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野村不動産マスターファンド投資法人、3つの特長と総合型の視点で今好調なセクターをご紹介 J-REITの仕組みも解説

第126回個人投資家向けIRセミナー

増子裕之氏(以下、増子):野村不動産投資顧問株式会社、執行役員NMF運用グループ統括部長兼ファンドマネジメント部長の増子です。

当社の事業は、J-REITと呼ばれる不動産投資信託の分野に属しています。実は、J-REITに対する個人投資家のみなさまの認知度はまだ低く、これが業界全体としての課題であると認識しています。

本日は、投資家のみなさまにJ-REITについてぜひもっと知っていただきたいと思い、この場を設けていただきました。そのため、初めにJ-REITの基本的な概要をご説明し、その後に野村不動産マスターファンド投資法人についてご紹介したいと思います。

仕組み

増子:スライド中央にある図のとおり、J-REITとは、不動産を主な運用対象とする金融商品です。

図の右側のように、投資家のみなさまからの投資資金や金融機関からの借り入れを調達し、左側の賃貸不動産に投資しています。そしてそこから得られる賃料や不動産売却による利益を、分配金として投資家にお配りしています。

なお、図の中央下部に記載のとおり、J-REITには従業員が存在せず、当社のような資産運用会社が資産運用業務を受託している形式となっています。

特長

増子:次に、J-REITの特長を大きく3つ挙げています。

1つ目は、インフレに強いと言われる不動産に対し、少額から投資できる点です。中には1口5万円程度から購入できるJ-REITもあります。

当社のようなマスターファンドの場合は、おおよそ17万円です。また、東証REIT市場に上場しているため、実物不動産とは異なり流動性が高い点も特長です。

次に、J-REITは賃貸事業を中心に、事業範囲が極めて限定的に規制されています。つまり、事業会社とは異なり、事業の多角化はできず、基本的には賃貸事業に専念することになります。

また、J-REITは複数の不動産に分散投資を行うため、安定した収入が期待できると言えます。さらに、不動産の日々の運用や売買には労力と時間を要しますが、このような業務は、私たち資産運用会社が専門家としてのノウハウを活用しながら推進していきます。

3つ目は、制度上、利益のほとんどを投資家に分配している点です。この点については、次のページでご説明します。

利益分配

増子:J-REITは、一定の条件を満たせば法人税が課税されない仕組みになっています。

スライド左側に記載した一般事業会社の場合、配当性向は概ね30パーセントから40パーセントです。一方、右側のJ-REITでは、利益の90パーセントを超えて配当することが義務づけられています。

実態として、マスターファンドを含むほとんどの投資法人がほぼ100パーセントを配当しています。

このような税制の優遇を受けているJ-REIT創設の趣旨について触れますが、まず、創立は2001年です。目的としては、不動産取引の活性化、不動産市場の透明性向上、個人投資家への投資機会の提供と資産形成支援が挙げられます。税制優遇は、このような趣旨に基づき設定されたものであると理解しています。

これまでの変遷

増子:このスライドは、J-REIT市場の歩みを示しています。

2001年に2銘柄で東京証券取引所に上場し、約25年の歴史を重ねてきて、まだ成長途上にあります。もともとは、スライドで赤やオレンジで示したオフィスや商業施設がメインの投資対象でした。

しかし、歴史とともに物流施設、住宅、ホテルなどへと投資対象が多様化し、全体の資産規模は23兆円を超える水準にまで成長しました。

一方、日本の収益不動産の市場規模は300兆円を超えると言われており、J-REITの23兆円はまだその10パーセントにも満たない水準です。そのため、今後もさらなる成長が期待されるマーケットであると認識しています。

また、グラフでは、その他をグレーで表示しています。この中にはヘルスケア施設や工場、データセンターの組み入れ実績も含まれています。物件は4,900件もあり、中にはみなさまが聞いたことのある物件や、身近にある物件が組み入れられているかもしれません。

