本日の内容
粟野裕氏(以下、粟野):みなさま、こんばんは。エバラ食品工業株式会社の会社説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。取締役の粟野と申します。
本日は、当社の事業概要と成長戦略についてご説明します。最後までお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
本日は、スライドの6項目を順番にご説明したいと思います。
経営理念/会社概要
粟野:まず、1項目目の「会社紹介・事業概要」です。
当社は経営理念として「『こころ、はずむ、おいしさ。』の提供」を掲げ、新しいおいしさとワクワクするおいしさを通じて、人と人との絆づくりの機会を広げることを目指しています。
会社の所在地は神奈川県横浜市、設立は1958年ですので、創業67年になります。グループ全体の連結従業員数は870名です。
なお、中核となるエバラ食品単体の従業員数は516名で、少数精鋭による経営を実践しています。
当社の提供価値と代表的な商品
粟野:当社が提供する代表的な商品を2つご紹介します。
まずは「焼肉のたれ」です。当社は1968年に、家庭の食卓ではなじみの薄かった焼肉というメニューを家庭でも楽しめるよう、「焼肉のたれ」を開発しました。
1978年には「黄金の味」を発売し、現在に至るまで47年間、お客さまからご支持をいただいている超ロングセラー商品となっています。
続いて、「プチッと鍋」を代表とするポーション調味料です。単身世帯の増加や個食ニーズの高まりといったライフスタイルの変化を捉え、人数に合わせて楽しめる「プチッと鍋」を2013年に発売しました。
その後、「プチッとうどん」、そして昨年には「プチッと中華」をラインアップに加え、この10年間で大きく売上を伸ばしています。
このように、豊かな食生活の実現に向けて新しい価値を提供することは、当社の創業以来の精神です。
売上構成比 2024年度
粟野:スライドは連結売上高の構成比です。2024年度の売上高は479億円で、食品事業が全体の84.1パーセントを占めています。
食品事業は、家庭用商品と業務用商品に分かれます。家庭用商品には、スライド円グラフの右上から「黄金の味」などの肉まわり調味料群、「すき焼のたれ」や「プチッと鍋」などの鍋物調味料群、「浅漬けの素」などの野菜まわり調味料群があります。その他のカテゴリーには、ポーション調味料の1つである「プチッとうどん」や「プチッと中華」、また、カレーの「横濱舶来亭」が含まれています。
以上が家庭用商品です。当社全体の売上の約63パーセント、食品事業の約8割を占めています。
外食産業に納入する業務用商品は、当社全体の売上の約20パーセントを担い、ラーメンスープや焼肉のたれなど、多様な商品を販売しています。このほか、物流事業が14.6パーセント、その他が1.3パーセントとなっています。
エバラのトップシェア商品
粟野:スライドは、当社が国内市場でトップシェアを持つ商品を示しています。
当社の商品は「焼肉のたれ」「すき焼のたれ」「浅漬けの素」、そして「個食鍋」といったニッチな分野でNo.1のシェアを獲得し、長期間にわたり維持しています。
このように、ニッチな領域でトップポジションを確立することが当社の強みであり、これを「ニッチ&トップ戦略」と呼んでいます。
トピックス:人気TV番組『ジョブチューン』に初参加
粟野:2項目目は「当社の強み」です。当社の強みをご紹介する前に、最近のトピックスを1つお伝えしたいと思います。
昨年11月、当社はTBSの人気番組『ジョブチューン』の「冬の3社鍋対決」に参加しました。この番組では、ミシュランの星を獲得した有名レストランのシェフをはじめ、プロの料理人が審査員を務めており、試食に基づき、商品を「合格・不合格」で判定します。
かなり辛口のコメントで有名な番組でしたので、「もし不合格ばかりだったらどうしよう」という声も社内から上がっていました。しかし結果としては、エントリーした5商品すべてが合格し、そのうち4品は満場一致のパーフェクト合格という高評価をいただきました。
当社商品の「味」についても、プロの料理人の方々からこのような評価をいただけたことは、当社の開発陣にとって大きな自信となりました。また、この番組をきっかけに当社商品を購入していただいた方も多くいらっしゃったのではないかと思います。
