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イーレックス、再エネ主力電源化・GX-ETSを商機に 蓄電池や東南アジアでのバイオマス発電、クレジット創出し販売

イーレックスの事業モデル

田中稔道氏(以下、田中):イーレックス株式会社常務取締役の田中です。本日はイーレックスについてご説明します。まずイーレックスの事業モデルです。スライド上部に、日本だけでなく東南アジアを含めた海外での大きな課題を掲載しています。

まずは「電力需要増」です。東南アジアでは人口の増加や経済成長によって、電力需要の増大が見込まれています。一方で2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、脱炭素社会を構築する必要があります。

このような状況の中で、イーレックスは日本において電力小売事業を展開し、低圧電力のお客さま26万件に対応しています。また燃料調達ではバイオマス燃料を扱い、外販を含めて年間160万トンを取り扱っています。

国内では5基のバイオマス発電所を所有しています。さらに系統用蓄電池も2基の投資決定を行い、この春には運用を開始する予定です。

一方、東南アジアのカンボジアでは水力発電所を1基建設中であり、さらにバイオマス発電所と太陽光発電所をそれぞれ1基ずつ建設しています。

ベトナムでは、すでに稼働中のバイオマス発電所が1基と、木質ペレット工場が1基あります。また、新たに2基の投資を決定し、昨年12月には起工式も行いました。このような事業を展開している会社です。

事業別売上高の構成

田中:当社の事業別売上高の構成についてご説明します。スライドの円グラフに示すとおり、主に国内事業の小売・トレーディング事業が売上の約75パーセントを占めています。また発電・燃料事業は約23パーセントを占めています。

一方で、海外事業はまだこれからの段階であり、約1.5パーセントとなっています。将来的には、海外事業の売上を少なくとも25パーセント程度まで高めていきたいと考えています。

小売・トレーディング事業概要

田中:各事業の詳細をご説明します。まず小売・トレーディング事業についてです。当社は俗に「新電力」と呼ばれる会社のひとつであり、電力小売事業を行っています。

イーレックスの特徴として「トレーディング機能」を有しています。電力市場を活用することで収益向上が可能となっています。

また、特に大企業を中心に再生可能エネルギー需要が高まっていることを受け、蓄電池等を活用したアグリゲーション事業も開始しています。

電力を取り巻く環境と大企業の悩み

田中:現在の電力市場を取り巻く環境についてです。大企業をはじめ、サプライチェーンに属する中小企業も同様の悩みを抱えていると思われます。日本政府はAIや半導体、データセンターなどの拡大により電力需要が増加に転じると見込み、今後、電源開発を積極的に進める方針です。

一方、世界的な脱炭素の流れを受けて、日本でも再生可能エネルギーを主力電源化する動きが進んでいます。特に日本企業においては、大企業から順次CO2削減への取り組みが義務化されており、大企業を中心に「国の方針には対応しなければならない中で、自分たちだけではなかなか難しい、コストもかかるし、安定した調達がしたい」という悩みを抱えている状況です。

① 電力需要の増加( AI ・データセンター)

田中:電力需要の増加について、2023年頃までは電力需要は伸びないだろうという見立てでした。しかしAI需要の拡大に伴い、特に大規模なデータセンターの必要性が高まっていることと、さらに北海道などで半導体工場の新設が相次いでいることもあり、電力需要がこれから増加していく見通しです。

スライドのグラフは、経済産業省が昨年発表した電力需要の見通しを示しています。それまでは右肩下がりの傾向だったものが、2023年頃を境に右肩上がりとなる見込みです。

②エネルギー政策の大転換(再エネ主力電源化)

田中:一方で、エネルギー政策の大転換が進んでいます。昨年2月に「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。2023年度には22.9パーセントだった再生可能エネルギー比率を、2040年までに40パーセントから50パーセントに引き上げる見通しが示されています。

この背景には、AIの発展による電力需要の増大や、カーボンニュートラルの目標に伴う再生可能エネルギー需要の増加があります。

スライドの棒グラフには、日本全体の電力量(キロワットアワー)の見通しが示されています。全体的な電力需要は増加すると予測されている中で、再生可能エネルギー比率を40パーセントから50パーセントへと倍増させるという、政策の大転換が進行中です。

塩谷航平氏(以下、塩谷):この国の方針による再生可能エネルギー比率40パーセントから50パーセントという目標に関連して、御社の売上はどのように連動すると見ていますか? 