運用資産の類型

増子:運用資産の累計です。REITは全体で58銘柄あります。特定の用途のみに投資する特化型REITが29銘柄、複数の用途に投資する複合型や総合型のREITが29銘柄と、ちょうど半分ずつになっています。

その内訳は、一番右側の列をご覧いただくと、タイプごとに特長があることがわかります。投資家のみなさまの趣向に応じて、銘柄を選定することができる仕組みになっています。

kenmo氏(以下、kenmo):REITにはさまざまな種類があることが非常によくわかりました。

とはいえ総合型に分類されるものだけでも25銘柄ある中で、特に個人投資家の立場からすると、どのREITを選べばよいのか、総合型の中でもどれを選ぶべきか、利回りだけで判断してしまいがちな点もあるかと思います。

総合型REITを選ぶ際の判断軸や御社の立ち位置、特長を教えていただけますか?

増子:投資において、利回りは重要なポイントだと思います。ただ、利回りを計算する際の分子が分配金、分母が株価です。

この分配金の中身も、しっかりと確認していただきたいと思います。基本的には、持続的な賃料収入がベースとなっています。

最近では、売却益収入も加算されています。売却益収入とは、基本的に当期のみ分配される分配金です。一時的に利回りが高くなっている銘柄もあるため、十分にご注視いただきたいと思います。

総合型のJ-REITは現在25銘柄あり、それぞれ特長が異なっています。例えば、オフィスが大半を占めている総合型もあれば、私たちのようにさまざまなセクターにバランスよく投資しているものもあります。

J-REITは透明性の向上が求められているため、ホームページで保有物件をすべて確認することが可能です。そのような点もご覧いただきながら、ご検討いただければと思います。

指数の推移

増子:次は、指数の推移です。赤色の線が東証REIT指数、水色の線がTOPIXを示しています。いずれも20年間で上昇していますが、それぞれ相関が見られない時期もあります。

株式との分散投資先としてご活用いただけるのが、J-REITではないかと考えています。2020年のコロナショックを思い起こしていただくと、日常生活や経済活動に大きな制限が生じたことが記憶に新しいかと思います。

この時期の赤色の線を見ると、株価が過剰に調整されたことがわかります。ただし、分配金はほぼ下がらなかったため、その後すぐに元の水準まで回復していることをご確認いただけるかと思います。

kenmo:このチャートを見ると、2021年から2025年までは日経平均に比べて東証REIT指数がやや逆相関しているように見えます。一方、直近では巻き返しているようです。

現状の分析や今後の見通しについて、教えていただけますか? 

増子:確かに、チャートを見ると相関が見られない時期がある点は特長的かと思います。

TOPIXの場合、近年では資本コストを意識した経営やガバナンス改革が進んだ結果、先行してTOPIXが上昇している状況です。

一方、J-REITは金利に敏感であるため、その影響で出遅れる場面がありました。現在の賃貸マーケットは好調であり、支払利息の上昇を上回る賃料上昇が見られています。この点が投資家に理解され始め、ようやく上昇傾向が見られている状況です。

金利はまださらに上がる可能性があるものの、その上限が見えてくれば、東証REIT指数もさらに上昇していくのではないかと考えています。

取得価格合計の比較

増子:さらに、J-REIT市場全体を俯瞰しながら、私たちマスターファンドのポジショニングについてご説明します。

スライドは、取得価格の合計です。全58銘柄を資産規模の大きい順に並べています。平均を点線で示しており、約4,100億円となっています。

ただし、投資法人によって規模はさまざまです。左側の赤色の棒グラフで示した13銘柄が全体の約5割を占めており、近年では二極化が進展しています。ちなみに、当マスターファンドは左から5番目のJ-REITです。

分配金利回りの比較

増子:次に、投資家のみなさまの関心が高いと思われる分配金利回りについてです。

業界平均は4.71パーセントですが、私たちマスターファンドは4.33パーセントとなっています。なお、先ほども申し上げたとおり、分配金は基本的に持続的な賃料収入を源泉としています。

