目次
田鎖郁夫氏(以下、田鎖):株式会社エヌ・シー・エヌ代表取締役社長執行役員の田鎖です。本日は、ご視聴いただき誠にありがとうございます。2026年3月期の決算内容についてご説明します。
本日は、会社概要、連結業績ハイライト、トピックス、2027年3月期の通期業績予想、株主還元の方針の5つの項目についてご説明します。
会社の目標
田鎖:会社概要について、簡単にご説明します。当社は設立以来「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」と「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。」の2つを目標に業務を推進しています。
日本の木造住宅の課題①
田鎖:当社が掲げる安心・安全については、一般的な住宅メーカーでもよく見られるコンセプトに聞こえるかもしれませんが、当社の場合は少し異なります。
阪神淡路大震災の際に判明したのですが、この国では、2階建てで500平方メートル未満の木造建築物には、構造計算や構造確認の義務がありませんでした。
このように構造確認の義務がない状況下で安全な建物を供給するため、当社では木造建築物の構造計算を徹底し、安全な建物構造を提供することを目標としています。
SE構法で課題を解決
田鎖:そのため、「SE構法」という当社が開発した構法は、強度が明確な材料とその強度を計算できる仕組みを用いて、すべての建物で耐震性を確保して供給する仕組みを構築しました。
日本の木造住宅の課題②
田鎖:もう1つは、資産価値がないという問題です。現在、マンションは中古でも高い金額で取引されていますが、木造住宅は土地代のみが評価される流通となってしまい、建物そのものの価値が評価されないことが、この国の問題点であると考えています。
資産価値維持のための課題解決
田鎖:我々は、地震が来ても壊れない構造の設計や省エネルギーの計算を行っています。これらは建てた後では変更できないため、エビデンスを作成するとともに、建設中の工事写真もすべて記録し、性能自体を保証します。また、金銭的な保証を行う仕組みも備えています。
最後に、エビデンスとしての建築図面を3次元のデータで保存し、それを二次利用者に提供する仕組みを構築しています。この4つの仕組みを完成させるために、我々は業務に取り組んでいます。
エヌ・シー・エヌは木造の課題を仕組みで解決する会社
田鎖:エヌ・シー・エヌは、木造建築の課題を工務店とともに仕組みで解決する提案を行う会社です。
時代のニーズとともに成長する4つのセグメント
田鎖:1996年以来、事業を行っており、最初は住宅分野からスタートしました。その後、大規模木造建築(非住宅)分野として学校や店舗を手掛けるようになり、省エネルギー計算を主業務とする環境設計分野、DX・その他の4つを事業の柱として進めています。
住宅分野
田鎖:住宅分野については、先ほどお伝えした「SE構法」を工務店を通じてユーザーに普及させることを目指しています。普及方法として、「重量木骨の家」というブランド事業を立ち上げ、特に付加価値の高い住宅をこのブランドで展開しています。
大規模木造建築(非住宅)分野
田鎖:大規模木造建築(非住宅)分野です。スライドに記載のとおり、エヌ・シー・エヌではカフェや店舗、複合施設、教会などの大型建築物を木造化する時に「SE構法」を利用して供給しています。
昨今は「CLT工法」「在来工法」「ツーバイフォー工法」などの他の工法に対しても構造計算を施し、安全性を高める仕組みを、木構造デザインという会社を通じて供給しています。
施工分野では、翠豊という会社をM&Aによりグループに迎え入れ、ビルディングなど木造の高度な加工を実際に施工し、供給する事業を展開しています。
環境設計分野
田鎖:環境設計分野です。木造戸建て住宅での省エネルギー設計を開始していましたが、現在では施設建築の省エネルギー化やネットゼロエネルギービルディング(ZEB)化事業を進めています。
最近では、中古マンションのリノベーションにおいても断熱材を使用して省エネルギー化を推進し、それをシミュレーションしてお客さまに提供しています。最終的には国の認定を受け、ラベリングを行う事業を展開しています。
DX・その他の分野
田鎖:DX・その他の分野です。従来は2次元でデータを保存することが一般的でしたが、建築は3次元です。「ビルディングインフォメーションモデリング(BIM)」と呼ばれる方法を用いて、すべてを3次元データとしてエビデンスを作成・保存する事業を行っています。
他に類を見ない木造建築プラットフォーム
田鎖:エヌ・シー・エヌグループは、デジタル化、構造設計、省エネルギー設計、安全な資材の供給を行うプラットフォームを設け、全国の工務店やハウスメーカーにサービスを展開している会社です。
NCNグループは木造建築業界にこれまで なかった“仕組み”を生み出しています。
田鎖:エヌ・シー・エヌグループは、木造建築業界にこれまでなかった仕組みを生み出し、提供している会社です。
NCNグループ
田鎖:グループ会社として、アセット部門、テクノロジー部門、ライフスタイル部門に分かれており、それぞれの活動をエヌ・シー・エヌを中心に展開しています。
MUJI HOUSE
田鎖:みなさまにおなじみの名前としては、MUJI HOUSEが挙げられます。「無印良品の家」という住宅を展開しており、無印良品を運営する良品計画との合弁会社によって、住宅が供給されています。
