会社概要
設立:2021年1月
事業内容:便失禁、尿失禁疾患などを対象とした再生医療等製品の開発、製造および販売
登壇者名
イノバセル株式会社 代表取締役Co-CEO ノビック・コーリン 氏
イノバセル株式会社 代表取締役Co-CEO シーガー・ジェイソン 氏
イノバセル株式会社 取締役CFO 細野恭史 氏
エグゼクティブサマリー
ノビック・コーリン氏(以下、コーリン):まず、エグゼクティブサマリーについてお話しします。我々は日本のバイオテックではありますが、基本的に臨床開発はグローバルで行っています。現在、第Ⅲ相試験を日欧合計12ヶ国で実施しており、近々、アメリカにおいても拡大していきたいと思っています。
みなさまもご存知だと思いますが、再生医療等製品のみならず、日本は国際共同治験になかなか参加できていない実情がある中で、我々は日本とヨーロッパ、そしてアメリカにおいても、国際共同治験を実施していきたいと考えています。現在、アメリカ以外ではすでにスタートしている状況です。
再生医療等製品の技術は、患者さまご自身の細胞、すなわち自家細胞を用いて筋肉再生を行うものです。どのような疾病領域を治療しているかと申しますと、最初は筋肉の組織がもともと小さい、外肛門括約筋の再生と尿道括約筋の再生、そして将来的には内肛門括約筋の再生を目指しています。
疾病領域ごとにお伝えしますと、切迫性便失禁が外肛門括約筋、女性のみを対象とする腹圧性尿失禁が尿道括約筋、そして漏出性便失禁が内肛門括約筋となります。2つの便失禁の違いですが、便意があっても間に合わないのが「切迫性」、そもそも便意がなく、知らぬ間に漏れてしまっているのが「漏出性」となっています。
もう1つの特徴として、会社概要の左から3つ目に記載していますが、我々は約20年弱にわたり、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)に基づく製造をすでに行っている会社です。日本の薬事法が薬機法に変わった際の再生医療等製品などの定義は、ヨーロッパのATMPの定義と非常に似ています。
ヨーロッパにおいては2007年以降、再生医療等製品が自家細胞といえども、基本的にはGMPに則った製造を行わないと臨床試験ができない、人に投与してはいけないというルールがありますので、2007年以降、かれこれ20年近く続けています。
自家細胞治療製剤と聞くと、原価が高いと思われる方が非常に多いのですが、長年GMP製造を行っているからこそ、そのあたりのコストコントロールもしっかりできているという特徴を持つ会社です。
次に、製品および市場についてご説明します。我々の最初の製品は「ICEF15」という切迫性便失禁の治療製品です。資料の左下の表に数字が記載されているとおり、重症な切迫性便失禁の患者は、日本に約12万人、アメリカにおいてはその3倍弱の32万人、ヨーロッパでは3倍強の43万人います。このヨーロッパの数字は欧州5大国の患者数となっています。
最後に、IPO以降についてご説明します。我々はIPO直前に機関投資家がしっかりと入っているバイオベンチャー、バイオテックとしてご理解いただければと思います。正直なところアメリカ以外のバイオベンチャー企業には機関投資家がなかなか投資できないという実情がある中で、我々は上場する前の段階で、しっかりとした株主構成の中にそのような方々を組み入れることによって、上場後の株価安定につなげたいと考え、セットアップした次第です。
当社紹介
続いて、当社紹介です。前身企業であるオーストリアの会社の設立が2000年、イノバセル株式会社で三角合併を用いて親会社化したのが2021年という歴史を持つ会社です。
現在は本社が東京にあり、100パーセント子会社がオーストリアのインスブルックにあります。両社合わせて約50名弱の従業員数で、そのうち30名以上が研究開発および製造周りの専門家です。基礎研究や臨床開発、製造、QA(品質保証)、QC(品質管理)も、すべて内製化している状況です。
パイプラインの項目に記載したとおり、後期開発ステージの製品は切迫性便失禁の「ICEF15」および腹圧性尿失禁の「ICES13」の2製品があります。
スライド右下のExecution Highlightsが、先ほどご説明した20年間の製造実績と、これまで7つの臨床試験、そして現在進行形で走っている8つ目の臨床試験を合わせて、累計で1,000人以上の投与を行っているという点です。これは非常に重要なポイントで、データ量もすごく多いです。
その観点で、今回は下準備ができた上で、これからのコマーシャライゼーションの準備をするために、日本国内において上場しました。
質疑応答:日本に本社を置いた優位性について
質問者:基本的なことですが、もともとオーストリアのインスブルックでスタートされたと思いますが、日本に本社を置いた優位性は何かあるのでしょうか?