田中:現時点では、2040年までの具体的な売上見通しを持っているわけではありませんが、これからご説明する蓄電池事業での売上貢献や、バイオマス燃料の外販による売上増が見込めるのではないかと考えています。

塩谷:御社の事業にとって追い風になるとのお考えでしょうか?

田中:おっしゃるとおりです。

塩谷:主に恩恵を受ける部門としては、小売・トレーディング事業という理解でよろしいでしょうか? 

田中:こちらは基本的に日本国内の話ですので、日本の市場を主な対象としている小売・トレーディング事業が恩恵を受けると考えています。ただし燃料の輸入や外販も行っているため、その部分も少し恩恵があると思っています。

再エネ主力電源化における課題と対応策

田中:再エネ主力電源化における課題と対応策についてご説明します。ご存知のとおり、太陽光発電は、太陽が出ていないと電気を発電しません。しかし電力需要としては、スライド左側のグラフの青い折れ線に示すとおり、夜間でも電力が使用されています。そのため、需要カーブと供給カーブの間に差が生じてしまう状況となっています。

これは風力発電についても同様で、風が吹かないと発電が難しい状況です。したがって電力の需給のバランスをいかに保つかが、今後の課題として重要になってくると考えています。

拡大が見込まれる蓄電池市場

田中:これらの再生可能エネルギーの主力化に伴い、有望なマーケットと見られているのが蓄電池市場です。先ほどご説明したように、当社もまだ規模は小さいものの、蓄電池2基の投資を決定しています。

スライドのグラフは、国内における蓄電池の導入想定量を示しています。2023年時点では約600メガワットですが、2050年には約1万4,300メガワットまで拡大する見通しです。

太陽光や風力といった変動性のある電源においては、蓄電池を導入することで電力系統のバランスを保つ必要があります。このような理由から、蓄電池市場はグラフに示すような拡大が見込まれています。

【具体例】蓄電池の取り組み サムスンC&Tジャパン

田中:拡大する蓄電池市場に対する我々の取り組みについてご説明します。サムスンC&Tジャパン(以下、SCTJ社)と共同出資でSPC(特定目的会社)を設立し、現在共同開発を進めています。

スライド左側にはSPCのスキーム図を示しています。イーレックスとSCTJ社がそれぞれ50パーセントずつ出資してSPCを設立し、これから開発を進める計画です。

宮崎県串間市に出力2メガワット、蓄電容量8メガワットアワー規模の蓄電所をすでに建設しており、3月末に完工して試運転を開始する予定です。スライド右側のスキーム図には、系統用蓄電池の横に「アグリゲーター」という記載があります。これが、イーレックスが現在取り組んでいるアグリゲーション事業です。

この蓄電所では、需給調整市場・容量市場・日本卸電力取引所での市場取引を通じて、調整力を供給することで収益を得る計画です。電気自体は電力系統に接続し、充放電を行うというスキームとなっています。

塩谷:この系統用蓄電池についてのIRRはどのように見込んでいますか? 特に1号案件、2号案件に関して現在出ている数値について教えてください。

田中:IRRの具体的な数字については差し控えますが、ただし決算補足説明資料などに記載しているように、おおよそ年間1億円程度の収益になると見込んでいます。投資総額が5億円から6億円程度ですので、現時点での収益性はかなり良好であると考えています。

一方で、市場動向にも左右されるため、慎重に見極めながら運営していきます。なお、事業期間については20年を前提として進めている状況です。

【具体例】再エネ調達の取り組み JR東日本

田中:アグリゲーション事業の具体例についてご説明します。東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)と再生可能エネルギーの調達に取り組んでおり、事業を推進しています。

スライド中央の「再エネアグリゲーション」の図に示すとおり、イーレックスと当社の販売子会社であるエバーグリーン・マーケティングが、再生可能エネルギーアグリゲーションを行っています。

具体的には、JR東日本が所有する太陽光発電所からイーレックスが電気を仕入れ、その電力小売をエバーグリーン・マーケティングが行い、JR東日本の茨城県内の主要拠点に供給しています。

