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水野克裕氏(以下、水野):みなさま、こんにちは。株式会社CSSホールディングス代表取締役社長の水野です。本日は、「成長投資と株主価値の両立でROE15パーセント超」をテーマにお届けしたいと思います。
本日の目次はスライドのとおりです。まずは当社のイントロダクションとして概要や強みをお話しした後、今後の展望として成長戦略などについてご説明します。よろしくお願いします。
イントロダクション:私たちの事業
水野:当社はグループカンパニーとして、3つのセグメントで事業を構成しています。
1つ目は、スライドに青色で枠囲みされたスチュワード事業です。少し耳慣れない言葉かもしれませんが、グループの売上収益の半分を占めています。この事業はホテルのバックヤードで主に食器の洗浄を行うもので、当社は40年以上にわたり提供しています。
2つ目は、オレンジ色の枠囲みで示されているフードサービス事業です。こちらは全体の2割強を占めています。名前のとおり、ホテルの従業員食堂の運営や朝食のブッフェなどの受託業務をメインとする事業です。
3つ目は、緑色で枠囲まれている空間プロデュース事業です。これは前述の2つとは異なり、音響・映像・香りなどを用いて空間をプロデュースする施工型の事業となっています。
これらの事業は主にホテルや観光業を営むお客さま向けにサービスを提供しているホールディングスカンパニーとして活動しています。
株主のみなさまからよくいただくご質問として、「スチュワード事業がどのような事業なのか」「どのような特徴を持っているのか」という点があります。本日はこの点を中心にお話を進めていきます。
スチュワードの仕事とは
水野:みなさまにわかりやすいところで言うと、スチュワード事業の主な業務は食器の洗浄です。
具体的には、多くの宴会場を持つ非常に大型のホテルに当社のチームが出向き、受託・アウトソーシングというかたちで食器の洗浄を行っています。御三家をはじめ、膨大な数のお皿を使用するバンケットや宴会場を多数保有する大型ホテルなど、日本国内で200件ほどのホテルから受託しています。
しかし、当社のサービスは単なる食器の洗浄にとどまりません。スライドにも記載のとおり、食器や什器の管理業務のほか、コスト管理も実施しています。また、厨房全体の衛生が確保されていなければ食器の適切な管理はできませんので、ホテルからのご要望に応じて厨房内の衛生管理も担当します。
加えて、人員の労務管理やシフト管理といった全体的な人員配備もお受けしています。
具体的にしていること
水野:具体的な仕事内容については、食器の洗浄やバッシング、残渣の処理、規格をそろえて食器洗浄機に通すといった前処理が中心です。大量の食器を洗浄するため、これらの作業が必要になります。その後、洗い上がったきれいな食器を収納し、定められた場所に戻します。
具体的にしていること
水野:また、メンテナンスやゴミ処理、お客さまのご要望に応じた鍋の洗浄、さらには棚卸業務まで、全体的に幅広く業務を担当しています。
私たちに委託いただくメリット
水野:私たちに仕事を委託していただくメリットとしては、専門性があります。当社は40年来この仕事を続けており、多くのノウハウを蓄積してきました。これにより、ワンストップですべてお任せいただける点が強みです。
また、年間契約をベースとした業務を行っていますので、予算実績の管理がしやすく、予算を立てやすいという利点もあります。
さらに、人事労務についても、多くのスタッフを活用して業務を組み立てています。この労務管理を含む全体の業務を私たちにアウトソーシングできることで、ホテルからも高い評価をいただいています。
関本圭吾氏(以下、関本):株式会社IR Agents代表の関本です。ここまでの内容について、いくつかお話をうかがえればと思います。私自身もあまり知らない分野のお話でしたので、大変興味深く拝聴しました。とてもユニークなビジネスだと思います。
実際のマーケットや市場規模はどれくらいのものか、なにか参考となる情報はありますでしょうか?
水野:私たちは、いわゆる御三家とされる「帝国ホテル」「ホテルオークラ東京」「ホテルニューオータニ」などを中心とした、大型の宴会場を複数持つホテルを対象としています。したがって、みなさまがふだんご宿泊されるような一般的なホテルとは異なり、大型ホテルが主な顧客となっています。
業界誌などで「宴会売上ランキング」として取り上げられるホテルのうち、例えばトップ10に入るホテルの中で、現在私たちが業務を請け負っているのは5社です。トップ15まで広げると8つのホテルで業務を受注しており、だいたい半数程度がそのようなホテルという状況になっています。
関本:それらのホテルにおいて、すべてのスチュワード業務を請け負っているのでしょうか?
