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理研ビタミン、高純度乳化剤を日本で初めて量産 天然物の有効活用で経営を多角化、3年間で250億円の設備投資を計画

目次

井上与志也氏(以下、井上):みなさま、こんにちは。理研ビタミン株式会社広報IR部長の井上です。本日はご視聴いただき、ありがとうございます。本日の内容はスライドのとおりです。

本日のポイント

井上:本日みなさまにお伝えしたいポイントは3つです。1つ目は、当社が天然物の有効利用と独自の技術を活用し、豊かな暮らしに貢献する企業であることです。

2つ目は、当社が食品・改良剤・ヘルスケアの3分野において、幅広い価値をご提供していることです。

3つ目は、現状国内では持続的な成長を目指しつつ、海外では若干の課題を抱えているものの、しっかりと対応を進めながら体制を強化していく方針であることです。

会社概要

井上:会社概要です。当社は東証プライム市場に上場する食品メーカーです。設立は1949年で、今年で創業77年です。本社は東京にあります。2025年3月期の連結売上高は955億円で、プライム市場の食品セクターでは中堅企業に該当します。

理研ビタミンの理念

井上:当社の理念です。企業理念や経営理念の他に、中長期ビジョンなどもありますが、当社の従業員に最も共感されているものは「天然物の有効利用を図る」です。この理念は、研究を愛する当社の従業員の心に深く根づいていると考えています。

売上高・営業利益率推移

井上:直近10数年の売上高と営業利益率の推移です。2021年3月期に業績を大きく落とした後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響や原材料高騰などがありましたが、着実に回復し、現在は堅実に成長しています。

株価推移

井上:株価についてです。当社の決算発表日である2月12日時点での株価は3,275円でしたが、業績予想を一部変更したことも影響して、2月20日の終値は3,000円となっています。ここ3年間の推移を見ると、株価は着実に上がってきており、TOPIXと同じような動きをしています。

理研ビタミンのルーツ

井上:当社の歴史とコア事業についてご説明します。当社は、理化学研究所のビタミン研究室をルーツとしています。戦前、理化学研究所は自らの研究資金を捻出するために、多くの会社を作って研究資金を稼いでいました。

戦後、その中の1社から天然ビタミンAの事業を引き継ぎ、当社が設立されました。設立当初の社名である理研ビタミン油株式会社には「油」を含んでいましたが、1980年に現在の社名に変更しました。

「ビタミン油」という社名は、当時ビタミンAを多く含む油を「ビタミン油」と呼んでいたことに由来します。そのため、「理化学研究所が製造するビタミン油の会社」という意味で、このような社名となりました。

祖業の天然ビタミンA事業

井上:ビタミンAは健康を維持するために重要な栄養素で、魚の肝臓や内臓に多く含まれています。ビタミンということもあり、体に良いイメージを持っていただけたらうれしいです。

そのため、創業者たちは全国の魚市場を回り、捨てられる魚の内臓や肝臓を回収して、そこからビタミンAを含む肝油を抽出し販売していました。この祖業が、当社の理念を形成しています。すなわち、捨てられていた天然物を「もったいない」と活かし、社会に貢献するものを作るという理念です。

さらにその後は、濃縮して販売するだけでなく、お客さまの要望に応じた形に加工する技術を磨き上げ、それが現在の技術につながっています。

多角化のきっかけ

井上:現在の体制に至るまでには、大きな事業的危機がありました。天然ビタミンAは当初非常によく売れていましたが、1950年代に海外の他社が合成ビタミンAの量産に成功しました。この合成技術により、以前よりはるかに大量かつ安価に製造できるようになり、当社にとって事業存続の危機となりました。

このような状況を受け、当社はそれまでに培った技術を活用してなんとか生き残る方法を模索し、新規事業の開拓を進めました。

改良剤事業と食品事業の成り立ち

井上:そこで生まれたのが、現在に続く改良剤と食品です。改良剤事業は、ビタミンAを製造する際に用いる分子蒸留技術を活用し、スライドに記載の「蒸留モノグリセライド」という高純度の乳化剤を日本で初めて量産したことから始まりました。