太陽光発電は天候によって発電量が変動します。当社はその需給管理と予測を行いながら、JR東日本の茨城県内施設に安定して電気を供給しています。この仕組みはカーボンフリーを実現しています。

このような取り組みは今後さらに拡大すると考えています。特に企業のお客さまにおいて、「どのようなかたちでCO2フリーを達成していくか?」が課題となっている中、当社はこれを一気通貫で解決し、サービスを提供できると自負しています。

アグリゲーション事業における当社の強み

田中:アグリゲーション事業における当社の強みについてです。アグリゲーション事業は必ずしも小売機能を必要としない事業ですが、当社の一番の強みはお客さまを持っていることだと考えています。

それ以外にも「需給管理ノウハウによる高精度の予測」「分散電源の管理の最適化」、さらに「市場取引ノウハウによる収益の最大化」、そして小売事業である「顧客基盤×脱炭素ソリューションの提供」が強みとなっています。

具体的な取り組み案件として、スライド下部に記載の「系統用蓄電池」のほか、「太陽光併設蓄電池」があります。現在すでに稼働している太陽光発電所において、出力抑制(注)というかたちで発電が制限される状況が発生します。特にこれから春先に向けてそのような状況が増加すると予想されています。

その場合には隣に蓄電池を設置して、出力が抑制された際に電気を蓄電池に貯め、夜間に電力を供給するといった取り組みを進めていきます。

また「コーポレートPPA」については、先ほどJR東日本の例でご紹介した内容と同じものです。

塩谷:今挙げられた御社の強みについて、他社と比べて特に強調したい差別化ポイントはどのようなところでしょうか? 

田中:我々の特徴は、発電から需給管理、さらにお客さまへの小売機能まで一気通貫でサービスを提供できる点です。

例えば、太陽光発電所を所有されていて、「発電した電気をお客さまにお届けしたい」という発電事業者がいた場合、我々が仲介することでお客さま同士をつなぐことが可能です。

また「CO2フリーの電気が欲しい」というお客さまに対しては、発電事業者とも調整を図りながら、あるいは我々が所有する発電所を用いて電気を供給していくことが可能となっています。

(注):
・再生可能エネルギーの発電量が電力需要(消費量)を上回った際に、送配電事業者が大規模停電を防ぐ目的で、発電所の出力を一時的に停止または制限する措置

③カーボンプライシングや排出量取引制度の本格化

田中:カーボンプライシングや排出量取引制度の本格化についてご説明します。今年4月からGX-ETS(グリーントランスフォーメーション排出量取引制度)市場が第2フェーズに移行し、本格的に排出量取引制度が開始されます。

まだ大企業が中心となりますが、直接排出量が10万トン以上の事業者は参加が義務化されており、例えばセメント会社などを中心とした300社から400社が対象となっています。対象企業の排出量は年間6億トンで、国内の総排出量の約6割を占める企業となります。

これらは自社努力による排出量削減、または他社からのいわゆる排出権(カーボンクレジット)の購入によって、擬似的に排出量を削減することが可能です。

Jクレジットや二国間クレジット制度(JCM)のみが直接適格なカーボンクレジットとして利用でき、このクレジットは排出量の10パーセントまで使用が可能です。したがって6億トンのうち6,000万トンは、カーボンクレジットを利用することで排出量を削減したとみなされることができる状況です。

当社は、先ほどご説明したベトナムやカンボジアでのバイオマス発電を通じ、JCMクレジットを獲得する予定です。このクレジットを国内企業向けに販売していきたいと考えています。

塩谷:この部分に関連して、御社のバイオマス発電における収益のイメージについて教えていただけますか? 

田中:当社は現在、カーボンクレジット1トン当たり約60ドルと見ています。ヨーロッパでは一時90ドルから100ドルという水準もありましたが、現時点では60ドルを想定しています。これを約1万円とすると、1万トンで1億円の利益貢献となると思います。後ほど、実際にこの発電所からどれくらいのJCMクレジットが取れるかについてもご説明します。

イーレックスの事業モデル

田中:イーレックスの事業モデルについて、最初のスライドを用いて詳細にご説明します。我々は電力需要の増加と脱炭素社会の実現に向けて、日本と東南アジアの両地域で事業を展開しています。

