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飯野海運、海運市況軟化で減益も予想上回る結果に 期末配当は4円増額、新中計では資本効率を重視した成長投資を加速

目次

大谷祐介氏:みなさま、こんにちは。飯野海運株式会社代表取締役社長の大谷祐介です。本日はご多忙の中、2025年度通期決算・新中期経営計画説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日は、2025年度通期決算の概要、2026年度の通期業績予想ならびに市況の見通しをご説明します。その後、前中期経営計画の振り返りおよび新中期経営計画「Transformation for a Sustainable Future」についてご説明します。

決算ハイライト

はじめに、2025年度通期決算の実績についてご説明します。2025年度通期の実績は、売上高が1,273億円、営業利益が134億4,000万円、経常利益が168億9,000万円、純利益が153億9,000万円となり、前年同期比で減収減益となりました。

前年同期比での主な減益要因の詳細は次のスライドでご説明しますが、ケミカルタンカー市況の軟化やホルムズ海峡の事実上の閉鎖の影響によるものです。

経常利益段階では為替差益や持分法投資利益を計上し、純利益段階では船舶の売却益などを計上しましたが、純利益は約153億円と、前年同期比で29億8,000万円の減益となりました。2026年度の業績見通しと配当予想については、後ほど詳細をご説明します。

営業利益の内訳(2024年度 vs 2025年度)

スライドは、セグメント別営業利益の前年との差額を示しています。全体として、2025年度の営業利益は約134億円となり、前年同期比で約37億円減益となりました。

減益の主な要因は、ケミカルタンカーの収益悪化によるもので、中国経済の低迷をはじめとする世界経済の不透明さを背景に、市況が前年より軟化しました。

加えて、今年2月末に発生したアメリカとイスラエルによるイラン攻撃を受け、3月にはホルムズ海峡が事実上封鎖されました。この影響で、当社ケミカルタンカーの主力エリアである中東域への配船に制約が生じた結果、配船変更に伴う燃料費などの費用が大幅に増加し、減益となりました。

以上が、2025年度通期の決算概要です。

2026年度通期業績予想

続いて、2026年度の通期業績見通しについてご説明します。2026年度通期の業績は、売上高1,290億円、営業利益91億円、経常利益67億円、純利益121億円を予想しており、2025年度通期と比べて増収減益を見込んでいます。

業績予想の前提として、足元のホルムズ海峡封鎖については、今年6月中に往来が再開され、その後2ヶ月程度をかけて中東地域との海上輸送が従来の水準に回復する前提で策定しています。

大型ガス船の市況前提については、契約形態の変更により、運賃市況連動契約船が短期的な市況の影響を受けない中長期契約に変わったため、今回より非開示としています。

船隊に占めるスポット比率については、ケミカルタンカーのスポット比率が従来約30パーセント前後でしたが、中東情勢の影響による配船制限により、一時的な上昇を見込んでいます。

為替の前提は通期で150円としています。為替が1円変動した場合、経常利益への影響額は1年間で1億9,500万円です。円安に振れた場合は利益にプラスの影響、円高に推移した場合は利益にマイナスの影響が生じます。

営業利益の内訳(2025年度実績 vs 2026年度予想【5/8時点】)

スライドは、セグメント別の営業利益の前年度との差額を示したもので、約43億円の減益を見込んでいます。

原油タンカーやドライバルク船、中小型ガス船では増益を見込む一方、ケミカルタンカーにおいては、中国経済の低迷による市況の軟化を見込むほか、中東情勢に伴う配船制約の影響を受け、約39億円の減益を見込んでいます。

中東情勢に伴う航路変更によりスポット運賃は上昇しており、当社としては米国をはじめとする他地域からのスポット貨物を積極的に取り込むなど、採算確保に努める予定ですが、急激な燃料費等の費用増加がスポット運賃に追いつかず、減益を見込んでいます。

大型ガス船では、新造エタン船2隻が稼働を開始し収益に貢献する一方、運賃市況連動契約船の契約形態の変更により、市況下振れリスクは解消されたものの、同時に上振れによる収益増加も見込まれなくなったため、昨年度比約8億円の減益を見込んでいます。

大型LPG船については、中東情勢の影響やパナマ運河の混雑などにより、足元の市況が一時的に急騰していますが、新造船の大量竣工予定やアンモニアなどの新規プロジェクトが遅延していることなどから、需給バランスが崩れる可能性があると予想しています。

