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ispace、JAXA宇宙戦略基金で最大200億円支援獲得 NASA案件も担い月面輸送開発が進展

ログミー IR Meet 2026春

袴田武史氏(以下、袴田):株式会社ispace代表取締役CEOの袴田です。当社は月関連の事業を展開しており、多くの方は具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。そこで、まずはispaceのビジョンを簡単にまとめた動画をご覧いただきたいと思います。

(動画が始まる)

私たちが月に行くのは、その先に本当の目的があるからです。私たちが創り出さなければならないものがあるのです。ispaceは人類の未来のための礎を築きたい。そのためには、しっかりと存在感を示し、宇宙に持続可能なインフラを整え、かつ成長させる必要があるのです。

採水され精製された月の水は、不可欠なエネルギー源となり、シスルナ(=地球と月の間)での人類の活動を拡大し、地球上の生活に持続的な恩恵をもたらします。そしてispaceは、この貴重な資源探査と開発のまさに最前線にいるのです。

ispaceは、市場で最も包括的なシスルナ(=地球と月の間)での人類の活動を拡大し、お客さまのペイロードを月の周回軌道や月面へと運ぶのです。

私たちは、人類が月面に到達するための基盤を築こうとしています。水資源、エネルギー、通信そして月環境に関するデータなどのサービスを、政府機関や学術機関だけでなく、顧客にも提供しています。

私たちは、革新的な技術を検証し、月面で運用するための初めの一歩を共に歩むのです。ispaceは月特有の課題に対して、素早く設計を改良し、最も費用対効果の高い解決策を見出すことができるのです。

ispaceは、これまで不可能とされていたことを可能にします。私たちは月の開発だけでなく、人類と地球に確かな価値を還元できる経済システムへの道を開くのです。地球上と宇宙空間における人類の未来を創る、使命があるのです。

この新しいシスルナ(=地球と月の間)経済圏の扉はすでに開かれています。共に、月を探求しましょう。未来のために、地球上の暮らしを宇宙へ広げましょう。すべての人類のために。

(動画が終わる)

袴田:このように、非常に大きなビジョンを掲げている企業です。

登壇者紹介

袴田:まずは自己紹介です。映画『スター・ウォーズ』に魅了されたことが、宇宙の仕事を目指すきっかけとなりました。大学・大学院で航空宇宙工学を学び、特に大学院ではアメリカで修士号を取得しました。

その後、少し異なる仕事に従事しましたが、「Google Lunar XPRIZE」という国際的な民間月面探査レースに参加するためにispaceを立ち上げ、現在に至ります。

1.ispaceが取り組むビジネスとは? ―OUR VISION

袴田:動画の中にもありましたが、当社のビジョンは「EXPAND OUR PLANET. EXPAND OUR FUTURE.」です。人間が宇宙に生活圏を築けるような世界を創りたいという背景があるメッセージになります。

人間が宇宙に生活圏を築くためには、宇宙に経済圏が必要だと考えています。それがなければ、豊かに成長する生活は実現できないと思っています。

そのような世界が実現すれば、月でも1,000人ほどの人が生活し、働き始めていてもおかしくないと考えています。私たちは「Moon Valley 2040」という構想も掲げています。

1. ispaceが取り組むビジネスとは? – 水資源の存在

袴田:その背景にあるのは、月の資源を活用していこうという考えです。宇宙で経済圏を作るための最初のドライバーとして、宇宙での資源利用が重要だと考えました。

特に、月には水資源が存在することが確認されています。正確にどこにどのくらいの量があるかはこれから確認していく段階ですが、水資源を獲得し、飲み水としてだけでなく、水素と酸素に分離してロケットの燃料としても利用します。

そして、宇宙にガスステーションが設置され、宇宙で最も大きなコストである輸送コストを大幅に削減することが可能となります。これにより、宇宙での活動に経済合理性が生まれることで、将来的には火星への移動も可能になります。

また、私たちは地球周辺の宇宙インフラを支えることが、地球上の持続可能性を高める上で重要だと考えています。

1. ispaceが取り組むビジネスとは? – 当社のビジネス領域

袴田:ただし、いきなり月の資源を獲得することはできませんので、まずは月に行く必要があります。現在、月面への輸送の仕組みを構築している段階です。当社はこれを事業化しています。

