経営概況説明会
田浦良文氏:太平洋セメント株式会社代表取締役社長の田浦です。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。
本日は経営概況のご説明ということですが、主要なポイントとして「セメント需要が今後どうなるのか」が、やはりみなさまの関心が高い部分だと思います。私が日頃から考えている「将来的にどうなるだろう」「どうあるべきだ」ということについて少しお話しした後、経営概況のご説明に移ります。
これまで、米国の状況に関する詳しいご説明、「26中期経営計画」を振り返る内容のご説明、決算説明と、説明会を3回行ってきました。
そのため、本日の骨子としては「次の中期経営計画に向けて、今、何を考えているのか」「どのように事業戦略を練っているのか」など、来年に向けて現在考えていることを中心にご説明します。よろしくお願いします。
ウエストバージニア州とオハイオ州境にかかるシルバー橋
まず、今後のセメント需要についての一考察をお話しします。本日は、会場を拝見すると、私くらいの年齢の方があまりいらっしゃらないようですので、おそらくご存じないかと思いますが、スタジオジブリの映画『耳をすませば』に「カントリー・ロード」という歌が出てきます。
もともとはジョン・デンバーが1971年に発表し、ビルボードで2位を記録した曲です。1970年にビートルズが解散し、その翌年に大ヒットしました。
歌詞を見ると、「Almost Heaven」とあります。ウエストバージニア州についての歌であり、ウエストバージニア州は山や川が美しい場所で、「天国に一番近い州だ」といった歌詞で始まります。スライドの写真に写っているシルバー橋は、ウエストバージニア州とオハイオ州をつなぐ、非常に風光明媚な場所にある象徴的な橋です。
●シルバー橋の崩落(1967年)
この橋は、1967年12月15日に落橋しました。クリスマス前の買い物客でにぎわう中、車で橋を渡っていた際に重量オーバーが原因で落橋しました。これにより、46名が亡くなりました。2名は結局見つかりませんでした。非常に寒い場所のため、捜索が大変だったと聞いています。
ニューヨークでの道路崩落
ニューヨークでの道路崩落事故の写真です。1970年から1980年にかけて、米国ではこのような事故が頻発しました。
●1980年代の荒廃するアメリカ
マンハッタンではこれだけ多くの事故が発生しました。コネチカット州では橋の崩落事故があり、ニューヨークではさまざまな補修工事が行われるなど、このようなことが相次ぎました。
●インフラが荒廃した背景
1981年に『荒廃するアメリカ』という本が出版されました。著者はパット・チョート氏とスーザン・ウォルター氏で、日本でも翻訳されています。本書は「このままでは米国が崩壊してしまう。国そのものが滅びてしまう」というトーンの内容が書かれています。
本書の骨子としては、まず1929年の世界大恐慌以前は経済が活況を呈していました。当時、多くの場所で建設工事が行われ、高速道路などの建設がかなりの勢いで進められていました。それが世界大恐慌によって、大きな影響をもたらします。
その後フランクリン・ルーズベルトが1933年からニューディール政策を掲げました。1920年代から1930年代にかけては、インフラ投資としてフーバーダム(Hoover Dam)をはじめとするさまざまな大型工事が行われました。
事故が相次いだのは1970年代から1980年代のことでした。ではなぜ、それ以前に補修工事などが行われなかったのでしょうか。それは、1965年から本格化したベトナム戦争が大きな要因です。
米軍が撤退したのは1973年です。この8年間でかなりの戦費が投入されました。現在の円に換算すると、約200兆円にのぼるといわれています。大量の資金が戦費に使われ、インフラのメンテナンスに資金が回らなかったのが実情だったようです。
●BUILD America 250 Act
その後、米国は「これではいけない」と、インフラ投資を進めてきました。特に大きかったのは、コロナ禍の2021年のバイデン政権時に成立した「インフラ投資雇用法(IIJA:Infrastructure Investment and Jobs Act)」です。
この法律には通信インフラや新しいエネルギーへの投資などが含まれ、総額約1兆ドル、現在の為替レートで約150兆円にのぼる非常に大規模な投資でした。
しかも、これはバイパーティザン(超党派)で可決されました。バイデン氏は民主党に所属しており、通常なら共和党が反対する可能性が高いところ、「これはやらなくてはいけない」ということで、超党派で可決された法案です。
この法案の計画期間は5年間で、ちょうど2026年が5年目になります。そして、つい先日の5月19日に、総額5,800億ドルのインフラ投資法案が承認されました。この中では特に、高速道路や橋といったインフラに対して450億ドルが割り当てられています。総額5,800億ドルは、ほぼ100兆円に相当する規模です。
バイデン政権下で成立した法案は150兆円規模でしたが、今回はトランプ政権下でこれだけの予算が割り当てられています。しかも、民主党もまったく反対しませんでした。米国が国として存続し、崩壊しないためには必要不可欠であると、全員が共通して認識しているためです。米国はこのようにインフラに多くの資金を投入しています。
●日本におけるインフラ老朽化
日本の現状を示しています。先日起こった八潮市の道路陥没事故は、みなさまの記憶にも新しいことと思います。
その前を振り返ると、笹子トンネルの天井板崩落事故がありました。この崩落事故は記憶にあると思いますが、9名が亡くなった事故です。また、東京都北区では水道管破損事故が起こり、周辺では約1週間にわたり水道が止まりました。これも設備の老朽化によるものです。
また、広島を含む西日本豪雨では砂防ダムが決壊し、200名以上が亡くなりました。広島県だけでも100名を超える方が犠牲となり、非常に深刻な被害をもたらしました。これらはすべてインフラの老朽化によるものです。
国土交通省により、建設後50年以上経過している社会資本の割合を示すデータが、2023年3月に公表されました。スライドのグラフに示しているブルーの部分はすべて、2023年3月時点で建設後50年を経過した社会資本を表しています。このように、これほど多くの社会資本が老朽化しています。
