2026年3月期 決算・IR説明会
今井政人氏(以下、今井):鉄建建設株式会社社長の今井です。本日はご多用の中ご出席いただき、誠にありがとうございます。当社の2026年3月期決算、2027年3月期業績予想、そして中期経営計画2028アップデートについてご説明します。
まず、決算および業績予想について、取締役管理本部担当の草刈よりご説明します。
決算・業績予想のポイント
草刈昭博氏(以下、草刈):取締役管理本部担当の草刈です。2026年3月期決算概要と2027年3月期業績予想についてご説明します。
まず、2026年3月期の決算概要です。受注高は土木事業、建築事業ともに好調で、423億円増加しました。売上高は、海外工事の減少や前期反動減により減収となりました。
営業利益は、土木事業の設計変更獲得や建築事業の採算性改善により増益となりました。経常利益も匿名組合投資利益の計上などにより増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は営業利益および経常利益の増加により、増益となりしました。配当予定は170円です。
続いて、2027年3月期の業績見込みです。売上高は、手持ち工事が計画どおりに進捗していることに加え、不動産事業における大型案件の売却予定により増収を見込んでいます。
営業利益および当期純利益は、売上高の増収や建築工事の採算性の改善により増益を見込んでいます。配当予定は223円です。
2026年3月期 決算概要(連結)
2026年3月期の業績ハイライトです。売上高は前期比52億円減の1,798億円、売上総利益は土木事業の設計変更獲得や建築事業の採算性向上などにより、前期比26億円増の174億円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益および経常利益の増加により、前期比16億円増の50億円となっています。
セグメント別業績(連結)
セグメント別の業績です。売上高は、土木事業が911億円、建築事業が832億円、不動産等事業が54億円で、合計1,798億円となりました。
土木事業は手持ち工事が順調に進捗し、前期比21億円の増収となりました。一方、建築事業では前期の反動減の影響で76億円の減収となりましたが、不動産事業は計画どおり4件の物件を売却したことで、前期比2億円の増収となりました。
スライド左上の円グラフは、売上高の構成を示しています。土木事業が約50パーセント、建築事業が約46パーセントで、構成比はほぼ1対1となっています。
売上総利益は土木事業が98億円、建築事業が61億円、不動産等事業が15億円で、合計174億円でした。特に建築事業では、低採算工事の減少や設計変更の獲得といった要因により、売上総利益率が大幅に向上し、前期比18億円の増加となりました。
右上の円グラフは売上総利益の構成比を示しており、土木事業が約56パーセント、建築事業が約35パーセントとなっています。また、右側の表には、土木事業と建築事業の売上総利益率が示されています。土木事業は10.8パーセント、建築事業は7.3パーセントで、いずれも前期より向上しています。
営業利益の対計画増減要因
営業利益の期首計画比の増減要因を、ウォーターフォールチャートで示しています。主な増減要因として、一部工事における工事原価増加によるマイナス要因があったものの、設計変更の獲得や工事原価の圧縮といった増加要因がありました。
また、兼業事業利益の増加や販管費の圧縮が寄与し、営業利益は期首計画比で22億円増加して56億円となりました。
営業外収支・特別損益・その他の差異要因(連結)
営業外収支および特別損益について、前期との増減額とその主な要因を示します。
まず、営業外収支についてです。営業外収益は匿名組合投資利益の計上や受取配当金の増加により、前期比8億円増の16億円となりました。一方、営業外費用は支払利息の増加などにより、前期比1億円増の14億円となっています。その結果、営業外収支は、2億円となりました。
次に、特別損益についてです。投資有価証券売却益が約2億5,000万円増加しましたが、減損損失の計上により、16億円となりました。結果として、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比16億円増の50億円となりました。
財政状況・キャッシュ・フロー(連結)
財政状況とキャッシュ・フローについてです。スライド左上のグラフは、総資産を示しています。総資産は完成工事未収入金の増加等により、前年度比308億円増の2,559億円となりました。