シーガー・ジェイソン氏(以下、ジェイソン):いくつかあります。まず日本は、特に細胞治療製剤や遺伝子治療製剤の規制環境において、ヨーロッパとアメリカに引けを取らない、むしろ少し先を進んでいる環境があります。そのため、そのような医薬品を開発するという意味で、非常に環境がよいという点が1つあります。
また、三角合併により親会社を日本に移したタイミングの直前に、株主構成をかなり変えた経緯があり、多くの日本の投資家から投資を受けたという背景があります。その観点で、日本におけるエグジットのエクイティストーリーを構築するというのがもう1つの理由です。
加えて、1点目に関連しますが、我々はエクイティストーリーが上場市場と一致していることが非常に重要だと考えています。もともとヨーロッパでの開発が先行していましたが、先ほどコーリンからご説明したとおり、日本の臨床施設も現在のフェーズ3に組み入れて開発をしています。
これにより、日本での上市や販売をかなり加速できました。そのような意味でも、日本における売上の創出が早くなると考えられるため、日本に親会社を持ってきて東京証券取引所での上場を目指したという背景です。
コーリン:少し補足をします。まず、機関投資家にしっかりと見てもらうことを考えた時、先ほどジェイソンがお話ししたとおり、エクイティストーリーは重要です。
日本におけるエクイティストーリー、ヨーロッパにおけるエクイティストーリーが一定程度確立した段階で、どの市場に上場しようかと考えました。機関投資家がちゃんと見てくれる市場というと、みなさまNASDAQを想像しやすいと思いますが、思いのほか東京証券取引所も見てくれています。
さらに、ジャパンデスクなどを有している機関投資家が多いので、我々のエクイティストーリーや株主、今後の成長余力を考慮し、「機関投資家が投資対象として考えるのであれば、今は日本だ」と判断しました。
もう1つ重要なのが、日本の規制当局が出しているガイドラインは、少なくとも我々のこれまでの経験上、欧米のものよりもすごくわかりやすくなっているという点です。また、PMDA(医薬品医療機器総合機構)も我々の考えを理解し、支援もしてくれます。
そのため、日本での上場、日本での開発、日本に本社を置くことが、大きな勝ちパターンなのではないかと思い、今日に至るということです。
質疑応答:主力製品「ICEF15」の承認申請時期について
質問者:便失禁の治療製品「ICEF15」は国際共同治験なので、申請はいわゆる条件・期限付き承認ではなく、本承認を前提にしているという考えでよろしいでしょうか? 申請時期のめどはいつ頃でしょうか?
コーリン:そのご理解で正しいです。ニュースフローをご参照ください。我々は、Last Patient In(最終患者の組み入れ)を今年の第3四半期あたりに考えています。我々の期末は12月なので、9月あたりを考えていただければと思います。
観察期間は12ヶ月ですので、そこから約12ヶ月後にLast Patient Last Visit(最終患者の最終来院日)となります。その後に数ヶ月かけてCSR(治験総括報告書)をまとめ、データベースロックを解除するというかたちです。
したがって、来年の後半末ぐらいにデータが出てきて、その後にモジュールなどの最終化を行い、ゆくゆくは製造販売承認申請を日米欧で同時に行う予定です。
我々は致死性の高い病気を扱っているわけではないので、日本での承認を得るためのレビュー期間は12ヶ月と考えています。そのため、承認は再来年の末ぐらいから2029年の頭ぐらいかなと思っています。
細野恭史氏(以下、細野):2020年代中には承認を取るというイメージです。
質疑応答:このタイミングでIPOを選んだ理由について
質問者:最近、バイオ系のスタートアップは上場しても苦しいと言われています。このタイミングで、M&AなどではなくあえてIPOを選んだ理由は何でしょうか?