水野:ホテルによっては従業員がすべてのお仕事を賄う場合もあり、スタイルはさまざまです。そのため、先ほどご説明したお仕事の分界点も、ホテルごとに異なります。「洗うところだけでよいです」というところもあれば、「食器が下げられたところからお願いします」といったところもあります。
関本:今後については、このような大型ホテルからの委託がさらに増えるイメージでしょうか? それとも競争が激化し、他社からシェアを獲得していくイメージでしょうか? 需要の伸びはどのような要因から来るのかを教えてください。
水野:現実的に、ホテルは今も増えています。大阪・関西万博の時もそうでしたが、特に外資系は増加傾向にあり、開業件数が増えています。昨今では、京都で大型ブランドホテルが新たに開業するなど、増加の状況が続いています。
当社は、一つひとつ堅実にお仕事を増やしていく一方で、お仕事の幅が広がっている部分もあります。これまで洗浄業務のみを担っていたところから、「衛生管理までお願いしたい」「すべてをまとめて任せられないか」といったご要望が増えています。ホテル業界で人手不足が深刻化している影響もあり、業務の幅が広がる要因となっています。
また、当社が40年にわたり洗浄業務に真摯に取り組んできたことで評判が広がり、ホテル以外にも大型テーマパーク、フードコート、そして近年では病院など、洗浄ニーズのあるさまざまな場所からお声がけをいただいています。
こうした取り組みの結果、新たな分野が全体売上の約1割を占めるまでに至っています。業務内容や受託先の業界が広がることに加えて、ホテルも増加傾向ですので、そのようなかたちでマーケットが広がっています。
イントロダクション:アイデンティティと歩み
水野:私たちの歩みということで、創業からの歴史についてご説明します。
当社は「Support the Hospitality」、すなわち「日本のホテル・観光業界のホスピタリティを当社が支えていく」というミッションを掲げています。
そして、ビジョン・コンセプトには「Create Together」を掲げています。現在、当社の従業員数は直近で約7,000人となっています。多くはパートやアルバイトの方々ですが、その中には年配から学生のような若い方、外国籍の方なども増えてきており、多様な働き手が携わっています。
当社は40年来の経験から得たノウハウや手順が確立しており、状況に応じた対応方法も定められています。しかし、時代が移り変わる中でホテルのニーズが多様化し、新しい価値観が求められるようになっています。そうした中で、多様な価値観や新しい気づきをサービスに取り込み、当社自身も新しい価値を提供できるよう努めています。これが現在、最も力を注いでいる課題です。
歴史的には40年間、お皿を洗う業務を中心に歩んできましたが、創業から20年が経過した時点でJASDAQに上場し、そこから多角化を図りました。具体的には、先ほどご紹介したフードサービス事業や空間プロデュース事業を展開し、グループ経営を開始しています。
現在は創業から41年が経過した段階ですが、ここからさらに新しい価値を創造することを目指し、「Go Beyond! Next 20」というショルダーフレーズ・タグラインを掲げ、グループ一丸となって取り組んでいます。
関本:沿革の中で1点気になったのですが、M&Aを通じてさまざまな会社をグループに取り込んでいるという理解でよろしいでしょうか?
水野:上場した20年目からそのような取り組みを進めてきました。
関本:具体的には、どのような意図で、どのような会社を選んでグループ化させているのでしょうか?
水野:グループ化に関しては、当社のお客さまであるホテルや観光、レストランなどに対して提供価値を広げることを第一の目的としています。
ホテルの従業員の食堂をサポートすることから始まり、その後はホテルの朝食やレストラン事業、さらには空間事業にまで拡大しています。現在では、銀行の監視カメラやテーマパークへの音響設備の納入なども手がけるようになりました。このように事業は広がり、一般企業にも製品を提供しています。
もともとは、ホテルの演出などを通じてビジネスや提供価値が広がると思い、取り組みを開始しました。現在ではさらに空間が広がり、街作りのような取り組みにも貢献できればと考えています。
関本:今後も「提供価値を広げる」という考えに変わりはありませんか?