固定契約に変更したことで市況上振れ分を取り込めず、一時的な減益要因となりますが、今後の安定収益に寄与するものと考えています。

このほか、不動産においても、イイノホールの工事に伴う不稼働や営繕費の増加による減益を見込んでいます。

減益の見通しではありますが、引き続き効率的な配船やコスト抑制に努め、収益改善を図りたいと考えています。

2026年度(2026年4月‐2027年3月)ケミカルタンカー市況の見通し

次は、海運・不動産の今後の市況予想についてご説明します。まずは、ケミカルタンカーの市況見通しについてです。2026年度のケミカルタンカー市況は、喜望峰経由による輸送距離の伸長など、市況の下支え要因はあるものの、中東情勢の不確実性が高く、先行きは不透明な状況です。

市況下支え要因としては、中東域に代わる輸送地からの新規需要が見込まれることや、喜望峰回りの輸送によるトンマイル増のほか、競合するプロダクトタンカーの市況が上昇しているため、プロダクトタンカーがケミカルタンカー市場に流入する可能性が限定的であることなどが挙げられます。

スライド右上のケミカルタンカースポット運賃インデックス推移は、全航路の平均を示しています。点線部分については、足元の中東情勢の影響で運賃が急騰しているように見えますが、中東積みの運賃は3月6日以降算出が停止されており、米国・欧州間など一部航路の運賃を反映した気配値であるため、必ずしも実態を正確に反映しているわけではありません。また、燃料費の高騰により、運賃の高騰がそのまま収益に反映されるわけではない点をご理解いただければと思います。

2026年度(2026年4月‐2027年3月)ドライバルク船市況の見通し

続いて、ドライバルク船についてご説明します。2025年度後半にかけて中大型船を中心に市況が上昇しましたが、2026年度においても堅調な荷動きなどを背景に市況は総じて堅調に推移すると予想しています。

船舶供給面では、新造船竣工量が前年を上回る見通しですが、老齢船のスクラップや環境規制対応による減速運航などにより、需給バランスを大きく崩すほどではないと予想しています。

ホルムズ海峡封鎖の影響については、全体的な市況への影響は限定的と考えていますが、今後燃料価格の上昇や供給不安が継続する場合は、電力燃料としての石炭需要が増加し、市況にプラスの影響を与える可能性も考えられます。

ケミカルタンカー・ドライバルク船の市況については、毎月中旬に当社のホームページに最新情報を掲載していますので、ぜひご覧ください。

2026年度(2026年4月‐2027年3月)国内(東京都心)オフィス市況の見通し

続いて、不動産業については、東京都心のオフィスビル市況の見通しをご説明します。足元の都心のオフィスビル賃貸市況は、2026年度に一定の新規供給量はあるものの、堅調に推移すると予想しています。当社保有のオフィスビルはほぼ満床で、空室率はマーケット全体と比べても低水準で推移しています。

株主還元策(配当)

2025年度の株主還元策についてご説明します。前中期経営計画では、当初配当性向を30パーセントとしていましたが、計画最終年度の2026年3月期には40パーセントに引き上げました。

当期の業績が2月5日時点の予想を上回ったことから、期末配当は4円増額の1株当たり35円、年間配当額は59円を予定しています。なお、今年度以降の株主還元については、後ほどご説明する新中期経営計画の中でお話しします。

以上、株主還元を含む2025年度の業績実績と2026年度の見通しならびに市況予想についてご説明しました。

前中期経営計画概要

新たな中期経営計画についてご説明する前に、前中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」について簡単に振り返ります。

2023年度に開始した前中期経営計画では、テーマとして「ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦」を掲げ、共通価値の創造に向けて、経済的価値と社会的価値の創造を目指し、従来のIINO MODELを基盤としながら、持続的な成長に向けた事業ポートフォリオ経営への挑戦に踏み出しました。

その結果、数値目標を3年連続で達成するとともに、計画していた成長投資についてもおおむね予定どおり約1,000億円の投資を実行しました。この投資により、2026年度から2030年度にかけて、おおむね年間30億円から40億円の利益貢献が見込まれており、新たな中期経営計画の収益基盤の一部を構成しています。