一方、食品事業はエキスの抽出から始まりました。これは、食品残さなどの未利用資源を抽出・精製・濃縮技術で有効活用するという取り組みです。当時は捕鯨が盛んで、加工後に残った肉を煮出してエキスを取り出し、そのころ普及し始めていた即席麺のスープに活用したことが始まりです。

ちなみに、現在は鯨肉のエキスは製造していませんが、カツオやホタテのエキスなどの製造を行っており、これらの技術はしっかりと受け継がれています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):元・ファンドマネージャー/元・ディーラーの坂本です。質問を挟みながらお聞きします。まず、天然物、すなわち魚の内臓や海藻といった天然の原料を使った抽出について、原料調達の安定性をうかがいたいです。漁獲量の減少や、海外で魚を食べる国が増えているなど、関連する状況をご教示ください。

井上:現在、天然ビタミンAについてはすでに事業を終了しており、魚の内臓の仕入れも行っていません。ただし、漁獲量に関連する点として、わかめが挙げられます。当社では「ふえるわかめちゃん」などで多くの海藻を使用していますが、生産量の減少を背景に、海藻の安定的な調達のためのさまざまな研究を進めています。

また、天然物全般については、多種多様な天然原料を国内外から仕入れています。そのため、調達部門の人員を強化し、安定的な調達を図っています。

坂本:御社は分子蒸留技術を日本で初めて実現したとのことですが、この技術の現在の優位性についてはいかがでしょうか? 得意とされている技術であるかも含めて教えてください。

井上:残念ながら、この技術自体は現在ではかなり古いものとなり、一般化しているため、当社の大きな強みとはいえません。ただし、抽出した成分を他の要素と組み合わせてお客さまの課題に的確に対応するソフト面での優位性は依然としてあると考えています。

現在のコア事業

井上:現在のコア事業についてです。スライドのとおり、当社は食品・改良剤・ヘルスケアの3つの分野で事業を展開しています。競合についてよく質問されますが、非常に多岐にわたり、それぞれの分野で競合が存在します。ただし、真正面から競合する企業はそれほど多くなく、うまくすみ分けを図っていると考えています。

当社の規模で3つのコア事業を持っていることは非常にユニークであり、大きな特徴だと感じています。

食品

井上:現在の各事業について、少し詳しくお話しします。製品が入るとよりわかりやすいため、食品分野が非常にイメージしやすい分野だと思います。

家庭用では、ドレッシングやわかめなどの商品をスーパーマーケットなどに販売しています。業務用では、先ほどのエキス製品や乾燥・冷凍の海藻商品を外食産業や給食産業、加工食品メーカーにバルクとして販売しています。また、コンビニエンスストアのおにぎりに入っているわかめも、すべてではありませんが、当社が供給しています。

持続可能な社会を支える取り組み例

井上:ここで少し話がそれますが、持続可能な社会を支える取り組み例をご紹介します。当社は海藻に力を注いでおり、積極的に研究を行っています。海藻の持続可能性は厳しい状況にありますが、養殖産業全体を支えるために、種苗、いわゆるわかめの種の研究を進めたり、わかめではありませんが、海藻の陸上養殖施設を作っています。

また、「CO2を海の力で吸収する」というイメージから、最近は「ブルーカーボン」という言葉が聞かれるようになりましたが、ブルーカーボンを効率良く吸収する目的で、大量の昆布を養殖する研究にも取り組んでいます。スライド右側の画像は、昨年の養殖試験で収穫した昆布です。

このように、短期・中期・長期の3つの時間軸で海藻の研究を進めており、国内企業では当社が最も進んでいると考えています。

改良剤

井上:改良剤についてご説明します。当社では、乳化剤や色素など、食品に添加することで機能を付与する加工食品原料を総称して、改良剤と呼んでいます。食品用の乳化剤とクチナシの黄色色素において、当社は市場シェアトップを誇っています。

こちらにクチナシの黄色色素を持参しました。クチナシ黄色色素は主に中華麺の着色に使用されます。クチナシの実から成分を抽出・加工し、お客さまのニーズに合わせたかたちで販売しています。一方、乳化剤は油や粉と変わらない見た目のため、ホットケーキミックスの粉や一般的な油を想像していただければと思います。