まずは、SpaceX社など他社のロケットで打ち上げます。その中に仕込まれている着陸船と呼ばれる宇宙機が、地球の軌道から切り離された後、月に向かい、着陸します。

その後、衛星を展開したり、月面でローバー(月面探査車)というロボットを展開してデータを獲得し、そのデータを地球に送り返します。ただし、残念ながら機体が地球に戻ることは想定していません。

1. ispaceが取り組むビジネスとは? – 当社の提供サービス

袴田:この輸送インフラを活用し、ペイロードサービスという宅急便のような輸送サービスを「1キロ当たりいくら」という価格設定で提供しています。これには民間企業や宇宙機関が重要になります。さらに、月面で得られたデータを販売するデータビジネスも展開しています。

2. 足許の事業活動 – 開発進行中のミッション

袴田:当社はすでに2回のミッションを実行し、技術を蓄積してきました。Mission 3以降は、輸送可能な重量を大型化し、本格的な商業フェーズに入っていきます。

Mission 3では、アメリカのNASAと契約しており、NASAの荷物を運ぶ予定です。打ち上げは2027年を予定しています。

Mission 4は、日本のSBIR制度(Small Business Innovation Research:中小企業技術革新制度)に採択され、経済産業省の支援を受け、2028年の打ち上げを予定しています。

2. 足許の事業活動 – ミッション6の概要

袴田:最近、次のミッションであるMission 6で、JAXAの宇宙戦略基金事業第2期の案件を獲得し、最大200億円の支援を受けられることになりました。また、ESA(European Space Agency:欧州宇宙機関)の案件も予算確保済みで、これから契約を締結する予定です。

2. 足許の事業活動 – ミッション計画

袴田:このように、当社としては将来的に年2回から3回の月への輸送を実施することで、事業を拡大していきたいと考えています。また、輸送だけでなく、周回軌道や月面でより長期にわたり活動できるような取り組みを目指していきたいと考えています。

経営体制

袴田:当社の特徴は、グローバルで展開している点です。日本だけでなく、ヨーロッパやアメリカにも子会社があり、グローバルチームでこの事業を世界的に成長させようと考えています。

ispaceの紹介は以上です。

ispace(9348)のここがすごい!!

kenmo氏(以下、kenmo):ここからは投資家目線で「ispaceのここがすごい!!」というところやリスク要因などを見ていきます。まず、スライドに「ispaceのここがすごい!!」というところを5点にまとめています。

1点目は「官需を軸にした“月面インフラ企業”へ進化」です。国家戦略に組み込まれた唯一無二のポジションであり、月へ行くという点において他に例を見ない企業です。当然ながら、月に行くには非常に多くの資金が必要となります。しかし、すでに見込み契約として580億円以上、さらに潜在需要として970億円以上が見込まれています。

2点目は「ミッション失敗でも売上影響が限定的」ということです。こちらは非常に重要なポイントと考えています。ペイロード契約という形式で契約しており、基本的には「解約不可・返金不要」です。

月面に行くということは、当然ながら失敗がつきものです。「失敗したら、お金はいただきませんよ」という契約ではなく、スライドに記載のとおり、約9割を打ち上げ前に入金していただく仕組みになっています。したがって、仮に打ち上げに失敗しても、売上の減少を限定的にすることが可能です。

3点目は「量産フェーズへ移行」です。現在、月面に行くにあたり、Mission 1、Mission 2、Mission 3といった取り組みを通じて徐々に改良が進められています。安定的に月面へ移行できる仕組みが整ってくると、シリーズ化や量産化が進みます。

これにより、開発期間の短縮や開発コストの削減も期待できるため、徐々に収益に寄与していくフェーズに移行していきます。

4点目は「月面ビジネスの追い風」です。月面に着陸するという観点で、地政学的・構造的な追い風を受けています。一見すると月面プロジェクトと国家安全保障は関連がないように見えるかもしれませんが、実際は密接に関係しています。

