目次
中村友哉氏(以下、中村):みなさま、こんばんは。アクセルスペースホールディングス代表取締役の中村友哉です。この度はご参加いただき、誠にありがとうございます。上場後初めてのオンラインセミナーです。短い時間ではありますが、当社の思いや事業についてご紹介します。
本日はスライドの3点についてご説明し、その後、Ken氏に深掘りしていただきます。
本日お伝えしたいこと
中村:本日お伝えしたいことは、以下の3点です。1つ目は、当社は小型衛星を使った2つの事業を展開している会社です。2つ目は、それらの衛星開発を通じて、短期間かつ低コストでの小型衛星製造において競争優位を持つ会社であることです。3つ目は、直近発表した大型案件を含め、今後さらなる事業拡大を目指していくことです。
アクセルスペースの起源
中村:事業のご説明に先立ち、創業前から現在に至る歩みをご紹介します。当社は、東京大学および東京工業大学(現・東京科学大学)における超小型衛星開発プロジェクトの成果をもとに創業しました。2003年に両大学はそれぞれ、1辺10センチメートル・重さ1キログラムという当時世界最小の人工衛星の打上げに成功しました。
私自身、もともと宇宙に興味があったわけではありませんでしたが、学生で衛星開発に携われることに強い興味を抱き、宇宙工学の世界に飛び込みました。研究者になるつもりはなかったものの、衛星開発が非常に楽しくて博士課程まで修了したため、衛星開発には合計6年間携わりました。
起業のきっかけは、衛星搭載カメラ開発の担当となったことです。美しい地球の画像を撮影できた際に「多くの人にこの画像を届けたい」と考え、プロジェクトマネージャーから画像配信サービス開発の許可を得ました。配信システムの開発は、私が1人で行いました。打上げ後、地球の画像撮影に見事成功し、その際に撮影したものがスライド中央上の画像です。
配信サービスを開始したところ、思いがけず多くの方から応援や激励のメッセージをいただきました。それまで自分一人で開発の楽しさを感じているだけでしたが、外部の視点の重要性に気づくきっかけとなり、宇宙の社会的意義について考えるようになりました。ただし、当時はまだ起業するという発想には至りませんでした。
卒業後は就職を考えており、小型衛星開発を自分の仕事にすると心に決めていたものの、当時はそのような事業を行っている企業がなく、恩師に相談したところ、「研究室で準備を進めている大学発ベンチャーでやればいいじゃないか」と助言をいただき、二つ返事で「やらせてください」とプロジェクトに参画することを決意しました。その後、1年半の準備期間を経て、2008年に4名で創業しました。
このように、当社は熱意と思いの強さから誕生しました。
沿革
中村:スライドは沿革です。当社は、ウェザーニューズからの北極海観測用衛星の受託開発から事業をスタートしました。以来、2019年にはスタートアップ企業として初めてJAXAから衛星開発・運用の委託を受けるなど、実績を積み重ねてきました。これまでに11機の衛星の製造・打上げ・運用の実績があります。
ビジョン・ミッション
中村:創業後まもなく掲げた「Space within Your Reach~宇宙を普通の場所に~」というビジョンは、17年たった今でも当社の心の拠り所です。大学院時代に感じた原体験を胸に、宇宙を誰もが当たり前に使える新しい社会インフラとして普及させることを目指しています。
ここまで、創業前のストーリーと、当社が大切にしている思いについてお話ししました。
会社概要
中村:ここからは、現在の当社の事業についてご説明します。スライドは会社概要です。東京日本橋にある本社にはクリーンルームを併設し、実際に衛星を組み立てています。社員は約190名、そのうち100名以上がエンジニア、3割以上が外国籍であることも特徴です。社外取締役には、アジア人初の女性宇宙飛行士である向井千秋氏にも参画いただいています。
当社の強み
中村:当社の最大の競争優位性は、小型衛星の設計から製造・運用までを低コストで実現できる点にあります。従来、政府が手がけてきた1トンを超える大型衛星を作る場合には、100億円単位の資金が必要とされていました。一方、当社は100キログラムから300キログラムクラスの小型衛星開発を主力としています。
一例を挙げると、地球観測衛星「GRUS」は約150キログラムで、洗濯機ほどの大きさです。また、「GRUS」と同程度の衛星は、打上げ費込みで7億円程度のコストで製造可能です。衛星を低コスト化することで活用の幅を広げられると考え、優位性を磨いてきました。低コスト化を実現するため、独自の設計基準と製造にこだわり、創業当初から宇宙専用ではない部品を積極的に採用することでコスト削減につなげてきました。
当社の事業
中村:当社は現在、2つの事業を展開しています。