これらの取組みを通じて、事業ポートフォリオの安定性が向上し、当社グループの財務基盤は一段と強固なものとなりました。

前中期経営計画の振り返り:財務体質の強化

具体的な財務数値目標の達成状況としては、ロシア・ウクライナ戦争に伴う物流の変化や紅海情勢による航海距離の伸長などに伴う急激な事業環境の変化はありましたが、新たなビジネスを獲得したことに加えて為替が円安に推移したこともあり、当初の目標を大きく上回る利益成長を実現しました。

財務KPIについては、経常利益、ROE、ROICがいずれも計画を大幅に上回る実績となり、自己資本は約1.4倍に増加し、財務健全性は大きく向上しています。非財務KPIについても、GHG削減率は集計中ですが、おおむね達成できる見込みです。

前中期経営計画の振り返り:事業ポートフォリオ経営の推進

投資については、当初計画どおり約1,000億円の投資を実行し、投下資本は着実に増加し、主力・安定事業で創出したキャッシュを基にポートフォリオ全体の安定性を高めることができましたが、成長・新規事業への投資は結果的に想定より少なくなりました。

前中期経営計画の総括:外部環境と課題認識

財務基盤および経営の安定性が向上してきた一方で、資本効率のさらなる向上や事業ポートフォリオのリバランスと成長投資の一層の加速が、次期における重要な課題として明確になっています。

また、中東をはじめとする地政学リスクの顕在化や、それに伴うサプライチェーンの大きな変化など、事業環境を取り巻く構造変化が進展しています。将来の環境を長期的な視点で捉えた成長戦略の重要性はこれまで以上に高まっており、事業ポートフォリオ経営をさらに深化させていく必要があると判断しました。

このような認識から、資本効率と成長投資の両立を軸とした変革ならびに長期的な経営戦略のもと、ポートフォリオ経営の深化を念頭に、新たな中期経営計画の策定に取り掛かりました。

当社におけるメガトレンド分析

それでは、新中期経営計画「Transformation for a Sustainable Future」についてご説明します。

新中期経営計画の策定にあたり、メガトレンド分析を行い、2050年を見据えて新燃料・次世代貨物や環境への対応、不動産事業の再構築、当社事業に関連する新たな成長と投資機会など、中長期戦略を立てるための当社への影響を整理しました。

メガトレンドを踏まえた経営計画

これらのメガトレンドからバックキャストして、当社のありたき姿である2050年長期ビジョンをまず描きました。貨物を輸送するだけではなく、輸送の枠を超えて関連する事業のバリューチェーンへ進出し、進化していくことを目指します。

また、2035年の中期ビジョンとして、事業領域を拡大していくために、長年培ってきた顧客との共創を通じて価値創造していくことを目指します。これらの中長期ビジョンと新中期経営計画を併せて「経営計画」と整理しました。

本計画の策定にあたっては、取締役会メンバーだけでなく、社員一人ひとりに将来像を考えてもらうため、社員にアンケートを実施し、若手社員にも、将来当社がどうあるべきかについて積極的に意見を出してもらいました。

新中期経営計画の位置づけ

本計画は、2050年の長期ビジョンからバックキャストして策定しました。2050年長期ビジョンへの到達に向け、2035年中期ビジョンを節目のポイントとして設定し、2035年中期ビジョンへ向けた変革期間として、今回2026年から2030年の5年間を新中期経営計画期間として位置づけています。

前計画が「Sustainable Future」に向けた「挑戦・冒険」であったのに対し、本計画では「Sustainable Future」を実現するために、資本効率と成長投資を両立する「変革」をテーマに掲げ、さらに進化していくという意志を「Transformation」という計画名に込めています。

新中期経営計画の全体像

本計画では、「変革を促す」ための重点戦略として、事業戦略、財務資本戦略、脱炭素化戦略の3つの戦略を掲げ、その中でも事業戦略における稼ぐ力の底上げのための事業基盤戦略として、人的資本経営、資産管理水準の高度化、新技術採用による差別化と最適化、そして適切なガバナンス体制の深度化を通じて、企業価値を向上させていきます。

新中期経営計画 主な数値目標

スライドでは、今回の新中期経営計画における財務および非財務の数値目標を示しています。まずは2030年度の財務数値目標として、利払前税引後利益である事業コア利益を225億円、ROICを5パーセント、ROEを10パーセント、D/Eレシオを1.3倍から1.8倍と設定しています。