国の予算は防衛と宇宙ビジネスがセットで確保されていきます。足元でも高市政権下でこの分野のニーズがより注目を集めています。

5点目は「データビジネスへの拡張」です。スライドに「輸送からデータサービスへ」と記載しています。将来的なお話になりますが、輸送はあくまでも手段であり、最終的には月面データの蓄積と販売が中心になっていきます。

輸送ビジネスからデータサービスへの拡張を目指し、「1回行くと売上がいくら」から「ストック型宇宙データ企業」へと段階的に発展していくと理想的だと思っています。このように、今後さらなる可能性を秘めた企業であると考えています。

ispace リスク要因

kenmo:一方で、当然ながらispaceは非常に多くの資金を必要とするビジネスです。また、誰も成し遂げたことのないビジネスを手掛けているため、多くのリスクがあります。そこで、どのようなところがリスクになり得るかをスライドに5点まとめています。

1点目は「技術リスク」です。ここが最大のリスクと言いますか、肝かと思います。Mission 1では、高度の誤認識により着陸できませんでした。Mission 2では、着陸まで行けるかと思いましたが、LRFハードウェアの異常により、着陸まで至りませんでした。

致し方ない部分もあるとは思いますが、次回のMission 3でもうまくいかない場合、「本当に大丈夫か」「本当に月に行けるのか」といった信頼毀損が大きくなります。ここが一番のリスクになるかと思います。

2点目は「新エンジン依存リスク」です。「VoidRunner」というエンジンに関して現在さまざまな改良を進めている中で、「スケジュールどおりに進むのか」「もう少し改良に時間や費用がかかる」といったリスクが顕在化していると考えています。

ここが長引くようであれば、スケジュール遅延などのリスクにもつながるため、注視が必要なポイントだと思います。

3点目は「官需依存」です。先ほど追い風についてお話ししましたが、追い風とリスクは表裏一体です。現在の大型契約は官需を中心としており、場合によっては政策変更や予算削減などがispaceにとって逆風となる可能性も否定できません。したがって、将来的にはリスク要因となり得ます。

4点目は「希薄化リスク」です。現在、株式市場に上場していますが、株式市場での資金調達を見据えた上場でもあります。

今後、大きな投資が必要なフェーズにおいては、増資による資金調達が見込まれます。それによるさらなる成長も見込めますので、一概に悪いとは言えませんが、その可能性がある点を念頭に置きながら、長期的にウォッチすべき企業だと思います。

5点目は「宇宙市場の時間軸リスク」です。宇宙ビジネスは非常に時間軸の長いビジネスで、「Moon Valley 2040」という長期的なテーマが掲げられています。

足元の変化が大きい世の中において、長い時間軸のテーマについて市場が期待先行で進む一方、実需がなかなか立ち上がらない中では、時間軸におけるリスクが5点目として挙げられます。

ここまで、「ispaceのここがすごい!!」とリスク要因についてお話ししました。ここからは、せっかく袴田社長にお越しいただいていますので、さまざまなお話をうかがっていければと思います。

質疑応答:政府との情報連携、政府への働きかけ、宇宙開発ニーズについて

kenmo:高市政権が発足し、宇宙開発に対して非常に追い風になる可能性があると考えています。現在、政府との情報連携や政府への働きかけ、政府の宇宙開発ニーズについて、最前線でどのように感じているかを教えてください。

袴田:現在、宇宙は高市政権における17の投資分野に含まれており、非常に注目を浴びている分野だと思います。

高市総理自身、以前は宇宙政策担当大臣でした。当時、私たちは最初のMission 1を進める予定で、宇宙資源である月の砂「レゴリス」と呼ばれるものをアメリカのNASAに販売する契約を結んでいました。

これを実行するために、日本政府から初めて宇宙資源法に基づく許可をいただきました。その時、高市総理が宇宙政策担当大臣でしたので、私にとって非常に大きなビッグサポーターであると思っています。

ご質問にお答えすると、まず、日本の宇宙政策には基本計画があります。その大きな分野として、ロケット、衛星、そして私たちが進めている宇宙探査があります。宇宙探査の主なターゲットは月だと理解しています。