したがって、翌期や翌々期も大きな解約などが発生しない限り、賃料収入に大きな変動はないため、分配金は長期的に維持しやすいと考えています。

ただし、資産の売却を行った場合には一時的に売却益収入が含まれることがあります。その点については、投資をご検討の際にご確認いただければと思います。

配当利回りは、リスクとリターンのバランスによるものであり、高ければ良い、低ければ悪いというものではありません。みなさまの投資スタンスに合わせてお選びください。

本投資法人の概要

増子:野村不動産マスターファンド投資法人の内容についてご説明します。

当法人は、オフィス、物流、住宅、商業、そしてホテルにバランスよく分散投資をしている総合型REITに分類されます。証券コードは、3462です。決算期は概ねJ-REITでは年2回あり、当法人も5月と11月に分配金を支払っています。

また右側に格付けの記載がありますが、当法人は「AA 安定的」を取得しています。安定的な経営状態であることがおわかりいただけるかと思います。

NMF 3つの特長

増子:それでは、マスターファンドの3つの特長について順に説明します。

NMF 3つの特長

増子:まず、総合型REITであることです。

総合型REITの特長

増子:総合型REITについて、投資家のみなさまはまず「何がいいのか?」を知りたいと思います。

スライド上部の表をご覧ください。1つ目のポイントとして、用途が分散しているため、異なる賃貸マーケットのサイクルに適応した安定成長が可能であることがわかります。

左下には、イメージ図を示しています。現状とは異なりますが、例えばオフィスマーケットが軟調でも、賃貸住宅のマーケットが好調であれば、それらが相殺され、配当は安定します。

セクターごとに好不調の波や時期が異なるため、リスクが分散されていると言えると思います。ただし、後ほど賃貸マーケットについて触れますが、現状ではどのセクターも賃貸マーケットは好調です。

また、セクターごとに売買マーケットも異なります。あるセクターでは価格が高騰しており、別のセクターは購入しやすい状況ということもあります。このように常に状況が変化しており、我々としては、異なる売買マーケットに応じて、セクターをまたいだ物件の入替が可能です。

最近の実績を右下に記載しています。キャッシュフローが伸びにくい地方の住宅を売却し、賃料の上昇が期待できるホテルを取得することで、我々のポートフォリオのインフレ耐性を高めた事例を示しています。

ポートフォリオの構成

増子:マスターファンドのポートフォリオの内容です。最もシェアが大きいのはオフィスで、赤色で4,346億円と記載しています。物件数が最も多いのは住宅で、137物件を保有しています。また、最下段に記載のとおり、全体で285物件、約1兆1,000億円の不動産を保有しています。

なお、ここ2年ほどはインバウンド需要が増加しており、国内の観光需要も「コト消費」や「トキ消費」といったかたちで高まっています。

そのため、観光需要の成長性に期待し、マスターファンドではホテル取得を強化しています。未だ8物件ではありますが、平均築年数は最も低く、8.1年となっています。

kenmo:総合型ということで、さまざまな用途を運用されているかと思いますが、市場をフラットに見た際、特に現在調子が良いセクターはどこですか?

増子:よく機関投資家からも同様の質問をいただきますが、マスターファンドのような総合型の場合、どのセクターについても比較的中立的に見ることができる立場にあります。

現在、最も需要が強いのは賃貸住宅であり、賃料がどんどん上昇しています。次いで、ようやくオフィスも賃料を上げられるような市場環境になってきており、ここ1年ほどでその傾向が顕著になっています。

ホテル市場は今後さらに加速度的に良くなっていく見通しを持っています。

kenmo:賃貸市場が好調とのことですが、これは東京一極集中でしょうか? それとも、全国的な傾向でしょうか?

