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DIC、最高益更新を視野に「DIC Vision 2030」フェーズ2始動 事業拡大で30年度営業利益800億円超を目指す

ハイライト

池田尚志氏(以下、池田):本日は当社説明会にご参加いただき、ありがとうございます。代表取締役 社長執行役員の池田です。はじめに2025年度決算のハイライトについてご説明します。

こちらのスライドには、2025年度全体の業績結果概要と2026年度の見通しをまとめています。

2025年度の実績は売上高が1兆522億円となりました。パッケージ用インキ、塗料用顔料、プラスチック用顔料といった主に消費財に近いボリュームゾーンの製品出荷数量が減少した影響を受け、前年度比で減収となりました。

一方、営業利益は522億円で、前年度比で77億円増加しました。売上減少の状況下でも、高付加価値製品の出荷が堅調に推移したこと、ならびに販売価格を維持する方針を徹底したスプレッド重視の施策により収益性が改善した結果です。特に顔料事業を扱うカラー&ディスプレイの収益性改善が、大きく増益に寄与しました。

親会社株主に帰属する当期純利益は324億円となり、前回の見通しからは84億円の増加、前年度比で110億円の増益となっています。

適時開示も行いましたが、従来織り込んでいなかった美術品売却による特別利益69億円を計上したことで、前回見通しを上方修正するかたちとなりました。

この結果を受け、年間配当は当初ご案内していた普通配当1株当たり120円に加えて、特別配当として80円を設定し、合計で200円としています。

2026年度の見通しです。当社を取り巻く環境は非常に厳しい状況が続いていますが、海外での需要回復が見え始めています。また、付加価値製品の販売が非常に好調であることから、これらを積極的に拡販することで今期は増収が可能と見込んでいます。

また、顔料事業の構造改革が最終段階に入っており、さらに収益力を高める施策を実施することで、営業利益は前年度比38億円増の560億円を見込んでいます。親会社株主に帰属する当期純利益は330億円を見込んでいます。

年間配当は新株主還元方針を設定し、年間普通配当を140円とする予定です。詳細は後ほどご説明します。

営業利益推移

2026年度は増収増益を見込んでいます。私は2024年の社長就任以来、2024年度と2025年度を基盤構築の期間と位置付け、2026年度に過去最高益を目指すことを経営目標の1つとして取り組んできました。

順調に2024年度、2025年度の成果を踏まえ、いよいよ2026年度は最高益の更新が視野に入っています。

また、2026年度を起点とする2030年までの長期経営計画「DIC Vision 2030」のフェーズ2を始動させる予定です。こちらも後ほど内容をご紹介します。

新株主還元方針

新株主還元方針についてお知らせします。

2025年度には120円の普通配当に加え、80円の特別配当を実施します。併せて2026年度以降は、総還元性向を40パーセント以上、配当下限を120円に設定します。

スライドにはこれまでの配当推移を示していますが、過去の経緯からもわかるように、ここ数年は100円で推移してきました。平均的な水準よりも高い配当下限を設定し、利益の成長に合わせて増配を目指す観点から、総還元性向の一定比率を還元方針として設定しています。

さらに業績や財務状況に応じて、自己株式取得などのさまざまな施策も踏まえ、株主還元に充当していく考えです。

以上が概要です。決算の詳細は浅井からご説明します。

連結損益計算書

浅井健氏(以下、浅井):取締役専務執行役員最高財務責任者の浅井です。2025年度決算および2026年度見通しの詳細をご説明します。

2025年度の連結損益計算書です。売上高と営業利益は、先ほど池田がご説明したとおりです。

営業利益以下の主要トピックスとして、営業外金融収支は2024年度に比べて15億円ほど減少しました。有利子負債の削減に努めたことや海外における金利の低下などがあり、金融収支は改善しています。

一方で、為替差損益は2024年度のマイナス29億円から23億円ほどマイナスが膨らみ、マイナス51億円となりました。

以前より申し上げていますが、新興国におけるハイパーインフレーション会計の影響が大きく、この増減のほとんどがその会計制度の影響によるものです。経常利益は442億円で、前年度比プラス16.7パーセントとなりました。

特別利益、特別損失の内訳はスライド右側に示しています。

特別利益には美術品売却益があります。こちらは昨年11月にクリスティーズのオークションで売却した分のうち、2025年度内に入金があったものを利益計上しています。利益としては69億円ですが、オークションの入金分として80億円のキャッシュ・インがありました。

関係会社株式および出資金売却益は48億円となりました。海外の中でも、特に中国における当社余剰資産、工場閉鎖後の工場資産売却などによるものが主な要因となっています。

一方、特別損失では固定資産処分損やリストラ関連退職損失などがありました。また、減損損失が13億円ほど発生しており、これは当社米国子会社の一部固定資産の減損が主な要因です。

財務体質

財務体質の状況です。まず、有利子負債についてご説明します。ネット有利子負債は2024年度と比較して331億円減少しました。

事業が好調であったことに加え、美術品売却などの資産売却を推進したことで、十分なフリーキャッシュフローを生み出すことができ、それを有利子負債の削減に充当した結果です。

一方、自己資本は2024年度と比較して695億円増加しました。増加の要因の1つに、2025年度の当期利益の増加分があります。さらに米国ドル以外の通貨に対して円安が進んだ影響で、為替換算調整勘定が296億円増加しました。