スライド上側のAxelLiner事業は、お客さま向けに衛星を製造し、運用するサービスです。創業時から特定のお客さま向けの専用衛星開発事業を進めてきましたが、より多くのお客さまに早く・安く衛星を活用いただきたいという思いで事業を再定義したものが、現在のAxelLiner事業です。衛星設計を汎用化し、設計から運用までをワンストップサービスとして提供しています。なお、国内の政府系機関への売上高が99パーセント以上を占めています。
スライド下側のAxelGlobe事業は、自社の光学地球観測衛星から得られる画像データを販売し、そのデータを活用したソリューションサービスを提供しています。当社の光学地球観測衛星とは異なる、合成開口レーダー(SAR)と呼ばれるレーダー技術による地球観測事業を展開している衛星事業者2社が先行して上場していますが、衛星画像を販売するという点では当社と近しいビジネスモデルです。
一方、光学衛星はSARと異なり、国内外の民間企業や政府系機関など、多様な属性のお客さまにご利用いただいています。光学衛星とSARの違いについては、後ほど詳しくご説明します。
AxelLiner事業
中村:AxelLiner事業では現在、「Kプログラム」という政府委託研究に取り組んでおり、光通信技術の実証を目指しています。
宇宙空間に存在する衛星は、地上局と呼ばれるアンテナを設置している場所の上空を通過する際にしか通信できません。そこで、衛星間をレーザーで通信できるようにし、地上局のある場所までデータをバケツリレーのように送る仕組みを開発しています。これは、衛星とほぼリアルタイムで通信が可能となる画期的な技術と考えており、将来に向けて着実に技術を習得していく方針です。
AxelGlobe事業
中村:AxelGlobe事業では、現在5機の光学地球観測衛星を運用しています。光学衛星は、デジタルカメラを宇宙へ持っていったと考えるとわかりやすいと思います。私達の目で見たとおりの画像を取得できます。
AxelGlobe事業の事業領域:光学衛星とSAR衛星
中村:先ほどお話ししたとおり、地球観測には光学衛星の他にSARという種類があります。よくご質問いただくため、違いをご説明します。スライド右側のSAR衛星は、自ら強力な電波を発射し、地表で跳ね返ってきた電波を用いて画像化します。昼夜や天候を問わず撮影が可能な点が特徴です。
一方、スライド左側の当社が展開する光学衛星は、太陽光の地表での反射を受動的に観測します。雲がかかっている場所では観測できませんが、自ら電波を発する必要がないため、観測機器の構成がシンプルになり、製造コストを抑えることが可能です。また、撮影に必要な電力やデータ量が少なく、より広範囲を撮影できることから、データ提供も比較的安価に行えます。
これらの違いを踏まえ、SAR衛星は主に安全保障を中心に活用されていますが、光学衛星は安全保障以外にも、農業のように広範囲を高頻度で観測する場面でも利用されています。
「SARは光学技術の発展系なのか?」という質問をいただくこともありますが、対応ニーズも技術も異なるため、「どちらが優れているか?」という議論は適切ではなく、両者は補完関係にあると当社では認識しています。
衛星自体を販売する事業と衛星から撮影したデータを提供する事業の2つが、当社で展開している事業です。以上、現時点でのビジネスについてご説明しました。
AxelLiner事業の中長期の成長イメージ
中村:ここからは、事業ごとに注目すべき戦略をご紹介します。衛星自体をお客さまに提供するAxelLiner事業では、研究開発活動と顧客である民間企業の獲得に注力しています。
AxelLiner事業の成長:①継続的な技術開発の例
中村:先ほどご紹介した「Kプログラム」と同様に、当社が目指す技術に関しては、宇宙戦略基金などの政府支援も活用しながら開発を進めていきます。
AxelLiner事業の成長:②軌道上実証サービス「AxelLiner Laboratory」
中村:AxelLiner事業では、宇宙機用コンポーネントメーカー向けに「AxelLiner Laboratory」(通称、AL Lab)というサービスを提供しています。
新しい薬を世の中に出す際に治験が必要であるように、宇宙機用の部品も本当に宇宙で動作するのかを確認するステップが非常に重要です。衛星を製造するには数億円から数十億円の費用がかかり、製造した衛星が宇宙で正常に作動しなければ、多大な損失につながります。そのため、ロケットや人工衛星に使用される部品が宇宙で実証済みであることには、非常に大きな価値があります。
しかし、宇宙向け機器を開発するメーカーにとっては、発売前に宇宙で実証する機会がほとんどありません。そこで当社は、宇宙での実証機会自体をサービスとして提供します。このサービスにより、メーカーが安心して宇宙機用部品を市場に供給できる環境を整え、民間企業が多く参入する宇宙コンポーネント市場の拡大に貢献します。
