■アイルの成長戦略
1. 中期経営計画(ローリングプラン)
同社は中期経営計画について、事業環境の変化に応じて随時計画を見直すローリングプランを採用している。2025年9月に策定した3ヶ年計画(2026年7月期~2028年7月期)では、2028年7月期の計画を売上高24,300百万円、売上総利益13,850百万円、売上総利益率57.0%、営業利益6,312百万円、営業利益率26.0%、親会社株主に帰属する当期純利益4,334百万円としている。なお本計画の初年度である2026年7月期の利益予想を上方修正し、2027年7月期以降の計画についても、合理的な算出ができ次第、更新予定としている。
同社はこれまで、独自のCROSS-OVER戦略によって競争優位性を確立するとともに、長期的視線での収穫逓増型事業モデルによって信頼とノウハウを積み上げ、グループの成長を推進してきた。そして昨今のAI技術の急速な変化など同社を取り巻く事業環境が変革期を迎えていると認識し、この変化を次の成長への好機と捉え、これまでの強みをさらに昇華させて将来にわたる企業価値の最大化を実現するべく、新たな将来ビジョン(目指す姿)を「“産業プラットフォーマー”としてサプライチェーンの再構築を進め、ユーザーの企業力をアップさせる」とした。顧客のサプライチェーン全体の再構築を主導し、卸売・製造・物流・小売から金融・人材に至るまで、多様な業種をシステム連携にととまらず有機的に結合させることを目指す。その共創ネットワーク(生態系)の中枢を同社グループが担い、顧客企業及びパートナー企業の企業力向上に貢献するという考え方である。
「産業プラットフォーマー」の実現に向けて、これまでのCROSS-OVER戦略をはじめとした「線」のビジネスから「面」のビジネスへと進化させるべく、重点施策としてデータの「蓄積」から「活用」による新たなビジネスモデルの確立、3つのテーマ(人材、R&D、社内の仕組み)を軸にした構造改革を推進する。具体的戦略として人材面ではAI人材の育成、基幹データを用いたデータ分析やコンサルティング力を兼ね備えた人材の育成、継続的な採用活動、1人当たり生産高の向上など、R&Dでは主力製品のアップデート及び他システムとの連携加速、AIを取り入れた効率的な開発手法の確立、AIを活用した製品・サービスによる「基幹×AI」の実現など、社内の仕組みでは迅速な経営判断を可能にする社内システムの刷新・統合、AIツールの積極的な社内導入と活用、社内ノウハウを共有・活用できる社内システム・データベースの再構築などを推進する。年間人材採用数は新卒65名前後、キャリア採用25名前後を想定している。
このような考え方の下、本計画期間である2026年7月期~2028年7月期を成長投資加速期と位置付け、将来の非連続な成長を実現するための事業基盤・経営基盤を構築する期間とした。このため、本計画期間中は従来に比べてCAGRが一時的に鈍化することを想定しているが、新たなビジネスモデルの確立や社内の構造改革を推進することにより、中長期的に新たな成長曲線を描いて成長を加速させ、ストック売上総利益の販管費カバー率を100%とすることによって営業利益率30%の達成を目指す。
なお同社は、現状の株主資本コストを9.2%程度(2021年7月期~2025年7月期の平均)と認識している。ROE(自己資本利益率)はおおむね30%前後(2025年7月期33.3%)と株主資本コストを大幅に上回る水準で推移し、情報・通信業平均を上回るパフォーマンスを出している。PBR(株価純資産倍率)はおおむね7倍前後と情報・通信業平均を上回る水準で推移しており、市場からも一定の評価を得られている。また同社は、海外投資家比率の上昇や海外投資家との取材増加を受けて英文開示資料の充実を図っている。こうした取り組みも評価され、2025年6月にはFTSE RusselのESGインデックス「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」構成銘柄に選定された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)