参考までに、スライド右下に記載した2024年度と2025年度の期末レートをご覧ください。米国ドルと円の為替レートはほとんど変化がありませんでしたが、ユーロと円の為替レートは161.74円から183.76円へと大幅に円安が進みました。人民元も同様に円安が進みました。

スライドには記載のない主要通貨も、おおむね円安が進行し、これにより先ほどの為替換算調整勘定にプラスの影響を与えました。その結果、ネットD/Eレシオは2024年度の1.05倍から2025年度には0.83倍へと大きく改善し、自己資本比率も37.0パーセントまで上昇しています。

一方、ROICは2024年度の3.8パーセントから2025年度は4.4パーセントへ、ROEも2024年度の5.6パーセントから2025年度は7.4パーセントへ、いずれも改善しています。

営業利益増減要因

2025年度の営業利益増減要因です。こちらの要因は非常に明確です。

2024年度の445億円からスタートし、数量品目構成で90億円のマイナスとなっています。当社の主要ボリュームゾーンであるパッケージ用インキや塗料用顔料、プラスチック用顔料などで数量が伸び悩んだことが主な要因です。

コストは45億円増加しました。日本だけでなく欧米を中心としたインフレによる、人件費の大幅な増加が影響しています。さらに2024年度に行った基幹システムの更新に伴うIT関連の償却コストが前年度比で増加したことも要因の1つとなっています。

これらのマイナス要因を、原料価格と販売価格に関連した価格ギャップによるプラス200億円が補うかたちとなりました。

なお、トランプ関税の影響は原料価格と販売価格の両方に含まれています。原料価格ではマイナス要因、販売価格では値上げによるプラス要因であり、トランプ関税の影響はほぼ相殺されている状況です。

セグメント別業績

セグメント別の業績です。スライド左側に示した売上高は、いずれも前年度に比べて減少しています。

一方、スライド右側の営業利益は、カラー&ディスプレイで2024年度にマイナス3億円の営業赤字だったところから、2025年度にはプラス50億円へと大きく利益改善し、黒字化しました。

特に海外での伸びが顕著であり、2024年度の大幅赤字から黒字化しました。これがグループ全体における増益の主な要因となっています。

パッケージング&グラフィック

製品グループごとにご説明します。パッケージング&グラフィックでは、パッケージ用インキの出荷数量の減少が影響し、売上高が減少しました。

営業利益は絶対額で6億円のマイナスとなりましたが、営業利益率は2024年度の5.6パーセントから2025年度には5.7パーセントへと改善しています。

価格ギャップや製品価格の維持を図りながら、数量をできるだけ減らさずにマージンを維持した結果であり、この方針に基づき利益率を引き上げていく方針です。

カラー&ディスプレイ

カラー&ディスプレイでは前年度から売上高が減少していますが、営業利益では構造改革が着実に実行されたことで海外が黒字に転換し、大きくプラスに転じています。

ファンクショナルプロダクツ

ファンクショナルプロダクツです。売上高が前年度比でマイナスになっていますが、これには特殊要因があります。

日本での売上高が19億円減少しており、これは国内で建築内装材事業を行っていた当社子会社DICデコールを昨年4月に事業売却したことが44億円の減収要因となっています。しかしこの要因を除けば、グループ全体では2024年度並みの売上高といえます。

一方で、営業利益は日本および海外双方で増益を達成しました。スライド下部に示した主要製品の売上高推移からもおわかりいただけるように、エポキシ樹脂、工業用テープ、UV硬化型樹脂など、デジタル分野の高付加価値製品が売上面でも成長し、利益貢献につながっています。

ファンクショナルプロダクツ 補足資料

ファンクショナルプロダクツに含まれるケミトロニクス事業本部の業績は、増収増益ではあるものの、営業利益率はまだ本来目指すべき水準には達していません。そのため、2026年度以降、さらに利益率を向上させる対策を講じていきます。

2025年度セグメント別ROIC

2024年度から開示しているセグメント別のROICです。2024年度と2025年度の2年間の平均値を示しています。

パッケージング&グラフィックは2024年度から若干下がっていますが、カラー&ディスプレイではプラスに転じています。また、ファンクショナルプロダクツは2024年度の7.0パーセントから2025年度には7.9パーセントとなりました。

全体では2024年度の3.8パーセントから2025年度は4.4パーセントに上昇しています。当社のWACCは4パーセントから5パーセントとなっており、現在はほぼWACCと同じ水準です。

今後はROICスプレッドを高めるために、2026年度以降はスライド右側に記載しているような施策に取り組み、ROICの数値を向上させていく方針です。

2026年度の業績見通し

2026年度の業績見通しです。この見通しは美術品売却による特別利益を織り込んだ数字となっています。現時点で売却が確定しているものは、こちらの数字に含まれているとご理解ください。

売上高は1兆1,000億円、営業利益は560億円で、増収増益を見込んでいます。経常利益は480億円、親会社株主に帰属する当期純利益は330億円です。EBITDAは1,110億円です。為替レートの前提は米国ドルで150円、ユーロで168円とやや円高で設定しています。

主要KPIでは、ROICが2025年度比でプラス4.7パーセントとなる一方、ROEは2025年度の7.4パーセントから2026年度には7.1パーセントと、やや減少しています。