当社の強み (高濃度濃縮技術の深化)
粟野:さて、番組内でもご紹介いただきましたが、「プチッと鍋」が高評価をいただけたのは、当社が創業以来、磨き続けてきた濃縮技術が大きく関わっていると考えています。
当社は創業間もない頃から、札幌ラーメンのみそスープの素を製造してきました。ラーメンスープ作りは、素材の持つうまみや香りを壊さずに「ギュッと凝縮する」ことが求められる、非常に繊細な仕事です。単に味を濃くすればよいというものではありません。
希釈し、調理していただく際に初めて香りが立ち、味噌本来のうまみが引き出されることで、おいしさを感じていただけなければ意味がありません。
この積み重ねの中で、エバラならではの濃縮技術が育まれてきました。そして今回の「プチッと鍋 濃厚みそ鍋」は、その技術を受け継ぎつつ、開発の若手メンバーが新しい発想を加えることで生まれた、まさに伝統と革新の結晶と言える商品です。
また、番組の審査員からは「濃縮することで味噌のうまみがより中に閉じ込められている」というコメントをいただきました。
ちなみに、濃厚で粘度が強い調味液が容器に残らないようにするための製造方法として、当社の特許技術が使用されています。
当社の強み (充填技術の進化マップ)
粟野:技術的な観点からもう1つお話しします。小さな容器においしさを閉じ込めるためには、濃縮技術に加え、製造面での充填技術が重要です。
当社では、この充填技術を進化させ、液体のみならず、明太子やそぼろといった具材も充填できるよう製造技術を革新してきました。
これにより、鍋つゆのラインアップを広げるとともに、鍋つゆ以外の新商品の開発が可能となりました。
「プチッと鍋」は秋冬に販売が偏る傾向がありましたが、2016年には春夏向けの「プチッとうどん」を発売したことで、通年での販売が可能となりました。
そして、40ミリリットル容器や具入りポーションの開発により、ラインアップを強化してきました。
さらに、昨年2月には中華カテゴリー向けに「プチッと中華」を投入し、ポーション調味料の可能性を広げています。
ポーション調味料のカテゴリー拡大 (全体像)
粟野:スライドのとおり、ポーション調味料は年々、カテゴリーとフレーバーのラインアップを広げています。
それを実現したのは、スライド左上の写真にある岡山県津山工場に2024年10月に新設されたポーション用の新たな工場棟です。
これにより、栃木工場と津山工場の2拠点による増産体制が整い、新ジャンルや新フレーバーの開発・製造が加速しています。今後もこの製造基盤を活用し、さらに拡大を目指したいと考えています。
ポーション調味料のカテゴリー拡大 (売上高)
粟野:以上の取り組みの結果、ポーション調味料の売上高は年率10パーセント以上の伸び率を記録し、5年間で1.5倍の規模まで成長しました。
今期は第3四半期累計で約60億円となっており、前年度を超えることが確実です。
エバラ食品グループの長期ビジョン (2024-2033年度)
粟野:続いて3項目目の「長期ビジョンと中期経営計画」です。2024年5月に発表した当社グループの長期ビジョンについてご説明します。
まず、スライドの右上に掲げた2033年度のありたい姿を「おいしさ、たのしさ、あたらしさで食カテゴリーを創造する企業」と定め、「独自性のある商品・サービスで人々の食生活に貢献し、社会に必要とされる存在になる」という目標を設定しました。
それに向けたミッションは、スライド左上に示したとおりです。1つ目は、最も重要な「ヒトづくりとグループ連携」、2つ目は「モノづくりの改革」です。ニーズの多様化を見据え、多品種少量生産にも対応していきます。
3つ目は「新領域開拓」で、健康志向の高まりにも対応していきます。4つ目は「海外の成長」で、国内の人口減少を踏まえ、まずはアジアにエバラブランドを浸透させ、地域を拡大していきます。5つ目は「迅速な経営体制」で、ICTの活用および業務プロセス改革です。
このように、今後見込まれる社会・経済の変化に備え、10年後を見据えたミッションに取り組んでいく予定です。
また、スライド左下に記載していますように、長期ビジョンの10年間を3つの期間に区分し、最初の3年間を「成長への基盤固めのフェーズ」として、成長投資や構造変革の施策を実施していく期間としています。