道路橋は2023年時点で37パーセント、2030年には54パーセント、2040年には75パーセントが建設後50年を超える状況になります。これが日本の現状です。
●高速道路のミッシングリンク
高速道路のミッシングリンクについてです。特に南海トラフ地震がいつ発生してもおかしくない高知県についてお話しします。この地域には、もともと高速道路の「8の字ネットワーク」を建設する計画がありました。しかし、スライド左下の図を見ると、「×印」の部分はまだ未整備の状況です。
津波が発生した場合、震源地が海岸から近く、高知の町は避難場所となる山が少ないため、わずか3分で被害を受けると言われています。そのような状況で南海トラフ地震が発生した時、いったい誰が救助に駆け付けられるのでしょうか。救助のためのルートも被害を受ける可能性があります。
高速道路であれば、地面より高い位置にあるため、津波の影響をある程度回避できるかもしれません。しかし整備されていないのが現状です。高速道路が整備されていれば、100キロの距離を1時間で移動できるはずの場所であっても2時間、3時間とかかってしまいます。
能登半島地震の際に「リダンダンシー(冗長性)」や「命の道」といったことが強調されていましたが、あれはいったいどうなったのでしょうか。「命の道」の複線化のような取り組みは、ほとんど進んでいないような気がしてなりません。
高速道路のミッシングリンクは、全国で約200区間あると言われています。スライド左上の丸で示した部分が、特に中心的な地域です。これらは、南海トラフ地震や首都直下型地震が想定される地域とも重なっています。
●主要7カ国の公的固定資本形成の推移
主要7ヶ国(G7)の公的固定資本形成の推移を示しています。最も投資しているイギリスは、1995年を100とした場合、現在は約5倍に増加しています。米国でも1995年を100とすると、約3倍に増加しています。一方、日本は1995年を基準として60まで低下しており、減少しています。
社会福祉国家への移行を示唆しているのかもしれませんが、インフラを現状のままにしてよいのでしょうか。このままで日本は成り立つのでしょうか。この点に対して、私は非常に強い懸念を抱いています。
●公的固定資本形成の比較
具体的に見ると、1995年度における日本の公的固定資本形成は約48兆円でした。しかし、2025年度には約33兆円まで減少しています。一方で米国については、約2,400億ドルから約8,500億ドルまで増加しています。日本はこのような状況で本当にいいのかということです。
セメント需要は、1990年には8,600万トン/年ほどありました。それが現在では3,000万トン/年を下回る状況となっています。この背景には、このような予算の配分が影響していると考えられます。
公的固定資本形成は1995年以降、他国が1倍を超えている状況でありながら、日本だけが0.6倍にとどまっています。これを1995年のレベルに戻すだけでも、セメント需要は1,000万トンほど増加します。
よく「セメント需要はどんどん下がっていますが、どうなるのでしょうか?」と聞かれますが、私はこの予算をきちんと確保すべきだと考えています。
セメント需要は、4,000万トンが標準的な水準だと見ています。現在は非常に低い水準です。悪いスパイラルであり、予算が確保されなければ工事が実施できません。
各地域の建設業のみなさまは事業を継続できず、仕事がないと、建設労働者は他の職に流れていきます。1995年には680万人いた建設労働者が、現在は480万人にまで減少しています。
内閣官房 防災庁設置準備室 業務説明会
このような状況をなんとか脱するために、現在期待しているのが防災庁です。11月の発足に向けて業務説明会が始まっており、本日午後2時から行われる予定です。すでに衆議院を通過し、現在は参議院で審議が行われています。
オペレーションの予算は200億円です。実際の工事については、公的固定資本形成の約30兆円と、国土強靱化の約5兆円を合わせ、年間約35兆円が見込まれています。
この予算が震災後のさまざまな救助活動や仮設住宅の整備に充てられることは理解できます。また、スフィア基準がどうなるかといったことについても承知しています。
一方で、本当に取り組むべきは、予防的な施策ではないでしょうか。「みなさまの命を守るための投資をぜひ積極的に進めていただきたい」と政府に訴えたいと思っています。セメント需要がどんどん下がっていくのではなく、やはり国を維持するためには4,000万トン程度に戻すことが必要だとご理解いただきたく、あえてお話ししました。
これらのことは国土交通省の技監まで務められた大石久和先生にお会いしてお話をうかがい、非常に感銘を受けた内容をふまえてお伝えしています。
環境事業
経営概況についてご説明します。まず、「太平洋セメントは都市ごみ、産業廃棄物を処理する会社である」ということです。当社は、表の姿としてセメント会社ではありますが、コインに表と裏があるように、裏の部分である産業廃棄物の処理も当社が長年にわたり力を入れてきた領域です。この点をご理解いただきたいと思います。
環境事業 ●都市ごみのセメント資源化システム
スライド左側に掲載している写真は、みなさまが日頃袋に入れて出している都市ごみです。日本人は1人あたり1日約1キログラムのごみを排出しており、年間でおよそ365キログラム、すなわち0.3トンから0.4トンに相当します。
したがって、人口に0.3トンを掛けると、概算で年間のごみの発生量が算出できます。都道府県により差はありますが、埼玉県日高市の場合、人口が約5万人強であるため、0.3トンを掛けると、年間約1万5,000トンのごみが排出されています。
このごみはすべて、日高市内にある当社の埼玉工場で処理されています。なお、日高市には焼却処分場がありません。
だいぶ前に、関西でダイオキシン問題が発生しました。800度から900度という焼却炉の温度は、ちょうどダイオキシンが生成される温度域でもあります。その際、日高市役所のみなさまは、ダイオキシン問題を絶対に起こしてはならないと考えていました。
