生し、当セグメントの利益を圧迫しました。2024年度までこれらの対応に追われた結果、2025年度には不採算の大型案件の影響はなくなりましたが、業務逼迫に伴う積極的な新規案件の営業活動も一時停滞したため、売上高・営業利益は目標を達成することができませんでした。
不動産賃貸事業については、物件の老朽化対策としての大規模修繕を計画的に実施しつつ、安定した収益を維持することができました。
なお、グループ資本効率目標であるROE5パーセント以上については、2023年度は達成できましたが、2024年度以降は5パーセント以上の維持に課題を残しました。
また、グループ株主還元目標である配当性向30パーセント以上かつDOE2.4パーセント以上については、目標どおりの状況を維持できています。
2034年度にありたい姿
当社グループ最大の課題である、収益力の回復については、特に製紙製品分野での市場縮小が想定を超えて進行したため達成が困難となりました。当社グループでは2019年度に中長期的なありたい姿(2028年度にありたい姿)を社内で設定し、それに向けた取り組みを進めていきましたが、足元の大きな環境変化を踏まえ、改めて中長期的なありたい姿を再設定し、その達成に向けた取り組みを検討し直すことにしました。
2025年1月10日に開示した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(進捗状況)について」のなかで触れています、2034年度にありたい姿(営業利益23億円・ROE8パーセント以上)の設定がその端緒です。
そこから次期中期経営計画に向けて収益力の回復を実現すべく、喫緊の課題である事業構造の見直しに取り組んだ結果として、当社静岡工場における早期退職優遇措置制度の時限的拡充や欧州事業拠点の再編、電子部材・フォトマスク事業における減損損失の計上などを実施しました。
2026年度~2028年度中期経営計画
次期中期経営計画の長期ビジョンは、「100年超え企業として、次の100年も社会が必要とする製品・サービスを生み出し続ける企業集団」です。当社グループのマテリアリティとしては次の4点を特定しています。
「生活に不可欠な製品群の提供による社会の利便性向上および環境負荷低減」「顧客ニーズに応える営業力と高品質な製品」「人的資本の開発」「グループガバナンスの強化」です。また、マテリアリティに基づき取り組むべき経営重点課題としては、「1.収益力の回復」「2.人的資本の開発」「3.グループガバナンスの強化」の3点を掲げています。
中期経営重点課題の説明
「1.収益力の回復」については、前中期経営計画から引き続き最優先課題であり、売上高などの規模拡大ではなく、稼ぐ力の向上に注力するため、現在の事業運営状況を抜本から見直し、失敗を恐れず、策を実行してみることを重視します。
「2.人的資本の開発」については、人を活かす経営に向け、与えられた仕事をこなすだけではなく、自ら考えて動ける人材を育て、チャレンジできる機会も提供していきます。
「3.グループガバナンスの強化」については、グループ全体としては、会議体の運営見直しや任意の委員会による活動によりガバナンスを強化していきます。グループ内では、子会社の再編・整理といった動きが出ており、最新の状況に合わせた最適なガバナンス体制を再検討します。
2028年度(2028年11月期)の中期目標
定量目標として、売上高288億6,900万円、営業利益15億円を目指していきます。なお、資本効率目標としてROE6.0パーセント以上、株主還元目標として配当性向30パーセント以上かつDOE2.4パーセント以上を目指します。
セグメント別_2028年度目標_詳細
セグメント別2028年度目標の詳細です。
産業用機能フィルター・コンベア事業の目標値は、売上高190億3,000万円、営業利益13億500万円としています。
事業環境として製紙製品分野では、国内はペーパーレス化が進み市場の縮小が継続しており、今後もその流れは変わらないと想定しています。海外は緩やかに市場が成長していくことが見込まれます。そのような状況下、環境配慮・サステナブル製品への関心は高まっており、得意先のマシンの駆動負荷低減への貢献や再生可能資源への対応が求められています。
産業用コンベヤーベルト・フィルター分野では、食品用コンベヤーベルトの需要は堅調であり、設備更新を含めた需要は安定して推移すると想定しています。フィルターについては、国内の不織布業界が苦境にあるなかで不織布製造向けの需要は伸び悩んでいますが、電子部材をはじめとするその他の市場における今後のシェア拡大に向けて販売強化に努めていきます。
強みとして製紙製品分野では、得意先ごとの抄造条件にあわせた豊富な製品群とその知見を有しています。
産業用コンベヤーベルト・フィルター分野では、幅広い業界に張り巡らされた販売網で得意先の状況・変化をいち早くつかみ、豊富で顧客要求に応じた製品・サービス・品質の提供で得意先の多様なニーズに応えることができます。
戦略として製紙製品分野では、海外販売で利益を稼ぐ体制への転換を図っていきます。海外はエリアごとに収益性を評価し、より販売単価が高く収益性の高いエリアでの拡販に注力していきます。また、日本と同様に需要が低迷している欧州については、人員体制の見直しや不織布向け製品をターゲットとした拡販に注力するため、フランスの販売子会社を清算し、需要の大きいドイツに新たに販売子会社を設置しました。なお、減少が続く国内では、駆動負荷低減や断紙減少、汚れ減少などといった得意先のニーズを捉えた戦略品種を取り揃え、シェアアップを図っていきます。