次の3年間は、最初のフェーズで投資・変革によって構築した基盤を活かし、成長への道筋を作っていきます。そして、最後の4年間で過去最高益を実現することを目指します。
中期経営計画 (2024-2026年度)
粟野:第1フェーズである中期経営計画「Ebara Reboot 2026」は、まもなく2年目を終えるところです。
「Reboot」つまり「再起動」の名前が示すとおり、この3年間で成長投資と構造変革を進め、持続的な利益拡大の軌道に乗せることを目的としています。
基本戦略はスライド中央に記載の3つとなりますが、これまでに実施してきた内容をご紹介します。
1つ目の「既存事業の磨き上げ」は、先ほどご説明したポーションラインへの投資や、2月に発売された「焼肉のたれ」の新商品投入です。
2つ目の「新市場・新価値創造」については、中華カテゴリーへの進出や海外事業拡大のためのタイ工場新設を含みます。
3つ目の「経営基盤改革」は、昨年6月に発表した製造体制の再編です。
いずれも大規模な投資を伴いますが、将来の成長基盤を構築するために決断し、すでに実施へと移行しています。
数値目標はスライド下部に示された3点で、その実現に向けた取り組みについて、これからご説明します。
海外売上高の推移
粟野:まず、海外事業の進捗についてです。中期経営計画では、海外売上高比率を5パーセント以上にすることを目指し、東南アジアでの販売拠点の設立や貿易機能の強化を進めてきました。
2024年8月には約29億円を投資し、タイ工場を新設しました。海外では業務用商品の販売が中心であり、タイ工場では業務用のラーメンスープなどを製造しています。
これらの取り組みにより、海外の売上高は着実に拡大しており、中期経営計画2年目にあたる今年度の海外売上高比率は、目標の5パーセント達成が目前です。
製造体制再編に伴う投資
粟野:続いて、国内製造体制の再編についてご説明します。当社は茨城県の「しもつま中央工業団地」に用地を取得し、新工場建設に向けた準備を進めています。
長期ビジョンに掲げる「製造体制の変革」、すなわち多品種少量生産にも対応できる柔軟なモノづくりの実現を目指す投資です。
工場建設と設備導入は数期に分けて進め、第1期は2028年度頃の稼働を予定しています。また、昨年6月には、主に業務用商品の製造を担ってきた群馬工場の操業停止を決定しました。
この工場は老朽化や拡張性の課題があったため、群馬で製造していた商品は、グループ内外の最適地へ順次移管し、業務用商品の製造体制の高度化と効率化を進めていきます。
このような一連の製造体制の再編は、長期ビジョン「モノづくりの改革」の根幹をなすものです。
おいしいだけでなく、付加価値が高く、安心・安全な商品をお客さまにタイムリーにお届けできるよう、製造体制の進化に取り組んでいきます。
業績推移
粟野:4項目目の「業績推移と業績見通し」です。スライドは、今年度を含めた直近5年間の業績推移を表しています。
ご覧のように、売上高は毎年増収で推移していますが、営業利益はこの4年間減益傾向が続きました。
減益要因は主に2つあります。1つ目は原材料価格や物流費などの高騰です。これらのコスト増加に対処するため、コスト削減に加え価格改定も実施してきましたが、価格改定後にしばらく販売数量が減少する傾向があるため、コスト増加が先行しました。
今年度は、原材料価格の上昇が少し落ち着き、販売数量は徐々に回復しています。
2つ目は、成長投資に伴う減価償却費の増加です。先ほどご説明した津山とタイへの投資により、減価償却費が増加し、利益を押し下げています。
しかし、これらの投資は将来の成長に向けたものであり、今後、売上や利益として回収できると考えています。
以上2つの減益要因により、営業利益は4年間減益が続いていましたが、今年度は5期ぶりに増益となる見通しです。
今年度の数値については、次のページでご説明します。
通期業績予想の修正について (2026年2月6日決算発表と同時開示)
粟野:今期の業績予想については、2月の第3四半期決算発表時に上方修正を開示しました。
上方修正の要因としては、この秋冬は気温が低く、葉物野菜の価格が安定したことから、鍋物調味料が予想を上回る売上を達成した点が挙げられます。また、インバウンド需要の影響もあり、業務用商品の売上も好調に推移しました。