このサービスについては、本日公開した「note」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
AxelGlobe事業の中長期の成長イメージ
中村:次に、AxelGlobe事業についてご説明します。当事業では、安全保障需要の獲得と新たな民間ニーズの創出が重要になります。
AxelGlobe事業の成長:①民間企業へ顧客層拡大
中村:当社は現在、5機の衛星を運用しています。今年は新たに7機の次世代地球観測衛星を打上げる予定で、現在その準備を進めています。この7機が加わることで、撮影能力は現在の3倍以上に向上します。
これまでの5機体制では、応えきれなかったニーズがありました。しかし、新たに7機を追加することで、より高頻度かつ安定的に地球観測データを提供できる体制が整います。この増強により、当社は地球観測の利便性を大きく向上させ、お客さまの期待にこれまで以上に応えていきたいと考えています。
AxelGlobe事業の成長:①民間企業へ顧客層拡大
中村:撮影能力を強化するとともに、新たなニーズの開拓にも取り組んでおり、新興国、特にアフリカでのニーズの創出および獲得を戦略上重要な活動と位置づけています。引き続き、中長期的な市場創出に取り組んでいきます。
AxelGlobe事業の成長:②安全保障需要の獲得
中村:当社の今後の成長において極めて重要なことが、安全保障案件の獲得です。2月20日には、防衛省の大型案件の契約締結を発表しました。この案件の事業規模は2,831億円であり、当社は光学衛星画像の提供者として、5年間で436億円を上限として売上高に計上する予定です。
このように、AxelLiner事業とAxelGlobe事業は、それぞれの戦略に基づいて事業を拡大していきます。事業戦略に関するご説明は以上です。
短い時間で多くの内容をお伝えしましたので、ご理解が難しい部分もあったかもしれません。当社をご理解いただけるよう、IRサイト、「note」、SNSで情報発信に努めていきますので、ぜひご覧ください。ご清聴いただき、ありがとうございました。
質疑応答:2つの事業を運営している理由とAxelLiner事業開始の背景について
1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):個人投資家の1UP投資部屋Kenです。私からいくつか質問します。よろしくお願いします。
まず、2つの事業を行っている理由について、もう少し詳しくうかがいたいです。2022年にAxelLiner事業を開始された背景について、あらためてご説明いただけますか?
中村:2つの事業を行っている理由には、歴史的な経緯があります。もともとはお客さま向けの専用衛星事業からスタートしました。しかし、お客さまがなかなか増えないという課題があり、2015年にデータ事業であるAxelGlobe事業を開始しました。
宇宙業界が非常に盛り上がっており、コンステレーションが一般化する中で、作らなければならない衛星の機数も年々増加しています。創業当時は、お客さまのニーズに100パーセント寄り添うフルカスタムの人工衛星を作ることが価値とされていましたが、時代が変わるにつれて、より早く、安価に衛星を製造することが重要になってきました。
この時代の変化に対応するため、当社も衛星の製造方法を根本的に見直し、量産に対応できる仕組みへと変革する必要があると考え、それがAxelLiner事業をスタートするきっかけとなりました。ただし、単に衛星の製造方法を変えるだけでなく、お客さまのユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させることにも取り組んでいます。
これまで衛星事業というと、トータルコストや打上げ時期が不透明であることが業界では当たり前とされていました。これをAI技術やデジタル技術を駆使して、わかりやすいワンストップサービスへと変革し、将来的には宇宙業界以外のお客さまに対しても衛星プロジェクトサービスを提供できるようにしていきたいと考えています。
こうした思いのもとAxelLiner事業を立ち上げ、その結果として、現在は2つの事業を運営している状況です。
Ken:もともとはフルカスタムで製造していたとのことですが、フルカスタムと比較すると、AxelLiner事業はかなり効率的に進められているという認識でよろしいでしょうか?
中村:そうですね。以前は、毎回ゼロからお客さまのニーズに合わせて設計していました。しかし、設計変更をできるだけ少なくするため、設計を汎用化し、お客さまごとにやりたいことが異なっていても、同じ設計を適用できるようにしています。また、たくさん製造できるような仕組みを構築し、それらを組み合わせることで、これまでの衛星の開発および製造の在り方を大きく変えてきました。
質疑応答:各事業の収益構造について
Ken:それぞれの事業の収益構造について教えていただけますか?