左下のグラフは自己資本、有利子負債、自己資本比率を示しています。自己資本は利益剰余金の積み増し等により、前年度比86億円増の784億円となりました。有利子負債は工事立替高の増加や支払いサイトの短縮等により、前年度比197億円増の756億円となりました。
赤色の折れ線グラフは自己資本比率を示しています。工事立替高の増加等により総資産が増加したため、自己資本比率は30.6パーセントとなりました。
右側のグラフはキャッシュ・フローに関するものです。資金不足は財務キャッシュ・フローの増加によって補っています。営業キャッシュ・フローは、工事代金の回収に取り組んだことで、前年度比で64億円改善したものの、マイナス138億円となりました。
受注高・完成工事高・繰越工事高(連結)
受注高、完成工事高、繰越工事高についてです。
受注高は、土木事業では大型トンネル工事の受注等、建築事業では大型住宅工事等の受注により、前期比423億円増の2,256億円となりました。
完成工事高は、土木事業では手持ち工事が順調に進捗し、前期比21億円増の911億円となる一方、建築事業では前期の反動から76億円減の832億円となり、完成工事全体では前期比54億円減の1,743億円となりました。
繰越工事高は、主に手持ち工事が多かったことに加え、順調な受注の結果、前期比512億円増の3,316億円となりました。この繰越工事高は、過去10年間の最大値となっています。
主な受注件名(2026年3月期)
2026年3月期に受注した主な工事です。土木事業は総額1,159億円、建築事業は総額1,097億円の工事を受注しました。スライドの上段に土木事業の主な受注工事、下段に建築事業の主な受注工事を示しています。
土木事業では大型のトンネル工事や高速道路、建築事業では大型のマンションや防衛施設、鉄道施設などを受注しています。
以上、2026年3月期の決算概要についてのご説明でした。
2027年3月期 業績予想(連結)
2027年3月期の業績予想は、増収および営業利益と当期純利益の増益を見込んでいます。売上高は、前期比52億円増の1,850億円を予想しています。この背景として、手持ち工事量の多さや計画どおりの進捗に加え、不動産の大型案件売却による増益が挙げられます。
営業利益は、売上高の増加や建築工事における現場支援体制の強化による採算性の向上により、前期比10億円増の66億円を見込んでいます。また、政策保有株式の売却を着実に進めることで、当期純利益の増益を見込んでいます。配当は、前期比53円増の223円を予定しています。
以上が、2027年3月期の業績予想のご説明です。
はじめに
今井:続いて、社長の今井より、昨日発表した「中期経営計画2028」の「パーパスを基軸としたアップデート」についてご説明します。本日は時間の都合上、アップデートした箇所を中心に抜粋してご説明しますので、ご了承ください。
INDEX
チャプター1で当社が新たに定めたパーパスをご説明し、続いてチャプター2で中期経営計画のアップデート概要をお話しします。
その後、チャプター3・チャプター4で事業戦略と基盤戦略、チャプター5で株主還元方針を含む資本政策、最後にチャプター6で資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応をご説明します。
それでは、中期経営計画に掲げたパーパスについてご説明します。
Purpose|パーパス
「動き続ける街に、進化し続ける力を」、これが当社グループが初めて策定したパーパスです。いわゆる当社の普遍的な存在理由を示しています。
これまで当社グループは、鉄道工事を原点に、人々の暮らしを支える社会基盤や、人が集い、過ごす空間を自らの手でつくり、守り続けてきました。つまり、人々の営みを決して止めることなく、街の「あたりまえ」を支えてきました。
一方で、さまざまな社会環境の変化により、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化し、建設業に求められる役割も確実に変わり始めています。こうした背景を踏まえ、当社の強みや社会への提供価値、将来の展望をあらためて見つめ直し、経営陣で議論を重ねる中で紡ぎ出した言葉が、このパーパスです。
「動き続ける街」には、人々の暮らしを支えるあらゆる基盤、「進化し続ける力」には、街の進化と当社グループの進化の2つの意味を込め、「動き続ける街に、力を届ける」という当社の飽くなき使命と存在理由を表しています。