コーリン:いろいろありますが、1つは疾病領域が失禁だということです。失禁は、英語でSilent Afflictionと言われ、患者も医師も、そして市場もあまり脚光を当てず、話したがらない、非常に恥ずかしいものとされています。
その疾病領域に対して、日本、アメリカ、ヨーロッパでどのようなシグナルが見えているかというと、例えば大人用おむつの販売数が日米欧にわたってすごく伸びていることが確認できます。
我々は現在、第Ⅲ相試験を行っており、CMC(化学・製造・品質管理)周りのリスクを低減できています。これまでに1,000例以上の患者組み入れを行っているため、下げられる程度の臨床的なリスク、サイエンスリスクも下げることができています。
日米欧の規制当局と話をしており、例えばPMDAの主たる治験リストにもしっかりと載せ、その点のリスクも低減できています。シリーズDを去年の後半に行い、今回のIPOでファイナンスリスクも低減できました。
次に我々が対処しないといけないリスクは、おそらくコマーシャライゼーションリスクかと思っています。そのリスクに対して打って出ることができる資金源として、今回のIPOと去年のシリーズDで調達した資金があります。
ものすごい頻度で再度調達しなくても、臨床試験を終わらせることができる財務状況を作っていきたいと考えており、その時期が今だというご理解でよいかと思います。
細野:少し補足をすると、コーポレートインバージョン(本社移転)を行ってイノバセル株式会社という東京の会社ができてから、今回およそ200億円を調達しています。プライベートで100億円、今回のIPOで100億円です。
我々には、レイトステージであるフェーズ3のパイプラインが1つ、フェーズ2bまで終わっているパイプラインが1つあります。そして、生命に直接影響しないものの、患者さまがすごく悩まれていて、ポテンシャルの大きいマーケットを対象としたパイプラインをグローバルで開発しています。
今挙げたポイントは、従来の日本のバイオテックのあり方とは少し異なっていると思っています。それを今回のIPOでマーケットに「これでいかがでしょう?」と問うているわけです。もちろん我々にとってもチャレンジですが、1つの新しいかたちを作れるのではないかと考えています。
コーリン:上場会社のほうが「このような疾病領域に対してちゃんと治療オプションはありますよ」「このような疾病領域がそもそも存在しますよ」というメッセージを打ち出しやすいと思っているところもあります。したがって、上場が1つの手なのではと思っています。
質疑応答:投資家への訴求ポイントについて
質問者:研究開発というところで、投資家が不透明だと感じている部分もあるかもしれません。投資家に訴求する際に特に注力したこと、工夫したことがあれば教えていただけますでしょうか?
ジェイソン:リードシーズの「ICEF15」については、すでにフェーズ2bの臨床試験で統計学的有意性を示しています。それも237例という、けっこう大型の臨床試験です。今回のフェーズ3臨床試験は290例です。
スライド左側のグラフの右上に「n=237」と書いてあるのが、237例を組み入れて実施した3群構成の臨床試験です。高用量と低用量の細胞数、そして対象群として実際に細胞が入っていない懸濁液を患者さまに投与しました。
その後に電気刺激を少しするというかたちだったので、ある意味アクティブプラセボといえるものです。それを行った上で、すでに投与後6ヶ月時点で高用量群と対象群の群間比較における統計学的有意性を示しています。
さらに追加観察すると、この群間比較のデルタ(差)が大きくなるのですが、それに加えて我々はサブグループ解析を行い、その中でも特に効く患者を特定しています。
このフェーズ2b臨床試験の目的は2つあり、1つが高用量群という用量設定の確認、もう1つが対象患者群の特定です。そのためにサブグループ解析を行い、「ICEF16」の対象である漏出性優位の患者を省くかたちでフィルタリングしました。その結果を見ると、特に高用量群と対象群の群間差がかなり出て、有効性が示されています。
今回、ヨーロッパと日本でフェーズ3のグローバル試験を行っていますが、その対象患者層はこのサブグループ解析の患者層になっています。そのため、かなり臨床リスクを減らした上で290例に対して実施しているというところです。