直近でご説明しました海外でのカーボンクレジットを活用し、このクレジットによる脱炭素を日本で推進する方針です。また、日本で得られた利益を海外で再投資することで、イーレックスの事業モデルは循環していくとお考えいただければと思います。

海外事業 ベトナム:先行案件

田中:海外事業について、ベトナムとカンボジアを中心にご説明します。まずベトナムでの先行案件です。スライド左側は、ベトナム初の商用バイオマス発電所となります。現地企業との協業による開発・運転を行い、昨年4月に運転を開始しました。燃料はもみ殻で、出力は20メガワットです。

スライド右側はトゥエンクアンペレット工場です。「木質ペレット」と呼ばれており、例えばベニヤ材の残渣や捨てられている丸太などを持ち込み、それをペレット状にして日本に輸出しています。ベトナムでの燃料事業におけるノウハウの蓄積を目指し、昨年3月に製造を開始しました。

スライド左側のハウジャンバイオマス発電所については、令和4年度に環境省の「二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業」の資金支援を受け、設備補助をいただいています。

日本とベトナムの2国間でクレジット制度が整備されれば、このJCMクレジットを日本に持ち込み、販売することが可能です。

塩谷:ハウジャンバイオマス発電所とトゥエンクアンペレット工場について、来期の営業利益で黒字見込みと開示があったと思います。この見込みについて、燃料価格の足元での高騰を前提としたものなのか、それともEBITDAや稼働率目標など、定量的な情報があれば教えてください。

田中:当社はEBITDAを指標として開示していませんが、まずは営業利益の向上を重視しています。今年度は通年稼働していますが、初期トラブルなどの影響で稼働率がやや低迷している状況です。

トゥエンクアンペレット工場については、現在、稼働自体は比較的順調に推移しています。来期に向けて燃料調達を着実に行い、営業黒字化を目指すことが重要だと考えています。

ハウジャンバイオマス発電所についても、もみ殻の価格が一時的に高騰し、燃料調達に苦慮する状況がありました。ベトナムの旧正月が終わった2月以降、燃料調達チームが現地に入り、調達活動に奔走している状況です。こちらも2026年度には損益分岐点を越え、営業黒字を達成できるのではないかと見込んでいます。

海外事業 ベトナム:新設バイオマス発電

田中:ベトナムの新設バイオマス発電所についてご説明します。スライド左下の地図はベトナム北部を切り取ったもので、ハノイから車でおおよそ3時間から4時間の場所に位置しています。

当社は、このトゥエンクアンバイオマス発電所とイエンバイバイオマス発電所への投資を決定しました。この投資決定は、ベトナム政府の「第8次国家電源開発計画(PDP8)の実施計画」の承認を受けており、昨年12月に起工式を行っています。

これらは2027年度末に運転開始予定です。後ほど中期経営計画でもご説明しますが、最終年度には利益貢献が見込まれる状況です。

この案件は令和5年度の「二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業」であり、日本にもカーボンクレジットを持ち込むことが可能な内容となっています。

発電設備は50メガワット規模が2基で、燃料として使用するのは木質残渣です。ベトナム北部の左上部地域には森林地帯があり、ベニヤ工場などが中小合わせて1,000ヶ所から2,000ヶ所ほどあります。こうした工場のサプライチェーンをこれから構築していく予定です。

年間でおよそ100万トンの燃料が必要となりますが、サプライチェーンを確実に構築し、2年後の運転開始につなげていく予定です。

海外事業カンボジア:水力発電 / 新設バイオマス・太陽光発電

田中:カンボジアでは2つの事業を行っています。1つ目は水力発電所(80メガワット)を現在開発中で、カンボジア電力公社と35年間の電力売買契約を締結しています。このカンボジア電力公社との契約は、カンボジア政府による保証が付いており、非常に安定した契約となっています。

この発電所は現在ほぼ完成しています。スライド左下の写真のゼブラ模様の部分は、現在コンクリートを吹き付けている箇所です。その向かい側も同様に盛り土が施され、ダムとして整備されています。

その下の写真が完成イメージです。この後ろには広大な貯水池があり、80メガワットというカンボジアにおいては非常に大きな水力発電所となる予定です。この下流にも小規模な水力発電所が建設可能な地域があり、こちらも今後の開発を目指しています。