理念体系
パーパスに加え、ミッションと100周年ドリームも定めました。今年で創立82年を迎えた当社が、創立100年に際してありたい姿を明確にし、社会価値、顧客価値、技術進化、人材育成、組織風土、持続的成長という長期的な6つの方向性に基づいて整理したものです。
これらの方向性は、当社が意思決定や事業活動を進める際の拠り所となる考え方として、今後、社内外で広く活用していきます。
今回の中期経営計画のアップデートは、単なる数値目標の更新ではなく、このパーパスを基軸としたアップデートであることをご認識いただければと思います。
中期経営計画2028の中間レビュー
アップデートの内容です。2024年度から5年間の計画で始めた現中期計画ですが、2年目となる2025年度は、前段の決算説明でもお伝えしたとおり、2度の上方修正を行うなど、利益面で想定を上回るペースで進捗し、おおむね1年前倒しで目標を達成しました。
これを可能にした背景には、上向きの事業環境に加え、受注時に利益率を重視した選別受注の設定、生産性向上施策の推進、専門組織による現場支援業務の拡充等があります。これらにより、組織全体として収益力が着実に向上していると認識しています。
一方で、国債利回りの高騰により、当社の株主資本コストが上昇してきています。そのため、2026年度以降については、新たな数値目標へのアップデートが必要であると判断しました。
アップデートの方向性|パーパスを基軸としたアップデート
今回のアップデートの位置づけについてです。スライド左側に青色で示した現行中期経営計画の基本方針4点は変更せず、赤色で示した4点を中心に中期経営計画をアップデートしました。
具体的には、パーパスを策定し、「100周年ドリーム」として当社の目指す姿を明確化しました。また、売上高、利益、ROEなどの数値目標を上方修正し、これまで十分に示せていなかった投資計画を整理しています。さらに、より安定的で充実した株主還元方針へと見直しました。
アップデートの方向性|財務・非財務KPI
まず、財務KPIについてです。スライドにアップデート前後の財務KPIを示しています。最も重要視しているKPIであるROEは、2028年度に8パーセントを目標としていたものを10パーセントに上方修正しました。営業利益は、2028年度の目標を80億円から110億円に上方修正しました。
株主還元は、従来の配当性向50パーセント程度から転換し、より安定的かつ継続的な還元を実現するために、DOE(自己資本配当率)4パーセント以上を目安に配当していく方針としました。
非財務KPIは、環境、安全、人材の観点から設定した目標に変更はありません。
アップデートの方向性|主要KPI
こちらのスライドは、主要KPIの推移を示すグラフです。売上高は、2028年度に2,120億円を目標としています。2025年度比で約1.2倍の水準です。売上総利益は、コア事業の収益率をさらに高めて242億円とし、2025年度比で約1.4倍を目標とします。
各セグメント別では、土木事業が13.0パーセント、建築事業が9.2パーセントと、いずれも現状より利益率を約2パーセント向上させる計画です。
ROEは、株主資本コストが7.5パーセントから8.0パーセント程度に上昇していると認識しており、それを上回るROEの早期達成により、エクイティスプレッドの着実な拡大を目指していきます。
次のスライドからは、土木・建築・不動産の各セグメントにおける事業戦略についてご説明します。
事業環境の見通し|鉄道
各事業の戦略を示す前に、当社を取り巻く事業環境についてご説明し、その中で当社の強みがどのように発揮されるかをお伝えします。
まずは鉄道分野です。当社は鉄道工事のトップランナーとして、豊富な施工実績と高い技術力を有しています。さらに、鉄道工事に必要な専門技術者を競合他社を大きく上回る数を擁している点を強みとしています。
新線建設や新宿、渋谷、品川などの大規模駅改良の工事についても、すでに当社が一定数受注しています。また、耐震補強、ホームドア、立体交差、車両基地や発電所などの鉄道関連施設の更新などは、老朽化に伴う取替工事として継続的に必要となる工事です。JRや私鉄を問わず、今後も長期にわたり需要が見込まれるこれらの工事について、当社は競争優位性があると考えています。
事業環境の見通し|土木事業
土木事業についてです。高速道路や上下水道を中心に、更新投資が継続的に実施される見通しです。特に道路分野では、NEXCOが主導する維持管理投資が引き続き行われる見込みであり、その中で当社の強みを最大限に活かせると考えています。