先ほどの「なぜ今上場なのか」というご質問に関連しますが、我々は臨床リスクをかなり下げていると考えています。そのようなかたちで機関投資家の方にご説明したところ、ある程度のデータが見えている状態で上場しており、将来性がある程度見えているとご認識いただけたのではないかと考えています。
コーリン:機関投資家が投資をしようと思う理由については、多くの方が26ページと27ページのデータを見て、臨床開発リスクを下げるところまで下げられていると判断されたのだと思います。
通常ですと統計学的有意性はフェーズ3で見せるものですが、我々はそれをフェーズ2bで見せています。競合と比べてどのような結果が出ているかというと、あくまでも単純比較なので一概には言えませんが、少なくとも我々が行っている自家筋芽細胞と電気刺激を組み合わせた臨床試験の結果では、「ICEF15」の有効性が高いことが示されています。
また、日本大腸肛門病学会の診療ガイドラインの中に、承認はされていませんが「肛門括約筋再生療法」という章立てができ、その中に我々の製品の内容が書かれています。
いわゆる学会からのバックアップ、データのバックアップ、そして競合他社と比較してのデータの優位性が評価されたのではないかと思っています。その結果、今回のブックビルディングでは、おそらくこれまでにない規模の海外機関投資家が入っているという状況です。
細野:スライド32ページに、ガイドラインに沿った我々の製品のポジショニングが示されています。日本大腸肛門病学会の診療ガイドラインに未承認であるものの、我々の製品を想定したものが載っているというお話は、左側の専門的検査・保存的療法の中の「ICEF15」の部分です。ガイドラインでは「肛門括約筋再生療法」という名前で掲載されています。
質疑応答:初値についての受け止めについて
質問者:本日の初値は1,248円でしたが、これに関しての受け止めを教えていただけますか?
コーリン:株価に関しては市場が決めるものなので、我々はこの後、臨床試験をやらなければいけません。今回、臨床試験をやるために必要な資金は集まりました。
現在、我々に課せられている責任、そしてやるべきことは、今回調達した資金や株主さまからいただいた資金などを、しっかりと臨床開発、コマーシャライゼーションの準備に充てて、先ほどお伝えしたようなタイムラインで実施していくことです。それを行えば、株価はついてくるはずだと思っています。
患者さまのためにしっかりやっていれば結果は後からついてくるものだと思っていますので、そこはあまり心配していません。
ジェイソン:あとは、知っていただくことが大事かなと思っていますので、みなさまもご協力をお願いします。
コーリン:確か日米欧で同じ表現があるのですが、「千里の道も一歩から」という思いです。
質疑応答:調達資金の使途について
質問者:短期のニュースフローにすべてのパイプラインの臨床試験を開始されるような記載がありますが、今回調達された資金は、「ICEF15」の第Ⅲ相の完遂だけでなく、「ICES13」と「ICEF16」の臨床試験の実施費用まで含まれているのでしょうか?
細野:ご指摘のとおりです。現在実施している「ICF15」フェーズ3に対する支出は、来年ぐらいにはピークアウトします。組み入れが終わって、あとは経過観察するようになりますので、「ICEF15」については商業化の準備というところにフォーカスが当たります。
代わりに臨床開発では「ICES13」のフェーズ3、「ICEF16」のFirst In Human(最初のヒトへの投与)、フェーズ1/2というところにフォーカスが当たってきます。我々としてはそれぞれ非常に期待しているパイプラインです。
質問者:「ICES13」と「ICEF16」のそれぞれの臨床試験はいつ頃に開始されることを想定されていますか?
細野:「ICEF16」については、今まさに治験届を出す準備をしていますので、今年か来年ぐらいには始めたいと考えています。「ICES13」についてもフェーズ2bまで終わっていますので、次は治験届を出してフェーズ3を日米欧で行いたいと思っています。「ICEF15」の経験を活かして、こちらも今年か来年ぐらいにはぜひ始めていきたいということです。
質疑応答:販売提携企業の想定について
質問者:販売提携の契約を今後されていくと思いますが、どのような企業を想定されているのでしょうか?
