■成長戦略
2. 新規出店計画
日本のストレージ市場の高い潜在成長性を前提に、中期経営計画達成の鍵となる新規出店計画としては、2027年12月期の新規出店室数を2024年12月期実績の約2倍の21,000室へと出店加速を計画している。内訳としては、自社出店を16,000室に拡大することに加えて、エリアリンクが他の事業者から運営・管理を受託するパートナー制度の本格運用による出店数5,000室を計画する。同社では、既に全国のストレージ事業者を対象に新規出店や運営中物件の集客から解約までを一括でサポートする「パートナー制度」の本格運用を開始している。ただ、パートナー出店は相手次第なので、計画期間中は横ばいと慎重に見ている。また、パートナー制度は、元々稼働率が低いストレージについて同社が運益・管理を引き受けるものであり、パートナー出店の増加に伴い同社全体の稼働率は低下する。しかし、同社のノウハウを活用した本格運用により、次第に稼働率向上が見込まれる。
2025年12月期の新規出店計画は、自社10,000室、パートナー5,000室の合計15,000室であったが、実績は自社11,694室、パートナー5,060室の合計16,754室で、計画を大きく上振れた。このため、2026年12月期計画では当初計画から上振れ分を差し引いて、新たに自社10,046室、パートナー6,200室の合計16,246室に下方修正した。自社出店は当初計画の13,000室から減らす一方、収益性が高いパートナー出店は5,000室から増やす計画だ。ただ、最終年度の2027年12月期の計画は据え置いているが、計画を上回って着地する可能性が大きいと弊社では見ている。
収益構造を比べると、自社出店では、賃料・管理費・その他手数料などの売上から、地代・減価償却費・経費を差し引いたものが粗利となる。一方、パートナー出店では、賃料の10%、管理費・その他手数料などの売上から、経費を差し引いたものが粗利となり、売上は小さいが粗利率は高い。そして、初期投資費用なし、損失期間なし、同社の市場シェア率が向上などの利点がある。
また、ストレージ事業では、高い収益性、無人運営(一部有人店舗あり)による低コスト、土地・ビルのフロアを借りて運営(一部保有するケースあり)、土地契約から短期間で運営開始が可能などの特徴があるが、出店のためのマーケティング調査と用地選定が重要であり、一定以上の規模にならないとスケールメリットがでないなど、実質的に参入障壁が高いと言える。
こうしたなか、ビルイントランク型、建築型(ストレージミニ)、コンテナ型の3種類の商品を展開しているのは同社のみである。出店に関する日本全国のデータベース(人口、世帯数、所得層等)の構築、出店エリアの拡大、マンパワーに頼らない営業体制など、環境が整ったことで一気に出店を加速し、先回り出店によって2029年に市場シェア24%達成を目指している。日本市場で「シェア・質の“圧倒的No.1”」となり、そして世界へ進出するという計画である。
3. 差別化戦略
こうした出店加速を可能にするための差別化戦略として、ストレージデータベースの構築によるデータドリブン経営の実現を計画する。ストレージデータベースでは、全国47都道府県における顧客・物件情報の蓄積(過去の解約分も含め数十万件)に基づき、綿密なデータの裏付けにより高精度の新規出店を実現し、人の経験や感覚を排除したデータドリブン経営の実現を目指す。また、集客戦略としては、長期的な収益性を考慮して全国のエリアで最適な商品を展開し、Web広告を中心とした広告戦略の最適化により全体の効率化と単価の引き下げを実現する。さらに、戦略最適化としては、契約・解約・利用期間・賃料設定・キャンペーン・地域データなど様々な視点からの分析を実施し、新規物件出店後には新しいデータを集積しさらなる精度の向上を実現する。これらの戦略によって、新規物件の早期収益化を目指すとともに、既存物件の高稼働率を維持しながら、出店加速のフェーズに突入する計画だ。
データ分析の実例としては、独自に開発したBIツール※の活用がある。つまり、自社独自の利用属性・ストレージ供給数などのデータ、独自調査に基づく競合他社データ、人口・世帯数などの統計データにより、自社や他社の顧客プロット図や物件別稼働/収支データなどを作成する。この作成データに基づき、申込・解約動向、稼働推移、出店営業などを分析することで、物件ごとの課題解決や新規出店時のマーケット調査などに活用し、既存物件の高稼働率の維持や新規物件の早期の収益化を目指すものだ。全国47都道府県の物件累計数十万の顧客情報を活用できるのが、同業他社に対する大きな強みと言えよう。
※ ビジネス・インテリジェンス・ツール:事業上の意思決定に用いられる知見及びそのためのデータ収集・分析に用いられる道具。
中期経営計画では意欲的な経営目標を掲げているが、国内のストレージ市場は大きな成長余地が見込まれることから、出店計画や差別化戦略を着実に推進することで十分に実現可能であると弊社では見ている。なお、同社は業界のリーディングカンパニーとして、利益追求と同時にESG経営も積極的に推進している。具体的には、「環境への配慮」としては、ストレージの活用により整理収納のすばらしさを実感してもらい「持ちすぎない」社会の実現、「コンテナ・建物100年活用プロジェクト」の推進、オフィス内の紙の廃棄物削減などを実施している。「社会貢献」では、人材育成制度(エリアリンクメソッドの活用によるパーヘッド利益向上)、多様な働き方の支援、災害時のストレージ活用などを実施している。「ガバナンス」では、6名中2名の独立社外取締役の選任、コンプライアンス委員会の設置、配当性向35%を目標とした安定した株主還元などを実施している。同社は、健康経営優良法人2025認定(2025年3月)、ESGイニシアティブ・アワード受賞(2025年3月)、優良女性活躍推進認定「えるぼし」取得(2025年9月)など、企業の社会的責任に関する多くの受賞や認定を獲得している。近年、機関投資家を中心にESGに配慮した企業に投資する傾向が強まっていることからも、弊社では今後の取り組みに注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)