決算サマリー
真岡宅哉氏(以下、真岡):神戸天然物化学株式会社、代表取締役社長の真岡宅哉です。本日はご多用のところ、当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日は2026年3月期の業績と、今後の見通しについてご説明します。当期は増収増益を確保し、加えて将来の成長に向けた投資も着実に進めることができました。短い時間ですが、要点を押さえ、わかりやすくご説明します。
決算サマリーをご覧ください。2026年3月期は前期比で増収増益となり、従来の見通しを上回る結果となりました。主な要因は、医薬・バイオ分野の開発ステージが当初の想定を上回って進展したことです。
利益面については、EBITDAマージンが通期で前年と同水準でしたが、四半期ベースでは例年どおり第4四半期に業績が偏る構造となりました。第4四半期の調整後EBITDAマージンは8四半期ぶりの高水準を回復しており、2025年3月期の厳しい状況から明確な改善が見られました。
また、成長投資の面では、能力拡大を担うFP-4棟の建設が完了しています。今後は、2027年3月期からの稼働とそれに伴う売上への寄与を見込んでおり、現在も受注獲得活動を積極的に進めています。
一方、新たなリスク要因として、米国とイランの紛争に伴うホルムズ海峡の問題が浮上しています。この点については、当社の事業環境への影響を注視しつつ、引き続き適切に対応していきます。
ホルムズ海峡問題の影響と27/3期見通しについて
ホルムズ海峡問題の影響についてご説明します。当社の主要原材料である原油やナフサ由来の化学品、メタノールなどの調達は中東への依存度が高い状況にあります。このため、現在すでに供給不足や価格高騰が生じており、当社への影響も発生していることから、業績見通しについても不透明感が強まっています。
そのため、現時点では通期業績の合理的な見通しを示すことが難しく、第1四半期のみを開示しています。第1四半期は増収増益を見込んでいますが、第2四半期以降は未定です。
配当については、中間配当を16円とする予定ですが、期末配当は現時点で未定としています。
2026/3月期 経営成績概要
2026年3月期の決算概要です。当期の売上高は前期比11パーセント増となり、特に医薬・バイオ分野が大きく成長しました。バイオ分野ではD棟の稼働に加え、複数の開発案件が寄与し、過去最高の売上を更新しています。
利益面ではコスト上昇がありましたが、増収効果で吸収し、EBITDAマージンは前期並みを維持しました。
さらに、従来見通しに対しても売上・利益ともに上回る結果となり、当初想定を超える着地となりました。
四半期別経営成績
四半期別経営成績についてです。当社は例年、第4四半期に業績が集中する構造ですが、2026年3月期の第4四半期は発生ベースでも増収増益となりました。特に、機能材料とバイオの売上高は四半期ベースで過去最高を更新しています。
また、第4四半期の調整後EBITDAマージンは34.2パーセントと、2年ぶりの高水準に回復しました。収益性の高い案件も第4四半期に集中する結果となっています。
経常利益 増減要因分析
経常利益の増減要因分析です。2025年3月期の経常利益9億2,000万円から、2026年3月期は10億2,000万円へ増加しました。主な要因は、増収効果によるプラス5億4,000万円が、減価償却費や人件費など固定費の増加分であるマイナス4億4,000万円を吸収したためです。
期中の第3四半期まではコスト上昇が重しとなっていましたが、第4四半期に高収益案件が集中したことや、製品構成差異が改善したことにより、通期では増益を確保しています。
分野別動向
当社の3事業部における分野別の動向についてです。分野別にご説明すると、機能材料分野は医療関連材料や半導体関連材料の引き合いが好調でした。来期向けの大型案件の影響を受けつつも、生産は堅調に推移しています。
医薬分野は、上期に設備不調の影響がありましたが、第4四半期に売上が集中し、大きく伸長しました。
バイオ分野では、開発案件の引き合いが好調で、第3四半期の大型案件計上に加え、第4四半期のD棟垂直稼働により売上が拡大しています。
ステージ別売上状況
ステージ別売上状況についてです。ステージ別では、量産ステージが3分野で伸長しました。特にバイオ分野のD棟稼働が大きく寄与し、機能材料・医薬分野では期首想定を上回る需要があり、好調に推移しました。
開発ステージにおいても医薬・バイオ分野での案件取り組みが好調であり、今後の成長が期待される状況です。
研究ステージでは全体的に底堅く推移したものの、バイオ分野は量産・開発案件へのリソース集中の影響でやや伸び悩みました。
受注状況
受注状況についてです。2026年3月期第4四半期も、引き合いは引き続き好調でした。
新規受注は第2四半期を底に反転して増加し、通期では102億円となりました。受注残は第4四半期の出荷集中により一時的に減少しましたが、60億円超の高水準を維持しています。
