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中東紛争1カ月半のドル円【フィスコ・コラム】

中東紛争に突入して1カ月半。ドル・円は有事のドル買いと為替介入への警戒で一進一退ですが、欧州やオセアニアの主要通貨はドル、円に対して小高く推移しています。中東情勢の不透明感が払拭されないなか、円は日本売りの一環として弱含んでいるようです。

ドル・円は米国・イスラエルのイランに対する軍事攻撃後、3月2日の155円90銭付近から有事のドル買いで強含み、160円を目指す展開に。3月末に160円台半ばまで上昇する場面もありましたが、その後は同水準をおおむね下回って推移。それに対し、ユーロ・ドルは3月13日の1.1410ドルを下値に持ち直しました。ユーロ・円は181円80銭台に失速後は切り返し、足元は187円台で過去最高値を更新中です。

背景にあるのは、いわゆる「有事のドル買い」の質の変化。地政学リスクの高まりはドルを全面的に押し上げ、主要通貨に対しても一方的な上昇圧力をもたらします。確かに、ドルは需要が顕在化したものの、4月以降はユーロや豪ドルなどに対し上値の重さが目立ち、ドルインデックスは失速。市場参加者の間では、リスク回避の資金がドルだけでなく、他の主要通貨にも分散している構図が意識されています。

もう一つは、米金利の方向感の乏しさです。中東情勢の緊迫化は原油価格の押し上げ要因となり、インフレ再燃への警戒を通じて米長期金利の上昇圧力として作用しました。ただ、同時に景気減速懸念もくすぶり、金利は一方向に傾きません。結果として、金利差拡大を手掛かりとしたドル買いは限定的となり、他の主要通貨に対する優位性も不明瞭に。ドルは「安全資産」としての買いは入るものの、「金利通貨」としての魅力は乏しいのでしょう。

同様に、円もリスク回避の買いは抑制的です。日本の長期金利は上昇傾向にあるものの、海外に比べれば依然として低水準にとどまり、資金の還流を促すには至っていません。株価は総じて堅調ながら、日本経済に対する構造的な弱さが露呈し、「日本売りに近い」(短期筋)との見方も。当局による為替介入への警戒が強まる局面では円売りは縮小するものの、全般的に下落基調は変わりません。

対照的にユーロや豪ドルが底堅さを増しています。欧州ではエネルギー価格の上昇が経済に与える影響が懸念される半面、金融引き締め姿勢の維持が、通貨の下支え要因に。また、豪ドルは物価高を背景に追加的な金融引き締めが期待され、買いが入りやすい地合いが継続。結果として、ドルと円の双方に対して相対的に強含む展開が続いています。ドル・円の膠着状態には、そうした背景がありそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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