最近では、UR都市機構との提携による団地のリノベーションを手掛けています。住宅だけでなく、無印良品店舗の施工も行っており、MUJI HOUSEが木造店舗の施工を手掛けています。
翠豊
田鎖:翠豊は、施工および加工を行う会社です。みなさまに一番わかりやすい例として、今回の大阪万博では数多くの木造施設を手掛けています。「BLUE OCEAN DOME」やウズベキスタンの木造パビリオンといった複雑な加工を請け負っています。
N&S開発
田鎖:ライフスタイル部門についてです。サブスクリプションで、セカンドハウス事業を展開しているSanuと合弁事業を行い、木造の複合宿泊施設の建築や土地の取得などを進めるN&S開発もグループの仲間に加わり、事業を展開しています。
NCNグループ
田鎖:それぞれの事業を具体的に展開するための子会社や関係会社群とともに、事業を着実に進めていく方針です。
連結業績の推移
田鎖:2026年3月期の業績について説明します。スライドには、過去4年間のグラフを掲載しています。売上高はこの3期間、上昇基調にありますが、今期の営業利益は減少しています。
連結業績の推移
田鎖:総資産額・総資産、1株当たり当期純利益、1株当たり配当金は、スライドのとおりです。
2026年3月期 連結業績
田鎖:業績の詳細をご説明します。売上高は84億1,400万円で、前期比3.6パーセント増となりました。営業利益は1億5,200万円で前期比14.6パーセント減少、経常利益は1億8,700万円で前期比36パーセント減少しました。
NCNとグループ会社の業績
田鎖:エヌ・シー・エヌとグループ会社について説明します。エヌ・シー・エヌは「SE構法」を扱う事業を中心に展開している会社で、増収増益で着地しました。
一方、グループ会社は減収減益となり、マイナスが大きく前期比で縮小しています。要因として、翠豊が大阪万博終了後に売上が大きく減少したことが挙げられます。
事業セグメントとセグメント売上高
田鎖:4つのセグメントについて、結果をご説明します。
木造耐震設計事業は「SE構法」を扱う事業です。住宅部門は、売上高47億5,400万円で、前期比0.5パーセント増とわずかに前年を上回る結果となりました。大規模木造建築(非住宅)部門は、売上高30億7,700万円で前期比4.5パーセント増です。
その他の環境設計分野は、売上高4億300万円で前期比39.0パーセントの成長を遂げました。DX・その他の分野も、売上高1億7,900万円で前期比13.0パーセントと大きく成長しました。
2026年3月期における各分野の状況
田鎖:住宅分野では、2025年4月に確認申請のルールが変更されました。確認審査が厳格化され、手続きに時間を要する場合がありました。
大規模木造建築(非住宅)分野は大幅に伸びたものの、翠豊の施工高が減少したことで、大きな成長を遂げるには至りませんでした。
環境設計分野においては、確認申請作業に関連して、省エネルギー計算の添付が役所への提出で義務化されたため、一気に受注が増加しました。
確認申請手続きの長期化によるSE構法出荷の停滞
田鎖:それぞれの要因についてご説明します。
2025年に確認申請のルールが変更され、木造住宅においても図面の確認だけでなく、構造や省エネルギー性能のチェックが求められる制度となりました。法律で従来7日間とされていた審査期間が、昨年の2025年4月からは35日間に延長され、チェックに必要な期間が設けられるようになりました。
しかし、先月国土交通省が発表したアンケート結果によると、実際には35日のルールであったにもかかわらず、60日以上かかっていたことが明らかになっています。この停滞が「SE構法」の出荷に大きな影響を与える結果となりました。
[住宅分野]KPIの推移
田鎖:その結果、構造計算出荷数、「SE構法」出荷数については、若干昨年を下回る結果となっています。
[住宅分野]登録施工店数の年次推移
田鎖:我々の仲間であるお客さまや登録施工店の数は、年々右肩上がりで順調に推移しています。「SE構法」のノウハウを取得したいということで、工務店やハウスメーカーが毎年一定数、仲間に加わっています。
[大規模木造建築(非住宅)分野]KPIの推移
田鎖:大規模木造建築(非住宅)分野についてです。スライドは、住宅以外の構造設計や「SE構法」の利用に関する内容です。
スライド左側の濃い色の棒グラフは、「SE構法」の構造設計をご依頼いただいた数量を示しています。薄い緑色の棒グラフは、木構造デザインと記載されていますが、「SE構法」ではなく、「在来工法」や「CLT工法」の木造で、「SE構法」に該当しないものを表しています。
いずれも右肩上がりで推移しており、「SE構法」も順調に推移しています。
[環境設計分野]KPIと売上高の推移
田鎖:今期最大の伸び率を示したのは、省エネルギー設計の件数です。省エネルギー計算は住宅、非住宅、マンションの3つの分野それぞれで需要が高まり、全体で39.0パーセントの増加となりました。
1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):省エネルギー計算の件数が大幅に伸びています。今期の予想についてはこの後説明があると思いますが、増収が予定されている中で、足元の需給環境や御社のキャパシティが十分に確保されているのか、そのあたりについて教えていただけますか?