水野:その考えは変わらずに持っています。それぞれのセグメントについて経営会議などで議論を重ね、それらをうまく組み合わせながら事業を進めています。
イントロダクション:近年の業績
水野:近年の業績として、スライドには直近6年間の数字を記載しています。
売上高については、過去3年間はコロナ禍の影響もあり、多少でこぼこした推移となっています。直近では、観光業界やホテル業界の景況感が非常に高く、それを受けて売上が大きく伸びています。営業利益、経常利益、当期純利益も、それに伴い上昇しています。
また、ROEは20パーセントを超える水準まで上昇し、PBRも1倍を超えています。ROEが大きく上昇している背景には、直近の収益性向上、具体的には当期純利益の増加があります。さらには資産に対する売上効率の向上もあり、これらが直近業績の好調さを反映してROEを押し上げています。この結果、全体的にPBRにも良い影響を与えています。
一方、PERについては、特に私たちの業界ではどこと比較するかが難しい課題ではあるものの、現在の水準は8.6倍という状況です。
今後は株主さまからの成長期待を高め、それを株価に反映させるような経営を進めることでROEや全体の企業価値をもう一段階上げ、PBRにも寄与する経営をアピールしていきたいと考えています。
配当については、コロナ禍にあっても1株あたり5円の配当を継続してきました。コロナ禍後には記念配当なども実施しましたが、現状では増収増益を前提に、安定的かつ継続的な配当を行う方針を維持しています。
私たちの強み
水野:私たちの強みについてご説明します。
一番大きな強みは、安定した収益基盤です。先ほどの3セグメントのうち、スチュワード事業とフードサービス事業が全体売上の約7割を占めていますが、これらがストック型ビジネスであるという点が当社の最も特徴的な部分です。
基本的には、ホテルを中心に「これくらいの配備・稼働に対して、当社はこれくらいのお仕事をお受けします」というかたちで年間の基本契約を締結しています。季節や繁閑などの違いにより、臨時で精算を行う場合や、状況によって収益が減少する場合もありますが、基本契約を基に1年間の仕事をお引き受けしています。
単年度契約の場合もありますが、契約が更新されることで比較的安定した売上基盤を保つことができています。裏返せば、この2セグメントの売上が急に倍増することは難しいと言えます。
現在はスチュワード事業で約200件、フードサービス事業で約110件、合わせて約300件のお取引があります。このようなお客さまとの契約を基にしているため、急激な増加は見込めないものの、非常に安定した収益基盤と売上構造になっていることが特徴です。
空間プロデュース事業は施工型ビジネスが中心で、納品後に検収して売上が計上されるスタイルとなっています。保守や香り事業におけるリフィルの提供など、一部にはストック型の要素も含まれますが、基本的にはフロー型と言えます。
こうした要素の組み合わせにより、グループカンパニーが形成されています。
私たちの強み
水野:私たちの強みについて、キーワードを挙げながら現在の取り組みについてご紹介します。
1つ目のキーワードは「時代変化への対応力」です。当社は40年以上にわたり洗浄サービスを提供してきました。特にホテルの食器洗浄を中心とした洗浄業務に実績があり、一部では清掃業務も手がけています。
こうした分野において、当社グループの中核となるセントラルサービスシステムという事業会社は、非常に高い認知度を有しています。「食器 洗浄」などの単語で検索すると当社の名前が表示され、ホームページへのアクセス機会も多い状況にあります。このように、40年来の実績が私たちの強みになっていると考えています。
スライド左側は、「Re&Go(リーアンドゴー)」と題された実証実験の取り組みについてです。こちらは京都の上場企業NISSHAと共同で行いました。この実証実験では、「スターバックス」などの使い捨て型カップではなく、QRコードが付いたタンブラー型の容器を用いる取り組みです。
このタンブラーを複数店舗やコンビニとネットワーク化し、どの店舗でもコーヒーを淹れられ、加盟しているネットワーク内のどの店舗へ返却してもよい仕組みを構築しました。これは自転車をドック型ステーションで借りて返却する仕組みに似ており、環境に優しいインフラ基盤を目指した取り組みです。
プロジェクトを進める中でいくつか課題も出てきました。それらを受け、現在はさらにブラッシュアップを重ねる活動を継続しています。
