会社概要
設立:2014年5月
事業内容:ライトノベル及びコミックを中心とした企画・編集及びアニメ、舞台、グッズ展開を担うコンテンツプロデュース事業
登壇者名
株式会社TOブックス 代表取締役 本田武市 氏
事業紹介
本田武市氏(以下、本田):株式会社TOブックス代表取締役の本田です。よろしくお願いします。まず、当社の概要を目論見書に沿ってご説明します。
当社は「もっと物語を届ける。」という言葉をミッションや経営理念としています。物語を作るのはクリエイターの方々であり、彼らが生み出すものが知的財産、いわゆるIP(Intellectual Property)となります。かつてはコンテンツと呼ばれていましたが、現在はIPという呼称が一般的です。
クリエイターが作ったIPは原石のようなものであり、それをしっかりと物語として「紡ぐ」ことが当社の役割です。当社は出版を事業の核としており、社員の大半を編集者が占めています。編集者という言葉には「編み込む」という意味合いがあるため、「紡ぐ」という言葉が最も伝わりやすいと思います。
クリエイターが生み出したIPを紡ぐことによって、小説やコミックスといった出版物が生まれます。しかし、そのIPを出版物として書店で展開するだけでは、その広がりは限定的です。そこで、事業モデル図の右側の円で示す「届ける」というプロセスにつなげていきます。
これは、分かりやすく言えば認知の拡大を意味します。当社は、この「紡ぐ」から「届ける」までをワンストップで行う体制を構築しており、その両方の機能が社内に備わっていることが強みです。
当社の強み ①魅力的なIP群
この「紡ぐ」と「届ける」の両機能によって、出版というカテゴリーを超えたIPの価値が生まれます。当社の強みの1点目は、魅力的なIP群です。
代表的な作品として、『本好きの下剋上』は、「このライトノベルがすごい!」という賞で1位を過去3度受賞し、2023年に殿堂入りを果たしています。これは将棋における永世名人のような称号で、4度目はありません。
2024年にも『恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。』という作品で1位を受賞しており、昨年は『捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです』が2位に入るなど、読者や評論家の方々から毎年高い評価をいただいています。
また、『本好きの下剋上』は刊行から10年以上が経過した長期シリーズですが、読者層が高齢化するだけでなく、親子で楽しんでいただくなど、低年齢層にもファンが広がっています。これまでに3度アニメ化されており、次回4月からは日本テレビ系列にて、人気アニメ『名探偵コナン』の30分前の時間帯で放送されることが決定しています。
これは、当社のIPが全年齢向けであり、子どもたちにも届くコンテンツであることを示しています。深夜の時間帯で放送するアニメももちろんありますが、長く愛されるIPとして全年齢向けに展開しています。
さらに、現在テレビ東京系列で放送中の『穏やか貴族の休暇のすすめ。』は、FODで配信されているほか、TVerにおいて配信開始直後にランキング1位を獲得するなど、非常に広い層のユーザーに受け入れられています。
当社の強み ②主体的なメディアミックス戦略 ~IPプロデュース戦略~
当社の強みの2点目は、主体的なメディアミックス戦略です。
原石のIPを紡いで、出版からプロデュースし、届けるというところにつなげていくわけですが、すべてのIPがアニメ化に適しているわけではありません。必ずしもアニメとしてプロデュースし、認知を広げることが最適解ではなく、違う展開のほうがそのIPには向いていることもあります。
IP自体にはさまざまな個性がありますので、当社はそれぞれに合わせて、舞台化やグッズ展開など、多様なプロデュース戦略を練り上げています。
当社の強み ③創出・制作・展開の一体的なプロデュース体制
これを可能にしているのが、3番目の強みである「創出・制作・展開の一体的なプロデュース体制」です。プロデューサーや演出家といった専門スタッフが社内に在籍しており、IPを「紡ぐ」段階から「届ける」段階までを一気通貫で手掛けています。このビジネスモデルにより、スピーディーかつ最適な展開方法を選択することが可能です。
当社の強み ④IP価値最大化が生む収益サイクル
当社のIPは、長い時間をかけて育成されています。例えば、『穏やか貴族の休暇のすすめ。』は刊行開始から8年が経過しています。この長い期間を通じて、既存のファンだけでなく、新たな若いユーザー層を獲得しています。
さらに、こうした若いユーザーはファンにとどまらず、新たなクリエイターとしても参画してくれています。当社のIPはインターネット発の作品が多く、クリエイターの方々が積極的に情報発信されています。
中でも『本好きの下剋上』のような長期にわたる人気作品は、ファンのみなさまから多くの反応が寄せられ、すごく楽しそうな擬似的なコミュニティが形成されています。これをご覧になった新たなクリエイターの方々から、「TOブックスで作品を出版したい」といったお声をいただくことも少なくありません。
これが、当社の強みである4番目の「IP価値最大化が生む収益サイクル」につながっています。
今後の成長戦略
今後の成長戦略としては、4つのポイントを掲げています。
第1に、メディアミックスの深化です。アニメ化においても、深夜帯での放送か、全日帯での放送かなど、マーケティングに基づいた放送タイミングを検討し、データや知見を活かしてプロデュース機能をさらに進化させていきます。