数年前に基本計画が改定され、その際、前のバージョンから現在のバージョンに変わる中で、「月」または「月面」という言葉が8回から48回に増えました。このことから、日本の宇宙政策においても、月の重要性が大きくクローズアップされていると理解しています。

今、世界の状況を見てみると、アメリカはアルテミス計画で月へ行く準備を進めており、日本もJAXAやトヨタ自動車社が連携し、有人与圧ローバーの開発や、月周回有人拠点「Gateway」への協力を進めています。

これに伴い、日本人宇宙飛行士2名を月面に送り込むことをアメリカと合意するなど、非常に大きな動きがあります。

その背景として、中国が同様の計画を進めており、アメリカとしては宇宙における力を維持するため、月が極めて重要なテーマと位置づけられています。そのような流れが今後、日本にもより強く来るのではないかと考えています。

当社はまず、「月に輸送する」という非常に重要なインフラを担うことになると思います。そのため、国としても、今後さらに投資が進むことを期待しています。

高市政権の下、日本成長戦略会議が開かれており、その中の航空・宇宙ワーキンググループで私も産業界の声として発言する機会を得ました。

月がこれから重要な存在になっていく中で、日本政府に月の輸送に関して「輸送量を確保するために定期購買してほしい」と提案しています。宇宙業界では「アンカーテナンシー」という考え方があり、日本政府にはアンカーカスタマーになってほしいと考えています。

今後10年間で約2,000億円規模、20回ほどのミッションに相当する契約を検討していただきたいと提案しています。この提案がそのまま実現するわけではありませんが、このような方向性の提案を行っており、政府内で真剣に議論されることを望んでいます。

kenmo:国としても非常に注目が高まっていますね。

質疑応答:宇宙戦略基金事業第2期における投資分野について

kenmo:JAXAの宇宙戦略基金事業第2期で採択され、上限200億円規模の支援を受けることになりました。具体的にどのような分野に投資する予定ですか?

袴田:今回の宇宙戦略基金事業第2期では「月極域における高精度着陸技術」というテーマがあり、政府内で関連プログラムが進められていましたので、当社はこれに応募して採択されました。したがって、基本的にはこのテーマに沿った投資を行うことになります。

具体的には、Mission 6という6回目の着陸ミッションを活用します。月面の南極域へ着陸するためには、高精度な着陸誘導制御技術が必要です。この技術を実現するために必要なハードウェアやソフトウェアの開発に注力し、投資を進めていきます。また、着陸船の開発も必要となるため、こちらにも資金を投入する予定です。

質疑応答:「VoidRunner」の開発進捗と遅延の可能性について

kenmo:直近の決算説明資料にもありましたが、Mission 3とMission 4のエンジン「VoidRunner」の開発進捗や、Mission 3が遅れる可能性についてお聞かせください。

袴田:前回の決算説明会でその可能性について開示しました。その後、新たに開示可能なアップデートはありません。

現状をご説明すると、Mission 3に関しては、アメリカでNASAの仕事を請け負い、開発を進めています。アメリカのエンジンメーカーと共同で「VoidRunner」というエンジンの開発に取り組んでいるところです。

ただし、私たちが目指す性能にはまだ達していないのが現在の状況です。当社としては、エンジン開発会社と協力し、その性能を満たすために試験の設計を変更しながら、試験を繰り返し進めているところです。

通常、宇宙の試験は非常に長期間にわたりますが、当社が協力している企業は3Dプリンティングの技術を活用しており、非常に短いサイクルで試験を実施できます。当社としては、その状況を注視しつつ、今後の対策を検討していく考えです。

一方で、このような事象が今後も続くようであれば、当社のMission 3の打ち上げスケジュールにも影響を及ぼす可能性があると認識しています。まずは、その性能を確実に実現できるように取り組むとともに、仮にそれが難しい場合も、どのようにバックアップを行うかをしっかりと検討していきたいと考えています。

kenmo:場合によっては、2028年にMission 3とMission 4の日米同時打ち上げの可能性はあるのでしょうか?