スライド中央にお示ししているように、食品用改良剤には、パンの食感を改良する、麺のほぐれ性を改善するなどの機能の他、豆腐を作る際に発生する泡を消したり固めたりする機能もあります。

スライド右側の化成品用改良剤とは、食品用改良剤を食品以外の化成品に応用したものです。一例として、スーパーマーケットで販売されている魚や肉を包むラップがあります。ラップに水滴が付着すると、見た目が汚く感じられたり、中身が見えにくくなったりすることがありますが、防曇剤を加えることで、ラップがクリアに見えるようになります。当社は食品系の包装材に関連した原料を提供しており、非常に高い市場シェアを占めています。

持続可能な社会を支える取り組み例

井上:持続可能な社会を支える取り組み例として、パンの事例を2つご紹介します。パンは通常、時間が経つとだんだん固くなり、特に大量生産のパンでは賞味期限に関係なくおいしさが損なわれてしまいます。

しかし、スライド左側の写真のとおり、焼いてから3日経過したパンを改良剤が入ったものと入っていないもので比較すると、改良剤入りのパンは3日経過後も柔らかさが持続し、形もしっかり保たれていました。このように、改良剤の効果は非常にわかりやすいです。

スライド右側は、食感というより、工場ラインでの効果に関する例です。素材によっては混ぜる際にベタつき、それが機械に貼り付くことでロスが発生する場合があります。しかし、改良剤の力によってベタつきを抑え、ライン間の移動をスムーズにすることで、エネルギーや人員、材料において効率的な生産が可能となります。

このような取り組みは、当社のお客さまである加工食品メーカーの役に立つだけでなく、消費者のみなさまにも「おいしさ」としてつながっています。

ヘルスケア

井上:ヘルスケアについてご説明します。スライド中央には、先ほどお話ししたクチナシの実の写真を掲載しています。当社はもともとビタミンの会社であり、現在もビタミンを扱っていますが、特にビタミンEが強みです。他社と市場シェアを40パーセント以上分け合うかたちで、安定したポジションを確保しています。

また、当社は各種ビタミンを混合して安定させるノウハウを持ち、それをプロテインや完全栄養食関連製品などに活用しています。さらに、クチナシの実の色素からは、近年多くの健康食品に採用されているクロセチンという成分を抽出しています。

スライド右側のマイクロカプセルは当社が古くから有する技術で、非常に小さな粒の中に物質を閉じ込めるものです。これは、イクラのように膜の中に液体が含まれているものではなく、ゼリー状に分散させた物質を乾燥して作ります。表面は硬いものの、中に不安定な物質をしっかりと閉じ込めることができます。この技術は、フレッシュな香りを保つことや、ビタミンのような少し不安定な物質を医薬品に利用する際などに役立っています。

坂本:クロセチンが健康食品に使われているとのことですが、どのような成分なのでしょうか? 効能というと誤解を招く可能性もありますが、教えてください。

井上:クロセチンは機能性表示食品に採用されています。エビデンスのある機能は2つあり、1つは睡眠の質を向上させる効果です。

坂本:睡眠の話題は最近も取り上げられていましたね?

井上:コロナ禍以降、睡眠に対する関心が非常に高まっています。

2つ目の機能は目のピント調節を助ける機能で、さまざまなメーカーの健康食品に採用されています。最近ではスーパーマーケットで販売されている飲料系の商品にも使われ始めており、当社としても非常に期待している成分です。

幅広い事業展開による多様な価値提供

井上:スライドは統合報告書からの引用です。非常に幅広い取引先に原料を供給しており、みなさまの暮らしのさまざまなところに、知らないかたちで入り込んでいます。

製品分野と主要製品群

井上:具体的な数字はお伝えできませんが、これらの製品の構成比を円グラフで記載しています。改良剤が半分以上を占め、食品、ヘルスケアが続きます。ヘルスケアは売上構成比こそ低いものの、医薬品の原料などにも利用されており、利益率が比較的高い事業です。

決算セグメントと売上高構成比

井上:決算セグメントについてです。先ほどお話しした3つのコア事業とセグメントが若干異なるため、投資家のみなさまから非常にややこしいとのご指摘をいただくことがあるため、ご説明します。