スライド右側に示したのは、「東京味わいフェスタ」での取り組みの様子です。「東京味わいフェスタ」は、丸の内・豊洲・有楽町・日比谷などのエリアで年に1回開催され、多くのフードワゴンが出店し、東京産の食材を活用した料理やビール、ワインなどを楽しめるイベントです。
イベントで使用されるビールやワインのカップはプラスチック製ですが、廃棄するのではなく、会場の一角に設置されたコンテナで回収します。この回収システムを通じて当社がカップを洗浄場へ運搬し、一括で洗浄した後、再び各会場やロケーションへ戻すという循環型のカップ利用システムを実現しました。現在までに複数回実施しており、持続可能な取り組みとして進めています。
単に洗浄するだけでなく、リユースやSDGsといった文脈、あるいは衛生面などをキーワードにして、ホテルの食器洗浄にとどまらずに私たちの業務が広がっている点が当社の強みです。こうした取り組みをマーケティング面で強化・活用しながら、新たな取引先の開拓につなげていきたいと考えています。
私たちの強み
水野:2つ目のキーワードは「時代変化への対応力」です。これは先ほども少し触れましたが、洗浄実績に対する認知についてです。最近の実例としては、「FOODEX JAPAN」や「ProWine Tokyo」が挙げられます。
今年3月に行われた「FOODEX JAPAN 2026」では、ワインを召し上がるコーナーがありました。その場にはさまざまなタイプのワイングラスが用意されていましたが、必要な数をすべて準備すると膨大な数になるため、現場で洗浄を行う形式を採用しました。洗浄機メーカーに設置を依頼し、実際の洗浄は当社が担当する形式で毎年サポートしています。
「ProWine Tokyo」は、世界的に展開されている「ProWine」というイベントの東京版です。これまでも何度か開催されており、今年は4月15日から17日に実施されます。完全にワインに特化したイベントで、各国のブースがバイヤーに向けてワインをアピールする場となっています。
テイスティングセミナーも実施されており、セミナーが終わると大量のグラスが一気に回収されます。このグラスを迅速にバックヤードで洗浄する業務を、東京ビックサイトにて当社が引き受けています。
この取り組みは、洗浄機メーカーから「洗浄するなら、長年の実績をもとにセントラルサービスシステムと一緒にやるのがよいのではないか」とお声がかかり、スタートしました。実際に進めてみると、洗浄方法だけでなく、手順や段取り、機材の運用方法など細部まで工夫が求められました。
これらの工夫についても「長年の経験があるのですね」と高い評価をいただき、毎年継続的にお仕事を任せていただいています。単なる洗浄業務ではなく、このような出張型のニーズに応じたサービスも広がっています。
スライド右側は、外資系ホテルのオープンが増える中で、洗浄にとどまらない衛生基準への対応が求められている点についてです。外資系ホテルではそれぞれに独自の衛生基準が設けられており、HACCP(ハサップ)などに適応する必要があります。
当社グループでは、フードサービス事業を担うセンダンを通じて調理関連のノウハウを共有しています。HACCPなどの基準についても社員は研修を受け、知識を深めています。また、外部からの要望があれば、センダンが衛生やHACCPに関するコンサルティングや教育を提供することも可能です。
こうしたバックグラウンドを活かし、グループ全体で衛生に関する知見や従業員のスキルを共有・向上させています。この点で、フードサービス事業がグループ内にあることは当社の強みの1つであり、さらに活用していきたいと考えています。
最近では病院からの食器洗浄に関する要望も増えており、こうした分野へのアピールをさらに強化していきたいと思っています。
私たちの強み
水野:3つ目のキーワードは「参入障壁」で、圧倒的な実績蓄積に基づく教育指導を行っています。
私たちは当事業に40年来取り組んできており、さまざまなノウハウを蓄積しています。洗浄作業やその手順に関するノウハウも同様で、食洗機が進歩を続ける中、さまざまなメーカーやタイプの機器に対応しています。
また、ホテルのバックヤードは迷宮のように道が入り組んでいたり、スペースが狭かったりと、大変な環境です。そうした場所で、戻ってきたお皿を効率よく洗い、どこに一時的に置くか、どのように仕分けしながら作業を進めるかについても、私たちはこれまで多数の経験を通じて知恵を培ってきました。
あるいは、残念ながら「お皿を割ってしまった」「このようにしていたから山が崩れてしまった」といった事故の経験もあります。40年前は非常にアナログな状況でしたが、それらの事故報告や対処法などを長年にわたり蓄積してきました。