利益面については、継続的なコスト削減が行われたことに加え、価格改定が進んだことで、原材料価格の高騰による影響が抑えられ、大幅な利益増加が見込まれる状況となっています。
これにより、営業利益は5期ぶり、当期利益は4期ぶりの増益となる見通しです。
セグメント・製品区分別 売上高
粟野:スライドは、セグメントおよび製品区分別の売上高を示しています。当社の主力は、みなさまのイメージどおり、「黄金の味」を中心とした肉まわり調味料群です。
スライド表の赤枠で示しているとおり、まだ期中ではありますが、鍋物調味料群の売上高が初めて肉まわり調味料群の売上高を上回る結果となりました。また、「プチッと中華」を投入したその他群も高い成長を示しています。
なお、肉まわり調味料群は微減となっていますが、その対策については次のページでご説明します。
新商品紹介(肉まわり調味料群の販売強化)
粟野:「焼肉のたれ」のカテゴリーではトップシェアを維持していますが、スーパーマーケットのプライベートブランドの増加や精肉価格の高騰により、他の分野と比べるとやや苦戦しています。
この状況を打破するため、まず「黄金の味」には新たなフレーバーとして「焼肉たれポン酢」を追加します。
また、スライド右側の「焼肉堪能」シリーズを新たに展開します。この商品は新たな製法により、「口に入れた瞬間の強い風味立ちによる没入感」と「長引く後味による余韻」を感じられる商品です。
このシリーズは「黄金の味」よりも低価格に設定しており、当社が比較的弱い、若い世代への訴求を目的とした商品となっています。
これらの肉まわり調味料群の売上回復に向けて、CMなどのプロモーションも強化していく予定です。
株主還元
粟野:5項目の「株主還元」です。当社は株主還元指標として総還元性向を採用しています。
中期経営計画「Ebara Reboot 2026」では、総還元性向50パーセント以上を目標に、足元の事業環境や業績動向に応じた配当金に加え、自己株式の取得などを適宜実行していきます。
今期は、先ほどご案内した業績の上方修正を考慮し、期末配当金を2円増配しました。来年度は、中期経営計画の最終年度となるため、総還元性向50パーセントの目標達成に向けた取り組みを強化する予定です。
株主優待については、スライド右側をご覧ください。写真は1,000株以上保有の場合の優待品です。
保有株式数に応じて3種類の優待品セットを用意しており、多くの株主のみなさまに好評をいただいています。
環境配慮型PETボトルの採用
粟野:6項目の「サステナビリティへの取り組み」について、当社が行っている事例をいくつかご紹介します。
まず、環境配慮に関する取り組みとして、今回発売した「焼肉堪能400グラム」には、「ケミカルリサイクルPET」を使用した新容器を開発・採用しました。これにより、現行のペットボトルと比較して、製造時のCO2排出量を25パーセント削減しています。
環境/社会貢献活動
粟野:続いて、昨年7月に一部商品の包装材料で使用していたダンボールの仕切りを廃止しました。これにより、該当商品のダンボール使用量を16.7パーセント削減しました。
また、一部鍋物調味料群の商品ボトルをガラスからPETに変更することで、90パーセントの軽量化を実現しました。
スライド右側は、社会貢献活動の紹介です。当社は2008年から神奈川県内の小学校を中心に、子どもたちが食の大切さを学ぶ「ふれあい食育教室」を継続しています。このほか、バーベキュー大会など、さまざまな食のイベントを実施しています。
統合報告書「VALUE REPORT2025」について
粟野:最後に、当社の統合報告書「VALUE REPORT2025」をご紹介します。
本日ご説明した当社の取り組みを、社員のインタビューなども交えながら詳細に掲載していますので、ぜひご覧ください。
私からのご説明は以上です。
質疑応答:個食市場の成長性について
荒井沙織氏(以下、荒井):「少子化や単身世帯の増加、そして働き方の多様化に伴う個食市場の長期的な成長性をどのように見ていますか?」というご質問です。
粟野:少子化により人口は減少すると考えられますが、一方で単身世帯の数は増加していくと思います。特に、今後は高齢者の一人暮らしが増えるのではないかと考えています。
また、家庭内でも共働きが増加しているため、個食化が進むと考えられます。