2つ目はバイオマス発電と太陽光発電です。この事業は2024年9月にカンボジアの閣僚会議で承認され、2027年度中の運転開始を予定しています。

こちらは残渣の収集とともに、計画的な植林を行いながら発電事業を実施していきます。この事業はCO2フリー電源であるため、現在JCMクレジットの申請を行っています。この申請が許可されれば、カーボンクレジットを日本に持ち込むことが可能となる見込みです。

海外事業におけるカーボンクレジットの創出

田中:こちらは、先ほどご質問がありましたカーボンクレジット創出に関わるおおよその想定量です。金額の記載はありませんが、海外で獲得したカーボンクレジットを日本国内の脱炭素に活用していきます。

そこで得られた資金をさらに海外事業へ投資して循環させることで、当社の大きな収益の柱としていきたいと考えています。

繰り返しとなりますが、GX-ETSが今年度より開始されていますので、当社としては非常に大きなチャンスがあると見込んでいます。

スライドの表は、稼働済および開発中の対象想定案件の一覧です。例えばハウジャンバイオマス発電所(20メガワット)の場合、JCMクレジットの当社の想定獲得量は2万3,000トンとなり、トン当たり1万円と換算すると、年間で約2億3,000万円の利益貢献が期待されます。

また、先ほどご説明しました新設の2つのバイオマス発電所では約7万1,000トンを獲得でき、年間でおおよそ7億円の収益貢献が見込まれます。

営業利益で見ると、発電側だけで5億円から7億円程度です。同程度の規模でカーボンクレジットの利益も貢献できるとお考えいただければと思います。

(参考)ベトナムの新設バイオマス発電・石炭火力バイオマス混焼対象地点

田中:スライドは、今後当社がベトナムで新設するバイオマス発電所の候補地です。スライド左側がベトナム政府のPDP8における候補予定地で、現在18ヶ所が挙げられています。

スライド左上の①Yen Bai(イエンバイ)と②Tuyen Quang(トゥエンクアン)が、現在当社が手を挙げて事業を進めている場所です。ハウジャンバイオマス発電所を1号基とすると、2号基、3号基となります。さらには現在4号基も検討を進めており、公募に応じて意向表明書を各省に提出しているところです。

また、スライド右側にはビナコミンパワー社が保有する石炭火力発電所を示しています。この石炭火力発電所で、バイオマス燃料を用いた混焼事業にも取り組んでいます。スライド右側の図のCao Ngan(カオガン)発電所とNa Duong(ナズオン)発電所で昨年から実証実験を開始しました。混焼率はおおよそ20パーセントで、最大では30パーセントまで混焼できたという実績があります。

この事業の目的としては、石炭が大量のCO2を排出するため、その一部、例えば3割をバイオマス燃料に置き換えた場合でも電力供給量を維持しつつ、CO2排出量を削減することです。

今後、この事業のビジネスモデルをさらに検討していく方針です。そこで得られるカーボンクレジットの活用も積極的に進めていきたいと考えています。

田中:この取り組みを行っているのが、先ほどのスライドの表のナズオン発電所とカオガン発電所です。約55メガワットの発電設備2基で、混焼率を20パーセントとした場合、約4万5,000トンのJCMカーボンクレジットを獲得できる可能性があると見込んでいます。

業績とEPSの動向

田中:当社の業績とEPS動向についてです。当社は2014年12月に上場し、2023年3月期までに売上高で約20倍、営業利益などで約10倍の成長を達成しました。

残念ながら2024年3月期には非常に大きな赤字を計上しました。こちらは事業構造をきちんと見直すことで、2024年度および2025年度も確実に利益を上げています。

後ほど中期経営計画について簡単にご説明しますが、新たな成長ステージに突入したと考えています。

塩谷:2023年度の赤字に関して、いくつか電力契約のミスやその他の要因が重なった結果とのことでした。現在の調達方針や内部リスクの点検は、どのように実施されているのでしょうか? 