2025年度に為替換算調整勘定が増加しており、ROEの分母であるエクイティを期首期末平均値で算出していることから、2025年度と比較して2026年度が引き上がっています。このため、親会社株主に帰属する当期純利益の水準が2025年度と2026年度で変わらないにもかかわらず、計算上ではROEが若干低下する結果となっています。

ネットD/Eレシオは引き続き有利子負債の削減に努め、0.8倍まで下げていく計画です。年間配当は先ほど池田が申し上げたとおり1株当たり140円で、総還元性向は40.2パーセントと計画しています。

2026年上期の業績見通し

2026年度上期の業績です。ご覧のとおり、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する中間純利益のすべてが前年同期比で増加しています。中間配当は1株当たり70円を予定しています。

営業利益増減要因

2026年度の営業利益増益要因です。ポイントは数量品目構成であり、この109億円をいかに達成できるかが重要な点となります。2025年度は数量の不足が要因でマイナスとなっていましたが、2026年度にはその部分を大きく取り戻す計画です。

一方で、コストではマイナス116億円と非常に大きな金額となっています。2025年度同様、人件費などのインフレによりある程度のコスト増は避けられない状況です。

また、在庫関連の評価を含めたマイナス要因については、どの程度それらのマイナス要因が実現するかは定かではないものの、一時的にコストに織り込んでいます。以上のことから、2026年度の営業利益は560億円としています。

2026年度のセグメント別業績見通し

こちらはセグメント別の業績見通しです。

ファンクショナルプロダクツ 補足資料

ファンクショナルプロダクツに含まれているケミトロニクス事業本部の業績見通しです。

2025年度は営業利益率が若干下がりましたが、2026年度は13.7パーセントまで引き上げることをミニマムの目標値に設定し、改善を図りたいと考えています。

政策保有株式の縮減

補足となりますが、こちらのスライドには政策保有株式について、当社が外部のみなさまに対してコミットしている内容をまとめています。

純資産に対する政策保有比率を、2026年度中に4パーセント以下まで引き下げることを目標に掲げています。スライドのグラフにも示したように、2025年度末時点で政策保有銘柄数は17銘柄まで削減しています。

株価全般が良好だったことから時価総額は297億円と前年度から増加しましたが、純資産に対する比率は2025年度末時点で6パーセントとなっています。2026年度中に予定している売却を完了することで、銘柄数を8銘柄程度まで削減する見通しです。

この結果、当初お約束した政策保有株式比率4パーセントを十分に下回る比率に引き下げることができると見込んでいます。私からのご説明は以上です。

トップメッセージ

池田:「DIC Vision 2030」長期経営計画のフェーズ2についてご説明します。「DIC Vision 2030」は2022年度に打ち出した、2030年度に向けた長期計画です。本日は2026年度から2030年度までの5年間の計画について説明します。

まず「DIC Vision 2030」全体の考え方をお話しします。2022年度から2025年度までのフェーズ1では、事業構成の中でも特に基盤部分の見直しを図ることで収益力をしっかりと確立させ、その収益力を基にフェーズ2で成長を実現する方針としています。

当社には大きく2つの事業があります。1つは中核事業です。非常にグローバルに展開しており、業界内でも一定のポジションを確立している、安定的にキャッシュを生み出す重要な事業です。もう1つは成長事業です。中核事業を基盤にしつつ、さらなる成長領域を目指したさまざまな製品群や技術を扱います。

この2つの事業をうまく組み合わせて成長を目指すことが当社の基本方針です。「DIC Vision 2030」ではフェーズ1で主に中核事業の基盤をしっかり固め、フェーズ2においては、これを土台に成長事業で大きな飛躍を図る方針です。

2つの事業があるメリットとして、安定的な基盤で事業運営ができるだけでなく、キャッシュを安定的に生み出し、必要な時に必要な分だけ成長事業に投下することで、バランスよく資金を運営できる点が挙げられます。

「DIC Vision 2030」は2030年度までの長期にわたる計画であることから、特に外部要因に対応するためのさまざまな要素について考える必要があります。

当社では2022年度に最初に打ち出した計画について、2024年度に見直しを行っていますが、今後もこのような外部環境に応じた臨機応変な対応が求められます。

2030年度の目標達成に向けて複数の戦略オプションを持ち、状況に応じて迅速に切り替えていくことが必要です。また、さまざまなリスクをすべて想定することは難しいものの、発生したリスクに柔軟かつ大胆に対応することでリスク対応力を高めていきます。

フェーズ2について、スライドに4つのポイントを掲げています。その1つ目が、中核事業の質的転換と成長事業の拡大加速です。中核事業の質的転換を基盤とし、その上に成長事業をどのように乗せていくか、いくつかのオプションを検討しています。

そこでポイントの2つ目として、戦略の複線化によるリスクへの対応を掲げています。具体的には、中核事業のオーガニック成長を第一位に置きながらも、それに代わる、もしくはさらに推進するためのM&AやCVCを活用したインオーガニックな成長も同時に目指します。

両者を重ね合わせることで、仮に1つの計画が計画どおりに進捗しない場合でも、別のインオーガニック戦略で補完できるような仕組みを構築します。うまく相乗効果が得られれば「1+1」が2以上となるようなシナジーを生み出すことを目指しています。