これらの情報は、今までは研修の一環として、ベテランが事例をもとに説明するかたちで行ってきました。しかし、時代の流れに伴い、蓄積されたナレッジをAIに学習させることで、若い世代や今の時代において重要な点を目利きできるようになってきています。
長年の実績を持つベテランのスキルや知見はもちろん大変重要です。それに基づいた巡回や指導を行うと同時に、新しい人たちが自らナレッジベースにアクセスできる仕組みも時代的には可能であると考え、まだまだ試行錯誤の段階ではありますが、さまざまな研究を進めて取り組んでいるところです。
以上が、当社が40年以上にわたり、主にスチュワード事業を強みとして取り組んできた内容です。
今後の展望:中期経営計画
水野:今後の展望として、これからどのように成長していくのかについてご説明します。
当社の決算期は9月で、現行の中期経営計画は2年目を迎えています。これまでは、オーガニック成長を基盤とした3つの既存セグメントで成長を進めてきました。本中計では、スライドのグラフで黄色く積み上げている部分を「X-value」と呼び、新しい価値と既存事業の融合による共創を推進するかたちで、3ヶ年計画を策定しています。
大きなポイントは、既存事業を堅実に進展させながら新しい価値を加えていくことです。これを具体的にマーケットや株主・投資家のみなさまに示しながらPERを押し上げ、それが結果的にPBRに反映されるような推進力を与えたいと考えています。
また現状において、スチュワード事業とフードサービス事業は、非常に労働集約的で人間力を基盤とした業務が中心となっています。そのため、広義の資本コストを低減する取り組みとして、サステナビリティや人的資本への投資を進めることでリスクを軽減します。
それによりROEを向上させ、ひいてはPBRへの貢献を図るアプローチを進めています。
今後の展望
水野:具体的な取り組みとして進めていることの1つが、自動化です。すでに発表していますが、自動調理ロボットを開発しているTechMagic社と戦略的パートナーシップを締結し、共同で取り組みを進めています。
ポイントは2つあります。1つ目は、調理ロボットそのものです。当社も調理を行っていますので、この分野でおもしろいことができるのではないかと考えています。
スライド中央上段の写真にあるように、実際に大阪・関西万博の会場内で当社が調理サポートを受託しているキッチンにおいて、TechMagic社が提供する調理ロボットが導入されました。これらを一緒に活用しながら、生産性向上に向けた取り組みを進めています。
2つ目のポイントは、TechMagic社が取り組んでいる、調理工程全体を自動化するロボットの開発についてです。
現時点で当社は、食器の洗浄や管理に関してかなりの部分を人力で対応しています。こちらに対して自動化や最新のAI技術を活用することで、生産性を高められるのではないかと考えています。実用化にはまだ時間がかかると見ていますが、彼らとのコミュニケーションを通じて、こうした取り組みを進めています。
スライド右側に記載の、バックオフィスサポートのAI化についてです。当社グループは8社で構成されており、先ほど述べた3つのセグメントで事業会社が構成されていますが、これらを全体的にサポートするBPO会社が1社あります。
この事務部門の会社は独立しており、社外の業務も一部受けています。具体的には、経理・総務・IT・労務・HR・人事といった業務を統合し、1つのシェアードサービス事業として担っています。現場と連携しながらあらゆる業務を統括しているため、多岐にわたる問い合わせが寄せられる状況です。
新しい責任者や新人の方が現場に加わると、さまざまな不明点が生じ、問い合わせ件数が増加します。これらの問い合わせに対して、コールセンターで一般的に行われているような方法を参考にしながら、当社でもなるべく簡潔でわかりやすい情報整理を進めています。
加えて、AIや最新テクノロジーを活用することで自動応答をより円滑にし、どのように見せれば全体が理解しやすいかを工夫しながら提案しています。また、AIやテクノロジーを駆使することで、全体の販管費を削減しつつ事務処理効率を向上させる取り組みを進めています。
今後の展望
水野:ヘルスケア・医療分野における取り組みについてご説明します。最近は、病院における食器洗浄のニーズが非常に増加しています。
病院も経営が難しい状態であるという話を多くうかがいます。人件費が上昇している中でも、患者は必ず食事を召し上がります。一方で、食材費やエネルギーコストの上昇によって給食会社の経営が難しくなり、値上げや撤退といった話も出ています。このような状況下で、病院側も対応に非常に悩まれています。