増子:オフィスについては、東京もようやく賃料が上がってきました。

一方で地方のオフィスは、3年前から現在のマーケット賃料と、マスターファンドが保有する物件の既存賃料の差、いわゆる賃料ギャップが大きく、先行して賃料がどんどん上昇してきた状況です。地方の賃料が上がる中で、東京が追いついてきているというのが現在のオフィスの状況です。

住宅は、その逆の動きをしています。なぜ住宅の賃料が上がっているのかと言うと、東京に人口が集中していることが大きな要因です。

東京の住宅賃料は上昇を続けていますが、地方はなかなか賃料が上がらず、ようやく最近になって少しずつ上昇し始めました。このように、セクターごとの違いが見られます。

NMF 3つの特長

増子:2つ目の特長は、大型REITであるという点です。

大型REITの特長

増子:1点目に記載しているとおり、規模が大きいと1物件あたりのシェアが小さくなり、物件の入替がしやすくなります。また、コスト面ではスケールメリットを享受できる点が挙げられます。

左下のグラフをご覧ください。約10年間で約5,000億円の物件を取得する一方、オレンジで示された売却物件は2,160億円に上ります。

その下には、ポートフォリオの内容を記載しています。物件の入替を推進した結果、平均築年数や東京圏比率が改善し、ポートフォリオの質が向上しています。

平均築年数は、10年前の19.3年と比較して、通常なら物件の入替がなければ10年後には29.3年になるところ、21.3年に抑えられています。また、コスト面においてもスケールメリットが働き、その恩恵を受けやすくなっている点も補足します。

次に、物件やテナントの分散が進んでおり、ダウンサイドリスクが小さくなっています。具体的には、右下にシミュレーションを記載しています。

マスターファンドの場合、仮に1億円の減収があった場合でも、分配金への影響は0.6パーセントのマイナスにとどまります。一方で、仮に10分の1の規模のJ-REITがあった場合、分配金への影響は6.1パーセントのマイナスとなります。

したがって、規模が大きいということは、長期的な投資を検討している投資家にとって、安定した分配金を期待しやすいということにつながるかと思います。ポートフォリオの分散状況については、次のページでご説明します。

ポートフォリオの分散状況

増子:スライド左上は物件、右上はテナントによる分散状況を示したパイグラフです。上位10件で約20パーセントとなっており、集中リスクを低減しています。また、物件の入替を継続しており、下段の表に示しているとおり、築年数の分散も進めています。

一般的には築浅の物件が良いと考えられがちですが、不動産の修繕投資サイクルを踏まえた場合、築後20年や40年といった時点で意外とコストがかかる傾向があります。

そのため、長期的にコストを平準化するという観点では、築年数を分散させることが非常に有効な手段であると考えています。

ポートフォリオマップ

増子:スライドは、地域分散を示したものです。北は北海道から南は沖縄まで、政令指定都市を中心に投資を行っています。

ただし、スライド左上のパイグラフで示しているように、需要が厚い東京圏に全体の83.2パーセントほどを投資しています。なお、東京圏は1都3県と定義しています。

kenmo:非常にさまざまなエリアで運用されていますが、今後も最も投資妙味があると考えるエリアは、やはり東京でしょうか? それとも、地方とバランスよくという考え方なのでしょうか? 少しそのあたりの今後の方針もお聞かせください。

増子:J-REITというのは基本的に、ゴーイング・コンサーンとして永続的に運営していくことが使命です。東京圏は需要に厚みがあり、上場企業の本社の約4割から5割が東京に集中していることから、人も必然的に集まります。

我々は資産運用ガイドラインに基づき、75パーセント以上を東京圏に投資すると定めています。現在、その割合は83パーセントであり、今後も1都3県を含む東京圏を中心に投資していく予定です。

一方、地方については、先日「大阪・関西万博」も話題に上りましたが、大阪には非常に注目しています。

現在、IR(統合型リゾート)が建設中であり、大阪維新の会が「大阪都構想」を掲げていることや、観光資源が豊富でインバウンド需要も堅調なことなどから、大阪は現在、相当な成長を遂げています。