日高市内にある当社工場での解決策がないかご相談した結果、完成したのが「AKシステム」であり、ごみを原燃料代替として使用し、セメントを製造できるものとなっています。
環境事業 ●都市ごみのセメント資源化システム
昔使用されていた古いキルンを改良しています。ごみを投入し、約3日間発酵させます。その際、自ら熱を発し、3日目には水分が抜けてセメントの原料や燃料になります。これを利用してセメントを製造しています。これが「AKシステム」で、埼玉工場で実施しています。
環境事業 ●都市ごみのセメント資源化システム
全国の多くの自治体は焼却炉を設置しており、ごみを焼却する過程で灰が発生します。この灰は、どうしても残渣として出てきてしまうものです。
スライド右上に記載のとおり、石灰石と都市ごみ焼却灰を原料として混合し、焼成してつくるのが「エコセメント」です。普通のセメントとは若干特性が異なりますが、十分に使用可能なセメントです。二次コンクリート製品などに長年使用されています。
スライド左下に掲載している写真は、東京都西多摩郡にあるエコセメント工場です。現在リニューアル工事を進めています。
環境事業 ●都市ごみのセメント資源化システム
我々の生活から都市ごみが排出され、それを直接工場で処理する「AKシステム」と、清掃工場から出る焼却灰やばいじんを原料にしてつくる「エコセメント」を主に手がけています。市町村と連携を密にしながら、円滑に処理を進めています。
環境事業 ●当社のセメント製造プロセスにおける廃棄物処理量
セメント工場で廃棄物をどれだけ利用できるかは、工場ごとに異なります。これは、産業廃棄物が集まるかどうかに起因します。技術的には、1トンのセメントを製造する際に500キログラムから600キログラムの廃棄物を利用できるようになっています。
ただし、大船渡工場などでは、まだ廃棄物が集まるシステムが十分に整備されていません。行政のみなさまと協議しながら廃棄物を集める仕組みを構築できれば、スライド右側に示している藤原工場や熊谷工場のように、廃棄物処理量が向上していくと考えます。したがって、さらに貢献できる余地があると見込んでいます。
環境事業 ●災害廃棄物処理(東日本大震災時)
災害廃棄物処理についてお話しします。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、岩手県の大船渡工場が津波の被害を受けました。スライドをご覧いただくとおわかりのとおり、水蒸気爆発が発生し、非常に深刻な状況でした。
幸運なことに、工場には2本のキルンがあり、下にあったキルンは被災しましたが、高台に設置されていたキルンは無事でした。街の様子はスライドのとおりで、がれきの山が広がり、どうすることもできない状態でした。
環境事業 ●災害廃棄物処理(東日本大震災時)
リマテック社と協力し、がれき処理を進めました。津波により海水に浸かり、がれきには多量の塩分が含まれていました。そのままセメントの製造プロセスに利用すると、工程の中で問題が発生する恐れがありました。
そこで、除塩設備を使用し、水で洗浄して塩分を取り除きました。その後、ふるいにかけ、プレス機で水分を除去しました。さらに、燃えるもの、燃えないもの、鉄分、がれき、コンクリートなどをすべて分類し、工場で処理しました。2013年度末までの約2年間で、100万トンのがれきを工場で処理しました。
環境事業 ●災害廃棄物処理
これは東日本大震災に限りません。能登半島地震では災害廃棄物5万2,000トンを処理し、熊本地震でも8万トンを処理しました。
セメントはこのようなことが可能です。どこかに廃棄する場所があればそれでもよいのですが、原料や燃料の代わりとして大量の廃棄物を処理できるのは、産業の中でもセメントだけだと考えています。
環境事業 ●セメント製造プロセスにおける廃棄物処理
セメント製造プロセスにおける廃棄物処理についてご説明します。例えば、建設時に発生する発生土を原料に混ぜ、燃えるものは高温で燃焼するプロセス内で利用します。
セメント製造のプロセスには、2つのバーナーがあります。タワーと呼ばれる部分では、約850度の温度でCaCO3をCaOとCO2に分ける脱炭酸のプロセスが行われます。
その後、1,450度で焼いて溶融し、さまざまな成分を生成します。ちなみに、火山の溶岩の温度はおおよそ1,000度です。それよりもはるかに高い1,450度では、有機物はすべて燃え尽きます。
灰として残るのは無機物であるシリカやアルミナなどです。これらはセメントの原料として十分利用可能です。セメント工場は、さまざまなプロセスのさまざまな場所でこれらを活用できる施設です。
環境事業 ●セメント製造プロセスにおける廃棄物処理
セメント協会が作成した資料です。いろいろなものを処理しており、廃プラスチック、建設発生土、廃タイヤなどの処理も行っています。
環境事業(成長領域) ●廃太陽光パネル処理事業
環境事業は、セメントキルンを使用するだけでなく、例えば廃太陽光パネルの処理も行っています。2012年にFIT(固定価格買取制度)が始まった当時、国は1キロワットアワーあたり40円で買い取っていましたが、現在はプレミアム価格を付与する制度に移行し、おそらく10数円程度となっています。
当時は、1キロワットアワーあたり40円で買い取ってもらえることから、住宅の屋根をはじめ、さまざまな場所で一斉に太陽光パネルが設置されました。そのため、現在、日本には非常に多くの太陽光パネルが存在しています。
これが約20年経過すると老朽化し、更新が必要になります。または、効率が非常に悪化していきます。太陽光発電協会の推計によれば、スライドの黄色のグラフで示しているとおり、2035年頃に廃棄量が急増すると予測されています。
そこで、当社の100パーセント子会社であるナコード社が処理施設を建て、処理後に部品をさまざまに分別し、資源として再利用する取り組みを始めています。
環境事業(成長領域) ●都市鉱山
リチウムイオン電池は、火災が大きな問題となっています。これに対し、当社は積極的に取り組んでいく方針です。福井県にある敦賀セメントの工場で新しい工程を構築しました。リチウムイオン電池には発火性の物質が含まれており、飛行機内で問題を引き起こすこともあります。
