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ローランド Research Memo(8):リスク対応フェーズを経て、需要創造強化フェーズへ(1)

■中期経営計画

ローランドは、2026年2月に中期経営計画(2026年12月期~2028年12月期)を公表した。「次世代のユーザーと共に新たな音楽文化を創出し、音楽の未来を切り開く」を実現したい未来とし、リスク対応フェーズを経て未来志向の施策を加速し、電子楽器の需要創造と体験価値(CX)向上への集中投資を通じて、持続的成長が可能な高収益企業へのトランスフォーメーションを推進する。また、前中期経営計画で進めてきたデータ利活用や経営基盤整備などの投資成果を具現化し、成長へ結び付ける段階に入る。同社を取り巻く事業機会としては、膨大な潜在顧客層の存在、Technologyの進化、電子楽器化の拡大、新興国需要の拡大が挙げられる。これらの機会を取り込むため、3つの重点戦略であるDirect Connect、Innovation、新興国販売拡大を推進する。この戦略成果として、業界を上回る売上成長、利益率向上、体験価値提供企業への進化を目指す。

2028年12月期に売上高1,200億円、営業利益144億円、親会社株主に帰属する当期純利益102億円、ROIC18%以上、ROE20%以上を業績目標として掲げており、前中期経営計画で構築した基盤を生かし、攻めの経営へと舵を切る姿勢が明確化されている。成長と収益性の両立による中長期的な業績飛躍が期待できると弊社では見ている。

中期経営計画におけるキャピタルアロケーション方針では、配当と借入返済を中心に資金配分を行い、M&A等の追加投資機会には機動的に対応するとしている。キャッシュ創出は戦略投資による収益拡大、棚卸資産回転期間改善によるCCC※短縮、不稼働資産圧縮により実現する。資金は新製品開発に伴う金型投資、直営店増設、新本社建設費用等の借入返済へ配分する。また、株主還元は配当を基本とし、2026年12月期から2028年12月期の3ヶ年累計で連結総還元性向50%を目指す。成長投資資金留保が必要な場合もDOE5.0%を下限目標とする。なお、自己株式取得は剰余キャッシュが計画を大幅に上回る場合に株価状況を踏まえて検討する。同社では、営業キャッシュ・フローをキャピタルアロケーション方針に基づき適切に配分しており、利益の蓄積に伴って財務基盤も強化されると弊社では見ている。

※ CCC(Cash Conversion Cycle)は、原材料や商品の仕入れから商品の販売、最終的な現金回収までにかかる日数を示す財務指標。

1. 前中期経営計画の振り返り
前中期経営計画期間中(2023年12月期~2025年12月期)の事業環境は、当初想定を大きく下回る厳しいものであった。コロナ後の世界楽器市場の正常化は中期経営計画立案時の見通しよりも遅延し、コロナ需要の反動減が長期化したことにより供給過剰が発生、Dealer在庫調整が継続した結果、セルインが停滞した。また、中国では教育政策転換及びマクロ経済減速の影響を受け、それまで高成長を続けていた市場が縮小に転じた。さらに、反転を期した2025年には米国関税政策の大幅な転換による混乱が発生し、外部環境の不確実性が一段と高まった。前中期経営計画立案時には、2023年以降は巡航速度の成長へ回帰すると想定していたが、実際の市場は2023年から2025年にかけてマイナス成長が継続した。需要回復の遅れと政策要因が重なり、想定との乖離が拡大した形である。

数値計画面では、中期経営計画初年度より大きな環境変化に対応するため、「守り」と「厳選した投資」へ戦略を転換した。売上高及び営業利益については、厳しい市場環境下においても環境変化の影響を最小限にとどめ、業界内では善戦したと評価できる。一方、2025年12月期は米国関税政策の影響が重なり、DW社が買収当初の計画を大きく下回ったことから減損損失を計上した。外部環境変化がM&A戦略にも影響を及ぼした点は重く受け止める必要がある。

基本戦略のレビューでは、新製品販売比率が未達となったが、これは競争優位性強化を目的に新製品ロードマップを見直した結果、投入タイミングや構成の調整が生じたことが背景にある。また、コストコントロールを強化したことによりRoland Retailの進捗が遅延し、シェア拡大も想定どおりには進まなかった。Cloud-ready製品比率は着実に高まったものの、サービス分野の展開には進捗の遅れが見られた。ただし、中長期成長に向けた経営基盤強化は順調に進捗しており、次期中期経営計画に向けた土台は構築されたと弊社では評価している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)

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