当社の決算セグメントは、主に販売先で区分されています。内訳としては、国内食品事業が約7割、国内化成品その他事業が1割弱、そして海外事業が約4分の1となっています。

国内食品事業の内訳としては、家庭用食品・業務用食品・加工食品用原料等があります。このうち、家庭用食品はいわゆるBtoCに該当し、一般のスーパーマーケットで販売されている自社商品を指します。

一方、業務用食品事業は主に家庭用食品を大きなサイズにして、給食産業や加工食品メーカー向けに販売しています。加工食品用原料等は、改良剤を中心に、さまざまなメーカーに販売しています。

各セグメントの主な販売製品と製品分野別売上構成

井上:販売製品と製品分野別の売上構成についてです。家庭用食品では、一般のスーパーマーケットで改良剤を見かけることはなく、食品が100パーセントを占めています。業務用食品は、食品の比率が高いものの、さまざまな場面で改良剤も提案しています。加工食品原料等は、改良剤とヘルスケアで大部分を占め、食品はそれほど多くありません。

国内化成品その他事業と海外事業は、改良剤が中心となっています。なお、海外事業では一部ポークエキスを扱っており、それが食品の構成比である10パーセントに含まれます。

ここまでが事業概要です。

中計2027の位置づけ

井上:ここからは、「中期経営計画2027(にーまるにーなな)」(以下、「中計2027」)についてご説明した後、直近で上方修正した業績についてお話しします。まず、「中計2027」の位置づけについてです。

当社グループは、10年後の2035年3月期に売上高1,350億円、営業利益率10パーセント、ROE10パーセントから12パーセント、海外売上高比率35パーセントとする目標を掲げています。そのプロセスの1つとして、2028年3月期をゴールとする3年間の「中計2027」を現在進めています。

「中計2027」では、国内で持続的に収益を上げるための体制強化と、海外での将来の飛躍に向けた新体制の構築を2つの大きなテーマとしています。「中計2027」の目標は、売上高1,100億円、営業利益100億円、ROE10パーセント以上です。

事業戦略①国内食品事業

井上:事業別の戦略についてご説明します。スライドは中期経営計画資料からの引用で、現在進行中のものです。

まず、国内食品事業です。ご存じのとおり、国内では人口減少が進んでおり、市場の変化や原料事情など、非常に厳しい課題があります。しかしながら、それらにしっかりと対応することで、加工食品市場全体を上回る成長率を目指していきます。

家庭用食品では、市場創造型の商品に注力することを大きなテーマの1つに掲げています。当社社長が「メインの市場の隣にある市場」と表現している、新たな市場を開拓する商品を育成・開発していきます。

業務用食品では、引き続き拡大が見込まれる中食・即食市場や、セントラルキッチン、冷凍弁当など、人手不足が進む中で拡大する領域に対し、しっかりと提案を行っており、少しずつ成果が出始めています。

加工食品用原料等では、原料調達が当社を含めた各社の課題となっています。人手不足に伴うコスト増やフードロスなどの社会課題への対応・提案に加え、健康関連市場への提案も強化しています。

事業戦略②国内化成品その他事業

井上:国内化成品その他事業についてです。化成品業界は非常に厳しい状況にあります。海外メーカーによる供給過剰の問題があり、昨今のニュースでも業界再編の動きが見られています。

このような事業環境を踏まえ、当社では既存の得意分野に絞り込みながら、売上の拡大を図っていきます。特に、事業規模自体はそれほど大きくはありませんが、将来を見据えた環境関連の取り組みに注力しています。具体的には、石油由来でない原料を活用しつつ、社会課題の解決と当社の成長を両立させたいと考えています。

事業戦略③海外事業

井上:海外事業についてです。海外事業は改良剤を中心としたビジネスです。「中計2027」では、コモディティからスペシャリティへの転換を大きなテーマに掲げています。

最大の課題は生産設備であり、大きな投資が必要になると考えています。ただし、それ以外にも営業や、例えば品質保証、人事、総務などのバックオフィス部門もしっかりと強化を図っていきたいと考えています。

坂本:海外事業については課題があり、立て直しが必要とのことでした。2026年3月期には海外事業が5億5,000万円の損失を計上する見込みですが、その理由について教えてください。また、それが構造的な問題なのか、一時的な問題なのかについてもご教示ください。