さらに、すべてを計画に織り込んでいるわけではありませんが、さまざまな戦略が多様な状況下で履行困難になった場合には、発動可能な再構築策やより大胆なポートフォリオの入れ替え策、コスト削減策などを準備しています。急激な状況変化にも対応しながら、目標数値の達成を目指します。

このように2030年度に向けたKPIを確実に達成することに加え、ポイントの3つ目にもある資本効率の改善によるキャッシュ創出の最大化に取り組みます。さらにポイントの4つ目に掲げた、株主をはじめとするステークホルダーに適切かつ十分に還元できる体制構築を実現していきます。以上が長期計画の骨子です。

新計画値と見直しの背景

フェーズ1の振り返りとして、何点かお話しします。先ほども申し上げたように、2024年2月には私の社長就任と同時にフェーズ1の計画見直しを行いました。フェーズ1の最終年度である2025年度の当初計画もその際に見直しています。

この背景として、まず1つにフェーズ1ではさまざまな成長の可能性を目指し、テーマ探索を広義に広い範囲で行った点があります。その結果、見えてきた可能性もある一方で、資源や経営リソースの分散化を招いた実情がありました。

もう1つは、外部環境の急激な変化です。新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ情勢など、大きな想定外の出来事が影響しました。それに加え、運悪くヨーロッパで行った買収効果が発揮されるまでに時間がかかったことなどもあり、計画の変更を余儀なくされました。

計画見直しの際には、2030年度の計画値はフェーズ2であらためて公表することとしていました。本日はその計画についても発表します。

2025年度(Phase1最終年度)計画と実績

先ほど決算発表でご説明したように、2025年度の営業利益は、2024年度のフェーズ1で修正目標としていた400億円を大きく超過することができました。このことから、フェーズ1の基盤は達成できたと考えています。

DIC Vision 2030 Phase1の取り組み

こちらのスライドはその具体的な内容です。中核事業と成長事業のいずれも、質的変革を達成することができました。

中核事業の代表例として挙げられる顔料事業は、非常に厳しい状況にありました。しかし、生産拠点の統廃合や人員の合理化などを実施し、収益基盤を着実に強化することができました。

成長事業では可能性のある分野を絞り込み、特に半導体やバッテリー材料に関しては「ケミトロニクス」という1つの組織に集約しました。この中でも特に成長期待が大きい半導体基板・封止材用エポキシ樹脂では、設備投資を決定しています。このように成長に向けた基盤を確実に整えられたと考えています。

併せて不採算事業やノンコア事業からの撤退も順次実施しており、星光PMCをはじめとして液晶材料、住設材料、アルキルフェノールなども、この期間内に撤退を進めました。これにより、よりスリムで筋肉質な体制へと変革できたと考えています。

2030年におけるコミットメント

フェーズ1の結果を踏まえた、フェーズ2の考え方についてお話しします。2030年度に向けたコミットメントとして、スライドに3つの指標を示しています。

第1の指標として、営業利益を800億円以上とする目標を掲げています。これは中核事業と成長事業の両輪がうまく組み合わさることで実現可能なビジネスの基盤だと捉えています。

一方で現状のROEは7パーセント台にとどまっており、経営陣としても決して満足できるレベルにはないとの認識を持っています。そこで第2の指標として、資本効率をさらに改善することで、ROEを10パーセント、少なくとも10パーセント以上にまで引き上げます。

第3の指標は総還元性向40パーセント以上です。決算説明の際にもご説明しましたが、この総還元性向は2026年度以降に限らず2030年度に向けて基本方針として掲げ、株主還元を進めていきます。

2030年におけるコミットメント

以上のコミットメントについて掘り下げてご説明します。事業面では、目標として掲げる営業利益800億円の内訳を、中核事業と成長事業の2つに分けて考えています。

中核事業は、我々の事業の基盤を成すものであり、非常にグローバルに展開している事業群です。

一方、成長事業は新たな事業の柱と位置付けていますが、まったく新しい領域に飛び込むわけではありません。現在の事業基盤を活かし、その周辺や起点から少し広がりを持たせた事業群として構築していく考え方です。これらを合わせてまずは800億円を目標としています。

「まず」と申し上げたのは、これ以外にも施策を持っているためです。戦略の複線化としてのインオーガニック成長を目指す取り組みや、すでに計画している再構築プランなども含め、これらを通じて800億円以上の上積みを目指していく方針です。

ただし、上積みについては初めから具体的な金額を定めているわけではありません。まずは重層構造を組み立てながら確実に800億円を実現することを最優先とし、そこにさらなる成長を乗せていく考えです。

2030年におけるコミットメント

フェーズ1では、2年前に2024年度から2026年度にかけてのキャッシュアロケーション計画を発表しました。今回も2026年度から2030年度に向けたフェーズ2のキャッシュアロケーション計画をスライドのように策定しています。

キャッシュ・インとして、営業キャッシュフローに加え、さまざまな資産売却等をさらに進める予定です。それによって得られたキャッシュを、通常投資に加え、戦略投資、株主還元、有利子負債削減に充てていく方針です。

フェーズ1では戦略投資額を200億円程度に設定していました。これはフェーズ1以前の2021年度から2022年度に大きな戦略投資やM&Aを進めた結果、ここ数年をその刈り取り期間としていたためです。

