米国・イスラエルとイランの紛争突入後、約3週間が経過。戦火の拡大が警戒されるなか、底堅い原油相場を背景にドルは下げづらい展開です。ドル・円は心理的節目に差し掛かり円の大幅安は抑制されているものの、ホルムズ海峡の安全性が一段と注視されそうです。
2月28日に米国とイスラエルがイランに対する軍事作戦を開始したのに対し、イランは報復として湾岸諸国へ攻撃。イランの支援を受けている武装組織ヒズボラとイスラエルはレバノンとの国境付近でも衝突し、中東地域の混迷は深まる一方です。特に、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の航行は危険視され、指標となるNY原油先物(WTI)は1バレル=120ドルに接近する場面がありました。
今月17-18日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場の観測通り政策金利を据え置きましたが、中東情勢の一段の不安定化をにらみ、今後のインフレ圧力を意識したドル買い地合いが継続。足元はWTIが上昇基調に振れるとドル買い、逆に下落基調だとドル売りの状況に。いったんは90ドルを下回る水準に落ち着いたものの、再び100ドル付近に上向き、ドル買い地合いに変わりはありません。
目先のドル・円は、中東紛争を背景とした日米関係が材料視されそうです。高市首相は日米首脳会談に先立ち、ホルムズ海峡の安全確保に関して「自衛隊の派遣は現時点で予定していない」と表明。「法律の範囲内で必要な対応を検討していく」としました。一方、原油輸入先の多角化を進めるため、米アラスカ州産原油の調達、さらに10兆円規模の対米投資も打ち出す方針とみられます。
国連安保理はイランによる周辺国への「報復」攻撃を国際法違反としましたが、米国とイスラエルのイランに対する軍事作戦には言及していません。ただ、米国の攻撃について国際法上重大な疑念があり、欧州の主要国は米国への協力を見送る方針を相次いで決めました。次第に孤立化する米国との関係強化は、特に今後の日本市場を左右する材料になりかねません。
懸念材料である原油調達の問題が緩和されれば、日本株買い要因になる可能性もあるでしょう。一方で米トランプ政権は関税政策やエプスタイン文書の問題で国際社会からの信頼は地に堕ち、今後「有事のドル買い」が後退すれば、信認低下によるドル売りの再開が予想されます。米国依存で日本への影響力が一層強まればドルと連動して円も売られやすく、ドル・円相場は動意の乏しい通貨ペアになるかもしれません。
(吉池 威)
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