しかし、無害化処理を行い、酸素のない還元雰囲気で高温処理を施せば、このような発火性物質も安全に処理できます。無害化した後は、次工程で分解し、それぞれの素材をリサイクルしています。この取り組みは松田産業社と協力して進めています。
環境事業(成長領域) ●都市鉱山
都市鉱山についてです。現在、レアメタルの供給状況が厳しくなってきているため、リサイクルが可能なものはリサイクルするという発想です。
エコセメントの製造工程で灰が入ってくる時、ダストの中に金や銀も含まれています。当社は貴金属を分離・回収する技術を確立し、現在取り組んでいます。
環境事業(成長領域) ●化石燃料代替ビジネス(廃プラスチック利用促進)
廃プラスチックについてです。マイクロプラスチックが海洋汚染を引き起こしており、プラスチックをリサイクルできない場合は、適切に焼却処分を行う必要があります。そうしなければ、不適切に海洋に投棄されることで、魚が摂取するような問題を招きます。
そのため、自治体と連携し、「廃プラスチックの処分を我々に任せてください」と提案しています。石炭の代替として利用することで、CO2の発生を抑えることができ、リサイクルが可能な仕組みを構築しています。
現在、セメントの焼成には主に石炭を使用していますが、廃プラスチックで約50パーセントを代替できます。最終的には、廃プラスチックで80パーセント代替することを目指しています。
石炭は現在、地政学リスクなどの影響で価格が急騰することがありますが、石炭の使用を2割に抑えることで、そのようなリスクの影響を受けにくくなります。この取り組みは、当社にとっても、産業廃棄物の処理を行うみなさまや行政にとってもメリットがあるため、鋭意進めているところです。
環境事業(成長領域) ●廃棄物を最大活用したエコ硬化ブロック
CO2を吸収する「カーボフィクスセメント」についてです。いよいよこれを使って、さまざまなブロックをつくろうとしています。ブロック自体が二酸化炭素を吸収する仕組みを持つ製品を開発しています。
環境事業 ●国内の環境産業の市場規模
環境省が示している国内の環境産業の市場規模を見ると、非常に勢いがあります。人口が減少すれば廃棄物の量は減少すると考えられるため、市場としては成長しないように思われます。2050年には日本の人口が約1億人になるとされており、約2,000万人の減少が見込まれています。
しかし、市場規模は拡大していくと予測されています。その理由として、廃棄物処理費用の上昇や、難しい産業廃棄物を適切に処理していく必要があるという方針の裏づけであると考えられます。
資源事業
資源事業についてご説明します。「石灰石は日本が自給可能な数少ない戦略資源である」ということです。ここでは石炭を思い浮かべていただければと思います。
かつて日本は非常に多くの石炭を生産していました。昭和30年代には最大で年間5,000万トンを生産しており、今の日本の年間使用量である約1億トンの半分を国内で生産していた時期がありました。
当時は炭坑節をよく耳にしました。「月が出た出た」「あんまり煙突が高いので、さぞやお月さん煙たかろ」は、三池炭鉱が非常に栄えていた時代の歌です。
しかし現在では、夕張などにわずかに残っている程度だと思います。ほとんど産出されていない状況です。資源はいくら豊富にあると思われていても、いつかは枯渇します。そのため、石灰石をより有効に活用するという考えのもと、さまざまな施策を進めています。
資源事業 ●事業構成
生コンクリートなど、さまざまな用途に使われています。
資源事業 ●戦略的な天然資源確保
我々の鉱山は、日本全国に11鉱山あります。東京や関東周辺にも多くの鉱山があります。
資源事業 ●戦略的な天然資源確保
スライドに生産量を示しています。上位20鉱山のうち、黄色で表示している部分が太平洋セメントグループの鉱山です。日本全体では年間約1億トンの石灰石が生産されていますが、そのうち約30パーセントを太平洋セメントグループが生産しています。
資源事業 ●石灰石骨材の拡販戦略
関東周辺は、生コンクリートの需要が多い地域です。しかし、需要が多い分、埼玉県にある武甲鉱山などでも供給量には限りがあります。200年、300年もつわけではありません。それよりもっと短い年数で終掘しなければならない可能性もあります。
このような状況を見越して、北海道や九州から骨材を輸送し、関東のみなさまにご迷惑がかからないよう、すでに準備を進めています。大分県津久見市においても、新たな鉱区の開発が着実に進行中です。
資源事業 ●石灰石骨材の拡販戦略
東京湾岸地区では、40万トン、約60パーセントの在庫シェアを有しています。スライド右下に南袖骨材センターを示していますが、このような施設を各地に展開しています。関東南部のお客さまにはこのように骨材を供給し、絶対にご迷惑をおかけしないという方針で取り組んでいます。
資源事業(成長領域) ●土壌ソリューション事業
土壌ソリューション事業についてです。道路やトンネル等の工事の際に、重金属を含む土壌が発生することがあります。それが地下水に溶出する可能性も否定できません。
重金属固化不溶化材の「デナイト」は、溶出を抑制する素材です。現在、多くの場面で使用されており、工事の際に排出される土壌の有効活用に欠かせないものとなっています。
資源事業(成長領域) ●DX推進
鉱山では無人化に取り組んでおり、大きな重機を無人で動かす取り組みを鋭意進めています。
資源事業(成長領域) ●機能性中空粒子(セルスフィアーズ)
機能性材料についてです。当社では、中が空洞になっている中空粒子を製造することができます。1ミクロンは、1ミリの1,000分の1を指します。
このような小さな粒子は、フィルムや精密機械の部品などに利用されます。例えば、精密機器の部品に使用すると、低誘電材料として電波の減衰を抑制する効果があります。
こちらは非常に期待されている商品であり、まもなく完成予定です。完成の際には、みなさまにしっかりとご案内したいと考えています。
●成長領域への重点投資
今まではセメント産業やセメント需要が中心でしたが、次の中期経営計画に向けては、成長が大いに期待できる資源・環境ビジネスを強化していきます。これが次の中期経営計画における1つの柱となります。