オフィスや住宅の賃料も上昇傾向にあり、大阪はサブマーケットとして非常に魅力的な地域だと考えています。

kenmo:スライドの地図を拝見すると、確かに大阪府は現在924億円と多いですね。それに比べて、名古屋市は1物件と少ないですね。

増子:そうですね。偶然もあるかもしれませんが、名古屋の賃貸住宅マーケットはこの5年ほど少し弱含みで推移していました。そのため、保有していた5物件をすべて売却した影響があるかと思います。

NMF 3つの特長

増子:3つ目の特長は、野村不動産グループによる強力なスポンサーサポートです。

野村不動産グループの強力なスポンサーサポート

増子:まず、スポンサー開発物件による供給サポートが一番の強みであると考えています。

スライド左下に図示されているように、物件の取得競争が激しい中で、マスターファンドはスポンサー開発物件を優先的に取得検討することが可能です。マスターファンドのポートフォリオのうち、約70パーセントはスポンサーから取得した物件です。

2つ目の強みは、開発物件によるブランド力です。スライド右下に記載のとおり、野村不動産はセクターごとにブランド展開を行っています。マスターファンドが取得した後も、野村不動産グループが引き続き運営管理に携わり、運用会社である我々とともに物件価値の向上に努めています。

なお、野村不動産グループへの運営管理の委託割合は約80パーセントです。

オフィスマーケット

増子:ここからは、先ほど説明した好調な賃貸マーケットおよびポートフォリオの運営状況についてお話しします。

まず、都心5区のオフィスマーケットについてご説明します。折れ線グラフでは、赤色が賃料単価、オレンジ色が空室率を示しています。コロナ禍で空室率は一時的に悪化しましたが、その後、出社率の改善や採用強化によりオフィス需要が一段と強まり、直近では2パーセント前半まで改善しました。

また、経験則上、マーケット空室率が5パーセントを下回ると一般的に貸主優位になるとされています。現在は需給が非常にタイトな状況にあり、賃料単価も上昇基調となっています。

賃貸住宅マーケット

増子:賃貸住宅マーケットについてお話しします。スライドの折れ線グラフは、東京23区の賃料単価をタイプ別に示したものです。

2022年頃から黄色で示したファミリータイプが先行して上昇し、その後はシングルやコンパクトタイプも遅れて上昇しています。要因としては、東京への人口流入、賃金の持続的な上昇、分譲マンションの価格上昇などが挙げられます。

オフィス・賃貸住宅の運用状況

増子:オフィス・賃貸住宅の運用状況です。スライド上段は、オフィスの状況を示しています。

左上はテナント入替による賃料の増減、右上は継続テナントとの賃料改定による賃料の増減を示しています。いずれも賃料は上昇基調にあり、当面のマーケット需給はタイトで推移する見込みです。そのため、今後さらに賃料の増額が可能なマーケットになっていくと考えています。

スライド下段は、賃貸住宅を示しています。賃貸住宅も入替時で12パーセント、改定時でも4パーセント近くまで賃料が上昇しています。現在はかなり高水準にあり、今後もこの水準を持続できる見通しです。

kenmo:こちらのスライドについて、いくつかうかがいます。まず、オフィスの賃料増減について、テナント入替と再契約では若干傾向が異なるように思います。その理由を教えてください。

増子:テナント入替の場合、解約となった空室を新たなテナントで埋めるため、比較的容易にマーケット賃料に入替ることができます。

一方で再契約の場合は、入居しているテナントと賃料増額の交渉を行います。この場合、現在の賃料が1つの目安となるため、例えば坪2万円のテナントを坪3万円にしてほしいと申し出ても、容易には応じてもらえません。

せいぜい10パーセントから20パーセント程度の賃料増額となるため、テナント入替のほうが賃料を劇的に引き上げやすいです。

kenmo:ありがとうございます。次に、オフィスのリーシングにおいて、賃料改定で増額の交渉が通りやすい条件はなにかありますか? 