田中:この赤字に対する反省として、きちんと需要と供給を見極めて、卸契約を適切に実施することが非常に重要だと認識しています。

そこで、2024年度に需給戦略室を設けました。販売した分だけを市場で調達し、逆ざやが発生しないように需給管理やトレーディング手法を活用しています。実績として、2024年度と2025年度で黒字化を達成しているため、きちんと対応できていると考えています。

また全社のリスク管理も非常に重要だと認識しており、リスク管理室(正式名称はSCR室)を設置しました。そこに現場が暴走しないように牽制機能を持たせながら、事業を進めているところです。

中期経営計画

田中:2月26日に向こう3ヶ年の中期経営計画を発表しています。営業利益について、今期2025年度は修正計画となっています。もともとは85億円程度を予定していましたが、取引先の民事再生や在庫の引当等の問題で認識のずれがあり、営業利益は71億円に修正しました。

一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益については、もともと34億円でしたが、非常に順調に利益が進捗しているため、40億円に上方修正しました。

ここから先の向こう3年間についてですが、売上は2028年度において2,000億円強を見込んでいます。営業利益は2028年度で113億円を見込んでいます。

2026年度および2027年度は、基本的に国内事業がメインとなりますが、2028年度からは先ほどご説明した海外事業が利益貢献を始める見通しです。最終的に2028年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は95億円を見込んでいます。

塩谷:中期経営計画の営業利益の数字について、小売・トレーディング事業や発電・燃料事業など部門別の比率はどのようになるでしょうか? 

田中:現時点では、ほとんどが国内の小売・トレーディング事業となっています。中計最終年度においても、営業利益に関しては、ほぼ国内事業からのもの(含む系統用蓄電池事業)となっています。我々は現在、資本効率を重視し、自社単独で保有するのではなく、ジョイントベンチャー形式で発電事業を進めていく方針です。

先ほどご説明しましたように、今年12月に営業運転を開始する水力発電所も非連結となります。そのため、最終的な純利益の部分で大きく影響が出ると考えています。

そのため、イメージとしては、最終年度の親会社の所有者に帰属する当期利益95億円は、現在の国内事業に蓄電池を含むアグリゲーション事業が加わり、そこに、海外事業が本格的に寄与し始めるというイメージを持っていただければと思います。

中期経営計画 当社の目指す姿

田中:スライドは、中期経営計画で発表した当社の目指す姿です。何度もご説明しているとおり「需要増×脱炭素」という、一見矛盾する課題が我々の目の前にあります。

当社としては、スライドに記載のとおり、これまでは下流・中流に対応してきました。これから先は、スライド右側に示す上流、特に新たなバイオマス燃料を含む燃料のサプライチェーンが非常に重要になります。この領域は、今後も着実に推進していかなければならないと考えています。

この部分が整っていけば、当社としては下流・中流・上流それぞれの課題に対応し、お客さまにソリューションを提供できる体制が整うと自負しています。このように、「需要増×脱炭素を新たなカタチで解決するエネルギー会社へ」ということで、この中期経営計画における当社の目指す姿を掲げています。

上流から下流まで一貫体制のバリューチェーンを実現し、収益源を多様化することでバイオマス価値の最大化を目指していきたいと考えています。

中期経営計画 FY26以降の成長曲線

田中:我々としては、この中期経営計画を達成することで、2029年度以降の成長曲線を描いていきたいと考えています。スライドのオレンジ色の棒グラフが、先ほどご説明した3ヶ年計画となります。さらに既存事業の成長に加え、国内ではアグリゲーション事業やAI時代におけるデータセンター需要の獲得も目指しています。

また、カーボンクレジット事業や海外での発電、混焼、燃料事業を通じて、2029年度以降はおおよそ190億円から200億円、2030年度には250億円から300億円といった税引前利益の獲得が可能であると考えています。

株主優待制度の開始

田中:最後に株主優待制度についてご説明します。2月に「イーレックス・プレミアム優待倶楽部」という制度を導入しました。ぜひ株を購入してポイントを獲得していただければと思います。

質疑応答:カンボジアでの発電所開発計画と地政学的リスクについて

向井沙耶氏(以下、向井):「海外の地政学的リスクについてはどのようにお考えでしょうか? カンボジアの政情不安などが懸念されませんか?」というご質問です。

田中:カンボジアについては、確かに最近さまざまなニュースでタイとの紛争といった話題が取り上げられていますが、現地に行くと比較的安定しています。

当社が現在開発している水力発電所やバイオマス発電所も、安定した状態であり、そこについては大丈夫であると考えています。

こちらの計画については、カンボジア政府から承認を得た契約となっています。将来的には、35年後に水力発電所をカンボジア政府に返還することになっています。そのため、地政学的リスクやカントリーリスクがまったくないとはいえませんが、比較的少ないのではないかと考えています。

