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アンジェス Research Memo(1):HGF遺伝子治療用製品の2027年上市に向けた準備が着々と進む

■要約

アンジェスは、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダーとして、未だ有効な治療法が存在しない疾患に革新をもたらし、世界中の人々のQOL(生活の質)向上に貢献」することを掲げている。2020年に先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendoBio Inc.を子会社化したほか、2021年には国内で希少遺伝性疾患向け拡大新生児スクリーニング検査を行う衛生検査所「アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下、ACRL)」を開設し、検査受託サービスを開始した。

1. HGF遺伝子治療用製品の開発方針
同社は2025年8月、主要パイプラインのHGF遺伝子治療用製品について、米国で実施した後期第2相臨床試験の良好な結果を基に米国食品医薬品局(以下、FDA)に生物製剤認可申請(BLA申請)を行い、上市を目指す方針を発表した。併せて、原薬供給先であるBoehringer Ingelheim Biopharmaceuticals GmbH(以下、ベーリンガー)と、同製品の上市を視野に入れた新たな製造体制構築のための受託開発・製造契約を締結した。スケジュールとしては、2026年内にBLA申請を行い、2027年後半の上市を目指す。また、大手製薬企業との販売ライセンス交渉は2026年4月以降、候補企業を4社程度に絞り込んだうえで本格的に行う予定で、BLA申請完了までに契約締結を目指す。同社は調査会社から同疾患の米国内の対象患者数が年間で約50万人と報告を受けており、このうち1割程度に投与されたと仮定すると売上ポテンシャルは1千億円を超える規模になると弊社では見ている。なお、年間5万人分の治療薬を供給するため、原薬の調達量拡大に向けた検討もしているようだ。

2. その他パイプラインの状況
慢性椎間板性腰痛症を対象としたNF-κBデコイオリゴDNAの国内第2相臨床試験は、被験者の選定を精緻に行っているため登録ペースがやや遅れ気味となっている。このため、登録完了時期は2026年後半、トップラインデータの発表は2027年末頃となりそうだ。その後の開発方針については開発パートナーの塩野義製薬との協議次第となる。

カナダのVasomune Therapeutics, Inc.(以下、Vasomune)と共同開発を進める「AV-001」は、ウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を適応症とした北米での前期第2相臨床試験が2026年第1四半期に完了し、同年夏頃にトップラインデータが発表される見込みである。また、新たに血液透析患者の脳損傷予防を目指す医師主導治験を開始することも決定し、同年1月に最初の被験者が登録された。

子会社のEmendoBioはスウェーデンのAnocca AB(以下、Anocca)との間で、2024年に締結したOMNIヌクレアーゼに関する非独占的使用権契約の適用範囲を拡大する契約を新たに締結した。Anoccaは難治性固形がんを適応対象としたTCR-T細胞療法の開発を進めており、2026年に「OMNI-A4」を用いた臨床試験を開始する見込みであり、マイルストーン収入の計上を見込んでいる。また、海外製薬企業2社がOMNIヌクレアーゼの技術評価を進めており、2026年内に新たなライセンス契約が決まる可能性もある。

3. 業績動向
2025年12月期の業績は事業収益で874百万円(前期比230百万円増)、営業損失で5,145百万円(同3,964百万円減)となった。事業収益はACRLの検査件数拡大が増収要因となった。費用面では、EmendBioに関わるのれん償却額3,322百万円がなくなったほか、人件費や支払手数料等が減少し、損失額が大幅に縮小した。

2026年12月期は事業収益で1,330百万円(前期比456百万円増)、営業損失で10,230百万円(同5,085百万円増)と再び損失額が拡大する見通しである。「ゾキンヴィ」の売上増加により事業収益は増収となるが、HGF遺伝子治療用製品の原薬製造費用や米国での申請準備費用等の計上による研究開発費の増加が損失拡大要因となる。ただ、これらの費用は将来の収益を獲得するための先行投資負担であり、前向きに捉えることができる。HGF遺伝子治療用製品に関するライセンス契約一時金は計画に織り込んでおらず、仮に契約が締結された場合には相応の上方修正が期待できることになる。

2025年12月末の現金及び預金残高は1,882百万円だが、新株予約権の行使や私募債の発行等により今後の事業活動に必要な資金を調達する方針だ。なお、同社はHGF遺伝子治療用製品が上市した場合の市場価値に対して現状の企業価値(時価総額で200億円程度)が低すぎると考えており、今後買収リスクが上昇することを想定し買収防衛策を2026年2月に導入した。

■Key Points
・HGF遺伝子治療用製品の売上ポテンシャルは米国だけで1千億円を上回る
・ARDSを対象とした「AV-001」の臨床試験結果は2026年夏頃に発表予定
・OMNI技術供与先の開発パイプラインで2026年の臨床試験入りを見込む
・私募債の発行により安定した資金調達を可能とし、買収防衛策も導入

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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