三井金属は、機能材料事業と金属事業を主力とする総合素材メーカーである。2025年10月1日付で「三井金属鉱業株式会社」から「三井金属株式会社」へ社名を変更し、150年を超える歴史を持つ企業が新たなスタートを切った。
同社は「マテリアルの知恵で“未来”に貢献する、事業創発カンパニー。」というビジョンのもと、社会的価値と経済的価値の両立を目指す統合思考経営を推進している。事業ポートフォリオの動的管理により、機能材料事業本部と事業創造本部に経営資源を集中する戦略を採用している。2025年4月には組織改編を実施し、モビリティ事業本部を廃止。三井金属アクトの株式を2025年11月に譲渡するなど、事業ポートフォリオの変革を加速させた。
主力の機能材料事業では、AI サーバー向け銅箔(VSP)や IC パッケージ基板向けマイクロシン(極薄銅箔)でグローバルシェア約98%を誇り、特に台湾の顧客向けに強い競争力を持つ。台湾に VSPの主力工場があり、AI サーバー向けでは台湾系の基板メーカーが主要顧客となっている。金属事業では、亜鉛・鉛・銅の高度なリサイクルネットワークを構築し、産業基盤を支える重要な役割を担っている。
近年設置された事業創造本部は、グループ全体では「探索」機能を担う位置づけであり、研究開発と市場共創を軸に事業機会の探索・創出を継続的に推進中である。カーボンニュートラル社会、循環型社会、自然共生社会の実現に向けた新規事業創出に注力している。
2026年3月期第3四半期累計の業績は、売上高5,422億円(前年同期比3.1%増)、営業利益717億円(同27.6%増)、経常利益745億円(同26.1%増)と大幅な増益を達成した。
好調の主因は機能材料セグメントで、銅箔事業が AI サーバー等のハイエンドサーバー市場向けに VSP と極薄銅箔の販売が堅調に推移したことが挙げられる。機能材料セグメント全体では売上高2,336億円(前年同期比25.7%増)、経常利益が448億円(前年同期比42.6%増)と大きく伸長した。金属セグメントも、金属価格や貴金属価格の上昇、円安効果により在庫要因が好転し、売上高2,550億円(同8.6%増)経常利益は386億円(同11.8%増)となった。金属価格の上昇が利益を大きく押し上げた要因となっている。
通期予想については、2026年2月13日に2026年3月期では2度目の上方修正を実施。売上高7,500億円(前回予想比350億円増)、営業利益1,170億円(同390億円増)、経常利益1,200億円(同430億円増)、親会社株主に帰属する当期純利益770億円(同340億円増)と、いずれも過去最高を見込んでいる。上方修正後の通期予想に対するリスク要因については、現時点で大きなリスクはなく、銅箔をはじめとした事業環境に大きな変化はない。AI サーバー向けハイエンドユーザー需要は、顧客との対話を踏まえると、来年以降も引き続き順調に推移し、ある程度成長していくと見ている。
同社は2025年度から2027年度を対象とする中期経営計画「25中計」において、全社 ROE 14%、ROIC 14%(2030年度)を目標に掲げている。事業別 WACC とハードルレートを導入し、ポートフォリオマネジメントを強化。機能材料事業では ROIC 30%(2030年度)を目指し、金属事業は安定した収益源として ROIC 7%以上を維持する方針である。同社としてはROE も目標としているが、社内的には ROIC を重視した経営を推進している。こうした基準に依拠しつつ、25中計では、前中計の約2.5倍の成長投資を実行する計画である。
株主還元については、DOE3.5%を目途とした安定配当を基本方針としている。2026年3月期の年間配当は240円(前期比60円増)を予定しており、中間配当100円を既に実施した。
財務レバレッジについては、自己資本比率が50%を超え、長年の課題であった財務体質が大幅に改善された。今後は現状の財務健全性を維持しつつ成長投資と還元を両立させていく方針である。同社の展開に注目したい。