第2に、安定的なIPの創出です。IPがなければ展開もできませんので、編集者を増員するなどして、IPの創出力を強化していきます。
第3に、他社IPの活用です。当社のプロデュース機能は自社IPに限定されるものではありません。出版物に限らず、人気のキャラクターやタレントの肖像権を活用した展開なども含め、さまざまなIPを手掛けていきたいと考えています。
先月には、トムス・エンタテインメント制作のテレビシリーズ『ガンバの冒険』を再編集し、劇場配給を行い、まずまずの成績を収めました。このような出版がスタートではないコンテンツもしっかりと展開していきます。
第4に、海外展開です。昨年10月には、タイの漫画専門出版社であるTAMA STUDIO CO., LTD.の株式を取得し、東南アジアの拠点としました。
タイのみならずベトナムやインドネシアといった東南アジアや中東など、人口・経済ともに成長している地域に積極的にアプローチしていきます。また、日本の漫画市場が非常に伸びている北米においても、しっかりと展開していきます。
この4つのポイントを軸に、今後もビジネスを伸ばしていければと考えています。
業績について
最後に業績についてです。当社は創業から11年ほどの会社ですが、売上は右肩上がりで進捗しています。
目論見書には記載していませんが、公表済みの通期見込みでは、今期の売上高は約106億円、営業利益は約14億円を計画しています。上期時点で営業利益に関しては進捗率が7割ほどに達しており、下期もこの勢いを維持できるよう努めていきます。
私からの説明は以上です。
質疑応答:本日の株価の受け止めについて
質問者:本日の初値の受け止めについてうかがえればと思います。
本田:投資家のみなさまの評価ですので、しっかりと受け止め、今後は企業価値の向上に努めていきます。そして、しっかりと投資家のみなさまの評価をさらに得られるようにと考えています。
質疑応答:アニメ制作における幹事社の比率と今後の目標について
質問者:メディアミックスでアニメ化を積極的にされていますが、制作委員会で幹事社を務める比率も増やしていらっしゃいます。今後の目標として、自社が主体的に制作委員会に入っていくケースは、どのくらいのペースで増やしていくイメージでしょうか?
本田:能動的に制作委員会を組んでいくケースと、当社の場合、いわゆる従来型の出版社のように映像会社からオファーをいただいて作品がメディアミックスされていく受動的な展開と2つあると思います。そこはバランスになるかと思います。
やはり制作委員会も業界のみなさまと一致団結してパートナーを組んでいきますので、当社がまだ業界を引っ張れるような規模ではありません。みなさまと協業する中でバランスを取りながら行っていくというのが現状の目標値です。
質疑応答:上場の経緯について
質問者:上場に至る経緯について、このタイミングになったことも含めて、あえて上場という選択をしようと考えられた経緯についてうかがえますか?
本田:業種的に上場企業は少ない状況があるという認識が私にはあります。その中で、このビジネスを世界に展開していくにあたり、国も含めてIPは産業として育てていくという方針があります。
私たちは新興の会社ですので、このビジネスが国の産業なのだということを若い人にもちゃんと理解してもらうためには、上場が非常にそのようなメッセージ性を出しやすい場であると考え、準備してこのタイミングになりました。
質疑応答:部門ごとの売上構成について
質問者:現在、御社は単一セグメントで開示されているかと思います。主要なサービスや商品について、書籍やメディア関連などの比率はどのような内訳になっているのでしょうか?
本田:すでに開示している資料のとおり、現状では売上の9割弱程度が出版からの売上になります。残りの1割強が、その他のアニメなどを含めた売上です。現状は出版の売上が大きなウエイトを占めていますので単一セグメントとしていますが、出版以外の売上もしっかりと伸びています。
今後、出版以外の比率が上がっていく段階では、セグメントを分けて開示し、KPIとしてもしっかりと出していく予定です。
質疑応答:アニメ関連事業の将来的な見通しについて
質問者:今後、出版以外の部門の売上が見えてくるだろうというお話がありました。おそらくアニメもその1つになると思いますが、複数の制作委員会が立ち上がっている中で、アニメ関連の売上はいつ頃、どのくらいの規模感で立ち上がってくるのか、見通しを教えてください。
本田:具体的な数字は開示情報ではないので差し控えますが、本を作るのに必要な時間はだいたい決まっています。作家さまが執筆されてから書店に並ぶまで、長くても半年ほどでしょう。
つまり、本を作ることを決めてから半年後にはその本が出ることがわかります。一方で、アニメは作り始めてから世に出るまで、だいたい3年かかります。当社のビジネスは時間軸が長く、その3年の期間のうち、2年以上は情報解禁できないこともあります。
私たちは3年の時間軸の中で、出版以外のプロデュースビジネスを構築しています。それがしっかりと芽を出してくるところは、進行状況を見て確信を持って考えていますので、そこの売上はしっかり伸ばしていけるという自信はあります。しかし、そのボリューム感に関しては回答を控えます。
質疑応答:今後の注目点、投資家へのアピールポイントについて
質問者:今日の初値としては公開価格を割ってしまいましたが、一方で4月から土曜日の夕方に『本好きの下剋上』のアニメが放送されるなど、期待材料もいくつかあるかと思います。社長から見て、今後、株主や投資家に注目してほしい業績面でのポイント、アピールできる点はありますか?