1つの流れとして、病院には管理栄養士がいるため、調理部分は院内で行います。ただし、患者が食事後に利用した食器やトレーの洗浄を管理栄養士や医療従事者が担当することは、現実的ではありません。そこで、この部分だけをサポートしてほしいという引き合いが全国各地から増えています。
特に、病院は系列でネットワーク化されている場合も多く、事務方同士で情報交換をする中でお問い合わせいただくことが増えています。このような背景から、こうしたご要望には前向きに対応しています。
先ほど少し触れたように、病院はホテルとは異なる衛生基準が設定されており、ある部分では非常に厳しい衛生基準が求められます。そのため、こうした基準に対応する中で私たち自身もサービスレベルを向上させ、全体としての底上げを図るべく取り組んでいます。
フードサービス事業についても、ヘルスケアや高齢者住宅といった給食マーケットでのサポートに関するお話を多くいただいています。この分野の引き合いが増えて市場が広がりつつあり、1件ずつ着実に実績を増やしています。
今後の展望
水野:インフラ対応に関して、提携やM&Aによる価値・規模の拡大、設備維持、老朽化リノベーションのニーズについてご説明します。
ホテルにおける洗浄作業を例に挙げると、単に食器洗浄だけでなく、清掃を含めたさまざまな洗浄作業や全体の施設管理の視点から、お客さまの手が回らない部分について「ここまでできるのであれば対応してもらえないか」というご要望が多く寄せられています。
こちらに対しては、当社で対応可能な業務だけでなく、M&Aや提携によって業務の幅を広げる取り組みを進めています。スライドでいくつか例を示しており、上段は食器洗浄に関わる工程を、下段はその他の業務の一例を示しています。
下段左側から、厨房の床の衛生状態を保つための床清掃業務、油を外に出さないようにトラップで仕分け、すくい上げて処分するためのグリストラップ清掃業務、ご家庭の換気扇にあたる大型フードに付着した油の清掃業務、排水溝などのドレイン清掃業務です。
これらは一例ですが、こうした周辺業務に対するご要望を多くいただいています。ご要望に応えるため、さまざまなスキルを持つ会社と提携しながら、ホテルへの提供価値の拡大を進めています。
今後の展望
水野:今後の展望として、世界経済発展への寄与を大きく掲げています。現状、当社の業務は国内向けがほとんどです。音響機器においては輸入業務を行っていますが、それもごく一部であり、スチュワード事業やフードサービス事業は国内中心で運営しています。
ただし、働き手の外国籍比率が増えており、現時点では従業員約7,000名のうち13パーセントほどが外国籍です。
将来的には、パートタイマーに限らず、管理職や幹部としてホテルと適切にコミュニケーションを取り、現場をしっかり管理・マネジメントできる人材を育成する必要があると考えています。多様な価値観を取り入れる意味でも、バランスの取れた組織が求められます。このため、ホスピタリティ系の大学を卒業された外国籍の方の採用も進めています。
スライド下段の写真に白いユニフォームを着た7名が写っていますが、昨年5月に総合職としてネパールから6名、インドから1名が入社しました。私たちも現地に赴き、面接などを経て7名を採用しました。現在は研修期間を終え、日本語を勉強しながら現場でさまざまなことを学んでいます。このように、外国人キャリア人材の採用を進めています。
また、スライド右側の書類は、アルバイト向けのジョブカード(職業能力証明シート)です。これは、私たちの現場でアルバイトとして働き、スキルを身につけた方に対して、その方が日本の文化や仕事に対するスタンス、基本的な所作をどれほど理解しているかを評価し、証明する取り組みの一部です。
職務経歴書や履歴書だけではわかりにくい外国籍の方による日本文化や風土の理解度を客観的に示し、キャリアを後押しする目的で導入しています。このようなインフラが広がることは良いことだと考えています。
現在は国内向け業務が中心ですが、私たちのもとでスキルや経験を積まれた方がホテル・観光業界の要職に就いたり、母国に帰って成功したりすることで、新たな仕事上の接点が生まれ、グローバルな業務の展開につながることも期待しています。そのためにも、彼らのキャリアやスキルアップに関わる取り組みを進めています。
以上が、今後の展望として、現在私たちが主に力を入れて取り組んでいる内容です。
質疑応答:インバウンド増加が事業に与える影響について
向井沙耶氏(以下、向井):「今後はインバウンドがさらに増えると予想されていますが、御社の事業はホテルの稼働率上昇からどの程度恩恵を受けるビジネスモデルでしょうか?」というご質問です。