井上:直近の業績については後ほどご説明しますが、現時点でお伝えできるのは、コモディティからスペシャリティへの転換を図る中で、世界の動きが想定よりも速かったことが不振の原因となっています。さらに、新しい工場を中国に建設した直後に中国の景気低迷が起こったことがもう1つの大きな要因となっています。

これらは予想外の部分もありましたが、赤字に陥っている部分についてはしっかりと認識しており、この状況をどのように打開するかを社内で練っている段階です。具体的な内容をここでお伝えすることはできませんが、的確に対処していきます。

坂本:海外拠点は8社あったかと思います。こちらの海外拠点は、どの地域に課題があるのでしょうか? 先ほど中国が話題に上がりましたが、補足をお願いします。

井上:現在の状況として、アメリカ以外の市場はやや厳しい状態にあります。中国は、景気低迷の影響で、既存のお取引先での製品の売れ行きが減少している点や、安価な製品に需要が集中し、当社が提供する高付加価値製品が採用されにくい状況であることが要因として挙げられます。

東南アジアやヨーロッパは、コモディティ品に関して、各社が新規参入したり、既存メーカーが生産設備への投資を拡大しており、供給量が大幅に増加しています。これは先ほどお話しした化学業界と同様の現象で、生産量が増えたことで価格競争が激化している状況です。これまでの想定よりも急速に変化が進み、かつ非常に低価格な製品が市場に出回っているため、コモディティ品が主力のエリアで大きな影響を受けています。

一方、アメリカについては、新たな大口顧客が確立されつつあり、その拡大に期待しています。また、ラーメンスープの原料として使用されるポークエキスの需要が非常に堅調で、市場は非常に良好な状態です。対照的に、他の地域では厳しい状況が続いています。

キャッシュアロケーション

井上:財務戦略についてご説明します。「中計2027」では、3年間で総額250億円の設備投資を行い、将来の成長基盤を強化する計画です。

また、株主還元も強化します。スライドに記載している124億円は、現在進めている自己株式取得額の20億円と、予定されている配当104億円の合計です。来期以降の自己株式取得は未定ですが、全体の流れとしては機動的に進めていく方針のため、総額はスライドの内容から少し変更される可能性があります。

戦略投資については、アライアンスやM&A、新規事業がありますが、現時点では発表できる案件はなく、これからという段階です。そのため、業績予想にはこれらの対象は織り込んでいません。

これらの投資や株主還元の原資としては、スライド左側のキャッシュインである営業キャッシュ・フロー280億円と、政策保有株式の縮減による90億円を主に見込んでいます。

設備投資の内訳

井上:設備投資については、国内で130億円、海外で120億円を計画しています。最も多く投資する分野は改良剤であり、マレーシアの工場にかなりの額を投資する予定です。現在ビジネスは厳しい状況にありますが、海外を成長ドライバーとする方針に変更はありません。しっかりと投資を行い、将来の成長に向けた準備を進めていきます。

一方、国内についてはかなり古い製造設備が残っているため、老朽化対策や人手不足への対応として省人化を重視した取り組みを進めています。

最近の設備投資事例 東京工場(ビフォー)

井上:最近の投資事例をご紹介します。スライドは、最も古い東京工場の2018年当時の写真です。ご覧のとおり、昔ながらの工場で、当時からの建屋がそのまま残っていました。

最近の設備投資事例 東京工場(現在)

井上:スライドのとおり、現在の東京工場の両側には、かなり大きな建物が完成しています。2022年に「医薬MC棟」が、昨年「ビタミンMix棟」が完成しました。また、写真では少し見えづらいですが、右奥の事務棟も建て替えるなど、まだ整備中ではありますが大幅に施設を入れ替えることができました。このような取り組みを、国内の他の工場でも進めていく予定です。

株主還元

井上:株主還元については、「中計2027」の指標に基づき、配当性向を40パーセント以上に引き上げています。2026年3月期の配当は110円を予定しており、3年間の株主還元総額は124億円となります。

坂本:2026年3月期から配当性向40パーセント以上という指標にされています。先ほどのお話と関連しますが、2029年3月期以降も基本的には続けていく、もしくは増配といったイメージなのでしょうか? 可能な範囲で教えていただけますか?

