レーザーテックは、EUVマスク欠陥検査装置で世界トップクラスの競争力を持つ半導体検査装置メーカーだ。光応用技術と画像処理技術などを組み合わせた高付加価値製品を展開し、特にEUV(極端紫外線)露光向けマスク検査ではグローバルニッチトップの地位を築いている。事業は半導体関連装置が中心であり、売上高の大半を占める。主要顧客はIntel、TSMC、Samsungなど世界の最先端半導体メーカー・装置メーカーであり、AIサーバー向けGPUやHBMの需要拡大を背景に、中長期的な成長期待が高い企業だ。また、装置販売だけではなく、保守サービスまで含めた高付加価値型ビジネスモデルを構築している。
2026年6月期第3四半期累計は、売上高1,695億円(前年同期比0.4%増)、営業利益781億円(同1.4%減)となった。表面的には増収減益だが、同社の業績は大型装置の検収タイミングによる変動が大きく、単四半期では実態を把握しにくい。同社は出荷基準ではなく検収基準で売上を計上しており、顧客先で装置稼働確認まで完了した段階で売上計上される。このため、検収時期のズレによって四半期ごとの売上・利益が大きく変動しやすい。特にEUV関連装置は受注から出荷まで約1年、さらに検収まで数カ月を要するため、受注回復が売上へ反映されるまで時間差がある。足元ではロジック半導体顧客の投資回復が進み、会社側も2026年6月期の受注高見通しを従来の1,700~2,200億円から、2,000~2,400億円へ引き上げた。特に主力の「ACTIS A200HiTシリーズ」が成長ドライバーとなっている。同製品は従来機比で検査速度が3倍となり、これまで主にフォトマスク製造部門で使われていたEUV検査を、生産ライン側でも本格活用できる可能性が高まった。従来は検査感度重視だった市場に対し、速度性能を大きく向上させたことで、今後はファブ(半導体工場)側での採用拡大が期待される。
2026年6月期会社計画は、売上高2,200億円(前期比12.5%減)、営業利益1,000億円(同18.7%減)を見込む。前期比では減収減益予想だが、これは前期までの急拡大の反動と検収タイミング要因が大きい。一方で、受注は回復基調にあり、現在積み上がっている案件の多くは2027年6月期以降の売上計上となる可能性が高い。特にAI半導体向け投資拡大が追い風となっており、TSMCやIntelなどによる2nm、3nm世代の量産投資が継続している点は重要だ。さらに将来的には1.4nm世代(A14)への微細化も見込まれており、回路線幅の縮小に伴って歩留まりの重要性が一段と高まる。このため、欠陥検査装置への需要は中長期的にも拡大余地が大きいと考えられる。
競合他社との違いは、EUVマスク検査という極めて高難度なニッチ領域に集中し、高シェアを確立している点にある。競合としてはKLAが挙げられるが、同社とKLAで市場の大半を占める構図だ。同社は研究開発に特化したファブライト戦略を採用しており、フラットで柔軟な組織体制による意思決定の速さや開発スピードも強みとなっている。また、高付加価値製品が中心であるため利益率が非常に高い。2025年6月期の営業利益率は約49%と、製造業としては異例の水準を維持した。加えて、EUV関連装置は保守・メンテナンス需要も大きい。特にACTISは光源の安定化が難しく、稼働後のサービス需要が発生しやすいため、今後はサービス売上の拡大も期待される。将来的にサービス売上高比率を20%以上に
引き上げたい考えを示している。
財務面でも優位性は大きい。2026年6月期第3四半期末の自己資本比率は72.5%と高水準であり、研究開発投資や仕掛品積み増しに対応できる財務余力を持つ。大型設備投資も一巡しており、2025年度にはクリーンルーム新設など約50億円の投資を行ったが、2026年度は27億円程度へ低下する見込みだ。製造委託先との連携強化により、現時点では大規模な追加設備投資を必要としない点も収益性維持につながっている。
中期経営計画では、2030年6月期に売上高4,000〜5,000億円を目標に掲げており、現在の売上規模から倍増を目指す計画だ。成長の中心は引き続きロジック半導体向けEUV検査装置となる見通しであり、回路線幅のさらなる微細化に伴い、高精度な欠陥検査需要の拡大が期待される。
株主還元では、2026年6月期の年間配当予想を329円としている。配当性向35%を目安とした弾力的な配当方針を10年以上継続しており、今期には自己株取得も実施した。一方で、同社は高成長企業であり、現時点での優先事項は研究開発などの成長投資や仕掛品確保を優先する局面といえる。
総じて同社は、AI半導体向け需要拡大とEUV世代の微細化進展を背景に、再成長局面へ入りつつある。短期的には検収タイミングによる業績変動や半導体投資サイクルの影響を受ける可能性はあるものの、中長期ではEUVマスク検査市場での独占的ポジションと高い技術優位性が大きな強みだ。今後はACTIS A200HiTシリーズの本格普及と、サービス収益拡大が企業価値向上の中心テーマとなろう。