増子:これはテナントによりますが、面積の大小でいうと、小さい方が増額しやすい傾向にあります。

kenmo:ありがとうございます。また、スライド下の住宅においても賃料の上昇トレンドが広がる中、今後はテナント入替と更新、どちらの賃料改善余地が大きいと見ていますか?

増子:どちらもこのペースで持続できると考えています。入替の場合、ほぼすべての物件で賃料増額となりますが、改定の場合、増額している方の割合は6割程度にとどまっています。残りの4割は据え置きとなっているため、そこにはまだ伸びしろがあると考えています。

物流施設・商業施設の運用状況

増子:物流施設と商業施設についてご説明します。まず、スライド右上のグラフをご覧いただくと、物流施設は毎期3パーセントから8パーセントほど、改定時に賃料が引き上げられており、マーケットは非常に好調です。

次に、スライド下段の商業施設です。2025年2月期には特殊要因がありましたが、コロナ禍で苦労しながらも、入替時や改定時に賃料を引き上げられるようなマーケットへと変化してきています。

以上をまとめると、全セクターにおいて賃料を引き上げられる状況となっています。

物件ご紹介:オフィス

増子:ここからは、物件のご紹介です。まずはオフィスです。

スライド左端に掲載しているのは、田町にある日本電気本社ビルです。マスターファンドは半分を保有しています。左から2つ目は、麹町にあるオリエントコーポレーション本社です。こちらは約6割を保有しています。

また、右側にはスポンサーが開発するブランドシリーズを掲載しています。

物件ご紹介:物流施設

増子:次に、物流施設です。野村不動産は「Landport」というシリーズで、物流事業を展開しています。

スライド左側の「Landport八王子II」には免振装置が設置されており、さらに屋上には太陽光パネルも設置されているため、環境にも配慮された施設となっています。

物件ご紹介:賃貸住宅

増子:こちらは、賃貸住宅の説明です。スライド左上の「深沢ハウス HI棟」は、駒沢公園に隣接しており、著名人の方もお住まいになるような高品質なファミリータイプです。

左下の「プライムアーバン札幌リバーフロント」は、住宅のうち最も高層タワーである札幌市の中島公園近くの物件です。

スライド右側には「プラウドフラット」を掲載しています。野村不動産といえば「プラウド」で有名ですが、そのノウハウを活用し、賃貸住宅も高品質なものを開発し続けています。

物件ご紹介:商業施設

増子:商業施設です。大阪の方には馴染みがあるかもしれませんが、スライド左側の「ユニバーサル・シティ・ウォーク大阪」は、USJに隣接しています。

また、左下の「中座くいだおれビル」は昨年3月26日にリニューアルオープンし、エントランスには「くいだおれ太郎」という人形が置かれています。

スライド右側には、野村不動産が開発する飲食テナントの「GEMS」、サービス系テナントで構成される「MEFULL」を記載しています。

物件ご紹介:宿泊施設

増子:こちらが宿泊施設です。当社は過去2年半で6物件のホテルを取得しており、今後もこの比率を上げていきたいと考えています。

分配金の推移

増子:分配金についてです。スライドは、10年間の分配金推移を示したグラフです。2020年以降、コロナ禍の影響が若干あったものの、長期間にわたって安定した分配実績を維持しています。

近年ではインフレを迎えており、それを強く意識し、金利コストの上昇を上回る賃料増額を実現することで分配金を引き上げています。

分配金利回りの推移

増子:分配金利回りの推移です。2020年の新型コロナウイルス発生時に若干株価のボラティリティが高くなりましたが、おおむね4パーセント前後で推移していることがおわかりいただけるかと思います。

分配金に関する中期目標

増子:最後に、分配金に関する中期目標についてお話しします。こちらのスライドは、マスターファンドとして昨年4月に掲げた中期目標です。

2028年2月期に一口あたり3,740円から3,770円を目指しています。好調な賃貸マーケットを背景に、達成時期を少しでも前倒しできるよう鋭意努力しています。

私からのご説明は以上です。

質疑応答:不動産価格上昇時の物件取得戦略について

分林里佳氏(以下、分林):「足元の不動産価格や競争環境を踏まえ、スポンサーである野村不動産グループとのパイプラインはどの程度機能しているのでしょうか?」というご質問です。