袴田:おもしろい視点ですね。確かに、Mission 3とMission 4はアメリカと日本のそれぞれのエンジニア部隊で開発しているため、並行して進めることが可能です。したがって、同じようなタイミングで打ち上げることは論理上可能です。

また、着陸船も1基のロケットを利用するため、相乗りではありませんが、ロケットの打ち上げが同じ時期に行われる可能性もなくはありません。当社としては、Mission 3をより早く打ち上げられるように、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

質疑応答:短期的に収益を生む事業領域について

荒井沙織氏(以下、荒井):「月面輸送サービスは、非常に長期的なビジネスだと思います。短期的に収益を生む事業領域は、例えばデータ販売なのか、ペイロード輸送なのか、どこになるかを教えてください」というご質問です。

袴田:宇宙事業は輸送に限らず非常に時間軸が長く、売上が上がっても利益が上がるような構造になるのかという点に疑問を抱く方も多いのではないかと思います。確かに、これまで国が行ってきた開発では10年、またはそれ以上の歳月をかけて1つのことを進めるという時間軸でした。

しかし最近では、私たちのようなスタートアップも含め、それでは事業の時間軸と合わないため、数年で成果を出せるような仕組みが形成されつつあると思います。

私たちも、プロジェクトの開始から打ち上げまで、イチから開発する場合でも5年ほどです。繰り返しのプロジェクトであれば3年から4年で実現できます。IT業界と比べると長い時間軸ではありますが、その中でもしっかりとミッションごとの黒字化を実現していくことになります。

売上については、先ほどの分析でもお話があったとおり、国からの資金も含めると売上が大きく伸びる可能性が十分にあります。

あとは、どのようにコストを下げていくかという点です。当社では大型化した場合でも、コストがそれに伴い何倍にも膨れ上がるわけではありません。したがって、大型化を進めつつ、大きな需要を獲得しながらコストを抑えていきます。

これにより利益を向上させ、最初の輸送サービス、当社ではペイロードサービスと呼んでいますが、そのサービスにおいてMission 5やMission 6あたりから、ミッション単体として利益が出る構造を作っていきたいと考えています。

質疑応答:Mission 1・Mission 2の失敗要因とMission 3以降の改善計画について

荒井:「これまで2回の月面着陸チャレンジで技術的課題が見えたかと思います。次のミッションで最も改善された技術ポイントは何でしょうか?」というご質問です。

袴田:Mission 1、Mission 2は、先ほどお話があったとおり、基本的には月面への着陸ぎりぎりまで到達していました。しかし、最後の着陸フェーズで高度を正確に計測・認識できず、それが両ミッションの大きな流れとして失敗につながりました。

Mission 1では特に、ソフトウェア側で高度認識を誤るという問題が発生しました。センサは正常に動作しており、実測値を取得できていたのですが、その値がソフトウェアで正しく認識されていませんでした。

Mission 2では、これとは逆の現象が発生しました。ソフトウェアは正常に動作しましたが、センサが実測値を取得できませんでした。

実は、センサはMission 1とMission 2で変更せざるを得なかったという背景があります。最終的な原因については現在分析を進めているところですが、センサが想定どおりに値を取得できなかったことが原因となっています。このように、それぞれ異なる原因で失敗につながりました。

Mission 3以降は着陸船が大型化するため、これまでとは異なるアプローチが可能になります。Mission 1とMission 2では、まずは着陸の実証を目指し、非常に小型な着陸船を用いて、重量やコストを極力下げてチャレンジしました。

したがって、業界では「ブラインドランディング」と呼ばれる目隠しをした状態で着陸するというような方法を採用しました。これは、アポロ計画の時代に無人ミッションで実施されていた方法で、センサの値だけを頼りに着陸するものです。

しかし、この方法では1つのセンサに頼ることになるため、私たちのように問題が発生した場合、バックアップがないというリスクがあります。

ただし、Mission 3以降では画像航法を取り入れる予定です。最新技術を導入し、カメラが月面降下中の映像を捉え、月面のクレーターや影などを判断しながら「今どこにいるのか」「高さはどのくらいなのか」という情報を取得できるようになります。

さらに、別のセンサの導入も計画しており、1つのセンサに依存しない仕組みを構築できます。このような改良により、着陸に関しては非常に信頼性の高い技術になると期待しています。

質疑応答:月面着陸の顧客ニーズについて

質問者:月面着陸した時に、顧客としては何がうれしいのかを教えてください。例えば、以前の報道で「ヘリウム3を採取して利益を得ることで、月面着陸輸送のビジネスは盛んになるのではないか」といった内容が書かれていました。このようなお話は、ヘリウム3以外にもありますか?