また、生産性向上による収益力回復に向けた取り組みも進めており、静岡工場から低コストのタイ子会社へ生産の移管を実施中です。生産性向上、すなわち原価低減・工数削減・在庫削減・納期短縮を実現していくために、多様化により増加してきた仕様数の削減、省人化設備の導入、歩留まり改善に具体的に取り組んでいきます。なお、当分野では次期中期経営計画の期間で大型の設備投資は計画していません。
産業用コンベヤーベルト・フィルター分野では、国内工業用金網の最大手で幅広い業界に販売網を持っている強みを活かし、国内の得意先の多様なニーズ・品質要求に応える製品・サービスを提供するとともに、海外においては、海外子会社製コンベヤーベルトを活用してアジア地域を中心に拡販に注力していきます。
また、国内における主力工場である大阪工場(兵庫県川西市)の建屋老朽化が進んでおり、2028年度末の完成を目指して現敷地内で建て替えを予定しています。この投資については、当分野の基幹製品の製造に関わるものであり、実施は不可欠であると経営判断しました。
電子部材・フォトマスク事業の目標値は、売上高55億400万円、営業利益7億3,300万円です。
事業環境としてエッチング加工製品分野およびフォトマスク製品分野では、電子部品業界のなかで特にAIの急速な普及やデータセンターの建設ラッシュに伴う、省エネ・高集積製品需要が増大し続けています。そのような状況下、他社より優れた開発力・生産技術力を保有し付加価値のある市場・製品の獲得や、試作認定品の短納期対応とタイムリーな量産化体制の整備が重要となっています。
なお、近年のインフレや円安の影響により、生産設備の取得価額や保守サービス料の値上げ・高騰が進んでおり、減価償却負担や保守費が増加し、損益にも影響を与えています。競合先が複数存在する市場であり、販売価格への転嫁は失注に繋がるリスクも高い状況ではありますが、コスト上昇要因を定量的に示し、得意先との価格交渉を進めていきます。
強みとしては、多様な設備を保有しているため試作から量産までを手掛け、得意先の多様なニーズに応えることができます。
戦略としてエッチング加工製品分野では、前中期経営計画まで積極的に実施してきた設備投資により技術力と生産力を向上していきました。得意先からの試作依頼から認定、量産に至るまで期間は年単位で要するうえに、途中で開発が中止となり、案件が消失してしまうことも多い業界ですが、従来対応できなかった得意先からの需要を捉え、量産獲得に邁進します。
フォトマスク製品分野では、現在得意先からの需要が旺盛な高周波デバイス・各種センサー向けフォトマスクの販売活動を強化します。また、ガラス加工品などの応用製品について、得意先の開発段階から対応すべく社内で光学設計ができる体制を構築し、拡販に注力していきます。
なお、2025年度にエッチング加工製品分野およびフォトマスク製品分野ともに減損損失を計上しており、次期中期目標の営業利益は減価償却費の減少を織り込んだ数値となっています。次期中期経営計画の期間においても、現有する装置の老朽化が進み、装置メーカーによる保守の継続が困難となりつつあるリスクへの対応として、また今後もフォトマスク製品の需要は拡大していくことが見込まれるため、フォトマスク製品分野の主要設備を順次更新していく計画としています。
環境・水処理関連事業の目標値は、売上高33億1,000万円、営業利益2億5,900万円です。
事業環境としては、国内の少子化による学校数の減少や猛暑によるプール利用の減少、水泳授業の民間委託などにより、学校プール市場は全体として減少しており、今後もその傾向は継続していくと想定しています。ただし、学校プール市場において圧倒的なシェアを有していた競合が事業から撤退したことにより、市場が縮小するよりも当社グループへの引き合いが多くなる状況は当面継続する見込みです。また、プールが設置されるアッパークラスも含めホテルの建設需要は好調であり、今後も需要は途切れることが無いと想定しています。
強みとしては、プールとろ過装置の双方を自社で取り扱う国内唯一のプール総合メーカーとして得意先のさまざまなニーズに応えることができます。特に各種材質のプールを取り揃えていることや、排水処理装置・ガス絶縁継手での海外メーカーとの協業など、競争力のある商品群を有しています。
戦略として次期中期経営計画期間においては、学校プールの需要取り込みに注力していきます。同時に、長期的には学校プールから民間のホテル・マンションプールへと注力すべき需要(市場)が移っていくことを見越し、プールとろ過装置のセット販売という強みを活かした営業強化や、生産・施工能力の拡大に努めていきます。
不動産賃貸事業の目標値は、売上高10億2,500万円、営業利益7億3,300万円です。
不動産賃貸事業では、当社の工場や社宅の跡地の有効活用を目的として運営しています。都心部に複数の物件を有し、商業施設やマンションなどとして賃貸しています。次期中期経営計画の期間においても、物件の老朽化対策としての大規模修繕を計画的に実施し、賃料維持や契約更新時の賃料アップ交渉に努めていきます。
自己株式取得
当社は2026年1月15日に17万2,000株、9,649万円を上限とした自己株式取得を、東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により実施します。
なお、参考情報ですが、2026年11月期予想の総還元性向は154.7パーセントと試算しています。