また、受注残存リードタイムも再び伸びており、医薬を中心に足の長い案件が着実に積み上がっています。一方、FP-4棟のプラス効果については、来期以降に本格化する見込みです。
2026年3月期 財政状態
財務状況についてご説明します。財務状況は、売上債権が減少した一方で、2027年3月期の出荷に備えた棚卸資産が増加しました。
また、FP-4棟の完成により建設仮勘定は解消されています。
有利子負債は増加していますが、自己資本比率は65.1パーセントと依然として高水準を維持しており、財務の健全性は確保されています。
キャッシュフローの状況
キャッシュフローの状況です。営業キャッシュフローは利益の増加に伴い拡大しましたが、FP-4棟を含む大規模設備投資の影響で、フリーキャッシュフローは2年連続でマイナスとなりました。
しかし、投資キャッシュフローは前期より縮小しており、フリーキャッシュフローの赤字幅は改善しています。
財務キャッシュフローでは、借入を増やした結果、期末の現金残高は21億7,300万円まで減少しました。
設備投資
設備投資と減価償却費についてです。2026年3月期の設備投資額は26億4,000万円となり、前年より6億8,000万円減少しました。FP-4棟とD棟の完成により、設備投資は1つのピークを越えたものと考えています。今後は2027年3月期、2028年3月期にかけて、生産効率および稼働率の向上に注力し、投資効果の発現を着実に進めていきます。
減価償却費についてです。スライドに示しているように、D棟の償却費は実質的に発生しないため、調整を行っています。
2026年3月期の償却費は、第4四半期からFP-4棟の償却費が開始されたことにより、前年比で増加しました。2027年3月期からは通期でFP-4棟の償却費を計上するため、さらに償却費の増加を見込んでいます。
2027/3月期の業績見通しと配当予定について
今期の決算見通しについてです。現在、ホルムズ海峡の通行が制限されている状況にあり、2027年3月期通期の業績見通しを現時点で合理的に算定することは困難です。そのため、今回は合理的に算定可能な第1四半期の見通しのみを開示しています。
通期見通しについては、算定が可能となった段階で速やかに開示する方針です。したがって、現時点では通期の方向性を断定せず、外部環境の変化を見極めながら適切なタイミングで情報を開示していきます。
また、配当については、2027年3月期の中間配当を16円とする予定です。一方で、期末配当については現時点で未定としています。今後の業績動向や外部環境を踏まえ、適切に判断していきます。
以上のとおり、2027年3月期は不確実性の高い環境下にあることから、現時点では慎重な開示姿勢をとりつつ、見通しが立ち次第、速やかに情報をお伝えします。
2027/3月期 決算見通し
2027年3月期の決算見通しについてです。第1四半期は前期比18パーセントの増収を見込んでおり、経常利益は黒字予想です。
機能材料については、医療関連材料と半導体関連材料が堅調で、バイオ分野ではD棟の稼働効果や大型開発品の売上計上が寄与する見通しとなっています。
医薬の売上は前年を下回る見込みですが、これは販売時期の影響によるもので、受注や稼働は順調です。
調整後EBITDAについても、前年に発生した一過性損失の解消が寄与し、増益を見込んでいます。
2027/3月期1Q 経常利益 増減要因分析
経常利益の増減要因分析についてご説明します。2027年3月期第1四半期は、前年の一過性損失や稼働差損の解消により、前年比では増益となります。ただし、特殊要因を除いた実力ベースでは減益の見通しです。主な要因としては、FP-4棟の稼働に伴う減価償却費の増加に加え、労務費の増加や中東問題に起因する製品構成差異の影響があります。
FP-4棟の増収効果は今後期待されるものの、第1四半期時点ではまだ限定的です。
株主還元
株主還元についてです。2026年3月期は期末配当17円、年間配当33円を計画しています。
2027年3月期は中間配当を16円に据え置く一方で、期末配当については中東情勢の影響を踏まえ、現時点で未定としています。
配当方針に変更はなく、今後も業績に応じた安定配当を継続していきます。
解決すべき経営課題と対策の進捗
中期経営計画の進捗状況についてご説明します。当社が中期経営計画で掲げている解決すべき5つの経営課題と、その対策の進捗についてご説明します。
1つ目は「専門知識を伴った営業力の強化」です。これに関しては、営業部門の人員を1.4倍に増員し、2026年3月期の新規受注102億円を達成しました。
今後は営業部門員を約2倍に増員し、年間新規受注125億円を目指します。
2つ目は「生産能力/生産性の更なる引上げ」です。この点では、D棟やFP-4棟の稼働開始に加え、業務プロセスの改善を進めてきました。その結果、2025年3月期比で生産性は4パーセント向上しています。