袴田:いくつか特徴的なニーズがあります。まず、大きな話として挙げられるのは、ご質問にあったヘリウム3です。

ヘリウム3は、月面に存在する資源として注目されており、一般的には核融合の燃料として考えられています。地球上では現在、1キログラム当たり2,000万USドル、つまり30億円程度で販売されており、地球上では非常に希少で高価な資源です。

月に存在するヘリウム3を採取して地球に持ち帰ることができれば、地球上の資源として非常に有望で、売れるのではないかと考えられています。現在では核融合の燃料としての活用はまだ先の話となっていますが、量子コンピューターの冷却材として利用できる可能性があるという話も出ています。

アメリカのエネルギー省は、月で採取されたヘリウム3の購買契約を結んでおり、このようにマーケットがこれから形成されていくと考えられます。アメリカのスタートアップ企業も複数出てきており、当社もその1社の最初の探査を支援するために輸送契約を締結しています。

それ以外の短期的なニーズとしては、現在、NASAをはじめ、JAXAやヨーロッパの宇宙機関などが、今後宇宙飛行士を月面に送り、長期滞在させる計画があります。そのため、月の環境を調査する必要が生じています。

例えば、月がどのような放射線環境にあるのか、月面の状態がどのようになっているのか、さらに月面に構造物を建設する場合にはどのように進めるべきかなど、基本的な情報を収集しなければなりません。

アポロ計画の時代から50年以上が経過しており、現状では十分なデータが揃っていない状況です。そのため、NASAは月面に計測機器を次々と送り込むことを目指しています。当社のアメリカにおけるミッションは、この一部を担っています。

アメリカではすでに「Commercial Lunar Payload Services(CLPS)」という月面への輸送サービスを調達するプログラムが実施されています。このプログラムは10年間で26億USドル、すなわち日本円で約3,500億円に相当する規模を購入する計画となっています。

これは、宇宙への輸送で成功したSpaceX社のモデルを月面に取り入れたものです。当社はその1つの案件をアメリカで受注しています。

また、アルテミス計画の一環として「アルテミス合意」があり、現在までに日本を含む約60ヶ国が署名しています。

彼らもアルテミス計画に協力するため、今後何らかの月のミッションを行っていくことになると思います。月への輸送を独自で手掛けることは難しいため、私たちのような輸送業者に依頼する必要がある世界になってくると考えています。

質疑応答:センサおよびカメラ導入のリスクと成功見込みについて

質問者:新たにセンサを導入すると着陸の精度が向上する可能性はありますが、コストも増加すると思います。また、カメラを導入した場合、宇宙環境での熱やさまざまな影響によりエラーが生じる可能性があると思います。

精度が向上するというメリットに対して、不具合が発生するリスクもあると考えますが、そのバランスや成功の見込みをどのように考えていますか?

袴田:専門的なご質問をありがとうございます。宇宙空間では放射線や無重力、大気がない真空環境など、さまざまな技術的な要件が変わってきます。したがって、地上で十分な試験を行うことを進めています。

「カメラなどを載せると重量があるため、その分売れるスペースが減るのではないか?」というご指摘もいただきます。確かにその面もありますが、Mission 3以降は着陸船が大型化します。

Mission 1やMission 2では月面に送れる重量が30キログラムしかありませんでしたが、Mission 3以降は数百キログラム、具体的にはMission 3では300キログラムをターゲットとしています。このように、約10倍に増加していきます。

その比率で考えると、カメラは数百グラム程度であることから、当社の利益率に大きな影響を与えるものではないと考えています。それよりも、月面着陸の確実性や精度を向上させることで、輸送サービスの価値が十分に高まると判断しています。

質疑応答:袴田社長が宇宙を訪れた経験の有無と月面居住計画について

質問者:「Moon Valley 2040」では2040年をターゲットの年として設定しており、その時点で1,000人が月面に居住し、年間1万人が月を訪れる計画です。この計画では御社が輸送を担当するとのことですが、袴田社長は宇宙や月に実際に行ったことはありますか?