加えて、在宅勤務の増加も個食の増加につながり、食品業界全体としても個食市場は成長市場であると捉えています。
したがって、当社は、このようなニーズにしっかり応えていきたいと考えています。
荒井:昔は「鍋といえばみんなで食べるもの」というイメージがありましたが、「プチッと鍋」で「1人でも鍋って食べていいんだ」ということで、イメージが大きく変わったという印象を受けます。
質疑応答:新しい柱となるカテゴリーでの商品の構想について
荒井:「共働き世帯や単身世帯の増加に対し、『プチッと鍋』シリーズ以外の新しい柱となるカテゴリーの構想はありますか?」というご質問です。お答えできる範囲でお願いします。
粟野:あまりお答えできない部分もありますが、すでに発売されたものとして「プチッとうどん」「プチッと中華」があります。この可能性については、多岐にわたると思っています。
例えば、カレーやパスタなども可能性のある例として挙げられます。それを具体的に検討しているかどうかは別としても、今後十分に可能性がある分野だと考えています。しっかりとお客さまのニーズを調査しながら、ラインナップを拡充していきたいと思います。
荒井:SNSを見ると、お客さまがそれぞれに「ちょい足し」したり、アレンジを楽しんだりしている様子が見受けられます。そうしたところから、新商品が次々と生まれていくのかもしれませんね。
粟野:いろいろなアレンジという点では、当社のホームページでもさまざまな方法を紹介しており、飽きが来ないよう工夫しています。
荒井:十分飽きの来ないラインナップが揃っているようにも見えますが、みなさまにはいろいろと楽しんでいただければと思います。
質疑応答:競合他社に対する競争優位性や対応策について
荒井:「競合他社が個食、ポーション調味料市場へ参入した場合の競争優位性や対応策はあるのでしょうか?」というご質問です。
粟野:「ポーション」というのは普通の容器のことで、今、私が持っているものは20ミリリットルのものです。そして、こちらが大きい40ミリリットルポーションになります。
この容器に調味料を入れること自体はそれほど難しくありませんが、「おいしく作る」という点では非常に難しいと思います。
その点、当社の濃縮技術は他社と比べてもかなり優位性があると考えています。当社の開発メンバーも、なかなか真似できない技術だと自信を持っています。
また、製造設備についてですが、先ほども少し触れましたように、投資額がかなり大きく、大がかりなものになり、ノウハウの蓄積も非常に重要です。例えば、具入り調味料の充填が挙げられます。
粟野:こちらのスライド右上に「具入りタイプ」と記載がありますが、これが非常に難しい作業になります。充填する際に詰まってしまうことがよくあります。
荒井:バランスよく、正しい量が入らないといけませんものね。
粟野:そのとおりです。均等に充填する必要があり、かなり研究を重ねています。そのため、他社が参入する可能性もありますが、参入の障壁はかなり高いのではないかと思っています。
ですので、当社としては、先ほどから示しているさまざまなラインナップや種類、そしてもちろん味の良さなどを、他社が追随できないレベルまで高めていくことが、他社の参入に対する対応策になると考えています。
質疑応答:商品開発・ブランド・販路における総合的な優位性について
荒井:「先ほど、御社の強みや競争優位性など、商品に対してのことを教えていただきましたが、味、ブランド、販路、販促、投資など、経営としてどこに最も競争優位性があると認識されていますか?」というご質問です。
粟野:味については先ほどからご説明していますが、当然ながら味が良くなければお客さまに購入していただけません。それゆえ、開発メンバーが日々工夫を重ねています。同じ商品でも、順次リニューアルを行いながら進めています。
ブランドに関してですが、例えば「プチッと」シリーズの「プチッと」は商標登録しており、今後「『プチッと』といえばエバラだ」ということが認知されるようなかたちで、この商標を非常に重要視していきたいと思います。
荒井:「1プチッと1人前」というのはすでに印象に残っていますね。
粟野:それはコマーシャルでも頭に残るフレーズで、おそらくスーパーマーケットに並んでいると自然と「これだ」と、手が伸びるのではないでしょうか。これがブランド力ではないかと考えています。
荒井:販路や販促、投資についてはいかがでしょうか?