井上:配当および株主還元方針については、昨年見直しており、現時点でのさらなる変更は予定していません。

業績予想は修正しましたが、配当は据え置く方針です。当社の配当方針には「安定的」という言葉が含まれており、2021年3月期など厳しい状況の時でも減配しておらず、そのような措置はできるだけ避けたいという意思があります。今後については確定的なことはお伝えできませんが、現状ではこの方針を維持しています。

株主優待

井上:株主優待に関しては、みなさまから非常にご好評いただいております。

坂本:見覚えのある製品がたくさん含まれていますね。こちらはご用意いただいていたものですね?

井上:そうです。少し説明させていただくと、こちらが今年1月に株主のみなさまにお送りした1,000円相当の株主優待品です。スライドの写真は2,000円相当のため、若干豪華です。当社の株主優待の大きな特徴は、年2回お届けしている点です。3月末、9月末の保有株式数と保有期間によってお送りしています。件数が増えすぎたため、これまでより送付時期が若干遅くなってしまっています。

坂本:わかめのように増えているのですね。

井上:はい。そのため、9月末分の送付が1月になってしまうこともあり、時々お問い合わせをいただくことがありますが、確実にお届けしています。当社の商品は少しずつ内容を変更しており、株主のみなさまにファンになっていただけるよう工夫していますので、お楽しみいただければうれしいです。

坂本:1,000円相当でもかなりボリュームがありますね。

井上:ありがとうございます。

飯村美樹氏(以下、飯村):タレント、ナレーターの飯村です。自分が何度も購入している商品が届くのはうれしいですね。

坂本:それはうれしいし、試してみたい商品が入っているのもいいですね。

井上:毎回、チャレンジングな商品を1つ入れるよう工夫しています。

坂本:それは大事ですね。御社のチャレンジ精神が反映されていると感じます。

井上:お送りした後に「X」などで「届いた」とのコメントを確認することが、私自身とても楽しみです。

2025年度 連結業績予想(2/12修正)

井上:業績についてです。2026年3月期連結業績予想は第3四半期に下方修正しました。要因は2つあります。1つ目は先ほどお話しした海外事業の不振、2つ目は資産除去債務の影響です。

このうち資産除去債務は、設備投資を行う際に、将来の解体費用をしっかりと見込んで計上するものです。特にアスベストを含む建物については、解体コストが非常に高額となります。当然見積もりには入れていますが、2025年3月期に1つの建物を解体した際、見積もりを大きく上回る費用が発生しました。

また、他の工場でも、1つの建物を解体するために見積もりを取ったところ、非常に高額となり、国内全体で同様の状況が起きている可能性があると判断しました。これを受けて、第3四半期に国内のすべての建屋について見積もりを取り直しました。

その結果、多額の見積もりが計上され、全体で15億円の増加となりました。このため、第3四半期に7億円弱を織り込み、通期では8億8,000万円を見込んでいます。

ただし、この費用はキャッシュが動くものではないため、完全にご安心いただけるわけではありませんが、特殊要因と考えています。この15億円のうち、残りの金額は来期以降に少しずつ影響する見込みであり、若干ではありますが利益を押し下げる要因になると考えています。

2025年度 セグメント別業績予想(2/12修正)

井上:セグメント別の業績予想です。スライド下の海外事業が非常に厳しい状況です。前期は11億円の利益でしたが、今期は5億5,000万円の営業損失となる見込みです。先ほどお話しした原因が大きく影響しているため、対応をしっかりと進めていく考えです。

坂本:「中計2027」では、2028年3月期の海外事業の営業利益目標を16億円としています。一方、今期は国内のアスベスト除去費用が影響しており、海外事業はあまり関係ないという印象です。また、足元では海外事業の動きが予想以上に速く進んでいるというご説明もありました。現状「中計2027」の海外事業の営業利益目標は修正されていませんが、その方向性について、可能な範囲でお話しいただけますか?