中村:こちらは折原からご説明します。
折原大吾氏(以下、折原):取締役経営管理本部長の折原です。AxelLiner事業の収益構造はいわゆる製造業に近く、部材等の原価をかけながら一定の売上を出すという仕組みです。一方、データサービス事業であるAxelGlobe事業は、固定費が大きくかかるが、一定のブレークイーブンポイントを超えると、大部分が利益として反映されるという特性があります。この2つの事業をバランス良く成長させることで、事業全体を構築しています。
質疑応答:AxelLiner事業の利益構造について
Ken:AxelLiner事業のうち、「Kプログラム」は政府向けの案件と認識しています。それぞれの原価がどの段階かによって変動があり、それに利益を上乗せして請求するというかたちでしょうか?
折原:そうですね。AxelLiner事業の足元の売上を構成しているものは「Kプログラム」ですが、おっしゃるとおり、原価がかかり、その原価も状況によって変動があるため、そこに一定の利益を上乗せして売上を計上しています。
なお、今後は民間向けも増加していく予定です。昨年12月にはPale Blueという会社との契約も発表しました。民間向けが増えていくことで、民間向けのほうが政府向けより利益率が高くなると考えています。それらをバランスさせつつ、将来的には売上総利益率を30パーセントから40パーセント程度に引き上げたいと考えています。
Ken:民間向けが増えると、ミックスが改善されて利益率も上がるということですね?
折原:そのように考えています。
Ken:AxelGlobe事業は打上げまでが最も大変で、打上げ後は防衛省案件のように画像を撮影し、それを販売するというかたちであれば、大部分は売上総利益になるという認識でいいでしょうか?
折原:そのとおりです。
質疑応答:AxelLiner事業の競合環境と強みについて
Ken:AxelLiner事業の競合環境と御社の強みについてご説明いただけますか?
中村:AxelLiner事業は100キログラムから300キログラムまでの衛星を主力としています。この範囲では、国内でほぼ競合が存在しない状況です。ただし、最近では海外企業が日本市場に参入する動きが見られ、それらの企業を競合として認識しています。
前半のご説明でもお伝えしたとおり、当社の強みは低コストで衛星開発が可能なことです。さらに、AxelGlobe事業では、早期から複数機によるコンステレーションの運用を経験しており、複数機の運用システムや自動化の分野では相当な進展を遂げていると考えています。
少し変に聞こえるかもしれませんが、AxelLiner事業のもう1つの強みとしては、AxelGlobe事業を展開している点も挙げられると思います。AxelGlobe事業はAxelLiner事業のお客さまに相当する事業であり、当社がこうしたユーザー事業を自ら持つことで、AxelLiner事業として提供すべき価値やサービスを定義しやすいといった強みがあります。
この点を活かして、将来的には価格競争だけでなくサービス面や付加価値面での強みをさらに大きな強みにしていきたいと考えています。
質疑応答:AxelLiner事業の民間需要拡大について
Ken:AxelLiner事業の民間需要について、今後どのように拡大させていくのか教えていただけますか?
中村:AxelLiner事業の民間需要という観点では、現在取り組んでいる「AL Lab」が中心になります。例えば、国内では宇宙戦略基金内にコンポーネントメーカー向けのテーマが設定されており、多くの企業が選定されています。そうした中で、当社は軌道上実証機会を提供することで事業を拡大していきたいと考えています。
特に海外のコンポーネント事業者の需要は非常に旺盛で、来年にも実証を希望されるお客さまが多くいらっしゃる状況です。衛星本体を製造する場合、相手国の政府が関与することもあり、他国のベンチャー企業が案件を獲得するのは難しい側面があります。しかし、コンポーネント事業者の場合はそのような制約がないため、一気にグローバルに展開できる強みがあると考えています。
展示会などでの営業活動を含め、こうしたグローバルな実証ニーズをしっかり取り込んでいきたいと考えています。
Ken:お客さまとは展示会で接点を持ち、そこから受注する流れになりますか?