粟野:販路としては、食品ですのでスーパーマーケットが中心となりますが、これは他社と比べてもかなり優位性があると思います。
つまり、棚のスペースをしっかり確保できているのは、これまでの実績や、次々と新商品を投入していることをスーパーマーケット側から評価いただいている証拠です。これにより十分なスペースを確保しています。
そのような状況を維持することが、当然ながらお客さまへの露出につながり、ひいては売上増加にもつながると考えています。
荒井:それぞれの強みをお伝えいただきましたが、どれか1つが一番良いというわけではないのでしょうか? 総合力ということでしょうか? ご質問としては「経営としての最も優位性を感じるところは」というコメントでした。
やはり「どれか1つが欠けていても」というところですかね。
粟野:おっしゃるとおりです。味が良くても、手に取っていただけなければ購入にはつながりませんので、どこも欠かすことのできない要素だと思います。
荒井:総合力で、すべてにおいて優位性があるということですね。
質疑応答:生産拡大に伴うリスク管理について
荒井:「生産拡大に伴う原材料価格や物流コスト上昇のリスク管理はどのようになっているでしょうか?」というご質問です。
粟野:ポーションは、先ほどからお話ししているように、生産量が相当増加しており、それに伴って生産効率も向上しています。
先ほど、津山と栃木の2拠点体制についてお話ししましたが、西と東にそれぞれ拠点が1つずつあることで、輸送距離を大幅に短縮し、物流コストの面で非常に有効な位置関係になっています。
また、原材料の調達についても、西と東で分散させることで価格上昇のリスクをなるべく抑えています。さらに、災害時の事業継続計画(BCP)の観点からも、2拠点体制で今後も対応していきたいと考えています。
質疑応答:海外事業について
荒井:「海外事業についてですが、海外事業は日本食ブームの追い風をどのように活かしていきますか?」というご質問です。本当に日本食はさまざまな国で幅広い世代に人気だと思いますが、いかがでしょうか?
粟野:海外での日本食店というと寿司や天ぷらが定番かと思いますが、最近ではラーメン店がどんどん増加しています。
また、丼ぶり物や和食の定食チェーン店といった店舗も増えています。この傾向は今後ますます広がっていくのではないかと予想しています。
当社としては、そのような外食店向けの業務用商品を中心に販売を拡大していく予定です。
こちらのスライドにある、先ほどご説明したタイ工場ですが、この工場を建設したのも、そのような目的があります。
当社の強みは、さまざまなメニューに対応できることです。つまり、ワンストップで多様な調味料を提供できることが強みだと考えており、この強みを活かしていきたいと考えています。
また、タイ工場では、東南アジアの地域特性に合わせて、今後ハラール対応の商品を作ることも検討しています。
荒井:スライドには商品がラインナップされていますが、海外では日本食が人気ということで、こちらのタイ工場では日本食向けの調味料を製造されているのでしょうか?
それとも御社が得意とされる甘辛いタレのようなものを作られているのでしょうか? また、その場合はアジア・エスニック系との親和性がある調味料や、タイ料理をはじめとする地元料理に使用される調味料を製造されているのでしょうか?
