■SOLIZE Holdingsの業績動向
1. 2025年12月期の業績概要
同社グループを取り巻く経済環境は、前期より厳しいものとなった。主要顧客の属する自動車産業では、米国関税政策の動向及び経済的影響について不透明な状態が継続し、景況感は悪化した。自動車メーカー等の間では激しい開発競争が継続しているものの、主要顧客企業において開発費用の外部流出を抑制する動きにつながった。このような環境においても、同社グループは、グローバルに展開する顧客ニーズへの対応やグローバルでのリソースの確保に向け、米国の3DプリンターメーカーであるFormlabs(株)や、ドイツのドライビングシミュレーションプロバイダーであるVI-grade GmbH.との提携等を推進し、領域の拡大やサービスレベルの向上を進めた。またソフトウェア開発領域での事業拡大を目的として、独立系システム会社であるフューレックスの全株式を取得、子会社化を行い、収益を拡大した。
これらの結果、同社グループの2025年12月期の連結業績は、売上高は前期比13.5%増の25,779百万円、営業利益は同81.2%減の85百万円、経常利益は同80.3%減の82百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は36百万円(前期は254百万円の利益)であった。売上高は過去最高であったが、第3四半期に入り自動車業界をはじめとする主要顧客からの受注が足踏みする状況となり期初予想を下回った。第4四半期からは受注が回復に転じている。また、成長戦略に基づく体制強化費用、持株会社体制移行に伴う管理機能の強化や採用体制の強化、投資機能の強化などの費用、M&A費用、事業拡張費用などを計画どおりに計上したことで、営業利益は大幅な減益となった。ただ、持株会社体制移行に伴う体制強化への投資は、2025年12月期で完了した。また、法人税等調整額が増加したため、親会社株主に帰属する当期純利益は損失となった。第3四半期に入り米国関税政策の影響もあり、自動車業界をはじめとする主要顧客からの受注が足踏みする状況となり、売上高及び各段階利益は期初予想を下回った。ただ、持株会社体制移行に伴う管理機能の強化や採用体制の強化を先行実施したことで、来期以降の成長に向かう体制が整ったと弊社では評価する。
同社グループでは、人への投資が重要な業績評価指標(KPI)と考えており、国内エンジニアにかかる指標を重視している。2025年12月期の国内エンジニア数は1,639名(前期比250名増)で、採用強化及びフューレックスの連結によりエンジニア数が急増した。エンジニアは顧客に高い付加価値を提供していることから、顧客との交渉により国内派遣単価は、4,942円(同133円増)に上昇した。一方、国内派遣稼働率は93.0%(同2.0ポイント低下)であった。稼働率の低下は、2025年4月の新卒入社が159名(同62名増)になったことが影響した。新卒入社に伴い上期の稼働率は低下するが、新卒社員が戦力化する下期には改善する。
2. 事業セグメント別動向
エンジニアリング・マニュファクチャリング事業では、自動車産業を中心とした主要顧客の需要の拡大鈍化が、期初の想定を超えて大きなものとなった。こうした環境の中、設計開発に係る受託やエンジニア派遣サービスが好調だったほか、試作品製造販売の分野において高強度材料の造形が可能な新型3Dプリンターの生産能力を増強する施策等を推進し収益を拡大、インド現地法人においても3D CADのソフトウェア販売の受注が伸びた。また、将来の収益拡大を目的にエンジニアを増強したほか、営業・管理の体制強化を進めたこと等により費用が増加した。この結果、同事業の売上高は18,828百万円(前期比6.9%増)、セグメント利益は435百万円(同35.9%減)となった。
コンサルティング・エンジニアリング事業では、主要顧客の自動車産業において、一時的に同社グループに対する需要が弱含む傾向となったが、通期では自動車産業を含め、重工業、プラント・建設業等でおおむね堅調な需要となった。こうした環境の中、自動車産業等の主要顧客に対する変革コンサルティングサービスや、モデルベースシミュレーション等による解析サービス、サイバーセキュリティサービスの受注拡大、自然言語処理AIを用いた建設業向けの安全・品質管理を支援するクラウドサービスの展開を推進、これに関連するAI製品の開発、リリース等を進める一方、営業・管理の体制強化も進めたこと等により費用が増加した。この結果、同事業の売上高は4,617百万円(前期比20.1%増)、セグメント利益は305百万円(同57.5%減)となった。
ビジネスインキュベーション事業では、一部自動車産業に関連する顧客において同社グループに対する需要の鈍化が見られたものの、情報・通信産業や電機産業、防衛関連産業等に属する顧客からの受注は堅調に推移した。こうした環境の中、既存顧客からの収益の増加に加えて、新たにフューレックスを連結したことにより増収となった一方、営業・管理の体制強化を図ったほか、のれん償却の開始等により費用が増加した。この結果、同事業の売上高は2,333百万円(前期比86.5%増)、セグメント損失は834百万円(前期は942百万円の損失)となった。
強固な財務基盤を維持
3. 財務状況と経営指標
2025年12月期末の資産合計は、前期末比251百万円増の15,699百万円となった。これは、現金及び預金等の流動資産が1,558百万円減少した一方、のれん等の無形固定資産が1,410百万円増加したほか、投資有価証券等の投資その他の資産が258百万円増加したこと等による。
負債合計は前期末比401百万円増の4,371百万円となった。これは、買掛金が70百万円減少した一方、未払消費税等が529百万円増加したこと等による。純資産合計は前期末比149百万円減の11,328百万円となった。これは、資本剰余金が69百万円増加、また自己株式の減少により68百万円増加した一方、利益剰余金が283百万円減少したこと等による。
以上の結果、自己資本比率は前期末比2.1ポイント低下し72.2%となったが、2025年3月期にプライム・スタンダード・グロース市場に上場するサービス業平均の5.8%や全産業平均の34.1%を大きく上回る高い安全性を確保している。一方、ROAやROEなどの収益性指標は、減益決算によりサービス業平均及び全産業平均を下回ったが、今後は成長戦略の推進により改善に向かうと弊社では見ている。また、自己資本が厚く、自己資本比率が極めて高いことから、同社のROEは低い水準にとどまるものの、同社では借入金がなく無借金経営を続けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)