中村:いろいろなチャネルがありますが、宇宙関連のカンファレンスや展示会は世界中で頻繁に開催されています。宇宙用のコンポーネント事業者が一堂に集まって売り込む場で、当社は逆営業を行いながら回ることができるため、非常に貴重な機会となっています。このような場をうまく活用して、当社のサービスをアピールしていきたいと考えています。
質疑応答:需要対応のキャパシティについて
Ken:「需要はかなりありそうだと感じましたが、案件が多数きた場合、どのくらい対応できるのか、キャパシティを教えていただけますか?」というご質問です。
中村:まだ実績はありませんが、今年はシナノケンシ、来年にはPale Blueの実証があり、それらを皮切りに増やしていきたいと考えています。従来の宇宙事業の常識とは異なりますが、最初に打上げ枠を確保し、年4回実証を行うことを決めてから、その空きを埋めていくという事業スタイルに転換していきたいと思っています。
ポイントは、ライドシェア方式を採用して複数のお客さまを1つの衛星に搭載すること、そして、最初から定期的な運用を行うことで、お客さまの開発スケジュールに合わせてタイムリーに実証機会を提供することです。あらかじめ打上げる衛星の機数はほぼ決まるため、急な需要の増加によって衛星の製造数を増やす必要はなく、衛星製造のキャパシティについて問題になることはないと考えています。
質疑応答:民間市場全体の需要動向について
Ken:「民間市場全体の需要に関しては、今後も増えていくという認識でよろしいですか?」というご質問です。
中村:民間企業については、AxelLiner事業において、グローバルでコンポーネント事業者の実証需要を獲得していくことを1つの目標としています。一方で、AxelGlobe事業では日本政府が最大の顧客ですが、特に光学衛星分野は民間需要を獲得しやすい特徴があります。そのため、ここをしっかり広げたいと考えています。
現在はオーストラリアを中心に、農業などの分野でご利用いただいている状況です。また、民間の特定業界向けアプリケーションを開発しています。前半のご説明でもお話ししたアフリカや、今後利用が急速に伸びる国々に向けて、日本とともに利用基盤を構築していくことを進めています。
ここが一度整えば、今後継続的に利用されることにつながります。このような中長期的な視点で、利用が伸びていく地域のニーズをいかに押さえるかが重要と考えており、それを踏まえた事業開発活動を行っています。
Ken:「農業分野で利用されている」とのことですが、おそらく何かを監視したり、効率的に管理するために利用されているのだと思います。具体的にどのような目的で使われているのか、差し支えなければ教えていただけますか?
中村:先ほど「見た目どおりの画像が得られる」とお話ししましたが、可視光以外にも、近赤外線やレッドエッジといった特殊な波長の光、つまり波長が少し長くて私たちの目には見えない光のデータも取得できます。
この波長は植物の活性度に非常に強く反応する特徴があり、それを活用することで作物の成長具合を把握できます。これにより、成長が遅れているエリア、もしくは進んでいるエリアを明確に確認でき、いわゆる精密農業、データに基づいた農業の取り組みに活用されています。また、今年の収量を把握するための先物的な用途としても利用されています。
質疑応答:SAR衛星と光学衛星の使い分けについて
Ken:御社は唯一の光学画像提供者だと思いますが、政府向けのSAR衛星と光学衛星をどのように使い分けているのか、お話しいただける範囲で教えていただけますか?
中村:前半のご説明でも少し触れましたが、光学衛星とSAR衛星にはそれぞれ強みと弱みがあり、相互補完の関係にあるとご理解ください。一例を挙げると、SAR衛星は夜間や雲がかかっている場合でも観測が可能ですが、基本的にモニタリングできるものは形状です。
一方、光学データは、色などの情報を判別するために必要です。これまでJAXAは地球観測衛星を打上げる際、光学衛星とSAR衛星を交互に投入しています。この点からも相互補完関係にあることがおわかりいただけると思います。
質疑応答:事業成長に必要な資金規模と調達方針について
荒井沙織氏(以下、荒井):フリーアナウンサーの荒井沙織です。「研究開発費や衛星投資が先行する中で、今後黒字化までに必要な資金規模と調達方針、株式の希薄化のリスクについて、どのようにお考えでしょうか?」というご質問です。
折原:当社の事業はディープテックと呼ばれる領域に属しており、多額の先行資金が必要となる業態です。
足元の状況としては、事業の成長に必要な投資として、中分解能の衛星を2026年に7機、高分解能の衛星を2028年5月期に3機、さらに追加で2機打上げる計画を進めています。このうち、7機と3機については、昨年の上場時に調達した資金で打上げ費用を含めて賄うことが可能だと考えています。また、先日発表した2機の高分解能衛星に必要な35億円についても、可能な限り自社で調達した資金で賄い、事業成長を進めていきたいと考えています。
それでもなお資金が不足する可能性はありますが、最近は金融機関からのデット調達も現実的な選択肢になってきています。そのため、デットかエクイティかを柔軟に検討しながら対応していきたいと考えています。
質疑応答:特定案件への依存度が高いリスクへの対応方針について
荒井:「第2四半期は売上の82パーセントが『Kプログラム』由来とのことですが、特定案件への依存度が高いリスクについて、今後どのように分散していく方針でしょうか?」というご質問です。
折原:ご指摘のとおり、足元では「Kプログラム」の依存度が非常に高い状態にあります。これに対して、まずはAxelGlobe事業における防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」の受注を獲得したので、これを着実に提供し、売上を少しずつ分散化させていく方針です。
また、AxelLiner事業では、政府向けだけでなく民間向けの軌道上実証サービスも積極的に営業活動を行っており、案件の獲得が始まっています。こうしたかたちでさまざまな案件を広げながら分散化を図りたいと考えています。
質疑応答:黒字化に向けた進捗について
Ken:「来期純利益が黒字となる可能性はありますか? 引き続き赤字を見込んでいる場合、黒字転換はいつでしょうか?」というご質問です。
こちらは多くいただいているご質問かと思います。お答えしづらい部分もあるかと思いますが、コメントをいただくことは可能でしょうか?