井上:現状では見込みと大きく異なる状況が生じているため、投資家のみなさまに対してどのようにご説明するかを会社としても考えています。

第3四半期では変更はなく、現時点での決定事項もありません。ただし、大きく環境が変わっているため、なんらかの対応が必要と判断した場合には、通期決算時に発表する可能性はあるかもしれません。ただし、現時点ではなにも決まっていません。

資産除去債務の見積りの変更による影響を除く比較

井上:スライドは、資産除去債務の見積もりの変更による影響を除いた比較になります。国内食品事業は、この影響を除いた場合、営業利益が前期比で若干増加しています。一方、今期は海外事業が非常に誤算でした。

海外事業の現状

井上:海外事業の現状については先ほどご説明したので、簡単にお話しします。コモディティ品については、ボリュームは大きいものの、供給量の増加による価格競争の激化で苦戦しています。スペシャリティ品についても、景気低迷の影響を受けて若干下振れしています。一方、アメリカのポークエキスに関しては、ラーメンスープ市場が拡大していると認識しており、成長の余地があると考えています。

このように、コモディティ品からスペシャリティ品へ移行することや、景気動向を注視しながら戦略をあらためて練り直していく必要があると考えています。

本日のポイント(再掲)

井上:最後に、本日のポイントをあらためてお示しします。当社はスライドの3つのポイントを持った、非常にユニークな会社だと考えています。引き続き、ご興味を持っていただけるとうれしいです。ご不明な点はご質問ください。

質疑応答:価格転嫁の状況について

飯村:「原材料費や人件費高騰を受けた価格転嫁は順調でしょうか? 実際に抵抗がある場合、どの業界の抵抗が強いでしょうか?」というご質問です。

井上:基本的には、コストが上がった分はしっかりと価格転嫁していく方針です。ただし、BtoCの家庭用食品については、価格が売上に直接影響するため、値上げを行うと販売数量が厳しくなるのが実情です。そのため、慎重に見極めを行っている状況です。

一方、BtoBについては、お客さまにご納得いただきながら価格転嫁を進めています。若干のタイムラグはあるものの、ご理解いただき、しっかりと対応できていると感じています。

質疑応答:独自技術を活用した中国での巻き返しについて

坂本:会場からいただいた質問から、中国の競争激化について気にされている方が多いようです。景気低迷の影響で高付加価値製品が厳しいという話がありましたが、低価格品で競争することはおそらくないと思います。私自身の質問も踏まえての内容になりますが、御社の独自技術を活用して中国で巻き返すことは可能ですか?

井上:中国では2025年に新たな工場を立ち上げ、古い工場から徐々に移していく計画を実行中です。既存製品以外のお客さま、もしくは新しい製品に対して提案を進めており、徐々に決まりつつあります。しかし、既存製品がやや低調なため、売上は非常に厳しい状況です。一方、景気は循環するものなので、「また良くなる時がくるだろう」という考えのもと、当社独自の付加価値をお客さまにお伝えし、低価格帯に頼らない方向で進めていく方針です。

技術に関しては、中国でも国内技術が大きく向上していると感じています。当社が日本国内で強みを持つ点として、課題にしっかりと対応する力があります。社内では「アプリケーション力」と呼んでいますが、新たな付加価値をお客さまに提案する能力を有しています。この強みを活かし、中国のお客さまにも提案を行い、ご採用いただけるよう努めていきます。

質疑応答:新工場による効率化の影響について

坂本:工場を新しくしたことで効率が良くなっている点も武器になりますか?

井上:人を増やさず運営できるかたちになっていますので、非常に良い工場だと思います。ただし、景気低迷の影響を受けています。

坂本:歩留まりが上がれば、さらに利益が出たり、原価が下がったりする可能性があるということですね?

井上:そうです。現時点ではいつ良くなるか具体的にはお伝えできませんが、期待しています。

質疑応答:マイクロカプセル技術の競争優位性について

坂本:「マイクロカプセル技術の競争優位性をもう少し教えていただけますか?」というご質問です。

井上:マイクロカプセルは小さな粒の中に有効成分を閉じ込めるものです。ニッチな分野なので、現状は競合の参入があまりありません。

一方で、マイクロカプセル技術は非常に多くの応用が可能です。例えば医薬関係や、より身近な例ではミント菓子の中に入れて香りをコントロールする用途があります。また、医薬品に応用すると、「溶解速度を調整することで、体のどの部分で溶かすか?」などをコントロールできます。これが非常に大きな強みです。

坂本:それはすばらしいですね。

井上:このため、ご提案によっては非常に有望な技術だと思います。医薬品や食品だけでなく、他のさまざまな分野に応用できるかを探索し、ご提案しています。

質疑応答:海外売上比率の考え方について

坂本:海外売上比率については、今後上げていくことを命題として掲げていますか?