「26中期経営計画」では、資源事業と環境事業を合わせても売上2,000億円、利益200億円に届いていませんでした。最終的には売上3,000億円、利益300億円を目指し、次の、さらにその次の中期経営計画くらいを見据えて取り組み、大きな方向性を打ち出したいと考えています。
国内事業の再成長
国内事業についてです。政府が予算を多くつけてくれるようになれば、それに越したことはありません。しかし、そうならない場合でも成長を目指していきます。「我々は『セメントを作る会社』から『社会の持続性とレジリエンスを支える会社』へ進化していく」をテーマとしています。
国内事業の再成長 ●セメント事業
セメント事業については、「量」から「用途」への発想転換を図り、人員が減少しても運転可能なようにDX化を進めます。また、骨材の安定供給を確保し、インフラソリューション企業への進化を目指します。「セメントは出せますが、骨材は出せません」などとは言えませんので、これらの取り組みを確実に進めます。
また、当社は脱炭素化への取り組みも着実に進めており、この分野で主導権を握ることを目指しています。
最後に、「セメント産業の政策産業化」を目指しています。今までご説明してきたように、大災害など困難な事態が発生した時に、セメント産業は欠かせない存在です。復旧・復興の過程ではがれき処理が不可欠であり、産業廃棄物の処理をこれほどまでに行っている産業は他にありません。
そのため、政府の方針として、セメント産業が社会インフラとして不可欠な点を再認識していただきたいと考えており、その旨を現在政府に訴えています。
国内事業の再成長 ●技術開発の方向性
技術開発の方向性としては、「量のセメント」から「機能のセメント」への転換を考えています。一般的にインフラの寿命は50年と言われています。しかし、工夫次第では100年から200年もつセメントをつくることも可能です。当社には、世界最強クラスのコンクリートをつくる技術もあります。
これまでは「安かろう」で「そんなに高いものは使えない」と言われてきました。しかし、「普通のセメントより2倍、3倍の価格ですが、10倍、20倍、寿命が長くなりますよ」とアピールするのも、一案ではないかと考えています。
国内事業の再成長 ●老朽化インフラ更新
当社のグループ会社である日本ヒューム社についてです。いわゆるヒューム管、すなわち地中に埋設する土管を製造しています。この土管が硫化水素によって浸食されることがあります。
スライドに掲載している写真をご覧ください。管がボロボロになっている様子がわかります。この浸食が原因で、八潮市で道路陥没事故が発生しました。しかし、今回開発した「e-CON」は、普通コンクリートのように浸食されることはありません。このような材料を供給することが可能です。
セメントについても、以前は耐硫酸塩型セメントを多く製造していました。今後新しい材料設計の採用により、40年や50年ではなく、100年、200年の耐久性を持つヒューム管をつくることができます。このような取り組みを進めています。
国内事業の再成長 ●老朽化インフラ更新
現在かなり注目されており、ぜひ覚えていただきたいのが「HSモニター」です。HSとは硫化水素(H2S)のことを指します。地下に埋設されている下水管は、全体で約50万キロメートルあります。
先日、政府から喫緊の課題として「今すぐにでも補修しなければならない箇所が750キロメートルほどある」「50年以上経っているような下水道管が4万キロメートルほどある」という話がありました。
それをどのように処理し、どのように優先順位をつけていくのかについては、硫化水素の濃度が高い場所や浸食が進んでいる場所から進めなければなりません。「どこかから順番にやります」ということではなく、やはり深刻な場所や今後ひどくなると予想される場所から対応する必要があります。そこで、我々はモニターを開発しました。
モニターを設置し、マンホールに発信機を取り付けると、「ここは濃度が非常に高いですよ」という信号が出てくる仕組みです。設置するのは容易であるため、迅速に取り付けることが可能です。
「ここはかなり浸食されている」「ここはまだ大丈夫だ」といった基準を設けて取り組む必要があります。そうしなければ、八潮市のような事故が再び発生する恐れがあります。
全国では軽微なものも含め、1日に約30件の事故が発生しているとのことです。このまま放置すれば、10年後には深刻な事態となる可能性が高くなると考えられます。
「HSモニター」は注目されているため、我々としても力を入れて取り組んでいきたいと考えています。
国内事業の再成長 ●防災・国土強靱化
国土交通省の基本的な方針です。地下に大きなスペースを設け、洪水の際にそこへ水を逃がす仕組みや、砂防関係の施策があります。これらは国土強靱化の構想の一環ですが、我々から見ると進捗があまり見られず、少しもどかしく感じています。
国内事業の再成長 ●建築物LCA制度(日本)
建築物LCA制度がいよいよ開始されます。2028年度からの予定です。例えば、建物で電気が使われている段階はオペレーショナルカーボン、いわゆるカーボンエミッションを指します。冷蔵庫などの電力消費を含め、日々どれだけ温室効果ガスを排出しているかを示しています。
もう1つの指標は、エンボディドカーボンです。これは、例えばビルを建設する際に使用されるすべての部材などでどれだけCO2を排出したかを示します。このエンボディドカーボンを厳しく管理するシステムが2028年度に導入される予定です。
このシステムの導入により、ゼネコン各社からも「普通のセメントではなく、CO2の排出量が少ないセメントはないのか」といったお話が来るようになります。セメントを含むさまざまな部材について、CO2の排出量を合算し、どの程度排出したかを政府に報告する義務が生じます。
したがって、2028年度を境にお客さまのカーボンニュートラルへの取り組みが非常に重要な鍵となります。それがあと2年ほどで現実のものになるだろうと考えています。
カーボンニュートラル
カーボンニュートラルを前進させる5つの柱については簡単にお話しします。
我々は着実にカーボンニュートラルを進めています。ただし、一気に100パーセント削減するのは非常に難しいことです。しかし、ギブアップしたり、「グリーンウォッシングだよね」と言われたりしないよう、一歩一歩前進させています。