さらに、今後は生産能力を50パーセント向上させ、150パーセントとすることを目標に、1人当たり生産性を20パーセント向上させることを目指します。
3つ目は「変動する顧客ニーズへの対応」です。現在、高薬理活性原薬対応設備の稼働や、半導体向け材料案件の獲得が進んでいます。
また、医薬品の製造管理および品質管理に関する基準であり、品質の良い医薬品製造の要件をまとめた国際的な指針であるGMP(Good Manufacturing Practice)のグローバル化に向けた準備も進めています。
今後は、高薬理活性原薬対応案件の開発ステージ獲得、半導体向け材料案件の新規量産取り込みに加え、品質保証体制の構築を進めていきます。
4つ目は「研究開発から事業化への更なる加速」です。こちらはDCIPファンドへのLP出資や、光オンデマンドケミカル社との共同研究、イムノロック社への出資などを通じて、アカデミアや創薬ベンチャーとのパイプラインの拡充を進めています。
今後は、次期中期経営計画期間での収益化を目指し、基盤事業強化と新規事業探索をさらに推進していきます。
5つ目は「4Q偏重型決算による見通しの蓋然性の乏しさ」です。この点については、私、代表取締役社長の真岡による機関投資家向け説明会の実施やIRセミナーへの登壇など、情報発信機会を増やしてきました。また、受注残の平均残存納期を開示することで、業績見通しの透明性向上に努めています。
以上の結果、5つの課題に対する対策は6割から7割程度進捗しており、今後は2027年3月期から2028年3月期にかけて、収益面および財務面での成長実現を目指す段階に入っています。
収益財務目標の達成進捗度
収益財務目標の達成進捗度についてです。中期経営計画の初年度は増収増益を達成したものの、調整後EBITDAマージンやROEは横ばいで、数字上はスロースタートとなりました。
ただし、第4四半期では収益力が大きく改善しており、営業力や生産力の強化の成果が今後の数字に表れてくると考えています。
今後は2028年3月期に向けて、売上高、EBITDA、ROEの改善を進めていきます。
ホルムズ海峡閉鎖による影響
トピックスです。ホルムズ海峡閉鎖による影響についてご説明します。当社の事業は原油そのものを直接扱うわけではありませんが、ナフサを起点とする基礎化学品・誘導品のサプライチェーンに依存しています。
スライドのとおり、原油は製油所で分留・蒸留され、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などに分かれます。
さらに、ナフサはエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、トルエン、ベンゼン、キシレンといった基礎化学品の原料となり、そこからメチルエチルケトン、酢酸エチル、ブタノール、アセトンなどの誘導体へとつながっていきます。
メタノールは主に天然ガスを原料に製造され、化学原料や燃料として幅広く利用される物質です。
当社の製品群も、このような化学品サプライチェーンの影響を受ける可能性があります。特に重要なのは、日本のナフサ供給がホルムズ海峡に大きく依存していることです。
資料によれば、国産分と輸入分を合わせた全体の約80パーセントがホルムズ海峡に依存していると推定されています。そのため、ホルムズ海峡の閉鎖や通行制限が長期化した場合には、原料調達の不安定化、ナフサ価格の上昇、物流コストの増加が予想されます。
当社への影響は、主に3点あります。1つ目は原材料コストの上昇です。化学原料の市況が上昇することで、製造原価に影響する可能性があります。
2つ目は調達リスクの高まりです。短期的には在庫や代替調達で対応できますが、長期化すれば供給制約の懸念が高まります。
3つ目は顧客側の需要や生産への影響です。半導体や医薬などの関連産業が原材料高や物流の混乱に直面すれば、受注や納期に間接的な影響を受ける可能性があります。
現時点において、当社では在庫管理、調達先の分散、生産計画の見直しなどを通じて、影響の極小化に努めています。また、実際の影響は、封鎖期間や原油・ナフサ市況の上昇幅によって異なるため、今後も慎重に見極めていきます。
以上で、神戸天然物化学の2026年3月期決算説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:中東情勢によるコスト上昇とPBR低水準推移への対応について
司会者:「昨年の決算時の質疑応答で、原材料高については価格転嫁で対応されているとのご説明があったと思います。今回の中東情勢において、現時点ではコスト上昇を十分に転嫁できており、利益は維持できている状況でしょうか? それとも転嫁が追いつかず、足元では利益が圧迫されている局面でしょうか? 決算後、PBRが0.7倍割れで推移し、今期見通しも未定という状況から、株主として不安を感じています。可能な範囲で結構ですので、現状の実態について教えてください」というご質問です。