田鎖:省エネルギー計算書は、明日からすぐできるようなものではありません。当社には20年間培ってきたノウハウがあるため、当社への依頼件数は順調に増加しています。省エネ計算書の作成が義務化され、どの会社も対応しなければならないため、依頼が増えています。
キャパシティについては、外部の提携先が増加し、社員数も順調に増やしているため、現時点で依頼数以上に対応できる状況にあるとお伝えできます。
Ken:集合住宅の需要が伸びている要因としては、スライドにも記載があるように、省エネ計算に対するニーズが非常に高まっていること、さらに補助金などが影響しているのだと思いますが、これが増加の理由なのでしょうか?
田鎖:集合住宅の数字には、アパートやマンションも含まれています。現在、省エネルギー建築を推進するための資材には補助金が用意されています。省エネルギー設計を取り入れ、省エネ性能が高い建物については、施主さまが補助金を受け取れることが追い風となっています。
[住宅分野]重量木骨の家のブランド化
田鎖:2026年3月期のトピックスについてです。住宅分野で展開しているブランド住宅「重量木骨の家」は、スライドのグラフのとおり、年々1戸当たりの施工単価や受注単価が増加しています。
20年間にわたり、高付加価値住宅のブランド化に取り組み、600社の中から厳選された工務店と協力の仕組みを構築してきました。昨年は5,600万円という単価で受注し、ハウスメーカーを上回る結果を達成しています。
Ken:2018年頃から継続して伸び続けていると考えています。平均受注額が上昇している理由について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
田鎖:高付加価値住宅のポイントはデザインです。デザインに優れた設計士が在籍する工務店とブランド化することにより、スライドの写真のように大きな吹き抜けや開口部を備えた明るい住宅が作れます。
もちろん、ハウスメーカーでも同様の取り組みを行っていますが、地域の工務店は一般的にローコスト路線に注力しがちです。その中で、デザインを中心に据えて展開してきたことが、最も成功の要因であると考えています。
Ken:ここにお願いしたいから、多少高い費用を払ってでも作ってほしいという需要がかなりあるということですね。
田鎖:おっしゃるとおりです。みなさまもご存知のとおり、富裕層の世帯数は10年で約3倍に増え、圧倒的に増加しています。
富裕層の方々は比較的ラグジュアリーな建物を好む傾向にあり、また建物の性能に対してもこだわりを持っています。これに対応する事業を、私たちは20年間にわたり展開してきました。
Ken:2026年3月期の前期、すでに終わった期においても急激に伸びている背景には、やはり富裕層からの需要がより強くなっている印象でよろしいでしょうか?
田鎖:特に別荘へのニーズや、都心部でマンションの価格が大幅に高騰している影響で、それと比較して戸建てのほうが安いと感じるお客さまが増えていることが、このブランド事業の特長です。
Ken:我々も株式や投資などを行っていますが、間接的には株高のような影響が多少出ている可能性もあるということでしょうか?
田鎖:おっしゃるとおり、私たちもそう考えています。
Ken:平均受注額の上昇は、御社の売上向上にも大きく貢献すると思われます。受注額と売上の関係について教えていただけますか?