1つ目の革新的なアプローチである、CO2回収型セメント製造設備「C2SPキルン」については、ほとんど完成しており、あとは実際の工場に設置するのを待つ段階に来ています。
ただし、回収したCO2を液化して秋田沖に埋めるためのインフラ投資を進める必要がありますが、インフラが整備されるまで、現状としては待機している状況です。
CO2低減に向けては、混合セメント、Low Carbon Cement(LCC)へのシフトを加速しています。CO2を吸収するカーボフィクスセメントの普及を目指します。
CNモデル事業においては、屋久島町の「屋久島町ゼロカーボンアイランド宣言」に協力しています。当社は屋久島で水力発電を行っています。ですから、最もカーボンニュートラルに近い場所として挙げられるのが、屋久島です。
当社は屋久島でさまざまな取り組みを支援しており、「日本もしくは世界で最初にカーボンニュートラルになった地域だ」という実績をつくることで「最終形はここにある」ということがみなさまにも理解しやすくなるのではないかと考えています。そのような活動を現在進めています。
次に、激甚災害対策についてです。IPCCの報告書では、2024年には産業革命前と比較して気温が1.5度上昇していると指摘されています。
「もともとは2050年と言っていたではないか」と思います。パリ協定では2050年までに気温上昇を2度以下に抑えるため、努力目標として1.5度が掲げられていましたが、すでに1.5度を超えてしまっています。
激甚災害や線状降水帯の増加、深層崩壊の頻発など、これまでに聞いたことのなかったような災害が次々と増加しているのが現状です。
カーボンニュートラル ●革新的Innovation
さまざまな分野でカーボンニュートラルを実現する取り組みを進めています。
カーボンニュートラル ●革新的Innovation
スライド右側の写真は「C2SPキルン」の実証試験設備です。9階建ての非常に大きな実証プラントです。プラント内で「C2SPキルン」の実証試験が進み、実機建設のための設計データ取得が完了し、基本設計がほとんど完成しました。
カーボンニュートラル ●CO2吸収
カーボキャッチ技術や「カーボフィクスセメント」によるCO2吸収の流れです。
カーボンニュートラル ●CNモデル事業
「屋久島町ゼロカーボンアイランド宣言」協働事業の協定内容についてです。屋久島町との協力のもと、スライド右側の写真に示しているとおり、EVの急速充電器を設置したり、CO2を固定化した舗装ブロックを敷地に設置したりしています。
カーボンニュートラル ●激甚災害対策
グループ全体で激甚災害対策のさまざまな取り組みを行っています。
カーボンニュートラル ●激甚災害対策
ヒューム管の交換など、さまざまな工事を実施し、グループの総力を挙げて激甚災害対策に取り組んでいる状況です。
Low Carbon Cement(LCC) ●経営戦略における位置付け
Low Carbon Cementは、環境事業、カーボンニュートラル、インフラソリューションの中心に位置づけられています。混合セメントには、例えば石炭火力発電所で発生するフライアッシュを混合材として利用します。電力会社は大量のフライアッシュの処理が必要なため、それを活用します。
また、混合セメントはCO2の排出を削減します。さらに、フライアッシュセメントはアルカリに非常に強い特性があり、インフラソリューションとしての役割も果たしています。このような性質を持つのが、Low Carbon Cementです。
Low Carbon Cement(LCC)●脱炭素の取り組みとして注目される「混合セメント」
混合セメントにはさまざまな技術が求められ、難しい技術もあります。当社は2009年からこの分野に取り組み、16年かけてフライアッシュを非常に均質化して、安定的にセメントに混ぜて利用する技術を確立しました。
以前は中国にも輸出していましたが、現在はシンガポールに混合セメントを40万トン出荷しており、スカイスクレーパー(超高層ビル)の建設に使われています。そのような実績もあります。
Low Carbon Cement(LCC) ●アルカリ骨材反応対策
スライドの写真は、米国のParker Dam(パーカーダム)というネバダ州にあるダムです。
ひび割れが起こっているのは、骨材の品質が悪いことが原因です。非常に品質の悪い骨材を使うと、写真に見られるようなひび割れが発生します。しかし、フライアッシュセメントやLow Carbon Cementを使用すると、ひび割れを防止できます。
Low Carbon Cement(LCC) ●米国の脱炭素政策
米国では、エンボディドカーボン削減のための政策が進んでおり、CO2の排出量が少ないセメントの需要が高まっています。
Low Carbon Cement(LCC) ●各国におけるLCC割合の推移
Low Carbon Cementの世界的な割合の状況です。日本では混合セメントの割合がまだ20パーセント程度であり、そのほとんどがスラグセメントです。一方でヨーロッパでは、普通セメントの割合が10パーセント程度で、それ以外はすべて混合セメントとなっています。
米国でも混合セメントの割合が増加しています。このように、需要が非常に高まっています。これが世界の現状です。
Low Carbon Cement(LCC) ●LCC推進の意義
Low Carbon Cementは日本から東南アジアへの輸出に加え、東南アジアから米国への輸出をしています。世界の物流ネットワークを活用してLow Carbon Cementを供給しており、これまで線的だった取り組みを面的なものに拡げる活動を世界的に展開しています。
米国事業 ●SWエリアの課題と対策
米国事業について簡単にご説明します。現在サンフランシスコエリアとサンディエゴエリアで工場の買収を予定しています。当社はもともとロサンゼルスエリアにのみ工場を保有していましたが、今回サンフランシスコエリアとサンディエゴエリアで生コンクリート工場41工場の買収を目指しています。
サンフランシスコエリアではデータセンターなどが多く、サンディエゴエリアは米国でも最も住みやすい街、住みたい街とされ、人口が大きく増加しています。このように、これまで空白となっていたエリアに生コンクリート工場を展開することが可能となります。