ジェイソン:現在、2社の日本の製薬会社と、Co-Promotion(共同販売)を前提とした協議を進めているところです。1社は日本だけ、もう1社は日本とアメリカの可能性もありますが、まずは日本市場を対象とした協議をしています。
日本の市場においては、そのどちらかの会社を選択するというところです。今年中に本契約を締結できるのではないかと考えており、今年の業績予想の売上10億円は、その契約一時金というかたちで想定しています。
アメリカとヨーロッパについては、同じく協議を進めている会社があり、医薬品を販売することに特化した会社とCo-Promotionの協議を進めています。
Co-Promotionでは、製造販売承認申請を我々が行うため、MAH(製造販売承認取得者)を担います。そして、先方の製薬会社さまのマーケティング部隊やMR部隊、セールス部隊などと一緒に共同で販売していきます。
販売のメインは先方が行いますが、我々が最終責任を負うかたちになるので、トップラインのセールスは我々のPLにつき、そこからCo-Promotionフィーを製薬会社さまに払うという想定です。
質問者:MRを特に雇ったりはしないと考えてよろしいでしょうか?
ジェイソン:そこはまだ検討中のところがあります。当社でも一定程度抱えてもいいとは考えています。なぜかというと、我々は「グローバルアグリゲーションモデル」とうたっており、アンダーバリューされているシーズを取り込んでグローバルに開発・販売していこうと思っています。
イノバセルだからこそできることだと考えていますが、製品によっては自社でも販売できる体制があると、導入や買収の容易性が出てきますので、そのような意味での体制構築は考えています。
細野:今ご説明した点は目論見書の20、21ページに事業の概要として説明があります。また、同じく目論見書の33ページから35ページのあたりに、具体的にパイプラインでどのように取り組むかが書いてありますので、ご参照いただければと思います。
質疑応答:国内の再生医療市場について
質問者:国内の再生医療市場について、どのようにお考えかお聞かせください。
コーリン:バイオテックやバイオベンチャーに必要なのは、大きく分けると資金調達の容易性、市場の大きさ、そして規制環境のわかりやすさです。
規制環境のわかりやすさについては、再生医療等製品において日本以上にわかりやすいところはないと思っています。ガイドラインさえ読むことができれば非常にわかりやすいと思います。
資金調達の容易性については、アメリカ以外は難しいとされていますが、アメリカを除けば日本はヨーロッパより圧倒的に強い市場状況です。しっかりと機関投資家に説明できれば、日本に投資する機関投資家はたくさんいますので、アメリカに次いで2位だと思っています。
市場の大きさ、患者数については、機関投資家との対話を重ねる中でグローバル開発をすることが重要であると見出すことができました。その結果、日米欧で開発を行っています。
これを土台として、再生医療等製品の承認品目を日米欧で並べた時、一番多いのはアメリカです。ヨーロッパと日本は、少しヨーロッパが多いですが、ほぼ同程度です。しかし、その国や地域のみで承認されているものを見ると、リスクを取って承認している規制当局はFDA(アメリカ食品医薬品局)とPMDAなのです。
半年ぐらい前のデータですが、日本で承認されている再生医療等製品の60パーセント超は日本でのみ承認されています。アメリカも同様に60パーセント超がアメリカのみです。ヨーロッパは30パーセント超であり後追いなのです。
その観点で、再生医療等製品はアメリカと日本で開発をしないと、世の中に出てこない可能性が高いのです。
もう1つの特徴として、日米欧にわたって承認品目を持つ会社は、基本的に大手製薬会社です。バイオテックで、2つ以上の国や地域で承認品目を持つ会社は、ほぼありません。そこに対して、日本の会社として日米欧で開発を行い、「バイオテックでもできるんだ」ということを示したいのです。
そして、長年渇望されている成功事例、つまり日本のみならずアメリカ、ヨーロッパでも販売し、売上を立てられるという事例を作ることができる、またとないチャンスだと思っています。