折原:来期のガイダンスはまだ発表していないため、現時点ではご説明しづらい部分がありますことをご容赦ください。ただし、ご参考のイメージとしてお伝えすると、「Kプログラム」は順調に進捗しており、長期間のプロジェクトとして進めていきます。また、Pale Blueの案件も獲得でき、これが売上に寄与してくる予定です。
さらに、防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」の売上も開始されます。2026年は7機の衛星を打上げ、トータルで12機体制となります。これによりキャパシティも増加し、来期以降の収益構造が大きく変化していくと考えています。
質疑応答:小型衛星の効率的な量産化システム構築の進捗について
Ken:「小型衛星の効率的な量産化システムはどこまで構築できているとお考えですか? 具体的なトピックスがあれば、併せてお願いします」というご質問です。
中村:詳細については回答を控えますが、これまでに当社は「宇宙機製造アライアンス」を構築し、製造・輸送・調達といった分野で他社と連携しながら量産体制を整えてきました。
衛星の量産について、業界では5機から10機程度を作れば量産といわれる状況で、自動車などと比べると生産構造が大きく異なります。このため、単に大規模な工場を建設し、生産ラインを整備すればいいというものではありません。なぜなら、需要が少ない時に工場が遊んでしまい、経営が非常に厳しくなる可能性があるためです。したがって、衛星に適した量産体制を構築することが必要であり、そこに向けて当社も試行錯誤を重ねてきました。
また、「GRUS-3」の7機生産を1サイクルで回した実績があり、これを詳細に分析し、さらなる効率化を図れる箇所と個別に対応を進めるべき箇所を精査しながら、次のステップへつなげていく考えです。「いつになったら完成する」というよりも「常に改善しながらより効率的な開発製造のスタイルを確立していく」という段階に進む見通しです。
質疑応答:小型衛星用コンポーネントの内製と外注の状況について
Ken:「小型衛星の部品は内製化しているのでしょうか? それとも外注でしょうか?」というご質問です。
中村:外注しているコンポーネントもあります。内製比率がどれくらいかという点については回答を差し控えますが、当社は小型衛星用のコンポーネントが世の中に存在しなかった時代から衛星開発を行っており、内製化しているコンポーネントも数多くあります。
ただし、効率化の観点から、内製可能でも外注する場合があります。その際には、過去に自分たちが作ってきた経験が活かされています。また、外注先の選定や改善要望を出しながら進めてきたことで、結果的に強いサプライチェーンを構築できていると考えています。
質疑応答:海外市場における光学衛星の事業戦略について
Ken:「海外の競合は30センチの解像度で観測できる光学衛星を打上げていますが、海外市場でその衛星を上回る市場価値の衛星を開発していく方針でしょうか? それとも、単なる性能勝負ではなく、他領域でのシナジーを活かしてビジネスを展開していく方針でしょうか?」というご質問です。
中村:光学衛星においては、主に分解能についての競争はできるだけ避けたいと考えています。すなわち、光学衛星に関しては、革命的な技術があるというよりも、高額な費用を投じて高性能な衛星を作ることで分解能を高められるという特徴があります。そのため、そのような方法で商売をするのではなく、別の側面から新たな事業を開拓することが重要だと考えています。
当社はすでに中分解能衛星を打上げており、将来的には高分解能衛星も打上げていく予定です。しかし、これらを組み合わせた事業は、現時点では世の中にほとんど存在していません。
中分解能衛星は分解能が低いものの、広範囲のモニタリングが可能という特徴があります。一方、高分解能衛星はピンポイントで詳細な情報を取得できる高分解能な画像を撮影できるという特徴があります。これらを組み合わせることで、広範囲を随時モニタリングしながら、気になった点を高分解能衛星で撮影するといった使い方が可能です。
こうしたさまざまな種類のデータを組み合わせることで、新たなサービスにつながるケースは多いと考えています。新しいソリューションを世の中に積極的に提供することで、新たな収益機会を創出し、スペックや価格競争に依存しないビジネスモデルの構築を目指していきたいと思います。
質疑応答:業績予想の組み立て方について