私たちは、日々走り続ける鉄道を止めることなく、深夜の運行停止時間帯における短時間の工事や、鉄道に近接した制約の多い工事を数多く実施しています。また、高速道路の工事においても交通を止めないという観点から、当社が築き上げてきた技術や安全への取り組みといった文化が、競争優位性を発揮すると認識しています。
上下水道では、老朽化が目に見えるかたちで進行しており、これに対応するため最優先で公共投資が進められています。当社は、東京都が発注する工事を中心に多くの施工実績を有しており、蓄積したノウハウを活かし、拡大する事業へ積極的に取り組んでいきます。
事業環境の見通し|建築事業
建築事業の環境です。物流拡大とインバウンド回復を背景に、生産施設やホテル需要は引き続き堅調と見込んでいます。特に物流施設は、ECの拡大や「物流2024年問題」への対応により、施設の効率化ニーズが拡大しており、倉庫・工場やホテルも含めて安定した需要を見込んでいます。
また、防衛力強化の流れを受け、防衛省施設の投資拡大も進む見通しです。当社は、防衛施設特有の要求水準に応える技術力と施工体制を有しており、全国の隊舎や庁舎整備において豊富な施工実績があります。今後も受注の拡大を図りたいと考えています。
事業ポートフォリオ
こちらが2028年度に目標とする事業ポートフォリオです。スライド右側に記載のとおり、2028年度の売上高は、従来の2,000億円から事業環境の上振れを踏まえて120億円を上積みし、2,120億円に引き上げています。
単なる規模拡大ではなく、利益最大化の観点から注力分野を明確にし、建築・土木ともに1,000億円規模の売上を目指します。
注力分野は、右側のグラフをピンク色で囲った部分です。鉄道に加え、土木分野では道路や上下水道、建築分野では倉庫、工場、ホテル、防衛省など官公庁建築に注力していきます。
土木事業|戦略骨子
各事業の取り組みについてです。土木事業では、スライドに示す3つの戦略をもとに、2028年度に売上総利益130億円、利益率13パーセントを目指しています。
戦略①や戦略②のような組織的な取り組みをこれまで以上に推進することで、利益率の向上が可能だと考えています。また、戦略③では、開発した技術を実施工へ応用し、下水道工事や電力鉄塔工事の新規受注に取り組んでいきます。
各戦略の詳細については割愛しますので、資料をご確認ください。
建築事業|戦略骨子
建築事業では、2028年度に売上総利益92億円、利益率9.2パーセントを目標に掲げています。グラフの右側をご覧ください。戦略①として、利益の最大化を考慮したポートフォリオを意識し、選別受注を徹底することです。
また、戦略②として、新設したコストマネジメント部と集中支援部が不採算案件の削減と生産性向上に大きく貢献していることを受け、これらの取り組みを一層加速させることで、この目標を達成できると認識しています。
不動産事業・新事業
不動産事業と新事業についてです。不動産事業は、当社のコア事業と親和性の高い分野です。そのため、新規開発事業や保有不動産の見直しを含め、規律ある投資判断のもとで進めていきます。
また、新事業は、サステナビリティの観点で重要な事業だと認識していますが、経済的価値を生み出せる事業として育成することが重要だと考えています。
人的資本政策
基盤戦略についてです。人材、DX、環境の3つの側面から、事業を支える競争力を強化していきたいと考えています。今回は時間の都合上、詳細は割愛します。
財務戦略
資本政策および株主還元方針についてご説明します。
まず、財務戦略です。スライド左側の図をご覧ください。当社は「収益力の強化」「財務健全性の向上」「株主還元の充実」「資産構成の効率化」の4点をバランスよく推進することで、株主資本コストを上回るROEの実現を目指します。
これらと連動して、基盤戦略で示した「人的資本」「DX」「環境」「ガバナンス」を推進し、中長期的な企業価値向上につなげていきます。
財務戦略|財務健全性の向上
財務の現状についてです。当社の自己資本比率は30パーセントを上回っています。財務の安定性は一定程度確保できていますが、長期的には自己資本比率を35パーセントから40パーセントの水準に引き上げることを目指しています。
一方、有利子負債の増加に伴い、D/Eレシオが上昇している点は、重要な経営課題と認識しています。これは「一部の工事の工事代金回収の遅れ」や「健全なサプライチェーン構築のために協力会社への支払条件を見直したこと」などの一時的な要因によるもので、2025年度がピークになると見込んでいます。
