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インドルピーになお先安観【フィスコ・コラム】

名目国内総生産(GDP)で上位躍進中のインドが、中東紛争で弱点を露呈させています。原油相場急騰による圧迫は想定内ですが、湾岸諸国への依存度の高さが追い打ちをかけているもよう。さらに、パキスタンの動きが警戒され、通貨ルピーは最安値を更新中です。

米国とイスラエルによるイランへの攻撃開始から、4週間が経過しようとしています。原油相場は急騰後に失速したものの、高止まりの状況。原油高の打撃を受けるエネルギー消費国のうち、最も顕著なのはインドでしょう。今後のインフレ期待や引き締め的な金融政策への思惑よりも、景気減速や経常赤字拡大への懸念による資金流出がルピー安を加速させています。

ルピー安の主因は原油輸入を起点とするドル需要の急増。エネルギーの大半を海外に依存しており、価格が跳ね上がれば輸入代金はそのまま膨らみます。石油会社や精製業者は決済のためにドル調達を迫られ、為替市場ではルピー売り・ドル買いが断続的に持ち込まれます。結果として需給はドルに偏り、ルピーは下押しされやすくなります。さらに輸入コストの上昇は貿易収支を悪化させ、経常赤字の拡大観測を強めます。

湾岸諸国への依存度の高さも見逃せません。インドは原油・天然ガスの供給のみならず、貿易や物流、さらには海外就労者からの送金においても中東との結びつきが強く、地域の混乱が広範な経路で波及。輸送の停滞や需要の減速は輸出に影を落とし、湾岸で働く労働者の収入環境が悪化すれば外貨流入も縮小しそうです。経常収支の不安定化にもつながり、やはりルピー安をもたらす要因となります。

中東紛争に目が向くなか、インドとイランに挟まれたパキスタンが、タリバン政権を発足させた隣国アフガニスタンに対し軍事侵攻を開始。アフガニスタン側も反撃し、地域は戦火が広がりつつあります。インドは宿敵パキスタンを孤立させようとアフガニスタンを支持。インドとパキスタンは国境付近で軍事衝突を繰り返しており、昨年5月の衝突はいつになく規模が大きく、本格的な戦争に近づいたと言われています。

中東と南アジアの紛争はインドが直接の当事国ではないとはいえ、周辺地域の不安定化は投資資金の流出を誘発し、リスク資産としての評価を下押しします。こうした地政学的な不透明感は、原油高や経常赤字の問題と重なり、ルピーの戻りを抑制。総じて、構造的な弱さと短期的な資金フローの変化が同時に進行する局面にあり、当面は反発力の乏しい相場を見込んでおく必要がありそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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