ジェイソン:先日、iPS細胞を用いた再生医療製品2製品が条件・期限付き製造販売承認されましたが、市場はまだ懐疑的な部分があるのではないかと考えています。実際どれだけ売れるのかがまだわからないというところが、市場の感覚値なのかと思います。
いろいろな要素がありますが、市場としてまだ新しく、事例がそこまでないというところです。あったとしても、条件・期限付き製造販売承認という枠組みの中でどこまで売上が立つか、なかなか読みにくいのが今の状況だと思います。
そこに対して我々は、最初から本承認を取りにいくこと、そして複数の市場でほぼ同時に承認を取りにいくことで、リスクヘッジができているのではないかと考えています。希望的な見方ではありますが、当社が風穴を開けられたらと、いい事例になれたらいいと考えています。
細野:我々がマーケットをどう見ているかは、目論見書の33ページ経営環境の項目で述べていますのでご参照ください。
1点付け加えると、先日承認されたiPS細胞製品の基礎技術はすばらしいわけです。条件・期限付き製造販売承認とはいえ、実際にマーケットに出せるわけなので、よいことに間違いはありません。
日本が悩んでいるのは、それをどうやってマーケットに届けるかということです。規制環境については、本承認へのハードルが顕在化してきました。また、大きな臨床試験を行う時の資金も必要ですし、グローバル開発をしたいと思っても、資金と絡んで海外マーケットにアクセスしにくいという課題があります。
我々の場合は、最初からマーケットを俯瞰して見ています。日本からというこだわりよりも、グローバルに見た時にどこにシーズがあり、どこにインフラがあり、どう組み合わせればいいのかを考えています。現在取り組んでいるオーストリアのパイプラインはその第1号です。
そのような意味で、日本のいい技術を、今度は我々がグローバルに届けていきたいと考えています。もちろん現在取り組んでいるパイプラインを患者さまにお届けすることもすごく重要なミッションですが、同時にいいパイプライン、いいシーズであっても漏れてしまうようなものがあれば、我々が培ってきたものを活かしてお届けしたいと考えています。
それが「グローバルアグリゲーションモデル」というもので、大きなチャレンジですが、ぜひやってみたいことです。
コーリン:私とジェイソンは、デロイトトーマツコンサルティングの次に、SMBC日興証券に転職しました。そこでは戦略開発課で、最初の数ヶ月間はひたすら事例集を作っていました。
我々は日本育ちで日本の学校にずっと通っていたので、違和感たっぷりの日本語を話せる状態なのですが、事例さえできれば、日本のやり方、ガイドラインのわかりやすさがあれば、すごく伸びると思っています。その事例を作ってしまおうというのが、イノバセルの第1号製品「ICEF15」です。
「Adapt, Adopt, Adept」という表現がありますが、これは日本の得意分野です。事例さえあれば、我々の前に続いた先輩方や後に続く後輩方は、いいものがあればそれを取り込んで、地元の人たちよりも最終的にうまく作ってしまうと思います。少なくとも、私はフランスのフランス料理よりは日本のフランス料理のほうが好きです。
そのような事例を作りたいと思っています。
質疑応答:「グローバルアグリゲーションモデル」の詳細について
質問者:「グローバルアグリゲーションモデル」として、アンダーバリューになっているシーズを取り込んで開発することも考えられているとのことですが、それは再生医療等製品に限った話でしょうか?
ジェイソン:メインは再生医療になりますが、必ずしも同じモダリティに限定して探索しているわけではありません。
どのようなものが対象になるかというと、例えば日本でしか開発していないシーズを買収やライセンスインし、その時点から一気にグローバル開発していきます。あるいは、海外で開発されているものの、日本での開発が後回しになっている製品の日本の権利を買って、日本で開発していくようなモデルです。
ケースバイケースで手法は変わってきますが、基本的には我々のパイプラインに何らかのシナジーがあるか、我々のケイパビリティが活かせるかどうかをメインで見ます。そのシーズがアンダーバリューされていて将来可能性があるかというところを、デューデリジェンスで見て、手をつけていくイメージです。
細野:目論見書のカラーページに「グローバルアグリゲーションモデル」の紹介がございますので、ぜひご参照ください。