しかし、他社に比べて負債が多い傾向は今後も続くと考えています。そのため、負債削減に重点を置き、D/Eレシオ0.8倍以下を目標に設定し、長期的には0.5倍程度までの改善を目指します。
負債削減の取り組みとして、施工中の工事における工事代金の早期回収や前払金・出来高払いの活用により、キャッシュの回転率向上を図り、受注時には工事代金回収サイクルを十分に考慮していきます。また、新規投資については規律ある投資を徹底し、財務体質の改善を進めます。
財務戦略|資産構成の効率化
資産構成の効率化についてです。政策保有株は、5年間で累計100億円以上の売却計画に基づき、売却を進めていきます。2024年度以降、保有先企業との協議と売却を進めており、2025年度には5銘柄約37億円を売却しました。2026年度についても3銘柄、約30億円の売却を予定しています。
純資産に占める比率の目標値は、保有株の評価額が上振れしたことを受け、「2026年度に20パーセント以下」としていた当初目標を見直し、「2028年度に20パーセント未満」とする計画に変更しています。
保有資産は、事業戦略との整合性や収益性を踏まえて資産グルーピングし、戦略的に売却する予定です。売却で得られた資金を成長分野への投資や株主還元に再配分し、資産効率の改善を実現します。
キャッシュアロケーション
キャッシュアロケーションについてです。キャッシュインは、営業利益340億円、償却費40億円、政策保有株および保有資産の売却で150億円を計画しています。必要に応じて、財務健全性を維持しつつ、有利子負債によるレバレッジを活用します。
キャッシュアウトは、255億円の投資計画に加え、株主還元として150億円、法人税などで140億円を見込んでいます。また、M&A投資は別枠とし、当社事業とのシナジー効果を十分に検討した上で実施します。
投資計画については、次のスライドでご説明します。
投資計画
今回のアップデートでは、新たに策定した「100周年ドリーム」の実現に向け、5年間で総額255億円の投資計画を明確化しました。内訳は、事業戦略投資が170億円、基盤戦略投資が85億円です。
事業戦略投資では、技術開発に70億円、事業開発に100億円を計画しており、当社の強みであるインフラを止めずに更新する技術に加え、将来に向けた診断・予測技術のリサーチにも取り組みます。
基盤戦略投資では、DXに70億円、人材・組織に15億円を投資し、DXによる生産性向上とエンゲージメント向上のための制度や環境の整備を拡充します。これらの投資を通じて、将来の成長基盤を着実に構築していきます。
詳細な投資計画は資料内に記載していますが、時間の都合上、ご説明は割愛します。
株主還元方針
株主還元方針です。現中期経営計画ではこれまで「配当性向50パーセント」および「累進配当」により、配当を拡充してきました。
今後は、さらなる安定配当と成長投資の両立を実現するために、DOE(自己資本配当率)を導入し、DOE4パーセント以上を目安とした安定配当へ移行します。これにより、2026年度の1株当たりの期末配当は223円を予定しています。
なお、自己株式取得は、資本効率や市場環境を踏まえた選択肢の1つと位置づけ、基本は配当を中心とした株主還元を進めていきます。
ここまで、中期経営計画のアップデートとして、事業戦略・基盤戦略・資本政策を一体的にご説明してきました。当社は、これらの取り組みにより収益性と資本効率の向上を図っていきます。その上で最後に、資本市場が重視する資本コストや株価を意識した経営に対する当社の考え方をご説明します。
現状認識
資本市場の観点から現状認識についてご説明します。スライドの図は、PBR、ROE、PERについて、当社と準大手・中堅ゼネコンの平均値を比較したものです。
左側のPBRは、収益力向上や資本効率改善の取り組みにより着実に改善しているものの、依然として1倍を下回る水準にあります。また、足元では国債利回りの上昇を背景に、当社の株主資本コストが8パーセント程度まで上昇していると認識しています。一方で、ROEは株主資本コストを上回る水準にはいまだ至っておらず、資本コストを超えるROEの早期達成が重要な課題です。
さらに、PERについても、長期的に同業他社と比較して低い水準にあります。当社から明確な成長戦略を十分に示せていないことが、成長期待を株価に十分に反映できていない一因だと認識しています。
