グリーンランド領有権をめぐる欧米対立は回避されたものの、ドルの信認低下は確実に進みそうです。米連邦準備制度理事会(FRB)議長人事もハト派寄りの候補が見込まれ、ドル売り基調は継続の見通し。2026年はやはりユーロ選好地合いが見込まれます。
トランプ米大統領は、グリーンランドを巡り欧州側と「将来の合意枠組み」に達したと主張し、2月1日から予定していた欧州向け関税の発動を見送る方針を決めました。欧州諸国への強硬姿勢を続けてきたなかでの方針転換であり、ダボス会議に合わせた北大西洋条約機構(NATO)事務総長との会談後に表明された点も象徴的。通商対立の激化は回避されたものの、米国の政策運営に対する不透明感は残ります。
年明け以降のユーロ・ドルは、1.1760ドル台から一時1.1570ドル台に下落。米国の雇用統計をはじめ重要経済指標に強さが示され、景気回復期待を背景としたドル買いに振れました。一方、ユーロ圏の経済指標でも景況感の改善が目立ち、ユーロは対ポンドで下げづらい展開に。グリーンランド問題でドルの信認低下によるドル売りで、ユーロは1.17ドル台半ばに持ち直しました。
こうした流れを踏まえると、市場が意識しているのは欧米対立そのものよりも、米国の政策運営に対する信認の動揺です。関税や外交を取引材料として用いる姿勢は、同盟国との関係を軋ませ、ドルの「中立的な基軸通貨」という位置づけに疑問を生じさせました。その結果、為替市場ではドル売りが広がり、相対的に政治色が薄く制度面で安定しているユーロが選好されやすい地合いとなっています。
米国では政治要因を背景に長期金利が低下し、欧州債との利回り差が縮小する局面も想定されます。市場が「成長期待」よりも「通貨や制度への信頼度」を重視する姿勢に傾けば、ドル一極集中の資金循環はさらに揺らぎやすくなります。また、FRB議長人事でホワイトハウス国家経済会議(NEC)のハセット委員長の留任を受けドル買いに振れたものの、FRBのハト派寄りをにらんだドル売りに変わりはないでしょう。
グリーンランド問題はひとまず決着を見たとはいえ、欧米対立の溝は一段と深まったとみられます。デンマークの年金基金は米国債売却に言及し、債券市場に動揺を与えました。トランプ氏も、欧州諸国が追随するなら「大規模な報復措置をとる」と焦りを隠せない様子です。米国が世界を敵に回したことで、基軸通貨の地位がどうなるか注目されます。
(吉池 威)
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