増子:現在、不動産価格は確かに上昇しています。しかし、スライドに記載のとおり、右下のブランド物件は野村不動産が定期的に開発しており、非常に高品質なものです。取得後の賃料も、外部から購入した物件と比較してより引き上げられている実績を積み上げています。

このような物件を厳選しながら購入を進めていきたいと考えており、先日もオフィスの「H¹O」や賃貸住宅の「プラウドフラット」を取得しました。

質疑応答:借入の期間分散と金利上昇対応について

分林:「金利上昇局面において、調達コスト増加への対応策をどのように考えていますか? 固定・変動金利比率や借入期間の戦略について教えてください」というご質問です。

増子:基本的に、スライド下段の「返済期限の分散化」のグラフに示しているとおり、私たちは約5,000億円の借入額のうち、毎期300億円から400億円の借り換えで済むように借入期間を分散しています。

以前はゼロ金利でしたが、現在は金利が上昇してきています。2024年3月頃から政策金利が引き上げられましたが、変動金利の割合を少し増やしたり、借入期間を短くしたりすることで、分配金への影響を軽減させるファイナンス方針です。

借入の平均残存年限はおおむね3.5年から4年程度で、固定金利比率も70パーセント程度まで緩めていく方針です。

質疑応答:賃貸住宅やホテルの成長性と将来の展望について

分林:「総合型REITとして複数アセットを保有されていますが、現時点で最も収益性や成長性に寄与しているアセットタイプはどれでしょうか? また、今後比重を高めたい分野はありますか?」というご質問です。

増子:現時点で、最も収益性や成長性に寄与しているのは賃貸住宅です。

ただし、今後2年から3年でさらに成長が期待されるのは、オフィスだと考えています。とはいえ、現在は物件価格がさらに上昇しており、多くの方がオフィスや賃貸住宅の購入を希望されている状況です。

このような価格上昇の中、先ほども少し触れましたが、日本の観光資源に注目しており、観光地を拠点としたホテルの比率をもう少し増やしたいと考えています。

現在は日中関係の悪化によって中国からの観光客が若干減少していますが、長期的には他の観光客で補えると考えています。政府も、2030年までに訪日観光客を6,000万人まで増やすという目標を掲げています。

昨年はようやく4,000万人を超えた水準だったことから、今後はさらに需要が伸びると見込んでいます。

現在、マスターファンドのホテルの比率は約2.6パーセントですが、少なくとも5パーセント程度まで増やしていきたいと考えています。

質疑応答:首都圏の物流供給過多と御社の取得・売却判断について

kenmo:物流についてうかがいます。足元、物流は首都圏で供給過多の状況が続いているというレポートも目にします。現在、御社は幸いにも満床状態の稼働が続いていますが、今後、新規の供給が継続した場合、御社の取得や売却判断はどのように変わるのでしょうか?

増子:ご指摘のとおり、近年、物流施設の新規供給はここ3年ほど多い状況が続いています。スライドの地図にあるように、緑色の線で示した圏央道沿いでは供給が非常に多く、空室数が増加しており、その消化に時間がかかっています。

建築費の上昇については、日経新聞などでも触れられているとおり、今後はその影響で新規供給が各セクターで先細る見通しです。その結果、現在10パーセントを超えている空室率も、徐々に下がっていくと考えています。

なお、日本におけるEC化率は、現在9パーセントから10パーセント程度の水準にとどまっています。一方、アメリカでは約18パーセント、他の諸外国では20パーセント以上の水準に達しています。

このような状況を踏まえると、日本のEC化率は今後上昇する可能性が高く、それに伴い、物流需要も長期的には伸びていくだろうと考えています。

質疑応答:セキュリティ・トークンや小口化商品と上場REITの違いについて

kenmo:「投資対象として、最近はREITだけでなくクラウドファンディングやセキュリティ・トークンなども出てきています。REITが優位な点と、それぞれの特長について教えてください」というご質問です。