こうした状況を踏まえ、今回の中期経営計画のアップデートに至りました。今後は、これまでご説明した施策を着実に実行するとともに、投資家のみなさまとの対話を一層強化し、評価の向上につなげていきます。
ROE向上に向けた考え方
ROEの向上については、「収益力の強化」に加え、前段でご説明した「財務健全性の向上」「資産構成の効率化」「株主還元の充実」をバランスよく実施する必要があると考えています。
加えて、当社は企業認知度の向上が不十分との評価もあるため、情報開示や投資家との対話を充実させ、IR活動を一層強化し、認知度向上と株主資本コストの低減を図っていきます。
利益創出力の底上げと資本効率への意識強化
前段でご説明したとおり、今回のアップデートでは利益目標およびROE目標を更新しました。最重要KPIである、ROE10パーセントを必達目標として取り組んでいきます。
利益向上に向けて
スライド左側のグラフは、同業他社との生産性を比較したものです。横軸に社員1人当たりの売上高、縦軸に社員1人当たりの営業利益ををとってプロットしています。当社は赤色の丸印で示していますが、ご覧のとおり、業界内では相対的に低い位置にあります。
なお、こちらは当社の2024年度実績および2025年度実績を示したものです。2024年から2025年にかけて着実に生産性が向上しており、今後はグラフ内の矢印が示す方向に沿って、2028年度の計画値を目指し、さらなる向上を図ります。
本中期経営計画において目標を達成することで、同業他社と同等、もしくはそれ以上の水準に到達することを目指しています。
株主・投資家との対話
株主・投資家との対話についてです。当社は適切な市場評価の獲得に向け、IR・SR活動を強化しており、説明会や1on1ミーティング、施設見学会など対話の機会を着実に拡大しています。
スライド中央の写真は、先日実施した機関投資家向け施設見学会の様子です。こうした対話を通じて貴重なご意見をいただき、随時経営にフィードバックを行っています。
特に、TOPIX構成銘柄の維持に向けた取り組みについては、投資家のみなさまから多くのご質問をいただいており、当社としても昨今の重要な経営課題と認識しています。
今後も、TOPIX採用の継続を意識したさまざまな取り組みを行い、投資家のみなさまに当社をより深く理解していただき、企業価値向上につなげていきます。
以上で、決算説明および「中期経営計画2028 パーパスを基軸としたアップデート」についての説明を終了します。ありがとうございました。
質疑応答:ROE目標の達成における課題について
質問者:今回、ROE目標を10パーセントに引き上げられましたが、実現に向けた課題や達成可能性について教えてください。
猪塚武志氏(以下、猪塚):取締役常務執行役員経営企画本部長の猪塚よりお答えします。
ROE10パーセントに向けた最大の課題は、売上規模の拡大よりも、安定的に利益を創出できる収益体制への転換だと認識しています。特に、低採算工事の抑制、現場生産性の向上、設計変更獲得力の強化の3点を、重要なテーマと捉えています。
また、2025年度の実績では、利益率を重視した選別受注、本社による現場支援体制の強化により、利益目標を前倒しで達成するなど、収益改善が着実に進んでいます。
加えて、政策保有株式や保有資産の見直しも同時に進めることで、収益力強化と資本効率改善の両面から取り組み、ROE10パーセント以上の達成を目指します。
質疑応答:DOE目標導入の経緯と累進配当方針について
質問者:DOE目標を導入された経緯について教えてください。なぜ累進配当方針がなくなったのかについても、うかがいたいです。
猪塚:まず、DOE導入の経緯についてです。当社はこれまで、配当性向50パーセント程度および累進配当を基本方針として実施してきました。一方で建設業界では、採算や工事進捗などにより年度ごとの利益変動要因を受けやすく、より安定的かつ継続的な株主還元を求めるご意見をいただいていました。
このような背景を踏まえ、株主還元の安定性・継続性をより明確に示すため、今回DOEを導入しました。
累進配当については文言として明記していませんが、株主還元方針を後退させる意図は一切ございません。利益成長により各年度の自己資本が積み上がることで、DOE基準でも中長期的な配当水準の向上につながると考えています。
質疑応答:繰越工事高増加に伴う施工キャパシティについて
質問者:昨年度の大幅な受注高増加により、繰越工事高が過去10年で最大になったとのご説明がありました。この点で、施工キャパシティに問題はないのでしょうか?