田鎖:構造材は受注金額に完全に相関しており、10パーセントから12パーセント程度が構造材の金額となります。この金額が当社の受注額の伸びに寄与しています。それ以上に、受注棟数が大きく貢献していると考えています。
金利が高く、住宅を購入する環境が厳しい中で、富裕層のお客さまをターゲットに絞ったマーケティングを行うことで、受注棟数の維持を狙っています。
Ken:金利に対しても、他社と比較して比較的強い環境にあるということですね。
田鎖:おっしゃるとおりです。
[大規模木造建築(非住宅)分野]三井ホーム(株)との販売提携
田鎖:大規模木造建築(非住宅)分野についてのトピックです。
三井ホームとの販売提携を行いました。もともと「ツーバイフォー工法」のリーディングカンパニーでありトップ企業でもある三井ホームでは、大型の建物や学校などの大スパンの建築物も受注の対象となりつつあります。
その中で「ツーバイフォー工法」だけでは対応が難しい部分について、当社と技術提携を行い、「SE構法」と「ツーバイフォー工法」を組み合わせ、一緒に受注していく体制を構築しました。
Ken:提携の狙いについてご説明いただいたと思いますが、学校における木造建築の需要はどの程度あるのでしょうか?
田鎖:2013年に動きがスタートしています。
公共建築物等木造化推進法という法律があります。SDGsの観点から、公共建築物で木造化できるものはすべて木造化するようにというルールが定められており、さらに木造にする場合、一定の補助金が支給されるという後押しがあります。
住宅以外では、このような公共建築物のうち、学校や校舎の木造化が国を挙げて進められています。
Ken:私たちの世代では鉄骨構造の学校が一般的だったと思いますが、木造の校舎が徐々に増えていく可能性があるということですね。
田鎖:おっしゃるとおりです。
[大規模木造建築(非住宅)分野]5階建ての着工(横浜市)
田鎖:木造建築の技術分野では、これまで5階建ての建物は非常に難しいとされてきましたが、木造での5階建ての着工が進んでいます。「SE構法」の高度な技術により、4階建てに続いて5階建ての建設が実現しました。
[環境設計分野]マンションリノベーションの省エネ化推進
田鎖:環境設計分野で、大きく伸ばしているのがマンションリノベーションです。マンションリノベーションは内装の変更にとどまらず、断熱材や窓の設置・改修を行うことで、省エネルギー性能を向上させます。
省エネルギー性能が向上すると省エネルギー性能証明書が発行され、それが補助金の対象になるため、コスモスイニシアとの業務提携を進めています。また、三菱地所レジデンスともすでに提携しており、大手マンションの再販業者との提携も検討しています。
Ken:デベロッパーやリノベーションを行い再販する業者が御社と提携するにあたって、どのようなメリットが出てくるのでしょうか? 需要が比較的大きい環境において、提携しないと厳しくなってきているのでしょうか?
田鎖:中古マンションの価格はかなり高騰しています。その中で、省エネルギー基準を満たしたマンションは、再販価格が一般的なマンションよりも高くなる傾向にあります。さらに、国から省エネルギー器具に対する補助金も支給されるため、エビデンスを作成する必要があります。
エビデンスに関しては、みなさまもある程度の知識や仕組みをお持ちかと思いますが、当社は20年以上のノウハウがあるため、スピーディかつ低コストで提供できると考えています。
Ken:中古マンションの価格高騰も影響して、中古マンションを購入する側の要求も高まっています。そうなると、省エネ設計にしておいたほうがよいという考えが広がり、需要が増えているということですね。
田鎖:おっしゃるとおりです。
2027年3月期 通期連結業績予想
田鎖:2027年3月期の通期業績予想についてご説明します。2027年3月期の業績予想は、売上高93億1,000万円、営業利益3億800万円、経常利益3億4,800万円と、それぞれ増加させる計画です。
2027年3月期 セグメント別業績予想
田鎖:各分野の成長についてご説明します。
住宅分野では、前期比プラス15パーセントの成長を予想しています。大規模木造建築(非住宅)分野では、前期比プラス2.4パーセントとなる売上高31億5,200万円を見込んでいます。
環境設計分野においては、依然として2桁以上の成長が期待されており、売上高は4億8,500万円で前期比プラス20.4パーセントです。DX・その他の分野でも売上高2億400万円を見込み、順調に2桁成長を維持する計画です。
2027年3月期における各分野の状況
田鎖:それぞれの要因について、住宅分野、大規模木造建築(非住宅)分野、環境設計分野の順に、スライドを用いてご説明します。
[住宅分野]建築基準法の改正によりNCNの優位性が拡大
田鎖:多くの方がご存じないことですが、建築基準法の改正は昨年行われたばかりですが、今年4月にも本格的な改正が実施されました。