前回の中期経営計画では、経常利益をKPIとしていましたが、船舶のようにライフサイクルで必ず資産の入れ替えをするものの売却損益も含め、さらに利払前の利益で管理することで、資金調達の影響を切り分けて事業そのものの稼ぐ力を表すため、当社のROICの分子に当たる利払前税引後利益をコア事業利益として採用しました。

非財務面数値目標としては、重大事故発生件数や海運業のGHG削減率に加え、稼ぐ力の底上げに関連する人的資本経営の推進目標として、業務効率化の実現と従業員エンゲージメントの向上について新たな数値目標を設定しました。

成長に導く経営資源配分:事業ポートフォリオ経営の深化

重点戦略についてご説明します。先ほど挙げた3つの重点戦略のうち、まずは事業戦略について詳細をお話しします。

本計画における投資額は、前中期経営計画から倍増させ、5年間で約2,000億円の成長投資を計画しています。特に、成長・新規事業および主力事業への投資に転換する「リバランス」を行い、事業ポートフォリオ経営の深化を進めます。

具体的には、2,000億円の投資のうち、成長・新規事業に650億円、主力事業に500億円、安定・成熟事業に450億円、さらに400億円を戦略投資として設定しました。

引き続き次世代燃料への転換やGHG削減推進により輸送需要の増加が見込まれる外航ガス船を成長事業とし、将来的に主力事業へ成長させていきたいと考えています。

主力事業では、当社の差別化の象徴であるケミカル船の大型ステンレス船隊を中心に、一部環境対応を備えた運航船隊の拡充を目的とした投資を進めていきます。

安定・成熟事業では、経営基盤となる安定収益源の維持拡大のため、投下資本の割合は若干抑えながらも投資を継続していきます。

また、400億円の戦略投資を設定することで、アライアンスなどでの既存事業の拡張や既存事業とシナジーのある新規領域へ参入し、収益基盤のさらなる拡充を計画しています。

船舶の発注から竣工までの期間が長期化しており、十分な船隊整備には時間を要することから、2031年度から2035年度の5年間においても、さらに2,000億円以上の投資を行い、主力事業の拡大・差別化でアップサイドを狙い資本効率と収益性を向上させつつ、一定の安定資産を積み上げていきます。

各事業で既存の強みをさらに磨きつつ、新たな成長機会を創出していくための施策を進め、稼ぐ力の底上げを図っていきます。

次のスライド以降では、各事業における投資配分に対するリターン創出の考え方と具体策を整理していますので、それぞれ詳しくご説明します。

稼ぐ力の底上げ:事業別戦略① 戦略投資、成長・新規事業

戦略投資および成長・新規事業についてです。戦略投資では、既存事業の強化と新たな収益基盤の育成を進めます。M&Aやアライアンスを積極的に活用し、既存事業の拡充と競争力の強化を図ります。

2050年に向けた長期的な施策として、海運業・不動産業の従来のビジネスだけでなく、周辺事業へと領域を広げ、市況を少しでも自社でコントロールできるようなバリューチェーンに絡んでいくことを見据えています。

成長・新規事業では、外航ガス船を成長ドライバーと位置づけ、中長期契約を軸に安定収益を確保しつつ、アンモニアや液化CO2といった新燃料・次世代貨物を取り込むなど、2030年以降の主力事業へと成長させていきます。

大型船・中小型船の特性を活かした複合営業を展開することで、さまざまな顧客との接点を持ち、成長機会を取り込むために、6月の組織変更ではこれらの船型が異なる外航ガス船部門を統合します。

稼ぐ力の底上げ:事業別戦略② 主力事業、安定・成熟事業(海運)

主力事業および安定・成熟事業についてご説明します。

現在の主力事業であるケミカルタンカー事業は、引き続き当社グループの収益の柱と位置づけています。2030年以降を見据えて本計画期間に環境対応を進めたステンレス船隊の整備・更新を進めることで、既存の輸送航路に加え、新規航路の拡大により事業基盤を一層強化し、差別化を進めながら、安定的に利益を確保しつつ収益の最大化を目指していきます。

