■会社概要
2. 沿革
(1) 第1ステージ:個別AI開発・DX支援による実装知見の蓄積期(2012〜2016年)
ABEJAは2012年9月、AI技術の産業活用がまだ黎明期にあった時代に創業した。創業当初の事業は、企業ごとの課題に応じた個別AI開発やDX支援が中心であったが、その裏では既に現在に通じる汎用的AIプラットフォーム構想が描かれていた。同社はプラットフォームの基盤技術を水面下で開発しつつ、まずは小売業向け画像解析サービス「ABEJA INSIGHT for Retail」に代表されるように、現場業務に直結するユースケースを通じてAIの実用性を追求していた。AIモデルの精度のほか、データの取得方法、現場オペレーションへの組み込み、導入後の改善プロセスといった“使われ続けるための条件”を実体験として蓄積していった点が重要である。2014年のSalesforce.com(現 Salesforce)
(2) 第2ステージ:「ABEJA Platform」の誕生と事業モデル転換期(2017~2019年)
2017年以降、同社は事業の本質的な転換期を迎えた。2017年5月にはNVIDIA
AIの社会実装を前提とする以上、精度や性能のみならず、説明責任、ガバナンス、継続的な管理が不可欠であるとの思想が具体化されたこれらの取り組みにより、同社は技術、運用、倫理を一体で提供する独自の差別化軸を確立した。
(3) 第3ステージ:社会インフラ型AIプラットフォームへの進化期(2020年~現在)
2020年代に入ると、同社の事業領域はさらに拡張する。ミッションクリティカル業務へのAI導入ニーズが高まるなか、同社の「運用を前提としたプラットフォーム」という思想は、大企業や公的機関との親和性を強めていった。DX推進を目的とした資本業務提携や組織基盤の強化を経て、2023年6月には東証グロース市場へ上場した。上場後は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による国家プロジェクトへの採択が相次ぎ、ポスト5G、統合知能システム、生成AI基盤モデルといった日本の次世代AIインフラ整備に深く関与する立場へと進化している。これらの案件は単なる研究開発ではなく、同社が長年培ってきたAI運用、データガバナンス、セキュリティ、説明責任といった要素が評価された結果であり、「ABEJA Platform」が社会インフラ型AI基盤として高い適合性を有していることを示している。
現在はさらに、LLMやAIモデルとロボティクスとの融合を見据え、次世代の成長テーマであるフィジカルAIへの展開を進めている。個別業務の最適化にとどまらず、社会システム全体を支えるAI基盤へと進化する段階に入ったと位置付けられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)