粟野:基本的には日本食店向けの商品が中心です。特に多いのが、最近ではラーメン関連の商品になります。
ラーメンのスープが増えてきており、醤油や味噌、とんこつといった商品のラインナップを拡充させています。したがって、地元の方々の食卓に並ぶような商品という段階にはまだ至っていません。それは今後の展開になるかと考えています。
質疑応答:今後の海外展開について
荒井:「今後の海外展開に関する戦略の具体策を、あらためてもう一度教えていただきたいです」というご質問です。
粟野:具体策について地域的な観点からお話しします。最初は、中国の上海や香港を中心に販売を進めてきましたが、それに加えて台湾、最近ではシンガポールやマレーシア、タイといった東南アジアのASEAN諸国へと拡大してきました。
タイに工場を建設したのは、このASEAN諸国をターゲットに積極的に進出するためで、輸出がしやすいという地理的条件を考慮した結果です。
ASEAN諸国にはまだ拠点がない国もありますが、そのような地域での展開を徐々に進めていきたいと考えています。
さらにその後、インドや中東、そしてヨーロッパ方面へも輸出が可能な距離感ですので、これらの地域での展開も視野に入れています。ただし、それはもう少し先の計画になるかと思います。このように、今後の海外展開についてはエリアを広げていくことを考えています。
質疑応答:業務用向け取引について
荒井:「業務用向け取引において、価格決定力というのは御社側にあるのでしょうか? それとも取引先の主導になってくるのでしょうか? 契約期間や改定交渉の実態など、差し支えない範囲で教えてください。業務用は数量が大きい一方で、マージンが不安定になりやすいのではないかと想像しています」というご質問です。
粟野:業務用については、家庭用に比べて数量が少ないです。どちらかといえば、オーダーメイドに近いかたちになります。家庭用は全国で同じ商品を大量に生産していますが、業務用はおそらくお店独自のメニューや味があるため、その意味で少しずつアレンジを加えながら提供するかたちになります。
価格設定については、さまざまなメニューの提案と密接に関連していると考えています。その一方で、ニーズにしっかり合致していれば、適正な価格で購入していただける状況になります。
荒井:それでは、その対応をしっかり一件一件行うことで、業務用の場合は利益率が高くなるのでしょうか?
粟野:家庭用に比べて利益率は少し下がります。オーダーメイドできめ細かい対応をしているがゆえに、どうしても利益率が下がってしまうことがあります。
今後、新しい工場を建設し、少量生産にも効率的に対応できるようにすることを考えています。こうした取り組みは、効率的に少量生産を実現するためにも、今後必要ではないかという観点で進めています。
荒井:そうなると、エバラ食品のブランド力もありますし、顧客拡大にもつながるということですね。
粟野:そのとおりです。業務用商品は当社が作っていることが表に出ることはありません。ただ、「この店はうちが卸しているんだ」といった取引先が徐々に増えれば、当社の利益拡大にも貢献してくれるのではないかと思います。
質疑応答:今後の中長期成長について
荒井:「今後の中長期成長は、新商品のヒット創出型でしょうか? それとも既存商品の海外展開やチャネル拡大でしょうか? 経営として、どちらにより再現性があるとみていますでしょうか?」というご質問です。
粟野:まず、利益面では既存商品からの利益が大半を占めています。新商品をいろいろと発売していますが、ここ最近でも発売から1年から2年ほどで終売となった商品が少なからずあります。
つまり、トライ・アンド・エラーのかたちで新しい商品を試しに出してみて、うまくニーズにはまって売上が伸びれば継続しますが、そうでない場合は残念ながら断念するというプロセスを繰り返しています。
その中で、特に「プチッと鍋」においては、コロナ禍における巣ごもり需要、つまり自宅で食事を取る機会が多かった時期に、急激に売上が伸びました。
ここについては、スライドに記載のもっと前の時期、2019年から2020年頃だと思いますが、売上が大幅に増加したという状況です。
したがって、うまくヒットすれば大きな売上や規模に育てられるため、その取り組みを繰り返していきたいと考えています。
現時点では既存商品が収益の中心ですが、新商品を出し続けることで、次の「稼ぎ頭」、つまり長く愛される商品を生み出していく努力を続けなければ、長期的な成長は難しくなるのではないかと思います。
質疑応答:営業利益について