フェーズ2では再び成長に向けて積極的に投資を進める方針であり、「900億円+α」としています。資産売却等により追加資金が得られた場合、この「+α」に充当する考えです。

株主還元は総還元性向40パーセント以上を基準とし、1株当たり120円を下限とします。その上で、「+α」のキャッシュ・インがあった際には機動的に追加の株主還元を行う方針です。

このような資本の適正化と収益拡大により、ROE10パーセント以上を目指します。

目指すポートフォリオ像

目指す事業ポートフォリオ像についてご説明します。中核事業と成長事業は、それぞれ異なる考え方で事業を伸ばしていく方針です。

中核事業では、インキ・パッケージ材料、顔料、ポリマを挙げています。いずれも当社の強みとしてグローバルに展開している、もしくはグローバル展開の可能性を秘めている製品群です。

これらに共通して取り組んでいることは、質的転換の推進です。2024年度と2025年度の2年間で、さまざまな外部環境の変化を受けながらも、これらの中核事業が基盤となって確実に収益を拡大しています。特に顔料分野では大胆な質的転換や構造改革を進めてきました。

同様に、今後さらに事業を安定的に運営していくためにも、質的転換が必要であると認識しています。事業を継続的に運営する基盤であると同時に、収益をさらに拡大するために、より大胆に構造改革へ踏み込んでいきます。

また、サステナビリティや高機能製品への転換など、製品ポートフォリオでも質的転換を図り、安定的に利益を創出できるよう取り組んでいきます。

成長事業では、ファンクショナルプロダクツの中に含まれるケミトロニクスやコンポジット/デバイスなどの製品群を中心にさらに発展させ、素材にとどまらない事業展開を目指していきます。

その中で展開すべき重要な領域として半導体、バッテリー、フィジカルAIを設定しています。当社は複数のユニークな製品を持っていますが、成長が期待される領域にこれらを集約させ、2030年度以降を見据えたより飛躍的な成長を目指していきたいと考えています。

パッケージング&グラフィック事業部門戦略

各事業の考え方をご説明します。まず、パッケージング&グラフィックです。インキ・パッケージ材料の基本的な考え方は、構造改革と並行して製品などの質的変革を図ることです。

事業環境については現在の状況を楽観視しているわけではありません。市場が成熟している地域が多く、価格競争も厳しくなっています。さらにグローバルな地政学的リスクを考慮すると、経済成長を安定的に見込むことが難しい状況もあります。

そのような中で安定的な運営を行うために、高機能かつ製品の枠にとらわれないソリューション提供、環境対応型製品の開発や展開などに取り組みます。

当社では、この分野や製品群において、お客さまから選ばれるポジションを確保することが最も重要だと考えています。

インキ・パッケージ材料は、さまざまな環境変化がある中でも生活や社会にとって不可欠な材料であることに変わりはありません。特に食品飲料パッケージはどの地域や国においても必要不可欠なものであり、今後さらに発展する地域においては確実に需要が見込まれるものです。

状況に応じて浮き沈みがあったり、競争環境の中で価格競争が生じたりすることもありますが、お客さまに選ばれるためには、幅広いソリューションを持っているかどうかが重要です。

この「ソリューション」は、製品としてのインキ以外に、接着剤やコーティング剤といった製品のみならず、さまざまなお客さまのニーズへの対応、未来を見据えたソリューションを指します。このようなソリューションの幅広さをご評価いただき、選んでいただくことがますます重要になってきています。

また、当社の業界のみならず、お客さまの業界でもさまざまなかたちで事業再編が進んでいます。そこではより強く、幅広く、安定的に製品を供給できることが求められており、そのニーズに応えることが重要です。

一方で、さらなる成長の可能性がまだ十分に残されている地域もあります。アジア、中東、中南米、アフリカなどでは、2030年度以降も見据えた需要拡大の余地がまだ大きくあると考えています。

ただし、従来と同じ製品を同じように生産するだけでは、コスト競争力やタイミングの面で必ずしも対応できるわけではありませんので、さまざまな工夫が必要だと考えています。これらを踏まえ、新たな基盤作りに取り組んでいきたいと思います。

基盤の整備としては、当社の印刷インキにはパッケージ用と出版用がありますが、出版用インキに関しては、需要の減少や消失に応じて適切にライトサイジングを進めていきます。場合によってはより大胆な構造改革を行い、収益基盤をスリム化することも検討しています。

カラー&ディスプレイ事業部門戦略

顔料を主力とするカラー&ディスプレイです。このセグメントでは構造改革が着実に進んでいますが、先ほど決算説明でもお伝えしたとおり、例えばROICといった指標で見た場合に、単体事業としての収益力が必ずしも満足できるレベルには達していないことは十分に認識しています。

今一度、本来の生産効率や資本効率を向上させる取り組みが必要だと考えており、社内のサプライチェーンのさらなる圧縮や統合、生産拠点などを含めた全体のフットプリントの見直しに取り組む余地もまだ十分にあります。

また、ROICの観点からは、運転資本をはじめとするキャッシュマネジメントにおいても大きな改善の余地があると見ています。そのため、営業利益だけではなく、キャッシュ面からの改善も引き続き進めていきます。