2026年4月以降、木造建築の確認申請において基準がさらに厳格化されます。具体的には、構造の厳格化が法制化され、壁量という仕様規定がさらに厳しくなり、これまでの壁量の約1.4倍の壁を設ける必要があるというルールが新たに導入されています。
一方で「SE構法」は、強度を持つ「SE構法Ver.3」を発表したことで間取りの自由度がさらに向上し、差別化が拡大しています。
[住宅分野]構造基準変更により在来工法との差別化拡大
田鎖:どの程度のボリュームの部分が厳しくなるかというと、これまで「2階建てで300平方メートル未満のところは仕様規定でいいですよ。構造計算しなくていいですよ」とされていた部分が、スライドの黄色で囲われた部分です。今年4月に、この部分が1.4倍厳しくなることになりました。
[住宅分野]木造住宅の現状
田鎖:「在来工法」や「ツーバイフォー工法」は、仕様規定に基づいて壁の量が定められているため、厳しくなります。一方で「SE構法」は、構造計算に基づいているため変更はありません。
[住宅分野]構造基準変更により在来工法との差別化拡大
田鎖:壁を多く設ける必要があるため、窓が減ったり、間仕切りが多くなったりと、間取りの自由度が制限されます。
[住宅分野]2027年3月期のKPI予測
田鎖:今期は前期の確認申請の停滞により、構造計算が終わって出荷を待っている、いわゆる受注ストックが例年の期末より約100棟増加した状態で始まりました。
この増加したストックを出荷しなければなりませんので、増加分と「SE構法」の優位性による切り替え分で、それぞれ100棟ずつ、合計で約200棟多く出荷できると予測しています。
Ken:受注ストックが今回から開示されたことで、投資家としてはこれまでエクセルで計算して予想していたような部分が明らかになり、助かると感じています。今回開示された背景や意図があれば教えていただけますでしょうか?
田鎖:受注ストックを今回開示した背景には、実際に停滞して失注しているのではないかというご質問をいただいていることがあります。出荷数が増えていないのは、受注できていない、または失注しているのではないかというお問い合わせをいただいていました。
受注としてしっかりストックしていることを示すため棟数を開示し、みなさまにご安心いただければと思い、開示しました。
[大規模木造建築(非住宅)分野]木造非住宅の市場
田鎖:大規模木造建築(非住宅)分野の成長戦略と今期の予測についてお話しします。木造建物の受注高は毎年増加している一方で、棟数は減少傾向にあるため、大型化が推進されています。
[大規模木造建築(非住宅)分野]木造建築のトータルソリューション
田鎖:構造設計、環境設計、BIM、施工のどれをとっても、大きな建物に対応できる会社は多くありません。
[木造建築総合窓口]SE構法×環境設計×BIM×登録施工店
田鎖:今期から、「ビルディングサポートセンター」と称して、木造化をご相談いただける窓口を設置します。
スライドは、無印良品の店舗での例です。BIMを活用することで、お客さまに「このような断面で、こういう省エネルギーをやりますよ」というプレゼンテーションを提案しています。環境設計では、エネルギーゼロを実現するための設計を行っています。
このようなトータルサポートを1つの窓口で提供することで、構造設計の依頼数を増やしていきたいと考えています。
[大規模木造建築(非住宅)分野]2027年3月期のKPI予測
田鎖:今期の計画は280棟程度です。構造設計は278棟を計画しています。
[環境設計分野]サービス領域の拡大
田鎖:環境設計分野では、前期から大きく成長している設計分野とリノベーション分野の領域をさらに拡大し、成長を継続させたいと考えています。
[環境設計分野]2027年3月期のKPI予測
田鎖:具体的な数字については、スライドに記載の計画をご覧ください。
2027年3月期における事業の懸念事項
田鎖:現在、大きな問題となっている中東情勢が建築着工へ与える影響についてご説明します。
4月以降、ホルムズ海峡が封鎖されたことで、原油やナフサの不足が予想されています。住宅分野では、断熱材、上下水道用塩ビ管、ルーフィングシート、FRP製ユニットバス、接着剤・塗装溶剤などがナフサ由来の製品であるため、不足が懸念されている状況です。
その影響として、各製品の価格高騰や材料不足が生じ、住宅が着工できない、あるいは竣工や引き渡しができないという心配が広がっています。
スライドを作成した2026年4月末現在、当社の「SE構法」の出荷において、対象製品が不足したためにキャンセルが発生したり、出荷できない、遅延するといった物件は現在のところ発生していません。
しかしながら、今後ホルムズ海峡の封鎖によって大幅な不足が生じる可能性がないとは言えず、この点については今回の決算予測には反映していません。
Ken:金利上昇について、気にされている投資家の方が多いように感じています。直近では、10年国債などの長期金利が現在2.7パーセントとなっている影響について、どうお考えでしょうか?