これが現在最終局面に入っており、6月中にはディールが完了する予定です。したがって、7月からは当社の方針でこの生コンクリート工場の運営が可能となる見込みです。
米国事業 ●ストックトンターミナル増強
ストックトンターミナルでは、新設サイロ2基(計5万1,900トン)を増設中です。写真の右側は既存のドームサイロです。これらを活用し、日本からさまざまなものを輸送して貯蔵します。
垂直統合の利点:製粉屋から高級ピザ屋への飛躍
こちらのスライドは、セメントと生コンクリートの違いをわかりやすいようにするため、作成したものです。ここでは、石灰石を小麦粉、セメント工場を製粉工場に例えています。
我々は現在、小麦粉(セメント)を販売している会社ですが、チーズ(骨材)とトマトソース(混和剤)を入手できるため、ピザ屋(生コンクリート工場)を開業することができます。
生コンクリート工場では、お客さまと直接向き合うことが可能です。「こういう工事ならこういう生コンクリートがいいですよ」「その時はこういうセメントを使いましょう」といったかたちでダイレクトにコミュニケーションが取れます。
そのため、私どもも付加価値を高めることができますし、さまざまなメリットが生まれます。お客さまが「明太味が欲しい」と言えば明太子ピザをつくり、「照り焼き味がいい」と言えば照り焼きピザをつくることが可能です。これは小麦粉の供給だけでは実現できなかったことです。
お客さまと直接向き合うことで、今後のカーボンニュートラルな世界への貢献ができることに、非常にわくわくしています。
米国事業 ●垂直統合による更なる基盤強化
垂直統合によるさらなる基盤強化の内容をまとめたものです。外部に流出していたマージンのグループ内への取込みや、物流コストの低減、環境戦略の一体化などで、大きな付加価値を創出できると考えています。
東南アジア事業 ●セメント需要の伸長余地
東南アジアにおける1人当たりの累積セメント消費量は、依然として低水準です。一方で、日本は現在、三十数トンに達しています。
セメント消費量の統計が開始されてからの、その国におけるセメントの累積量を1人当たりで換算したものですが、フィリピンやインドネシアはまだ7トンほどにとどまっています。これは必ず倍増すると考えられ、成長が期待できる国々が東南アジア諸国であると考えています。
東南アジア事業 ●高付加価値化による脱価格競争
東南アジアでは、政府がCO2削減をKPIとして掲げていますので、低炭素対応を進めています。また、労働力不足への対応として、施工しやすいセメントや劣化しにくいセメントの需要が高まっています。
成長市場の需要を取り込むことを目指し、さまざまな技術を付加しながら取り組んでいるところです。
東南アジア事業 ●フィリピン
スライド右側の写真をご覧ください。フィリピンのルソン島南部にあるバタンガス州で、現在サイロを建設中です。セメント出荷ターミナルは来年に完成する予定で、Low Carbon Cementを中心に供給を開始します。
ちょうどODAによる大規模なプロジェクトが今年末から来年にかけて始まると聞いており、その需要を取り込むことができると考えています。
東南アジア事業 ●ベトナム
ベトナムはコロナ禍の影響で非常に厳しい状況でしたが、現在は非常に好調になっています。南北の高速道路が完成することで、その周辺に工業団地が次々と建設され、好循環が生まれています。こちらは今後も期待できると考えています。
東南アジア事業 ●インドネシア
インドネシアについては、3年前に資本出資を行いましたが、5月25日に第1船がアメリカのストックトンターミナルに向け出港しています。桟橋を使用して出荷しましたが、この桟橋は当社のために設置されたものです。
米国は約180万トンの輸入が必要な状況にあります。これは、生産能力が追いついていないためです。これを韓国、ベトナム、インドネシアから輸入できるようになることで、何かあった場合にも十分ヘッジが可能な状態を物流環境においても整えつつあります。
当社の経営戦略
カーボンニュートラル、インフラソリューション、環境事業、資源事業を国内事業の新たな柱として位置づけ、この3領域を活用し、日本だけでなく米国やアジアでも展開していきます。
「3 × 3 Strategy」を次の中期経営計画のテーマとしたいと考えていますが、セメント事業に限らず、環境事業、資源事業、物流事業、カーボンニュートラル事業を米国や東南アジアで展開することが大きな方針となります。
当社の経営戦略 ●売上高・営業利益目標
2026年度の売上高目標は1兆270億円です。中東情勢の問題に加え、米国の10年物国債の金利が現在4.5パーセントで、これが下がらないとなかなか住宅需要も回復しないと考えています。ただし、インフラ投資には期待が持てる状況です。
したがって、米国への期待は来年以降になると思います。また、東南アジアもタイムラグがありましたが、こちらも来年以降の回復を見込んでいます。
さらに、資源事業や環境事業を拡大していけば、売上高は1兆2,000億円、営業利益は1,200億円程度に達すると考えています。
本日は方向性のみのご説明となりますので、今年1年かけて精査を進め、次期中期経営計画「29中期経営計画」に織り込みます。また、その先についても今年1年を通じて精査を進めていきます。
おおむねこの規模に達する見込みではありますが、精査を重ね、来春にあらためてご説明したいと考えています。本日は、どのような重点項目に力点を置きながら戦略を織り込んでいくのかについてお話ししました。
その他の点については、ご質問の中でお答えします。よろしくお願いします。
質疑応答:老朽化インフラ更新の兆候について
質問者:非常に興味深いお話を多くうかがい、勉強になりました。冒頭で社長がおっしゃっていたセメント需要のあるべき姿についてうかがいます。
老朽化インフラの更新や国土強靱化投資の必要性は以前から指摘されていましたが、なかなか具体的な動きが見られないとの印象を持っています。その間にも50年経過したインフラの割合が増えるというグラフをご提示いただきましたが、具体的にこのような更新投資が動き出す兆候は見られていますか?