また、業界およびお客さまの市場環境は、インキと似たような状況にあります。同業者間での再編が進む一方で、需要サイドにおいてもさまざまな再編が生じています。

インキと同様に、表向きの需要の浮き沈みや競争環境における価格推移だけを見るのではなく、いかに未来に向けて環境や社会価値に貢献する提案ができるかという点が重要です。

さらに、これに伴って変化するグローバルな法規制にも対応する必要があります。特に顔料は非常に厳しい管理が求められますが、単に法規制に対応するだけでなく、業界のリーダーとして率先し、安心・安全な素材を提供していきます。

このように選ばれるメーカーやサプライヤーとなるべく取り組みを進め、競争環境が厳しくなる中においてもポジションの維持を図っていきます。

また、当社にはディスプレイ、デジタル、スペシャリティといった成長余力があり、かつ利益率の高い製品群も取りそろえています。これらの品ぞろえを集中的に拡大・展開し、利益率の底上げを図りたいと考えています。

欧州の需要は回復の見通しが立たない状況が続いており、関税の影響を回避しながら進めている状況です。アメリカにおいては「バイ・アメリカン」施策に対応するかたちで、アメリカで生産している点を大きなアドバンテージとして活かした取り組みを進めています。

このような外部環境の変化においても、当社の強みを活かした施策を実行することで、十分に戦える余力があると確信しています。

ファンクショナルプロダクツ事業部門戦略 (中核事業:パフォーマンスマテリアル、スペシャリティコンパウンド)

ファンクショナルプロダクツです。この中でも特に中核事業として位置付けているポリマは、環境対応や高付加価値製品を多彩に取りそろえています。

成長地域であるアジアでは、特に中国やインドでの投資を行っています。現地の旺盛な需要を取り込むことで、環境対応を中心にこの地域の成長を確実に捉えることを柱としています。

また、高機能製品や環境配慮型製品を、適切なタイミングで適切な需要に対応させていきます。環境対応には一進一退の状況が見られますが、先行しているヨーロッパで実績を積み、それを順次世界展開していく方針で取り組んでいきます。

また、市場を考える上では、成長地域と成熟地域を見極めながら、生産体制の再構築・最適化を図ることが必要不可欠だと考えています。2030年度に向けて順次実行していきます。

成長事業の確立に向けた取り組み

成長事業の確立に向けた取り組みです。基本的な考え方ですが、スライド左側に示した図のように、成長事業は、現在当社が持つ半導体向けを主とするさまざまな製品群を核としています。

今後の新たな事業分野として、その強みを活かした周辺領域のバッテリー、デバイスやソリューションを組み合わせながら領域も広げていきます。そして、市場の発展性としてより拡大が見込まれるフィジカルAIの領域を狙っていく考え方です。

これらの各事業の段階に応じて、資金の投じ方も変えていきます。半導体、バッテリー、フィジカルAIは、基本的にボルトオンのM&Aをベースとしつつ、オーガニックな設備投資も視野に入れながら着実に自社製品を拡大していきます。

それに加え、昨日発表した当社独自のファンドを運営し、有望なスタートアップとともに市場開拓および社会実装を進めていきます。フィジカルAIの成長に積極的に乗じるためにも、資金を積極的に投じていく方針です。

ファンクショナルプロダクツ事業部門戦略(ケミトロニクス、コンポジット/デバイス、他)

半導体分野の展開についてもう少し詳しくご説明します。スライドは、主にケミトロニクスやコンポジット/デバイスの状況をまとめたものです。

特に半導体分野においては、川上の前工程から川下の実装工程に至るまで、さまざまな領域に製品群を用意していますが、それぞれの製品群でソリューションとしてレベルアップさせていきます。

後工程から実装に関わる部分では加工度をさらに高めるほか、新製品や新機能を投入することで、新たな製品群を創出していきたいと考えています。その際の基盤となるのは、伝送ロスの低減です。すなわち当社が有する高速通信対応の強みを活かした拡大戦略です。

一方、前工程においては、中空糸膜やフォトレジスト用樹脂など、高品質化、高純度化、品質安定化といった厳格な管理が求められる分野での当社製品の優位性を活かし、成長を目指します。

ファンクショナルプロダクツ事業部門戦略(ケミトロニクス、コンポジット/デバイス、他)

バッテリー分野も同様で、複数の製品をすでに保有していますが、これらを組み合わせたりデバイス化したりすることで、今後多様に変化するバッテリー仕様に対応した製品の提供を目指していきたいと考えています。

ファンクショナルプロダクツ事業部門戦略(ケミトロニクス、コンポジット/デバイス、他)

こちらのスライドでは、フィジカルAIに関するいくつかの考え方を提示しています。

この分野については、まだ発展の方向性が明確には見通せない部分があります。スライド右側には、当社が現在狙っている適用分野を記載しています。

フィジカルAIが盛んに注目されていますが、現状としては、AIをはじめとするソフトウェアや半導体が先行し、急速に発展している状況です。

これらの進展はさまざまなかたちで社会に実装され、今後ますます当社の身近なところで増えていくことが考えられますが、社会実装が進むほどに、我々が直に触れる素材や物質が重要性を増すと考えています。