また、宇宙飛行士と同じように、スタッフの方々で人工衛星や宇宙ステーションを運用していますが、今後そのような場所に行く予定はありますか?

さらに、2028年にMission 4の打ち上げが予定されていますが、この後も数機を打ち上げる予定です。Mission 4の契約金が58億円ということですが、今後どのくらいの規模で行われるのか、将来的な売上の見込みについて教えてください。

袴田:当社では「Moon Valley 2040」というコンセプトを提示しています。2040年というよりも、2040年代という長期的なイメージで取り組んでいるところです。1,000人が居住する状況になれば、当社も月面に子会社を設立し、私や従業員が月面に行くような世界が訪れる可能性もあります。

私はまだ宇宙に行ったことはありません。将来的には私も宇宙に行けるような世界を作っていきたいと考えています。

質問者:1,000人が月に居住するというお話ですが、例えば袴田社長や御社のスタッフが月面に立つ場合、多額の経費がかかると思います。2040年は15年後ですので、私も生きている予定です。現実的なターゲットだと考えていますが、どのくらいの費用およびリターンを見込んでいますか?

袴田:計画としては、現時点でお話しできるような具体的な数字は出ていません。ただし、私たちは月面の資源を活用することで大きくコストを下げたいと考えています。それでも地球での旅行よりは非常に高額になるかもしれませんが、月での作業が価値を生み、経済として回っていく世界を作っていきたいと思っています。

質疑応答:売上の内訳とペイロードサービスの売上構造について

質問者:現在の売上について、ペイロードサービスによるものなのか、データサービスによるものなのかを教えてください。また、実際にペイロードサービスがビジネスとして展開された場合、1基当たりの売上イメージはどのように考えていますか?

袴田:当社の売上構造はやや複雑ですが、大まかにご理解いただきたいのは、現在の売上は基本的に輸送サービス、ペイロードサービスによるものです。

料金設定は「1キログラム当たりいくら」という形式です。当社が提示する価格は、1キログラム当たり150万USドルです。ただし、お客さまとの交渉によって最終的に決定されるかたちとなります。その売上が損益計算書に計上されます。

一方で、当社の収益構造には政府からの補助金も含まれます。例えば、先ほど触れた宇宙戦略基金などが該当しますが、こちらは売上ではなく営業外収益として計上されるものとなります。

補足として、当社はプロジェクト収益についての情報も開示しています。ペイロード輸送サービスとしての売上に加え、宇宙戦略基金のような補助金も含め、1つのミッションでどれだけのプロジェクト収益が見込まれるかを提示しています。

当社の提示価格を1キログラム当たり150万USドルとし、100キログラムから200キログラム程度の輸送ができれば、黒字化に向けたミッション収益を十分に見込めるという想定です。

質疑応答:サウジアラビアに連結子会社を設立した狙いについて

kenmo:直近でサウジアラビアに連結子会社を設立されましたが、この狙いや意図について教えてください。

袴田:サウジアラビアに法人を設立しました。この背景としては、中東が今後宇宙関連に非常に大きな投資を進めていくことが挙げられます。当社のMission 1ではUAEのお客さまがいらっしゃいますが、サウジアラビアも同様に、月関連のプロジェクトを進めています。

現地法人がないとサウジアラビア政府との契約を確保できないため、将来を見据えて設立を行いました。

袴田氏からのご挨拶

袴田:私たちは「月への輸送サービス」という類を見ない事業を展開していますが、残念ながらまだ月面着陸には至っていません。Mission 3以降は、まず月面着陸を確実に成功させたいと考えています。

これから月は世界的にも非常に重要なテーマになってくると思います。私たちは歩みを止めることなく、事業として着実に成長させるべく取り組んでいきます。ぜひご注目いただければと思います。

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