■中長期の成長戦略
ミラティブは中長期成長戦略として、「Mirrativ」で確立した強固なコミュニティと高い限界利益率を基盤に、収益の質を高めながら市場領域を段階的に拡張する方針を掲げている。具体的には、(1)既存ミラティブ事業における売上最大化、(2)コスト管理による利益率改善、(3)アセット横展開によるストリーマープラットフォーム事業の拡張及び戦略的M&Aの3軸で構成される。
既存事業における限界利益率は70%を超えており、売上成長が利益に反映されやすい収益構造を確立している。この高収益基盤を土台に、新規事業についても既存アセットを活用した低コスト拡張モデルを採用することで、リスクを抑制しながら事業規模の拡大を図る。
1. 売上向上施策
(1) デジタルコンテンツ拡充によるユーザー基盤の拡大
拡大を続けるモバイルコンテンツ市場では、共創型コミュニティを通じた「個別体験」へのニーズが高まっている。同社は、独自の「配信×コミュニティ×ギフト」モデルにより、ユーザーが「あなただけの体験=物語」を形成できる場を提供しており、この需要を的確に捉えている。
3Dアバター機能(エモモ)、ライブゲーミング、IPコラボ、ランキング施策などのデジタルコンテンツを継続的に拡充することで、ユーザーが配信内で自らの役割を持ち、関係性を積み重ねる機会を創出する。こうした「物語性」を伴う体験設計はエンゲージメント向上を通じてユーザー基盤の拡大を促進する。また、ゲームタイトル横断型施策やマッチング高度化により特定タイトル依存を回避しつつ、新規配信者・視聴者の流入を促進する。「個別最適化された体験価値」という独自の差別化要因を武器に、持続的なユーザー基盤の拡大を目指す。
(2) ARPPUの向上による単価成長
同社では、他社ライブ配信プラットフォームの平均課金額を約30,000円と推定しており、同社のARPPU約18,000円には依然として上昇余地があると認識している。このため、ギフト販売機会の多様化(エモモ、ギフトガチャ、ライブゲームギフト等)を通じて課金目的を拡張し、「配信応援」に加えて「参加体験」や「共同体験」への支出を促進する方針である。特にライブゲーミングは、視聴者が配信に介入できる課金モデルを可能とする独自コンテンツであり、ARPU向上に寄与している。今後もコンテンツ開発及びイベント設計を強化することで、ARPPUの持続的成長を目指す。
(3) ロイヤルユーザー数及びARPLUの積み上げ
月間10,001円以上課金するロイヤルユーザーは売上の大部分を占める重要KPIである。収益構造は、入会年度別の売上が長期にわたり積み上がる「ミルフィーユ型」のストックモデルを確立しており、新規獲得のみに依存しない極めて安定性の高い成長基盤となっている。
今後はロイヤルユーザーの増加に加え、ARPLUのさらなる向上により収益の質を高める方針である。コミュニティ内での関係深化や「推し活」体験の高度化、限定イベント施策などを戦略的に投入することで、高熱量ユーザーの継続率と単価の双方を同時に引き上げていく。
2. 利益最大化施策
(1) デジタルコンテンツ開発コスト及びサーバーコストの改善
同社は高い限界利益率を維持しつつ、今後もデジタルコンテンツへの投資は継続する。デジタルコンテンツはARPPU向上及びロイヤルユーザーの積み上げを支える成長ドライバーであり、単なるコスト削減対象ではない。
特にライブゲーミングは1本当たり平均約2,900万円と低開発費・短期間での開発が可能でありながら、高ARPUを実現している。今後はAI活用や開発体制の最適化によりさらなる効率化を図り、コンテンツ量・質の両面の拡充を進める。サーバーコストについても、ARPPU上昇によるコスト率の自然低減に加え、インフラ最適化を推進する。これにより、コストの絶対額と売上高比率の双方で改善を継続し、「規律あるコスト管理」と「成長投資」の両立を図る方針である。
(2) 決済手数料の低減
同社の決済手数料率は、2025年12月期第4四半期平均で15.7%となり、前年同期比7.1ポイント低下した。AppleやGoogle経由のアプリ内決済では手数料率が30%と高水準である一方、Web決済はこれを大きく下回る水準である。決済手段の多様化やユーザー誘導施策、決済プラットフォームとの条件改善を進めたことが低減につながっている。他社では12%台を実現している事例もあり、依然として改善余地は残されている。今後は配信者側のメリット訴求や決済導線の最適化を通じて、中長期的には10%台の実現を目標に、構造的なコスト最適化を推進する。
同社の収益構造において、決済手数料率の低下は営業利益に直接的なレバレッジ効果をもたらす。売上成長とコスト率低減の両輪により、利益拡大を加速する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)