田鎖:金利の上昇は、住宅着工や住宅の受注に少なからず影響があると考えています。特に、若年層が利用する35年ローンや、最近登場した50年ローンにおいては、金利が1パーセント上がるだけで毎月の支払いが増加するため、住宅の受注を押し下げることが予想されます。
このような状況を踏まえ、当社では「重量木骨の家」のような、ある程度富裕層をターゲットにした商品の提供に注力しています。
金利上昇が進む中で、金利が上昇する前に早めに購入しようと考えるお客さまも一定数いらっしゃいます。今年5月でも、そのようなお客さまが多く見受けられました。特に、35年金利を固定できる今のうちに契約しようという動きです。
Ken:おっしゃるとおりですね。駆け込み需要というわけではありませんが。
田鎖:銀行でも、35年間の金利を固定して融資してくれるところはあまり多くありません。「フラット35」は上限1億円まで融資が可能なため、こうした制度を利用される方が急いで契約されるケースも見られます。
Ken:インフレ化というのは、非常に難しい問題だと思います。
日本人は、これまでインフレにあまり慣れておらず、またデフレに戻るのを待つという姿勢もあったと思います。しかし、インフレが常態化すると、アメリカのように早めに購入するのが得策だという考えが根づいていくと思います。
経済全体がある程度需要を支えている限り、それほど需要が変わらないといった見方もできますよね。
田鎖:おっしゃるとおりですね。一方で、賃貸住宅の賃料も上昇していることから、所有したほうが有利ではないかと考える方々も増えています。インフレの状況下では住宅を所有し、再販価格を維持し、必要がなくなった場合に売却して資産価値を得ようとする動きが見られます。
当社は設立以来、住宅の資産価値を維持するための仕組みを持っていますので、こうした動きに対して有利に戦えるよう取り組んでいきたいと考えています。
Ken:スライド51ページで、構造計算出荷数と「SE構法」出荷数に関する予想を出されています。こちらの計画の立て方と、法改正の影響がどの程度試算に含まれているのかについてコメントをいただけますでしょうか?
田鎖:大規模木造建築については、もともと構造設計が義務化されているため、法改正の影響を織り込んでいます。一方で構造計算の数が多く、「SE構法」出荷数が少なく見えているのは、構造デザインの面で「在来工法」の設計も含めているため、このような見え方になっています。
株主還元の方針
田鎖:株主さまへの還元方針についてお話しします。当社は上場以来、年間の配当性向は40パーセントを基準とし、継続的かつ安定的な配当を実施する方針を掲げています。今期の予想では、配当性向を40パーセントとし、1株当たり33円を予定しています。
以上が、エヌ・シー・エヌにおける今期の業績予測です。
質疑応答:「SE構法」の確認申請手続き長期化に伴う運用改善策について
荒井沙織氏(以下、荒井):「2026年4月の法改正で『SE構法』への期待が高まる一方、確認申請手続きの長期化によって販売プロセスも延びたとあります。リードタイム増を吸収して、受注を取りこぼさない運用改善策を教えてください」というご質問です。
田鎖:スライド29ページをご覧ください。リードタイムを短くする方法はいくつもありますが、長くなる主な要因は確認申請手続きを担当する行政官の人数不足が根本にあります。また、新たな法律に関する知識が行政側で不足していることによって手続きが遅れているという2つの要因です。
それに対して、当社は登録施工店のみなさまに勉強会やナレッジを共有する仕組みを提供しており、現在徐々にこの問題は解消されつつあります。また、行政手続きに関して行政機関と定期的に情報交換会を行い、手続きができるだけ早く進むよう努めています。
質疑応答:「SE構法」の採用率向上施策について
荒井:「住宅分野では、登録施工店の販売棟数に対して『SE構法』の採用率向上余地が大きいとあります。採用率を上げるために最も効く施策は、商品力、設計支援、営業支援のうちどれでしょうか?」というご質問です。
田鎖:端的にお伝えすると、すべてだと思っています。もちろん、ハウスメーカーや工務店など、すべてのお客さまにご満足いただける設計を支援しなければなりません。そのため、設計支援や、展示場などを設計する際の支援、材料の提供を行うことが重要です。
営業支援についてもさらにしっかりと、どのようにすればよいかを社内で積極的に検討しており、これら3つすべてが大事だと考えています。
質疑応答:建築設計における耐震性と空間の自由度について
荒井:「『SE構法Ver.3』では、G-BOARD採用などで性能向上を打ち出していますが、競合工法からの切り替えを決める顧客の決定要因は、耐震、設計自由度、コストのうち、どれが最も強いでしょうか? また、訴求戦略をどう組み立てますでしょうか?」というご質問です。
田鎖:非常に核心的なご質問ですが、基本的には耐震性の点に注目していただきたいと考えています。ただ、一次的には設計の自由度の向上が主なポイントではないかと私たちは考えています。
荒井:広々とした印象ですよね。
田鎖:スライド46ページをご覧ください。例えば、住宅展示場に行った際、小さな窓がある家と、広々とした吹き抜けの大きな空間を見比べて、「どっちが欲しいと思っていただけますか?」が一番の切り替えのポイントになるのではないかと思います。
荒井:100パーセントぐらいの方が、広々として明るいほうがいいと感じるのではないですか?