猪塚:昨年度の受注水準が非常に高かった点は、先ほどの説明のとおりです。当社では、施工能力を十分に考慮した上で受注を行っています。
単に受注量を増やすことを目的とするのではなく、社員配置や案件の施工条件、収益性などを踏まえた選別受注を徹底した点が、従来からの改善点です。そのため、施工キャパシティに問題はないと認識しています。
質疑応答:注力事業分野の売上高伸長策について
質問者:注力事業分野について、2028年度の売上高目標は2,120億円とされています。今後どのように売上高を伸ばしていくのか、もう少し詳しく教えてください。
猪塚:先ほど今井から中期経営計画のアップデートについて説明がありましたが、チャプター3以降にも記載のとおり、当社は鉄道事業を引き続き中核事業として取り組んでいきます。
また、土木分野については、全国で展開されているNEXCO関連の更新・維持修繕工事や、国土強靱化の優先施策である上下水道の更新、バックアップ機能強化案件への取り組みを進めていきます。
一方で、建築事業では、物流需要やインバウンド需要を背景に、工場・倉庫などの生産施設やホテル事業に注力していきます。加えて、これまでも注力している防衛省関連施設工事についても、過去に100件以上の実績があることから、当社の強みと捉えており、引き続き受注拡大を図ります。
質疑応答:中東情勢の影響による資機材価格高騰と供給網への影響について
質問者:昨今、中東情勢の影響で資機材価格の高騰や物流の混乱が報道されています。御社のコストや供給網、そして今期の業績への影響についてお聞かせください。
猪塚:まず、中東情勢の緊迫化についてですが、ご指摘のとおり、当社としても重大な経営リスクと認識しています。そのため、工事への影響について全国の現場にヒアリングを実施し、危機管理委員会を設置して社内で情報共有しながら対応を進めています。
具体的には、建築関連で使用する塗装材や、土木事業における道路・アスファルト関連の石油由来製品について、価格高騰や出荷制限が生じているとの報告を受けています。
一方、直近の第1四半期における今回の影響は、全体業績に占める割合が軽微であると確認しています。しかしながら、現在の状況が長期化、あるいは急変した場合には影響が発生する可能性は十分にあります。
そのような場合でも、昨今は建設業界全体で資機材価格高騰に伴う価格転嫁への理解が一定程度進んでいます。当社も必要に応じて発注者との協議を進めながら対応していきたいと考えています。
質疑応答:中東情勢の影響と受注対応について
質問者:中東情勢に関して、今後の受注への影響はいかがでしょうか?
猪塚:中東情勢による受注への影響ですが、現時点で入札を見送る対応は考えていません。発注案件ごとに工期、施工条件、資機材の調達状況、価格変動リスクなどを確認した上で対応します。
また、中東情勢の悪化による影響は、請負者の責めによらない事由として、契約上の条件変更協議の対象になるものと認識しています。これらの点を確認しつつ、慎重に入札に参加する方針です。