真岡:この度は、当社の事業運営、特に現在の経済環境におけるコスト変動や価格転嫁の状況、さらには当社の株価や将来見通しについて、株主のみなさまにご不安をおかけし、また貴重なご質問をいただき、誠にありがとうございます。
まず、中東情勢によるコスト上昇と価格転嫁の状況についてご説明します。原材料コストは足元で全般的に高騰しており、短期的な沈静化は見込みにくい状況です。この影響は当社業績にも少なからず及んでいます。
当社では、これまでも変動する原材料価格に対し、迅速かつ適切な価格改定を行うことで対応してきました。現在においても同様の原則に基づき、新たなコスト上昇が生じた際には、お客さまとの丁寧な対話を通じて適切な価格転嫁を進めています。
現時点で、個別の原材料や製品によっては価格転嫁が進行中のものや、一定の時間差が生じるケースもありますが、全体としては価格転嫁により一定の収益水準の維持に努めています。しかしながら、地政学リスクは依然として高く、今後の情勢変化によってはさらなる変動やサプライチェーンへの影響が生じる可能性があります。当社としては、引き続きこれらの動向を注視し、機動的な価格戦略と効率的なコスト管理を徹底していきます。
次に、PBRが0.7倍を割り込んで推移し、今期の通期見通しを未定としている現状についてご説明します。PBRが低水準で推移していること、また見通しを未定としていることに関して、株主のみなさまから厳しいご評価を受けている点を重く受け止めています。
今期の見通しについては、現在の中東情勢の不透明性や原材料価格の高騰を慎重に見極める必要があり、現時点では合理的な算出が困難なため、未定としています。開示が可能となり次第、速やかにご説明します。
このような厳しい事業環境下においても、当社は中期経営計画に掲げる5つの経営課題に対し、さらなる決意を持って取り組み、持続的な企業価値向上を目指していきます。何卒ご理解とご支援を賜りますようお願いします。
質疑応答:中東情勢によるサプライチェーンの混乱と原材料費高騰への対応について
司会者:「中東情勢についておうかがいします。3月から4月前半にかけて急激な原油・資源価格の高騰やサプライチェーンの深刻な混乱は、多くの企業にとって厳しい事業環境であったと推察します。
一方で、最近では一部で市場の動揺が一時的に沈静化し、サプライチェーンの一部に改善の兆しが見られるなど、ピーク時に比べると多少落ち着きを取り戻しつつあるとの見方もあります。御社として、この現状をどのように評価されていますか? 特に御社のサプライチェーン、原材料調達、顧客心理といった事業への具体的な影響について、足元でどのような変化を感じていますか?」というご質問です。
真岡:ご指摘のとおり、3月から4月前半にかけて発生したサプライチェーンの混乱は、現在少し落ち着きを取り戻しつつあります。
当社は3月末頃から緊急対策本部を設置し、社内の部門間連携強化に加えて、顧客との情報共有を含む社外連携も積極的に図り、稼働を停止することなく対応できました。状況は緩和傾向にあるものの、今後も引き続きこの連携体制を強化し、現場の稼働維持に努めていきます。
一方で、原材料費の高騰が依然として落ち着く気配がなく、高止まりの状況が継続していると認識しています。この問題は短期間での解決が困難であり、長期的な視野で対応する必要があると考えています。
業界全体に及ぶ課題であるからこそ、関係会社のみなさまと密に連携し、解決に向けて全社を挙げて尽力していきます。
質疑応答:営業力強化と中期経営計画に基づく収益向上の取り組みについて
司会者:「2026年3月期の調整後EBITDAマージンは前期と横ばいの21.5パーセントでしたが、中期経営計画では30パーセント超えの回復を目指しておられます。この目標達成に向けた具体的な施策と、2027年3月期以降の業績についてどのように描かれていますか? 特に、新たに建てられたFP-4棟の償却負担増を増収効果で吸収できる見込みについて、詳しく教えてください」というご質問です。
真岡:まずは売上を引き上げることが重要と考えています。そのために営業分野を強化し、受注拡大を目指します。
先ほどの中期経営計画の進捗でもお話ししましたが、初年度が終わった段階で、中期経営計画開始前と比較して、人員数を1.4倍と急速に増加させています。これは、社内異動、ポテンシャルの高い若手や即戦力として期待される中堅の中途採用など、多方面から強化を図った結果です。
足元では新規受注の増加傾向が見られ始めていますが、今後、営業力強化の効果が数字として本格的に表れることを期待しています。
また、現場での人員拡大および教育にも取り組んでいきます。受注拡大とそれに対応する人員の確保が進めば、人員や設備の稼働率が向上し、収益性が必然的に向上すると考えています。
また、FP-4棟などの本格稼働に伴い償却負担の増加が一時的な利益押し下げ要因となりますが、これはすでに織り込み済みです。増収効果によりこの負担を吸収し、中期経営計画の最終年度からは収益の牽引役となると見込んでいます。