田鎖:ありがとうございます。そのため、これが最も切り替えのポイントとしてご活用いただけるのではないかと考えています。
荒井:空間の魅力、つまり直感的にどちらが魅力的かということですね。
質疑応答:成長を左右する要素と木造施工体制の課題について
Ken:「非住宅分野の成長を最も左右する要素は何ですか?」というご質問です。先ほどお話があったように、安定して右肩上がりで成長しているという点だと思いますが、その成長を左右する要素には何がありますか?
田鎖:現在、外的要因としてはニーズがどんどん高まっている一方で、施工体制が十分に応えられていない状況です。日本には優秀なスーパーゼネコンやゼネコンが数多く存在しますが、木造施工に関してはあまり経験をお持ちでないのが現状です。
それに対し、「SE構法」を長年ご利用いただいている工務店に、少し規模の大きい施工もお任せするかたちでご協力いただき、施工能力を高めて成長の維持やスピードアップを図りたいと考えています。
Ken:先ほどお話があったように、5階建てなどの新しい取り組みを通じて、施工者の方々が経験を積むことも重要だということですね?
田鎖:おっしゃるとおりです。もちろん、コンクリート造であれば日本のゼネコンの技術力で十分対応可能ですが、木造では防火や未経験の技術が求められる場面が多々あります。そのため、工務店や当社の登録施工店と一緒に検査を進めていく必要があると考えています。
質疑応答:非住宅分野における施工体制とネットワーク構築について
荒井:「非住宅分野で、大規模木造建築ネットワークや供給体制を強化するとあります。案件を拡大する上で、最大の制約は設計リソース、施工体制、部材供給のどこにあるのでしょうか? また、優先投資は何でしょうか?」というご質問です。
田鎖:設計リソースも非常に重要ですが、まずは施工体制をしっかりと整え、供給体制を構築していきます。そのために、大規模木造ネットワークというネットワークを構築し、工務店やハウスメーカーの施工関係者のみなさまとナレッジを共有しています。
もちろん、それに対しても投資を行い、ボトルネックの解消を図ろうと考えています。
質疑応答:技術開発と人材のリンクについて
Ken:「技術開発と人材育成の投資をどのように考えられていますか?」というご質問です。技術開発と人材がリンクしている場合もあるのではと思いますが、この点についてはいかがでしょうか?
田鎖:非常に重要だと考えています。当社では技術開発に対して毎年必ず投資を行っており、当社の規模でありながら、大学と同等以上の実験施設を保有しています。センター長には、博士を配置しています。
人材育成については、給与改定も含めて、会社の内部体制を検討しています。長期的に、しっかりと研究開発および業務を推進していただけるような体制を策定中です。
質疑応答:建築技術の進化と混構造の研究開発について
Ken:技術開発について、バージョンアップによって必要な壁の量が減少したとうかがいました。今後さらに進化していく場合、同様に壁の量が減少する方向性なのか、それとも他にどのような変化が起こる可能性があるのか、差し支えない範囲でお教えいただけますか?