荒井:「直近の利益水準について、原材料価格や価格改定効果など一時的要因を除いた平常時の実力ベースの営業利益はどの程度とみていますでしょうか?」というご質問です。
粟野:難しいご質問ですが、原材料価格の上昇が起こり始めたのは2021年の中ごろだったかと思います。そのため、原材料価格の高騰がなければ、2021年度の30数億円程度の利益は出せたのではないかと思います。
一方で、毎年10億円程度の減価償却費が発生する投資を行っており、これが難しい要因の1つとなっています。
粟野:当社の2033年度に向けた長期ビジョンでは、過去最高益を目指すことを掲げています。過去最高益とは、先ほどお話しした33億円から34億円程度の営業利益を指します。そこに至るまでに、原材料価格や減価償却の影響を吸収し、この利益水準を達成したいと考えています。
質疑応答:資本効率改善と成長投資について
荒井:「御社は安定企業である認識ですが、資本効率の観点ではまだ改善余地があるように見えます。何か今後の具体的な打ち手は検討されていますでしょうか?」というご質問です。
粟野:資本効率という観点では、利益率が下がっている部分はありますが、自己資本比率が比較的高いこともあり、ROEにはまだまだ改善の余地があると考えています。
改善策としては、まず本業の利益率を高めることです。これについては、先ほどからいろいろとお話ししていますが、新しい工場を建設し、効率的な生産体制を構築することで、利益率を着実に向上させていきます。
もう1つは、資本面の問題として、資本にある程度余裕がある場合、自己株式の取得を行い、純資産のコントロールを進めることです。これらを両輪として検討していくべきだと考えています。
まずは成長投資の余地があるため、現在はそちらに資金や資本を投入する時期だと考えています。
質疑応答:株価と株主還元策について
荒井:「株価はどのように評価していますか? また、今後の株主優待の方針について教えてください」というご質問です。
粟野:株価については、みなさまご認識のとおり、PBRの問題でまだ1倍に達しておらず、十分な水準にあるとは思っていません。
当社としては、投資したものを売上や利益に結びつけることを早急に進めていく必要があると考えています。
また、投資家のみなさまが株主還元に期待されている点も十分に理解しています。配当や優待について、そのバランスを見ながら対応を進めていきたいと思います。
優待については、スライドにも記載のとおり、多くの方に期待され、喜んでいただいている状況です。したがって、今後も継続しつつ、配当とのバランスを見極めながら拡充を検討していきたいと考えています。
粟野氏からのご挨拶
粟野:本日はお忙しい中、ご視聴いただき誠にありがとうございました。エバラ食品は、今後も持続的な企業価値向上に努めていきます。本日のご視聴が、みなさまの投資活動の一助となれば幸いです。最後までご視聴いただき、誠にありがとうございました。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:個人的にはストレートタイプの鍋スープのほうが調理しやすいので良いと思うのですが、こちらへの投資や開発は行われないのでしょうか?
回答:以前はストレートタイプの商品も多数展開していましたが、他社との差別化要素が打ち出しづらく、現状自社のNB商品としては「小鍋でおかず スンドゥブチゲの素」を販売しているのみとなります。
過去、当社が実施した市場調査からも、ストレートタイプについては「重くて持ち帰りが大変」「必要量に対し余ったり不足したりする」といったお客さまの声が多く寄せられました。
このような課題を解消するために、利便性・調整のしやすさを兼ね備えたポーション調味料の開発に至った経緯があります。
<質問2>
質問:回復が狙える時期かと思い買っていきたいですが、出来高が薄く買いづらいです。さらに投資家を増やすことは考えていますか?
回答:当社は株価や出来高を直接コントロールすることはできませんが、企業価値の向上(収益力・資本効率)とわかりやすい情報開示が、結果として投資家層の拡大と市場の流動性向上につながると考えています。
引き続き、公平性と双方向性を重視したIR活動を行い、中長期で選ばれる企業を目指していきます。
<質問3>
質問:投資家向けのページが見づらいです。資料をもっと表に出してほしいです。
回答:ご指摘いただきました点について、当社としても改善すべき重要なご意見として受け止めています。
現在、「情報へのアクセス性向上」「開示資料の視認性改善」「各デバイスでの閲覧最適化」など、IRサイト改善に向けた取り組みを順次進めていきます。