増子:最近では、セキュリティ・トークンや小口化商品が個人向けに出ています。そのような物件は、まず一定期間保有することを前提としており、例えば保有期間が5年であれば、5年後に売却することになっています。

一方、売りたい時に売れるのが上場REITです。来週の月曜日に売りたいとなったら売却できます。上場REITの一番の特長としては、このような流動性が挙げられます。

クラウドファンディングの小口化商品の場合、5年間であればその間は基本的に保有する必要がある点が、最も大きな違いだと思います。

質疑応答:大型テナント退去時の対応策と足元のLTVの適正水準について

kenmo:「運用がうまくいかなかった経験はありますか? ファンドを設定するにあたり、一番気をつけていることは何ですか?」というご質問です。

増子:例えば、大型テナントが退去した際などに稼働率が低下する経験は、マスターファンドだけでなく他のJ-REITでもあることかと思います。

ただし、マスターファンドでは過去に売却した際の売却益をリザーブしている部分があり、一過性の空室によるマイナスが発生した場合には内部留保を充当して分配金を維持しています。

大規模なものだからこそ可能な部分でもありますが、これまでにも、このような工夫を重ねて乗り越えてきました。

質疑応答:適正なLTV水準の考え方について

kenmo:LTV水準についてうかがいます。LTVは当面40パーセントから50パーセントを目指しつつ、上限を60パーセントとする方針ですが、現在の金利上昇局面において、適正なLTVはどのあたりにあると考えていますか?

増子:現状、LTVは46.3パーセントとなっていますが、結論から申し上げると、現在の水準が適正だと考えています。

一部のJ-REITでは、ローンを借り入れて物件を取得し、LTVを引き上げて分配金を増やす戦略を取る銘柄も見受けられます。しかし、金利が上昇している局面であることから、マスターファンドでは積極的にLTVを引き上げるような戦略を採用する予定はありません。

また、「金利が上昇しているならば、借入を返済すればよいのではないか」というご意見もあります。しかし、スライド上段の表の3段目に記載のとおり、現在、マスターファンドの平均借入金利は0.8パーセントほどであり、借入によるレバレッジ効果で分配金を上げている面もあります。

現在の水準あたりが適正だと考えていますが、借入を返済すると分配金が下がってしまうため、LTVを下げることは容易ではありません。

増子氏からのご挨拶

増子:私は、J-REITの運用に20年近く携わっています。配当を重視する投資家のみなさまにとって、J-REITはインフレ対応も可能な非常に魅力ある金融商品だと思います。

分散効果を企図し、みなさまのポートフォリオの中に1割でも2割でも、J-REITを組み入れていただけますと幸いです。また、これを機会に、J-REITに少しでも関心を持っていただければありがたく思います。

本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:貴社が選定した投資先の中から投資者が更に選択して高パフォーマンスを目指すような仕組みはできないでしょうか?

回答:現状のREITの法制度上においてはできません。

<質問2>

質問:東京都心5区の空室率は2.22パーセントまで低下していますが、2026年から2027年の大量供給リスクをどう見ていますか?

回答:昨年は新規供給が多い時期でしたが、2026年以降の新規供給は建築費上昇の影響もあり、落ち着いてくる見通しです。

その中でも2026年の新規供給物件のリーシング状況は既に8割近く内定していると言われていることから、マーケットの需要は強く、賃料の上昇傾向は今後も続くと思われます。

<質問3>

質問:オフィス比率約4,346億円と最大ですが、今後もオフィス中心戦略ですか?

回答:ライブ内でもご説明しましたが、今後は宿泊施設の投資比率を現状の2.6パーセントから5パーセント程度まで増やしたいと考えています。

結果として、オフィス含め、他のセクターの投資比率は相対的に低減する見通しですが、その他、アロケーションの大きな変更は今のところ予定していません。

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