赤字を減らすことは当然重要だと思いますが、御社の現在のビジネスが海外でどの程度浸透しているのか、あるいはさらに広い市場を開拓する余地があるのか難しい点もあるかと思います。日本国内では非常に高い知名度を誇っている一方で、海外市場にはどのようにアプローチしているのか、またどのような課題を抱えているのかについてご教示ください。

井上:「中計2027」に基づいて、スペシャリティ品へのシフトに向けた準備を開始しています。具体的には、マレーシア工場を中心とする生産設備への投資を予定しています。

一方、東南アジアやアメリカについては現地生産のほうが市場に近く、コントロールしやすいという理由から、自社でなくても各地域に生産設備を確保する取り組みを進めています。一例を挙げると、ベトナムにおいて昨年12月から他社の設備を利用した現地生産を開始しました。このような取り組みを広げ、スペシャリティ品を各地域で製造することで、よりきめ細やかなサービスを提供できると考えています。

坂本:そのほうが機動的に対応できますね。

井上:マレーシアから全世界へ輸送する場合、船便を利用する必要があり時間がかかることに加え、関税の影響も受けるため、現地生産を進めていきたいと考えています。

井上氏からのご挨拶

井上:当社は家庭用食品で大変お世話になっていますが、本日ご説明したとおり、非常に幅広い製品を取り扱い、みなさまの生活を支えています。国内外で成長を続け、株価および企業価値をしっかりと向上させていきたいと考えていますので、引き続きご関心をお寄せいただきたいです。本日はありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。 

<質問1>

質問:PER11.8倍・PBR1.2倍と市場平均を下回っていますが、経営として適正バリュエーションは何倍と考えていますか?

回答:当社は目指す時価総額の目安を1,000億円としており、株価に換算すると約3,400円です。中長期ではこの株価を通過点として、さらに伸ばしていきたいと考えています。直接的な回答とはならず申し訳ありません。

<質問2>

質問:価格改定はどの程度織り込まれていますか? 再値上げの余地はありますか?

回答:価格改定は若干のタイムラグを持って織り込まれていると考えています。現状の経済環境はインフレ傾向であり、当社は上がったコストを基本的に転嫁していく方針です。ただし家庭用商品は数量への影響が大きいため、若干慎重に見ています。

<質問3>

質問:ブルーカーボンや海藻研究は、将来どの程度収益貢献しますか?

回答:残念ながら、ブルーカーボンがどの程度収益に貢献するかは変動要素が大きく、未知数です。ただし日本で当社ほど研究している企業はないと考えており、どこかの時点でしっかりと収益化させたいと考えています。

<質問4>

質問:海外売上比率をあげる為の課題は何であり、どう克服するのか教えてください。

回答:生産設備への投資と、営業・開発・その他バックオフィスの人的資本投入が課題です。当社の強みである課題解決力が活きる生産設備への投資と、持続的に成長するための人的資本投資を行うことで、海外比率を高めていきたいと考えています。

<質問5>

質問:今後進出を予定している国または検討段階のものがあれば教えてください。

回答:新しく進出する国の予定はありませんが、タイとベトナムでは昨年販売会社を立ち上げました。また、特に東南アジアと北米で委託を含めた消費地に近い生産設備の確保を検討しています。

<質問6>

質問:紹介された優待品の視聴者プレゼントはないのでしょうか?

回答:紹介だけで申し訳ございません。プレゼントは予定しておりません。

<質問7>

質問:社内の中での課題はないでしょうか? 何か改革を計画中などあればコメントお願いいたします。

回答:社内の課題は特に工場の老朽化と人手不足です。老朽化・省人化対応の設備投資によって克服しようと検討を進めています。

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