Ken:「売上高の予想値について、どのように蓋然性を持たれていますか? 業績予想の組み立て方についての考え方を教えてください」というご質問です。
折原:こちらは私からご説明します。先ほどご説明したとおり、AxelGlobe事業とAxelLiner事業は事業構造が大きく異なります。そのため、それぞれの計画の立て方もかなり異なります。
現時点では、AxelLiner事業は政府系の案件が非常に多くを占めており、コストがどれくらいかかるかによって、それにプラスアルファの利益を乗せたものが売上となる仕組みです。開発工数や開発計画が結果的に売上につながるため、どのような開発を、どのタイミングで、どのように進めるかという計画を1年分作成することで、売上を見通すことができます。
一方、AxelGlobe事業については、案件ごとにお客さまのパイプラインのような構造になっています。そのため、営業のパイプラインの安定性を積み上げながら、民間事業に関してはおおよその売上の見通しを立てます。
なお、政府向けについては、防衛関係の案件について年次ごとに一定金額を発表しているので、それを売上見込みの目安としています。このように算出したAxelLiner事業とAxelGlobe事業の売上を合算して予想値を算出しています。
質疑応答:「Kプログラム」売上における期ずれの可能性について
Ken:AxelLiner事業の「Kプログラム」は、非常に重要だと思います。これには設計や材料調達などさまざまな段階があると思いますが、それぞれの段階で、例えば期末までに間に合う場合や、翌月にずれ込む場合など、いろいろな可能性があると思います。
折原:そのとおりです。
Ken:そのため、若干のぶれが生じることがあるということでしょうか?
折原:おっしゃるとおり、その点がリスク要因になります。全体の金額規模は変わりませんが、ご指摘のとおり開発要素が強い部分があり、「開発のこのスケジュールまでに間に合わせる」と計画していたものの、部材が届かない場合があります。その場合、その分コストが発生せず、売上が遅れることになります。また、開発スケジュールが少し前後したことが影響してトップライン、すなわち売上が上下することも生じ得ると考えています。
Ken:私も投資を行う立場ですので、年間ごとに見ていく部分もあるかと思います。ただし、基本的にはプロジェクトやパイプラインごとに、どの程度今期に反映されるかを基に構成されているということでしょうか?
折原:そのとおりです。
質疑応答:防衛省案件の利益貢献について
Ken:「今回の防衛省案件はすでに衛星を打上げ済みなので、受注額の大部分が利益となる理解でよろしいのでしょうか?」というご質問です。
先ほどご説明いただいた内容に関連すると思いますが、ご説明いただけますか?
折原:AxelGlobe事業の防衛省案件については、AxelGlobe事業の一環として、固定費を賄った後、ブレークイーブンポイントを超えた部分はほとんどが限界利益となるため、利益貢献の大きい案件となります。加えて、本件は金額もかなり大きいため、ブレークイーブンを超えた際には、非常に大きな利益貢献が見込まれる案件になると考えています。
質疑応答:光学衛星の寿命について
Ken:「SAR衛星の寿命は5年程度ですが、光学衛星の寿命はどの程度と考えればいいでしょうか?」というご質問です。
折原:設計寿命は5年としており、減価償却も5年のストレートラインで行っています。しかし、それぞれA、B、C、D、Eと呼ばれている「GRUS-1」という衛星のうち、「GRUS-1A」は2018年に打上げた衛星です。
Ken:2018年に打上げたとなると、8年前ということですね。
折原:そのとおりです。ただ、現在も問題なく商用運用を続けています。
Ken:それはすばらしいですね。
折原:ありがとうございます。このため、実際には設計寿命以上に、商用に十分耐えられる運用ができていると考えています。
Ken:5年で減価償却が終わりますが、8年運用できているため、場合によっては10年程度稼働できる可能性があるということですね?
折原:可能性はもちろんあります。一方、性能については徐々に劣化する部分もあると思います。
質疑応答:宇宙関連ビジネスの可能性と展望について
Ken:「直近の話題としてデータセンターを宇宙に構築するという話題が盛り上がっています。御社の事業と何かシナジーがあるのでしょうか?」というご質問です。
その他にも、宇宙関連のビジネスが増えている中で、なにか関連性がありそうなものや狙っているものがあれば教えていただけますか?