本田:当社は、カテゴリーとしては出版の売上が大きいため、出版社として見られがちですが、実際には出版以外に携わっている社員も多数おり、しっかりとビジネスを行っています。しかし、その成果が日の目を見るまでには長い時間がかかります。
先ほどの話にもありましたが、現在放送中のアニメ作品は3年前からスタートしたものです。今、私たちのスタッフが取り組んでいる仕事は、3年後のためのものです。したがって、その3年後の仕事を担っているスタッフたちの今後の活躍を、投資家のみなさまには期待していただきたいです。
質疑応答:今後特に力を入れていきたい分野について
質問者:IPの創出からアニメや舞台、グッズ展開と幅広く手掛けていらっしゃいますが、今後特に力を入れていきたい分野はありますでしょうか?
本田:もう、すべてです。すべてのスタッフが研鑽しています。
舞台からグッズになるという一方通行ではなく、それぞれが独立して展開しています。グッズが先に展開することもありますし、舞台も小さな劇場から始めて大きな劇場、そしてミュージカル、海外公演といった展開を目指しています。アニメも同様です。
それぞれのパートで、さらにより良いプロデュースを目指しており、それぞれがしっかりと規模を広げていくということを目指しています。
質疑応答:インディーゲーム分野への展開について
質問者:インディーゲームなどが最近人気ですが、IP創出の観点からそのような分野にも注目されていますでしょうか?
本田:今の当社の中にその機能はありませんが、インディーゲームの会社さまとコラボレーションする機会があり、お声がけいただければ可能性はあるかと思います。
質疑応答:海外展開に向けた戦略について
質問者:海外というキーワードもありましたが、やはり全体的に見て日本のIPに対する海外人気は高まっていると思います。御社で創出されたIPについては、本やアニメ、グッズ、舞台、それぞれ海外に向けた発信をどのように進めていきたいと考えていますか?
本田:海外と一括りにしてしまうとぼやける部分があります。やはり国や地域によって宗教も文化も人口構成も何もかもが違います。
経済成長しているエリアに対する展開や、北米という世界で一番大きなマーケットに対する展開はそれぞれ違います。マーケットに合わせた展開をしていくことが最適解になりますので、東南アジアに関しては現地に当社のビジネスを理解するパートナーを作っていきます。
北米に関してはIPに関して先進的なマーケットです。現在北米では日本の漫画市場が非常に伸びていますが、そこにさまざまな企業が日本の漫画のプラットフォームを立ち上げる状況もあります。
また、Netflixなどワールドワイドなディストリビューターや配信会社が、『ワンピース』をはじめ、さまざまな日本のIPを展開していますので、そこと協業していくモデルもあります。したがって、それぞれのマーケットに合わせたかたちで最適解を選んでいくと考えています。
質疑応答:漫画・ノベル市場の環境認識と今後の戦略について
質問者:漫画やノベルの市場環境について、どのようにお考えでしょうか? 例えば、この業界の大手であるKADOKAWAは、漫画やノベルの分野で少し苦戦している状況が見られます。
また、「なろう系」と呼ばれるジャンルでも、作品が飽和状態にあるといった見解もあります。この市場がここ数年でどのように推移しているとご覧になって、今後どのように戦っていくお考えか教えていただけますか?
本田:私は新卒で角川書店(現・KADOKAWA)に入社し、編集者と映画プロデューサー2つのキャリアを積んできました。私が入社した1998年頃から、出版は斜陽産業だと言われ続けてきました。映画もどんどん観客が減ると言われていました。
もう四半世紀前のことですが、その頃は出版物も紙しかなく、毎年数パーセントずつ市場が縮小していました。今も紙媒体は減少傾向にありますが、その中でもしっかりと伸びる会社は伸びていました。
その後、電子書籍市場が拡大し、映画に関しては配信サービスが登場するなど、ビジネスの中身が変わってきました。これは単なる媒体の変化ではなく、「映画」というビジネスから「IP」というビジネスへと、価値の見え方が変わったのだと思います。
出版も同様ですが、今後も時代の変化の中で、IPは人間の生活に欠かせないものだと考えています。衣食住とは異なりますが、その価値は普遍的だと思います。
私が見てきた変化の中で、瞬間的に価値が下がるように見えることは何度もありましたが、本質的な価値は下がらないと思っています。電子書籍もIPも、価値が下がると考える人たちがいる一方で、その価値の変化の中に新たなビジネスチャンスを見出すことができると思います。
したがって、KADOKAWAの決算が一時的に悪かったとしても、それは一過性のものであり、市場の価値そのものが下がったわけではなく、変化が起きているということだと思います。その変化を見逃さなければ、それはチャンスになると捉えています。