当社はこの分野における素材やモジュールのサプライヤーとして不可欠なポジションを確立したいと考えています。

そのためには社会実装化の過程で実装の最前線に立ち、積極的に関与することが重要です。「Direct to Society」の理念のもと、自ら素材を最終製品にして社会に直接訴求するアプローチを通じて、実装の現場に入り込み、機会を見つけ出し、創り出すことで、フィジカルAI分野における素材・モジュールの不可欠な存在となることを目指しています。

現在もいくつかの事業展開が進んでおり、今後はスタートアップ投資なども含めさらなる展開を図っていきたいと考えています。

Phase2戦略を支える施策と体制

フェーズ2戦略を支える施策と体制です。特に重要なのは、先ほど申し上げた「Direct to Society」の視点で取り組むこと、それを支える人的資本経営・人的資本の充実です。

経営体制の面では、今年からスタートしたグローバルオペレーティングモデルと呼ばれるグローバル経営体制により、地域を超え、グローバルに必要な箇所に必要なリソースを投じることで成長を図っていきます。

2030年度までのDICグループ連結計画値

以上の施策を踏まえた2030年度までの連結計画値とKPIです。

売上高は1兆2,400億円以上、営業利益は800億円以上としています。いずれも「以上」としているのは、確実なコミットメントレベルとして設定し、さらに重層的に組み合わせることで、それ以上の数字を目指す趣旨です。

ROICではセグメント別の目標値という考え方は採用していませんが、全社合計で6.0パーセント以上、ROEは10.0パーセント以上を計画しています。D/Eレシオは、今期で0.8倍が見えていますので、0.8倍以下に引き下げることを目標として掲げています。

以上が、私からのご説明となります。

質疑応答:2026年度予想における需要増の要因について

質問者:2026年度の業績予想では数量品目構成で109億円のプラスとなっています。

2025年度の実績はマイナス90億円で、第4四半期単独で見ても30億円ほどのマイナスでした。海外需要の回復が見えているとお話はあったものの、2026年度はかなりの数量増が見込まれています。これについて具体的にどのような要因が見えているのか詳しく教えてください。

仮に予想どおりに進捗しなかった場合、コストのマイナス116億円をどの程度減らせるのかも含めてお聞かせください。

池田:需要回復を見込んでいる分野は海外ですが、特定の地域というよりは、製品構成によって異なります。例えば、顔料では塗料用は全般的にそれほど回復していませんが、スペシャリティ用はかなり回復しています。

ディスプレイ用は、昨年度に回復の見込みがありましたがずれ込んでおり、今年度に入ってから回復の兆しが見えています。エレクトロニクス関連では、第1四半期から数量の進捗がかなり見えてきています。このように地域や製品・市場の掛け合わせになると考えています。計画においては特に成長が強い分野の比重が大きくなっています。

一方で、リスクの観点ではご指摘のとおり懸念もあります。例えば、顔料では通期で前年度比3パーセント程度の回復を見込んでいます。一部には増減の可能性がありますが、仮に3パーセントに届かなかった場合も、それに対するさまざまな対応策はすでに検討しています。

数量増が賄えない場合には、コスト増となる部分を圧縮することにより、2つの要素をうまくバランスさせることでカバーしていく考えです。

また、コスト増には需要増に応じた変動コストなども含まれており、自動的に下がる部分もあるため、ある程度相殺することでマネジメントが可能と考えています。

質疑応答:パッケージや顔料における価格下落プレッシャーについて

質問者:現在の収益環境や需要面は厳しい状況だと思いますが、原料面では比較的落ち着いていると考えています。全般的にパッケージや顔料についての価格下落プレッシャーは特にないという認識でよろしいでしょうか?

池田:プレッシャーはかなりあります。2024年度、2025年度は全体のギャップのサイクル性を考えると、多少なりともプラスサイドに向かっていた部分があります。

大口のお客さまを中心に、原料価格に応じて取り決めをしている部分もありますので、そのような意味では価格調整を行うケースも出てきます。価格に対するプレッシャーは増しており、2026年度にも一部織り込んでいます。

質疑応答:カラー&ディスプレイ、顔料事業の回復見通しについて

質問者:中核事業である顔料事業のさらなる改善についてご説明がありました。BASF社の顔料事業を買収する前はEBITで100億円程度だったと思いますが、ロシア・ウクライナ情勢の影響でかなり悪化し、現在は回復しつつあるものの、以前のような水準には達していません。この背景とDICとのシナジーについて教えてください。

池田:BASF社の買収前と同じ状態に戻ることはない前提として動いています。

理由の1つには、ドイツにある資産およびドイツ市場を前提とした当時の状況がありましたが、その後ヨーロッパ全体の経済環境そのものが大きく変わり、需要が中国をはじめアジア地域にシフトしています。

それに伴い、当社のお客さまだけでなく、お客さまの先にいるメーカーの生産状況や今後の見通しも大きく変化しています。そのため、アセットベースで比較しても収益のバランスは当時とは異なる段階に入っていると認識しています。

新たな環境に対応するため、アセットベースの変革を進めていますが、即座に対応できない部分もあり時間を要しています。この変革を過去2年にわたり進めてきましたが、今後も需要や市場の状況に合わせた変更を継続していく必要があると考えています。

