■システムインテグレータの今後の見通し
2. 長期ビジョンと2年経営計画
(1) 長期ビジョンと「2年経営計画」の位置付け
同社は2025年4月に発表した長期ビジョンで、「ものつくり企業のビジネスプロセスをITの力で本質的に変革する」を掲げ、時間を与えるソフトウェアを創り続けるとともに、プロダクト志向からの脱皮と課題解決のためのシステムインテグレーションに注力していくことで、中長期的な成長を目指す方針を打ち出した。同ビジョンの下、2033年2月期に売上高120億円、営業利益20億円(営業利益率16.7%)を目指す。今後7年間の年平均成長率は売上高で11.6%、営業利益で18.9%となる。
また、毎年ローリング方式により更新する「2年経営計画」(2027年2月期~2028年2月期)を新たに策定した。生成AIの急速な進化により、IT業界及び顧客企業の業務変革スピードが一段と加速するなか、今回の「2年経営計画」では過去の延長線上での事業運営ではなく、将来の成長軌道を明確に切り替えるための重要な移行期間と位置付けている。重点テーマとして、「収益基盤の多軸化とクロスセルによる成長加速」「AIネイティブ組織への進化と人的資本の最大化」「AIを軸にした新規事業の創出とアライアンスによる成長機会の拡大」の3点を掲げ、既存事業の進化と新たな収益柱の育成を同時に推進していく。
(2) 事業戦略
a) 収益基盤の多軸化とクロスセルによる成長加速
同社はERP事業においてこれまでの「GRANDIT」中心の収益構造から脱皮し、グローバル標準ERPである「SAP」及び製造業特化型ソリューションである「mcframe」の開発体制も強化することで、多様なニーズを取り込んでいく。また、2026年11月には持分法適用関連会社のBizSaaSがクラウド型次世代ERP「BizSaaS」のリリースを予定しており、2027年以降戦力化してくるものと期待される。各種ERPや製造業向けソリューションに加えてAIソリューションや開発ツールなどのクロスセルを推進することにより顧客単価及び顧客接点の拡大を図る戦略で、「2年経営計画」における売上成長の大半をこの取り組みにより実現する考えだ。
b) 「AIネイティブ」組織への進化と人的資本の最大化
同社では、これまで「AIファースト」を掲げ、全社員にAIに関する教育研修を実施し、AIリテラシーを身に付けさせてきた。今後は、提案、設計、開発、品質管理などの業務そのものをAI前提で再設計する「AIネイティブ」な組織への進化に取り組んでいく。具体的には、職種別AIスキルモデルの整備、社内AIアシスタントの活用、業務プロセスの見直し等を通じて、社員1人当たりの生産性と付加価値創出力の向上を図り、営業利益率を引き上げていく。
c) AIを軸にした新規事業の創出とアライアンスを通じた飛躍的な成長
既存事業における安定的な収益基盤を維持しつつ、将来の新たな収益柱を育成するため、AIを軸とした新規事業の立ち上げを推進していく。AI事業では、検図AIサービス「KENZ Ver.2」を2027年2月期の上期中に販売開始し、下期には機能強化を予定している。現状は個社ごとの要望に応じたカスタムメイド仕様となっているが、将来的には機能を標準化しながらSaaSとして提供する予定だ。また、2027年2月期の下期に新規サービスとして設計Hub-AIをリリースしPoCを開始、2028年2月期に本格販売を開始する予定だ。設計Hub-AIは、設計図面だけでなく設計部門で必要となる関連書類も含めた整合性をAIで確認するツールであり、設計部門全体の生産性向上を支援する。いずれも設計部門を社内に有している製造業が顧客ターゲット※となり、2033年2月期の売上高として両製品合わせて20億円を目指す。
※ 資本金3億円以上の機械・電機・精密・輸送機器関連企業約7千社を顧客ターゲットとしている。
また、新製品として経営管理ツールも2027年2月期の下期から販売開始する予定である。製品の特長についてはリリースを待つ必要があるが、制度会計だけでなく管理会計にも対応し、予実管理なども含めてAI機能を実装した利便性の良いツールになっているものと推測される。業界でもデファクトスタンダードとなる製品がまだ存在しないことから、顧客を獲得できる可能性は十分にあると見ており、2033年2月期の売上高として12億円を目指す。
また、M&Aやアライアンス戦略を積極的に推進することで、単独では獲得が難しい技術・顧客基盤・市場機会を取り込み、中長期的な成長余地の拡大を目指す。M&Aについては2025年に1件を実施したが、今後も前向きに検討する方針で、2027年2月期の投資予算として1,000~2,000百万円を見込んでいる。M&Aの対象としては、人的あるいは技術的な面から既存事業(ERP/AI領域)の成長につながる企業が対象となり、投資判断にあたっては、資本コスト(WACC)を意識した投資効率(ROIC)の向上と、1株当たり利益の持続的成長を重視する。2027年2月期はWACCで約8%、ROICで約8.5%の水準となっている。最近は事業承継を課題とする企業の売り案件も増えてきているようで、同社にとっては事業規模拡大の好機となる。
(3) キャッシュアロケーション
キャッシュアロケーションの考え方については、事業で創出したキャッシュと手元キャッシュ(2026年2月期末3,225百万円)に借入金も組み合わせることで、成長投資と株主還元に最適配分する方針だ。2027年2月期では、成長投資としてプロダクト投資に200百万円、社内投資(社内システム、オフィス設備)に100百万円、M&Aに1,000~2,000百万円を想定し、株主還元として配当総額120百万円を見込んでいる。M&Aの規模次第では借入金を活用する可能性もある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)