水野:インバウンドが増えると、当社事業にどのような影響が出るかというご質問だと認識しています。ここ数年はまさにインバウンド需要が大変活況であり、業界全体の状態が非常によかったと思います。それに伴ってホテル業界も大変業績が良く、その結果として私たちも大きな影響を受けました。
当社は単年度で契約を改定するため、パートやアルバイトの方々の賃金や最低賃金が毎年10月に上がることの反映や、エネルギーコストなどの交渉を毎年行います。その際、ホテルの経営状態が良いことは、私たちにとってもコミュニケーションがしやすいという点で非常に大きな影響を与えます。
インバウンドが増えてホテルの稼働率が上がることにより、業績に直接的な影響があるのは、3セグメントのうちフードサービス事業のみです。同事業ではホテル朝食の受託を行っているため、海外からの宿泊者が増えればホテル内での食事利用が増え、その分だけ売上が増加します。
一方で、当社売上の約半分を占めるスチュワード事業は、インバウンドの増加やホテル稼働率の上昇が直接的に業務の増加につながるわけではありません。もちろん、レストランでの食事利用が増えれば洗う食器の量も増えますが、経営全般に大きなインパクトを与えるほどではない状況です。
しかし全体として、インバウンドの増加は当社に好影響を与えることに違いありません。
質疑応答:今後の成長戦略における優先度について
向井:「今後の成長戦略として、既存ホテルとの取引拡大と新規ホテルの開拓・獲得のどちらがより重要になりますか?」というご質問です。
水野:どちらも重要ですが、先ほど触れたように、現在は食器洗浄以外のマーケットにも広がりを見せています。
当社がホテルや観光業の中で40年間取り組んできた食器洗浄は、非常に大型でゴージャスなホテルや宴会場を多く持つ施設に特化していました。そのため、ホテル全体の事業に対して、私たちが担っている部分は一部と言えば一部です。
しかし現在は、ホテルの環境の変化による業務範囲拡大のご要望や、ホテルだけでなく他業界からも洗浄や衛生の引き合いをいただいており、当社のマーケットが広がっています。これにより、ホテルにおいては新規案件も既存案件もどちらも重要となっています。
ホテルについては、新規開業に伴う計画が来年や再来年に向けて進んでいます。私たちもそれに応じた営業活動を行いながら、開業をともに立ち上げていくかたちで計画に取り組んでいます。
一方で、ホテルとのお仕事においては、人とのつながりが非常に重要です。その中でコミュニケーションを深め、「ここをお手伝いしましょうか?」というかたちで広がっていくケースも多くあります。
向井:口コミのようなかたちで広がることも多いのでしょうか?
水野:おっしゃるとおりです。例えば私たちは厨房に関わることが多いため、総料理長などと比較的強い関係性があります。彼らはキャリアを積む中で、別の新しいホテルに移ることがよくあります。ゼネラルマネージャー(総支配人)も同様に、キャリアアップのために移ることが多いです。
その際に「大変お世話になったので、次もお願いするよ」「入札で見積もりを出してくれないか」といったお声がけをいただくことが非常に多いです。このように、日常の業務を通じてさまざまな方と人間関係を築きながら、営業活動を続けています。
質疑応答:中長期的な売上成長ファクターについて
向井:「ホテルや観光業界の回復は追い風だと思いますが、御社の中長期的な売上成長を最も牽引する事業はどの分野だと考えていますか?」というご質問です。
水野:既存の3セグメントにこだわるのではなく、先ほどご紹介した「X-value」という取り組みにより、新しい価値の創造をホールディングス主導で進めています。
アセットとしては、ホテルや観光業のお客さまが最も重要であることに変わりはありません。目の前の課題としては、洗浄や衛生が当社の強みを発揮できる、最もわかりやすいポイントだと思っています。
ただし、今後の成長においては、衛生や洗浄を基盤に広げていきたいと考えています。具体的には、清掃をはじめ、ホテルやファシリティ全体の維持・管理において当社が提供できる価値を広げていくこと、さらには空間セグメントに関する仕事もあります。
ホテルに限らず、テーマパークや病院、さらには街作りといった広範な分野への展開を視野に入れ、私たちのフィールドを広げていきたいと考えています。
質疑応答:キャピタルアロケーション戦略について
関本:M&Aや事業範囲の拡大が非常に重要であるとうかがいました。M&Aや株主還元、その他の成長投資など、キャピタルアロケーションや資金の使い方について議論されていることはありますか?
