■今後の見通し
1. 2026年12月期の業績見通し
トヨクモが属するクラウドサービス市場においては、業務の効率化や生産性の向上を実現するDXの重要性が高まっている。また、コロナ禍を経てリモート勤務をはじめとする多様な働き方が定着し、時間や場所にとらわれず利用可能なクラウドサービスの需要は今後も増加する見通しだ。生成AIの普及もIT投資を後押ししており、国内SaaS市場は2027年度に2兆円を突破すると予測されるなど、市場は引き続き高成長を続けると見られる。
2026年12月期の連結業績は、売上高が前期比19.4%増の5,800百万円、営業利益が同18.3%増の1,900百万円、経常利益が同18.1%増の1,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同19.8%増の1,300百万円を見込んでいる。売上高については、主力の安否確認サービス及びkintone連携サービス等における有償契約数の着実な伸長に加え、プロジェクト・モードが提供する「NotePM」の成長が大きく寄与する計画だ。
利益面については、連結ベースで営業利益率30%以上を確保する方針を継続しており、2026年12月期も32.8%を予想している。コスト増加要因としては、優秀な人材の確保に向けた積極的な採用活動と、平均年収1,000万円台への引き上げを目指すための人件費の増加が挙げられる。また、プロジェクト・モード買収に伴い発生したのれん償却費を含む償却費用(2026年12月期は270百万円を計画)の負担が継続する。広告宣伝費については、売上比20.7%に相当する1,200百万円を投じ、知名度向上と効率的な顧客獲得を両立させる方針だ。同社は期初計画を保守的に発表し、進捗に応じて上方修正を行う傾向があるが、直近の月次売上高も前年同月比130.0%(2026年1月度実績)と好調に推移しており、堅実な成長が期待される。
2026年12月期の最重要課題は、NotePMの本格的な拡販である。NotePMは外部評価が高く、非IT企業への導入も進んでいる。ナレッジマネジメント市場は拡大期にあり、安否確認サービスを上回る市場規模とポテンシャルを有している。同社が販売とマーケティングを担い、プロジェクト・モードが開発に専念する体制を構築したことで、ビジネスモデルの親和性を生かした強力なシナジーの発揮による事業規模のさらなる拡大が期待される。
ビジネスモデルを磨き上げ、「ITの大衆化」を目指す
2. 中期成長戦略
(1) 経営戦略
同社は、「すべての人を非効率な仕事から解放する」というミッションの下、IT初心者においても簡単・シンプルでわかりやすいサービスを提供する「ITの大衆化」の実現を目指している。PLG(プロダクト主導型成長)成長サイクル(トライアルモデルで低価格提供→効率的な業務による高収益確保→平均年収向上による優秀な人材の採用→能力を発揮できる環境の整備→簡単便利なサービスの創出)を回すことで、一歩ずつ着実な成長を図っている。
(2) 事業戦略
a) 安否確認サービス
従前、安否確認は自社従業員に対して行うものと位置付けていたが、災害時の事業継続(BCP)には取引先を含めたサプライチェーン全体での状況把握が不可欠である。同社はSCM(Supply Chain Management)等の新たな活用事例を訴求することで需要獲得を目指しており、2025年末時点で4,700契約を突破するなど着実にシェアを拡大している。
b) kintone連携サービス
複数のサービスを連携させることでkintoneを安価なWebシステムとして活用する提案を強化する。活用事例を充実させ、既存顧客へのクロスセル・アップセルを進めた結果、平均単価は2025年末時点で2万円の大台を突破するなど、収益の質的向上も継続している。
c) トヨクモ スケジューラー
社外担当者との日程調整を可能にする独自コンセプトにより海外展開も視野に入れているが、現在は広告展開等を通じた国内での知名度向上と普及に注力している段階である。
(3) 製品開発
創業以来、法人向けクラウドサービスに特化して開発を続けており、2024年12月期時点では3カテゴリー・8サービスを提供していた。2025年12月期には買収した「NotePM」が加わり、4カテゴリー・9サービス体制へと拡大した。さらに、AI技術を活用した「人の目クラウド」の展開に向けた提携も進めるなど、今後も「簡単・シンプル・わかりやすい」というポリシーの下でサービスを拡充していく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 星 匠)