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ベルトラ Research Memo(6):計画運営の在り方を見直し利益主導型マネジメントへ移行、質的成長の加速へ(2)

■ベルトラの中長期の成長戦略

5. アナリストの視点
中期経営計画を取り下げてローリング方式へ移行したことは、外部環境の変動を前提にした現実的な経営へ舵を切ったことを意味する。計画の形式よりも実行の確実性と利益の積み上げを重視する姿勢が鮮明になったことで、成長の速度を競う段階から収益の質を高める段階へ移ったと評価できる。

今回の転換で重要なのは、事業規模の拡大を最優先するモデルから、収益性とキャッシュ創出力を重視するモデルへ重心が移った点である。体験型旅行予約を主力とする同社のOTA事業は、為替、景気動向、国際情勢の影響を受けやすい。訪日外国人需要は回復基調にあるが、円安や物価高の影響で旅行者の消費行動は変動しやすい環境が続くなかで、集客効率の改善、広告投資の最適化、商品ミックスの見直しなどにより収益性を高める体制へ切り替えることは理にかなっている。短期的には売上成長率が緩やかになる可能性はあるが、中長期では安定した利益基盤の構築につながると見ている。

成長戦略の柱は、OTA事業の収益性を高めながら、観光IT事業へ重点投資する2層構造にある。子会社のリンクティビティが手掛けるチケット流通基盤は、鉄道や観光施設チケットのデジタル化が進むなかで存在感を高めている。QRコード型電子チケットの普及や多言語対応の需要拡大を背景として、交通機関や観光施設との接続が進む余地は大きい。BtoC中心の従来モデルにストック性が高いBtoB基盤を組み合わせることで、取扱高に依存しにくい収益源の育成が可能となるだろう。

新領域であるクルーズ事業については、採算性を重視した拡大方針を採っている。国内クルーズ市場は訪日客の回復や富裕層需要の取り込みを背景に持ち直しつつあるものの、競争は激しい。同社は既存大手と同じ価格競争に入るのではなく、販売チャネルやターゲット層を再設計し、独自のポジションを築く戦略を採っている。価格帯の工夫やオンライン販売の強化により市場の裾野を広げ、利益を確保しながら段階的に拡大する考えである。

組織面では、監督と執行の役割分担を再設計し、意思決定の迅速化をねらう合理的な施策と考える。社外取締役中心の取締役会は客観的な監視機能を高め、ガバナンス水準の底上げに資する可能性が高い。一方で、CEO配下にCxOを配置する体制は権限委譲を進め、事業拡大局面での機動力向上に寄与するだろう。荒木氏が監督側に回る設計も、経験の継承と世代交代を両立させる布陣として妥当である。実効性はCxO間の連携と評価制度の整備にかかっていると見ている。

同社は売上成長だけでなく、利益の質と持続性を重視する段階へ入った。外部環境の回復に依存する姿勢から、自社の収益構造を鍛え直す方向へ転換した点が注目に値する。収益モデルの再設計と事業ポートフォリオの見直しが着実に進めば、営業利益率やフリー・キャッシュ・フローの安定度が高まる公算が大きく、中長期的な企業価値向上が期待される。

■株主還元策

当面は事業拡大のための投資を優先

同社は、将来の事業の発展及び財務基盤の長期安定を経営の最重要課題の1つと認識している。そのために内部留保を行い、事業拡大のための投資及び財務基盤の安定化に充当することが、株主利益の最大化につながると考えており、今後も当面は内部留保の充実を図る方針だ。ただし、株主優待制度については、世界150ヶ国の現地体験型オプショナルツアーの強みを生かした動きが今後出てくることが見込まれる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)

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