ドライバルク船事業は、市況の変動局面でも安定的にキャッシュを創出する基盤事業として位置づけ、市況耐性の向上と安定的な収益確保のための施策を実行していきます。

続いて、安定・成熟事業についてです。油槽船事業は、長期契約を基盤とし、事業ポートフォリオにおいて安定収益と位置付けています。

内航・近海ガス船事業については、安定的なキャッシュを確保しつつ、将来の物流の変化や新燃料・次世代の貨物の開拓にも対応可能な事業基盤を維持していきます。

稼ぐ力の底上げ:事業別戦略③ 安定・成熟事業(不動産)

安定・成熟事業として位置づけている不動産業についてご説明します。不動産事業には、成長戦略、オフィスビル賃貸、保有不動産価値の転換の3つのポイントがあります。

1つ目の成長戦略については、資本効率の向上と不動産事業全体の収益力強化に向けて、外部パートナーとの協働を視野に入れつつ、国内外の不動産開発や投資機会を取り込み、バリューアップとキャピタルゲインの実現を目指します。

既存海外開発案件の売却による利益の取り込みや、老朽化物件の再開発・売却・入替による資産回転で、資本効率を向上させていきたいと考えています。

この他、私募ファンドなどへのエクイティ投資で開発・売買のケイパビリティを徐々に拡充するなど、さまざまな施策を進めていきます。具体的な成長戦略の施策については、本計画期間中のできるだけ早い段階で基本方針を策定・開示していきたいと考えています。

2つ目のオフィスビル賃貸については、長期安定的なキャッシュを生む当社グループの重要な収益基盤として確立していきます。物件ごとの将来性や戦略合理性を見極めながら、保有方針の見直しを行っていくことで、価値の最大化を図ります。

3つ目のポイントとして、保有不動産の価値を財務資本戦略の一部として、信用力や株主還元の安定性へ活用していきます。具体的には、保有不動産の資産価値を考慮した上で積極的に財務レバレッジを活用し、海運業・不動産業の既存事業の強化や、不動産業における成長機会の創出のための成長投資に活用します。加えて株主還元においては、中長期での継続性・予見性を重視し、不動産含む安定資産がもたらす収益を下限配当の源泉として活用していきます。

規律あるBSマネジメント:財務資本戦略の方針

続いては、重点戦略の2つ目である財務資本戦略についてご説明します。スライドは、BSマネジメントの考え方を示したものです。基本的な考え方は、規律ある成長投資の実行、資本コストの低減、持続的な株主還元の3つのバランスを最適化し、中長期の企業価値最大化を目指します。

本計画期間では、前中期経営計画期間で強化された財務体質を基盤とし、政策保有株式含む資産売却収入や保有不動産の価値も考慮した積極的な財務レバレッジの活用により、資本コストを上回る成長投資を実行していきます。

なお、投資においては、資本コストを踏まえた投資規律と、2030年度のD/Eレシオ1.3倍から1.8倍を目安とした財務規律の管理を両立してまいります。

キャッシュアロケーションの全体像

キャッシュアロケーションの全体像についてご説明します。営業キャッシュ・フロー、資産売却収入および財務キャッシュ・フローを主な原資として、成長投資および株主還元にバランス良く配分することを基本方針としています。

2026年3月末時点のD/Eレシオは0.9倍程度で、前中期経営計画期間中の利益剰余金の積み上がりにより、財務体質は強化されました。

さらに財務キャッシュ・フローでは、財務規律を守りながらも保有不動産の価値を考慮したレバレッジを活用することで、本中期経営計画の5年間で、将来の収益力強化に向けた成長投資として2,000億円を配分します。

株主還元については480億円を計画しており、成長投資と株主還元を両立していきます。

個別重点施策①:政策保有株式縮減のロードマップ

政策保有株式の縮減についてご説明します。当社グループでは、資本効率の向上および、成長投資や株主還元の原資を確保する観点から、政策保有株式の縮減を行っていきます。

2030年度までに政策保有株式の純資産比率を10パーセント未満とし、70億円の縮減を行います。縮減にあたっては、保有意義を個別に検証した上で、投資先企業との十分な対話を行いながら、市場環境を踏まえて段階的に進めていく考えです。

こうして創出した資金は、成長投資や株主還元に充当することで、資本の回転を高め、企業価値向上につなげていきます。

個別重点施策②:株主還元の強化

株主還元の強化についてご説明します。基本的な考え方として、成長投資によって創出される利益・キャッシュを原資に、将来の投資余力と財務健全性を勘案しつつ、安定性・予見性・機動性を備えた株主還元の実現を目指します。