水野:社外取締役を含め、社内で執行を担う者たちとも、いろいろなかたちで議論しています。特に議論のポイントとなっているのは、バランスです。
今回のタイトルでも触れていますが、成長戦略としてのM&Aに加え、当社では人的投資が重要です。これはP/Lにも関わりますので、最終利益のバランスや利益剰余金・配当などをどのように管理するかなどを戦略的に考えています。
その中で、ROE15パーセント以上の達成という目標を掲げています。それぞれのステークホルダーのみなさまにご満足いただけるかたちで進められるように議論しています。
関本:現時点ではROE15パーセントを目標とされていますが、直近では20パーセントを超えている状況ですよね。十分達成できているということでしょうか?
水野:ご認識のとおりです。
質疑応答:2027年9月期に向けた進捗状況と課題について
関本:2027年9月期に向けた現在の進捗状況についてうかがいます。業績は非常に好調であるように思われますが、この点についてどのようにお考えでしょうか?
水野:進捗は計画に対して堅調に推移していると考えています。ただし、新しい価値をどのように創出するのか、既存事業を基盤にした提供価値の拡大方法や、社会のアセットと連携した提供価値の拡大方法については課題が残っています。
M&Aを含め、私たちが持ち得ないものを組み合わせて社会と連携することで新たな価値を創出する点について、具体的にお示しできていない部分があるため、それを急いで示す必要があります。これが現在喫緊かつ課題です。
みなさまへのメッセージ
水野:ご清聴ありがとうございます。私たちは、企業価値をどのように受け止めていただけるかについて最も注力しています。
最近、フィスコがバリュエーションレポートを発表され、今後1年の私たちの目標株価を1,566円と示してくださいました。現在の株価は1,000円を下回る水準ですが、私たちとしてはこのレポートに示された目標株価を早急に達成したいと考えています。
そして、次なる目標として時価総額100億円を掲げています。現在は約50億円規模ですので、その倍となります。株価に換算すると約2,000円ですが、まずはこの水準をクリアすることが重要です。株価は結果ではありますが、その結果に見合う企業価値をみなさまに示していきたいと考えています。
最終的に当社の歴史を振り返ると、これまでに複数回の株式分割を行っていますが、それを調整すると、上場2年目に最高株価3,375円を記録しています。これを高い目標として掲げ、みなさまに当社の成長余力をどこまで評価いただけるかを中心に、積極的にコミュニケーションを図り、アピールしていきたいと考えています。
今後もこのご縁を大切に、引き続きご注目いただき、応援していただければ幸いです。今後ともよろしくお願いします。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:国内においてホテルがますます増加していますが、新規で受け入れるキャパシティはどのくらいあるのでしょうか?
回答:受託開業に準じて人材の採用・育成を進めていますのでキャパシティという考え方はありません。順次計画的に進めていきます。
<質問2>
質問:インバウンドが一巡した場合の業績に与える影響度合いはどうなるとお考えですか?
回答:当社の主力であるスチュワード事業は宴会場を備え持つ大型のラグジュアリーホテルが顧客群となっています。インバウンド観光需要とはお客さまの層が必ずしも一致しておらず、その影響は限定的と考えています。
フードサービス事業のセグメントはホテル朝食の受託をしていますので、宿泊・喫食需要が冷え込めば影響を受けます。とは言えインバウンドのみで需要が成立しているわけではありません。先だっての中国からの渡航者の減少に対して、大きな影響が出たホテルさまもありましたが、当社事業に対する影響は軽微でした。
<質問3>
質問:一流ホテルのバックヤード業務を担うニッチトップとのことですが、他社が参入しにくい理由や競争優位はどこにあるのでしょうか?
回答:40年来の経験と実績によって、ホテルが必要とするアクションを先読みすることができることです。食器を洗浄するのみならず、ホテルの料飲・厨房・宴会をトータルに支えて品質を上げることに寄与しているところが差別化のポイントです。
<質問4>
質問:国内外のラグジュアリーホテルと取引されている点は強みだと思いますが、こうした顧客基盤はどのように新規案件獲得に繋がっているのでしょうか?
回答:業界の中での評判が大きいです。さらに業界においては、さまざまなホテルを転じながらキャリアアップされる方が多く、そういった方が行く先々で当社をご指名いただくことも多々あります。