質疑応答:円安や資源高騰の影響について

向井:「円安や資源高騰の影響についてはどのようにお考えでしょうか?」というご質問です。

田中:円安や資源高騰については、確かに2022年から非常に大きな動きがありましたが、比較的最近は落ち着いてきていると認識しています。

国内での発電事業は燃料高や円安の影響を受け、この2年ほど厳しい状況が続いていましたが、為替に関しては現在大きな動きはありません。

また、バイオマス燃料については比較的価格が下がってきています。そのため、現時点では大きな影響を受けているという状況にはありません。

質疑応答:株価上昇の要因について

塩谷:「株価が2月から上昇してきたのは、市場に牽引されての株価上昇なのか、それとも御社独自のポジティブな良い発表があったからなのか、御社自身でどう分析されていますか?」というご質問です。 

田中:株価についてコメントすることは難しいのですが、2023年度に大きな損失が発生した後、収益構造を確実なものにするため、この2年間さまざまな施策を講じてきました。

その結果が第3四半期の当期利益の上方修正につながったと思いますので、その点をご評価いただいたのではないかと考えています。

質疑応答:TOPIXの見直しについて

塩谷:株価に関連して、御社は今回優待も発表されています。今年10月に行われるTOPIX第2段階の見直しなどを社内で意識されている部分はありますでしょうか? 

田中:率直に言いますと非常に意識しています。TOPIX銘柄に入ることを目指し、さまざまな施策を講じていきたいと考えています。

重要なことは、着実に利益を生み出し、株主をはじめとするステークホルダーのみなさまの期待に応えていくことだと思っています。

質疑応答:M&Aや新規事業の検討状況について

塩谷:「M&Aの今後の検討状況や、新規事業で模索していることがあればお聞かせください」というご質問です。

田中:新規の事業ではありませんが、データセンターについては検討しています。これは我々がデータセンター事業を手掛けるということではなく、我々が運営するバイオマス発電所は24時間の安定稼働が可能なため、データセンターとの相性が非常に良いと考えています。

現在いくつかの電源計画があり、例えば近隣にデータセンターを誘致し、直接電力を供給するといったことも検討しています。また海外においても同様の事業展開を可能性として考えられます。

データセンターにとって、現在、電線や通信線がボトルネックになっているケースが多いようです。我々の発電所の近くには太い電線が通っています。この点において、我々の発電所とデータセンターの間には高い親和性があると考えています。

こうした新しいプロジェクトに取り組むことは、非常に興味深い挑戦になるのではないかと思っています。

質疑応答:ベトナム・カンボジア以外での海外展開について

塩谷:「ベトナムとカンボジアのバイオマス発電の次に計画されている国はどこかありますでしょうか?」というご質問です。

田中:我々としては特段、前提条件を絞っているわけではありません。例えばフィリピンやインドネシアについては、燃料の賦存量などにおいてベトナムやカンボジアと遜色がありませんので、可能性はあると思います。

ただ先ほどご説明しましたとおり、ベトナムには候補地がまだ15ヶ所残っています。まずそこで着実に地に足をつけて推進していくことが重要です。また財務戦略とも関わってきますので、状況をよく見ながら検討を進めていきます。

塩谷:2028年度までの中期経営計画は、とりあえずベトナムとカンボジアを前提とした計画だという認識で良いですか? 

田中:おっしゃるとおりです。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:蓄電池はかなりの騒音が発生すると聞くのですが、近隣住民等からの理解が得られている場所なのでしょうか?

回答:おっしゃるとおり、騒音の影響で直近に住宅がある場所での設置は難しいです。適切な距離を確保して設置しています。

<質問2>

質問:常磐友部・内原間の太陽光発電所を見たことがあります。土地がまだあるように思えますが、太陽光の増設は検討されているのでしょうか?

回答:JR東日本が保有する常磐友部・内原間の太陽光発電所で発電される電力と環境価値を同社との契約により取り扱っていますが、発電所は当社が保有しているものではなく、申し訳ありませんが、ご質問には回答しかねる状況です。

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