中村:現時点で具体的な話が進んでいるわけではありませんが、先ほど少し述べましたとおり、中分解能と高分解能を組み合わせたアプリケーションを考えた場合に、
例えば、中分解能画像を地上に送信してから分析し、高分解能の撮影命令を出すというプロセスでは、遅延が発生する可能性があります。そのため、軌道上でデータを分析し、直接高分解能衛星に撮影命令を出すといった仕組みを想定した場合、衛星間通信が必要となるでしょう。また、場合によっては軌道上のデータセンターで分析処理を行うことも可能性として考えられます。
こうした仕組みを実現する事業者との協業やコミュニケーションが今後発生する可能性はあると考えています。
質疑応答:宇宙戦略基金の活用方針について
Ken:「JAXAの宇宙戦略基金についておうかがいします。現在第2期の審査が進み、今後、第3期も予定されていますが、御社のAxelGlobe事業やAxelLiner事業の拡大において、こうした国策の巨大な支援の枠組みをどのように活用していく方針でしょうか?」というご質問です。
中村:宇宙戦略基金は民間の事業を支援する政府の補助であると捉えており、当社の事業の方向性に合致する適切なテーマがあれば、積極的に応募を検討していきたいと考えています。
質疑応答:衛星組み立て現場見学などのIR施策の可能性について
荒井:「株主が衛星の組み立て現場を見学することはできますか?」というご質問です。
日本橋で組み立てていますよね? 私も一目見てみたいです。クリーンルームなのでなかなか難しいとは思いますが、いかがでしょうか?
中村:これはどうでしょう、IR施策としてあり得るでしょうか?
折原:「多くのみなさまに作っているところを見ていただきたい」という思いは強くありますが、やはり精密機器なこともあってお見せできないところが多々あり、難しい部分があります。今は特に計画はありませんが、今後の検討課題と考えています。
荒井:株主のみなさまは高い関心を持たれていると思います。
質疑応答:AIの活用について
Ken:AIがかなり普及していることから、アーカイブデータの重要性が増していると思います。それに対する御社のお考えを教えていただけますか?
中村:事業戦略を考える上で、AIをどのように活用していくかをしっかり考えていく必要があると思っています。衛星の設計を汎用化する際に、お客さまにはさまざまなニーズがあり、それぞれが異なる中で、当社の標準的な設計にどう合わせ込んでいくのかという点について、AIを活用することで、人間の負担をできるだけ軽減しながらお客さまの設計を確定していけると考えています。
AxelGlobe事業においても、現在の衛星データビジネスは、「衛星を使ってこんなことができる」という話と「お客さまはこういうことがしたい」というニーズがうまくかみ合わず、つながっていないことが課題だと考えています。AIを活用し、「お客さまにはこういうニーズがあるから、このように衛星データを使えばいいですよ」とつなげる役割として、生成AIを活用できるのではないかと考えています。
加えて、エッジAIについては、衛星そのものにAIを搭載し、軌道上でさまざまな処理を行うことも十分可能であると考えています。そのようなハードウェアを開発している事業者も存在しているため、当社はハードウェア・ソフトウェアの両面からAIを活用し、宇宙事業の在り方を変えていく取り組みを進めたいと考えています。
質疑応答:事業継続におけるリスクとその優先順位について
Ken:事業を継続する上でのリスクについてうかがいます。例えば、予定どおりに打上げが行われないことや故障などが考えられると思いますが、御社内ではリスクの優先順位や発生可能性について、どのように分類されているか教えていただけますか?
中村:一番大きなリスクはやはり打上げだと考えています。打上げについては、当社がコントロールできないため、祈るしかないという状況です。また、現状では打上げサービスの提供事業者が非常に少なく、当社も多くをSpaceXに依存している状況にあります。これは課題と認識しています。
一方で、ご存じのとおり、新興のロケット事業者が複数登場しており、彼らが実績を積むことで、当社にとっても選択肢が増えることは非常に望ましいと考えています。そのため、中長期的には先ほどの課題が解消されていくものと期待しています。
当然、衛星の故障もリスクとしてあります。しかし、AxelLiner事業では衛星設計の汎用化を進めています。毎回ゼロから設計していたときは、設計段階での見落としによる故障リスクを抱えていましたが、設計の汎用化が進むことで、そのようなリスクは大幅に低下していくと考えられます。
したがって、現時点では打上げの失敗というより、打上げスロットを確保できるかどうかのほうが課題であると考えています。ただし、これも中長期的にはおそらく解消されていくだろうと思っています。
中村氏からのご挨拶
中村:本日はご参加いただき、誠にありがとうございました。当社はこれからも、投資家のみなさまに事業内容や成長性をご理解いただけるよう、尽力していきます。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いします。