田鎖:現在取り組んでいるのは、接合部をより強固にする「ラーメン構造」と呼ばれる技術です。これにより、完全に壁のない接合部を実現できます。
また「混構造」と呼ばれる技術があります。木造でも、木だけで成立させることが主眼となっていますが、実際には、地下1階はRC造、1階は鉄骨造、その上は木造といった、さまざまなデザインニーズがあります。そのため、「混構造」の研究や工法の開発にも投資を進めています。
Ken:将来的にそれが実現すると、例えば地下はRC造で、上層は木造といった設計が可能になるのでしょうか?
田鎖:現在でも可能です。例えば、1階のみがRC造で、2階、3階が木造というケースがあります。同じ平面内で「この部屋はRC造、この部屋は木造」という混構造を「同一平面混構造」と呼びますが、現時点では多くの技術者がその技術を持っていません。
そのため、私たちはその研究開発も同時に進めています。
荒井:どのような間取りで、そのような使い分けがされるのでしょうか?
田鎖:一例として、防音室をRC造で作るケースや、高層建築ではエレベーター室を鉄骨造にする場合があります。その上で、木を組み合わせることも想定されます。
しかし、現時点では木造だけで完結させる必要がある、RC造はRC造だけで対応しなければならないといった制約がまだ多くあります。これらをより自由に設計でき、流通させるための技術開発を進めていきたいと考えています。
Ken:例えば、子供部屋だけを木造にしたい、というような需要もありそうですね。
田鎖:そのような需要もあるかもしれません。木は人に安らぎを与える素材であるため、木造を積極的に選びたいという方も多いです。
一方で、構造化する際には、木は素材としての弱さがややあります。そのため、鉄骨造やRC造といった他の素材とどのように組み合わせて使用するのかが重要なポイントだと考えています。
田鎖氏からのご挨拶
田鎖:最後までご視聴いただき、誠にありがとうございます。非常に不透明な情勢が続いていますが、エヌ・シー・エヌは技術開発に邁進し、木造建築の安全と安心をお届けする仕組みを推進していきます。
投資家のみなさまのご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:施主や金融機関に評価される指標をどのように設計していますか?
回答:全棟構造計算、省エネ計算、BIMデータの作成の数を指標としています。これらの定量的なエビデンスを元に、施主には資産価値の維持を、金融機関には担保価値やローン適格性を訴求しています。
<質問2>
質問:SE工法登録施行店ネットワークを成長エンジンとして、今後3年で最も強化したい領域はどこですか?
回答:住宅分野においては、SE構法登録施行店ネットワークを軸に、改正建築基準法の追い風を活かした「採用率の向上」に最も注力します。具体的には、壁量をさらに1.4倍設けるとされる改正建築法には、強度を増した当社「SE構法Ver3」による対応で差別化し、また、積み上がった「受注ストック」を確実に完遂・出荷させ、構造計算出荷数を飛躍的に増加させることで、今後3年間の着実な成長を実現していきます。
<質問3>
質問:法改正を追い風として需要を取り込む上で、SE構法を選ぶ決め手を耐震・設計自由度・資産価値のどこに置いて訴求しますか?
回答:さらなる耐震性確保を目的に、法改正で他工法での空間的制限が強まる中、当社SE構法では大空間を実現する「設計自由度」を最大の決め手とします。計算出荷の増加とストックの完遂により、法改正に伴う需要を確実に取り込みます。
<質問4>
質問:ZEB化サポートや省エネ計算など環境設計分野のサービス領域が拡大し成長が期待できるとありますが、今後の収益の柱にするために狙う顧客像と、継続課金につながる提供形態を教えてください。
回答:今後さらに注力していくのは、集合住宅の断熱リノベーションにより再販価値向上を目指す大手マンションデベロッパーさまや、ZEB化を推進する非住宅オーナーさまへの支援です。特に非住宅の領域では、構造・省エネ・BIMを一括支援し、設計からデータ保存までを担う「木造建築プラットフォーム」として深く関与することで、収益の柱へと成長させます。
<質問5>
質問:木造住宅のBIM化や、設計・施工から維持管理までの情報活用を掲げていますが、BIMを使った提供価値を工務店側の業務改善と施主側の資産価値向上にどう結びつけ、どの指標で成果を測りますか?
回答:工務店さまへは、設計の効率化とプレゼン力の向上を実現します。BIMデータの活用により人員を増やさず設計対応件数を最大化させることで、生産性の向上という業務改善に繋げます。
施主様へは、建物の詳細な履歴を3次元データで保存・継承することで、将来的な性能証明と客観的な資産価値の維持を担保します。
成果は「BIMデータの作成数」や「一人当たりの設計生産性」を指標として測っていきます。