浅井:数字面では、2030年度までの計画としてカラー&ディスプレイセグメントで営業利益160億円以上を目指している現状です。

ご指摘のとおり、BASF社買収時から考えると当時の水準にはまだ十分達していない状況です。当初の買収時に想定していた金額には到達していないものの、製品構成においてはボリュームゾーンからより付加価値の高い分野へとシフトしています。欧米ではスペシャリティ関連、アジアを中心とした地域ではディスプレイ関連がその例です。

また、フェーズ2の部分でもお話ししたように、顔料を色材としてだけではなく、機能材料という観点から捉えた製品開発を進めています。今後5年間で市場へ投入し、売上高の規模だけでなく、機能面を重視した利益貢献を目指していきます。このような製品群については2030年以降にさらなる成長を期待したいと考えています。

質疑応答:2026年度の美術品売却益について

質問者:2026年度の業績予想の中で、美術品売却益はすでに収益が見込まれているものだけが織り込まれているとご説明がありました。これは2025年度に売却し、年度内のキャッシュ・インがなかったものだけを指しているのでしょうか? その場合、2026年度の売却分は追加で乗ってくると考えてよいのかご説明をお願いします。

浅井:美術品売却益については、1つはご指摘のとおり、2025年度にオークションが終了し、2025年度内に入金された分は2025年度に利益計上しています。2026年度に入金される売却益は、現在の2026年度見通しに織り込んでいます。

さらに、クリスティーズは2026年度中も引き続き世界各国でオークションを予定しています。そのオークションのプロセスの中で売却予定のものについては、金額として見積もりが可能なものを2026年度の見通しに含めています。

ただし、クリスティーズ以外での売却分については、今後の売却プロセスなどが進行中となっています。そのため、織り込めるものは反映していますが、未確定なものは現時点では2026年度見通しには含んでいません。

ただし、もともとの美術品の簿価が高いものは、おおむねクリスティーズのオークションで売買されています。そのため、今後クリスティーズ以外で売却するものについては、もともとの簿価が高額なものではないと考えています。

おそらく時価においてもそれほど高い時価評価がつくものではなく、売却益が大幅に増加することはないと見込んでいます。現時点の見通しでは、追加で大きな売却益が生じることはないと考えています。

質疑応答:フェーズ2における成長事業の分野別寄与について

質問者:「DIC Vision 2030」のフェーズ2では、成長事業で2025年度実績の95億円から2030年度には170億円へと伸ばす計画となっています。分野として半導体・バッテリー・フィジカルAIと大きく分類できると思いますが、それぞれの分野がどの程度数値面で寄与するのかご説明をお願いします。

池田:各製品群の内訳については回答を控えますが、現在および将来的にも利益の過半を占めるのは、エポキシ樹脂や工業用テープなどが含まれるケミトロニクスだと考えています。

2026年度の計画でも営業利益93億円を見込んでおり、この成長が中核となる見込みです。おそらく、全体の7割程度がケミトロニクスで占められると見ています。

それ以外にフォトレジスト用樹脂や中空糸膜モジュールなど、非常に高い利益率を持つ製品もあります。

これらは成長が軌道に乗ることで、利益貢献が非常に大きくなると考えています。その結果、これらの利益は先ほど申し上げたエポキシ樹脂などに次いで増加していく大まかな見通しを持っています。

質疑応答:顔料市場の環境と今後の見通しについて

質問者:顔料市場の環境や今後の見通しについておうかがいします。昨年10月から12月期の顔料の売上では、ユーロベースでまだマイナスの状況が続いていると思います。海外顔料の出荷はいつ頃回復する予定でしょうか?

また、関税を含めてインド企業や中国企業との競争環境に変化があれば教えてください。

池田:おっしゃるとおり、顔料の市場環境には不確定な要素が多くあります。全体としては需要が回復局面にあり、2018年度を1つのピークとすると、緩やかではありますが2028年度頃に向けて回復すると見込んでいます。

一方で、直近の影響としては、お客さまが在庫を積み増すタイミングや、それが過剰になった場合の調整が期によって発生する可能性はあります。当社の2025年度の傾向としては、第1四半期にお客さまが在庫を大幅に増やし、その反動が下期に現れた状況です。

そのような意味からも、短期的なトレンドと長期的なトレンドを区別して丁寧に見ていく必要があると考えています。直近の2026年度は、2025年度のさまざまな増減要因を踏まえると、第2四半期頃から前年同期比でプラスに転じるのではないかと見込んでいます。

回復傾向の観点から、地域としてはアジアが先行して全体を支えている傾向があります。アメリカは関税などの影響により状況が少し見えにくい局面にありますが、それでも比較的持ちこたえている印象です。ただし、全体的にはややスローな動きとなっています。

欧州については、製品によって若干異なる部分はありますが、緩やかな回復傾向にあると考えています。

一方で、個別要因として、アメリカでは当社が以前保有していた工場が、売却後に閉鎖された影響も見られます。部分的には追い風になる要因もあると見ています。また、ディスプレイに関しては第2四半期以降に確実に回復する見立てです。

関税やインド企業、中国企業の影響については、今後EUとインド間のFTAなどを含めた影響が出てくる可能性はあると考えられます。現時点ではまだそのような結果が出てきていませんが、今後も注視する必要があると考えています。

アメリカの関税に関しては、基本的には当社はサーチャージというかたちで返しており、それによる大幅な減益には至っていません。

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