具体的には、配当性向を40パーセント、下限配当を1株当たり30円に設定するとともに、機動的な自己株式の取得を実施していきます。これにより、市況変動がある中でも株主還元の安定性と予見性を高めていきます。

引き続き、成長投資、財務規律、株主還元のバランスを保ちながら、企業価値の向上と充実した株主還元の実現を目指します。

環境対応による競争力強化

3つ目の重点戦略である脱炭素化戦略についてご説明します。海運業では、燃料転換や燃費改善技術の導入、AIなどを活用した航海最適化を進めることで、輸送トンマイル当たりのGHG排出原単位を着実に引き下げていきます。

さらには次世代燃料船への段階的な投資などを行うことで、脱炭素化への取組みを推進していきます。

一方で、国際海事機関(IMO)におけるGHG排出削減の中期対策の枠組み策定は延期されており、見通しが不明瞭であることもあり、今回の削減目標では総量ベースではなく、輸送トンマイルベースでの原単位目標を前中期経営計画から維持しています。

不動産業では、非化石証書付き電力の調達拡大や再エネ設備の導入、環境認証の取得・維持を進めることで、GHG排出量の着実な削減を図り、2050年のネットゼロ達成に向けた取組みを継続していきます。

このように、事業特性に応じた取組みを着実に進めることで、環境負荷の低減と競争力の強化を両立し、持続的な企業価値向上につなげていきます。

事業基盤戦略の概要:重点戦略の達成を支えるための土台となる施策

事業基盤戦略についてご説明します。重点戦略を確実に実行するための土台として、事業基盤戦略を位置づけています。事業基盤戦略は、「人的資本経営の推進」「資産管理水準の高度化」「新技術採用による差別化と最適化」「適切なガバナンス体制の深度化」で構成されています。

人的資本経営の推進

「人的資本経営の推進」においては、事業戦略と連動した組織・人材のありたい姿を明確化し、人的資本経営の考え方および枠組みを整理することで、事業環境の変化に対応した組織・人材の変革を進め、人的資本の強化と中長期的な成長基盤の構築を図ります。

人的資本経営における人材戦略を事業戦略に組み込むことで、稼ぐ力をさらに向上させていきます。

人的資本経営の推進

人材戦略については、KPIを設定して管理します。定性的な評価にとどまらず、エンゲージメントサーベイの結果や海上・陸上間の人材交流の進展状況、総合職に占める女性比率の増加といった指標を用いて、定量的に管理・モニタリングしていきます。

資産管理水準の高度化

「資産管理水準の高度化」では、船舶や不動産といった重要資産について、「安全・安心」と「稼ぐ力」を両立させた高品質な管理体制を構築し、コスト管理やリスク管理の精度を高めていきます。

新技術採用による差別化と業務プロセスの最適化

「新技術採用による差別化と最適化」では、前中期経営計画で取り組んできたデジタル基盤整備とデータ活用を継続し、業務プロセスの最適化を進めていきます。

また、外部との連携で新技術を取り込みながら、船舶や不動産のシステム整備を行い、高品質な運航・運営やサービス面での差別化につなげていきます。

適切なガバナンス体制の深度化

「適切なガバナンス体制の深度化」では、引き続き取締役会機能のさらなる強化を進め、経営の監督と意思決定の実効性を一層高めていきます。あわせて、中長期的な企業価値向上に資する報酬制度の高度化を進めるとともに、開示内容や資本市場とのコミュニケーションの充実を図ります。

リスク管理体制の強化にも取組み、ステークホルダーからの信頼を一層強化することで、持続的な成長とさらなる企業価値向上を目指してまいります。

なお、これら重点戦略を支える事業基盤戦略の取組みとして、管理部門の組織体制を変更します。新中期経営計画の詳細な内容および組織変更の詳細については、当社ホームページに掲載されている新中期経営計画資料、もしくは2026年4月23日付の「役員人事内定および組織変更に関する件」をご参照ください。

2025年度通期決算および新中期経営計画の説明は以上です。

最後となりますが、前中期経営計画で強化した財務基盤を土台に、新たな中期経営計画においては、資本効率を意識した成長投資と規律ある経営を両立させながら、さらなる企業価値向上を目指して取り組んでまいります。

引き続き、みなさまのご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。

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