回答者1:2011年の東日本大震災の後、2013年には安倍政権下で国土強靱化基本法が成立しました。その際、20兆円規模・5年計画というかたちでスタートしましたが、残念ながら十分に実行されていないのが現状です。
2013年には4,700万トンだったセメント需要が、現在では3,000万トンに減少しているのは、その影響もあるかと思います。
一方で、さまざまな自然災害が起きたり、最近では富士山噴火の話題も挙がったりしています。
また政府においては、11月に防災庁が新設されます。ここでどのような予算をつけるかが、非常に重要なポイントだと考えています。
インフラ整備にももう少し焦点を当てていただきたいと考えています。インフラ整備の重要性が高まってくれることを願っています。
11月に防災庁を設立する見込みとのことで、どのような予算が設定されるか、大いに期待しています。
質問者:日本で橋が落ちたら衝撃が走ると思いますが、50年ではなく、どのくらいの期間が経過すると待ったなしで更新が必要となるのでしょうか? モノによって異なると思いますが、いかがでしょうか?
回答者1:シルバー橋の話は非常に象徴的な例としてお話ししましたが、建設後40年で橋が崩落しました。1920年代の設計そのものが成熟しきっていない段階だったという背景もあったようです。日本の橋はその後の時代に建設されたもので、成熟した技術で造られているため、簡単に落ちることはないと思います。ただし、心配なのは道路です。
八潮市で発生した道路陥没事故については、ヒューム管が硫化水素で劣化し、その劣化が地下から進行して最終的に地表まで到達しました。
またアスファルトは紫外線による経年劣化が懸念されます。その結果、小さな穴が開くと、その周囲が次第に崩れ落ちるような現象が起きていました。このような問題は、日本各地で発生していると考えています。
アスファルトや道路舗装の問題は、50年も経過すると頻発してもおかしくない状況だと思います。そのため、国土交通省が示している耐用年数50年という指標は、非常に重要で注意を払うべき時期だと考えています。
質疑応答:次期中期経営計画における資源事業、環境事業の売上拡大について
質問者:今後、売上高を1,000億円以上伸ばすとご説明がありました。資源事業、環境事業において、具体的にはどのような商品やサービスで、売上がどのくらい伸びると考えていますか?
回答者1:これまで我々の固定的な考え方としては、キルンを使った処理が中心でした。しかし、太陽光パネルやリチウム電池の問題など、我々を取り巻く環境ビジネス、あるいは環境のさまざまな問題には、まだまだ解決できる要素が多くあります。
今までは、イチから積み上げていく環境ビジネスを中心に考えていましたが、米国事業も含め、やはりM&Aが重要となります。技術は十分に備えていますが、資金力が不足している部分がいくつかあり、具体的な内容は現時点ではお伝えできませんが、そのような企業と提携しながら進めていく方向を目指したいと考えています。
資源事業と環境事業を合わせて1,000億円規模という目標に向けて、今年1年をかけて十分に計画を詰め、今後の計画にしっかりと盛り込んでいきます。
回答者2:資源事業、環境事業は、3年から4年前までは営業利益がそれぞれ60億円程度にとどまっていました。
資源事業では、骨材や製鉄所に供給する石灰石の価格の適正化を進めるかたちで、値上げをお客さまにお願いしました。その結果、値上げも予定どおり実現し、現時点で営業利益は約100億円まで拡大しています。環境事業についても、直近では処理費の適正化に取り組んでいます。
3年から4年前まで営業利益が60億円ほどでしたが、今年度の予算ではそれぞれ100億円規模の営業利益を目指しています。さらに、それぞれを150億円規模まで引き上げれば、合わせて営業利益300億円という水準になります。
もちろん、これまで実施してきた戦略を継続することも重要ですが、例えば資源事業においては、競合となる骨材に関して、地域ごとの砕石鉱山における鉱量の減少や事業承継の問題により廃業する会社が増えているという現状があります。
当社は、国内において石灰石の圧倒的な資源量を保有しており、最終的にお客さまに商品を届ける置場や船団を所有しています。このことから、お客さまの中での当社のシェアを拡大していくという戦略を持っています。
環境事業については、セメントのキルンに依存する事業においては、国内のセメント需要がある程度伸び悩んでいる中、成長を図るのは難しい部分もあると認識しています。
一方で、技術開発の方向性として、これまで処理が難しかったものをセメント工場で処理を可能にし、原単位を上げていくといった取り組みも進めています。さらに、セメントキルンに依存しない中間処理事業をセメント工場外で行うことも検討しています。
セメント工場での処理が難しい廃棄物もありますので、このような事業分野については、M&Aなどを通じて事業拡大する十分な余地があると考えています。
質疑応答:国のインフラ投資に対する認識と企業の危機感の乖離について
質問者:冒頭の高速道路のミッシングリンクをはじめとするインフラとセメント需要について、大変勉強になりました。42ページに関連するかと思いますが、これから多くの対策が必要となる中で、御社が抱いている危機感と国のインフラ投資に対する認識には、かなり乖離があるように感じています。
確かに現在、国が挙げた17の成長分野の1つに「防災・国土強靱化」が含まれているとはいえ、以前から指摘されていたことであり、特段の行動変化はあまり見られないように思います。
御社と政府との間で見られる温度感の差には、どのような背景があると見ておけばよいのでしょうか? 可能な範囲でご教示いただけると幸いです。
回答者1:非常に難しいご質問で、なかなかお伝えできない点もありますが、まず、みなさまはインフラの重要性を非常によく理解していただいていると思います。特に、東日本大震災で被害を受けた地域や、能登、熊本の被災地においては、多くの方々が亡くなりました。
本来であれば、もっと中期的な視野で国家の在り方について議論すべきではないかと思います。かつてはそのような議論が行われていたように思います。
さまざまな場面で「やはりインフラは大事だ」と言われることが多くありますが、ただ、それが最重要課題として取り扱われているかというと、そうではない部分があり、非常にもどかしく感じています。
また、これは石破政権の頃から指摘されていますが、「絶対に南海トラフ地震が起こるだろう」「2035年にはいくつかの大きな問題がある」とも言われています。
2035年プラスマイナス5年で予測される南海トラフをはじめとした地震、先ほど触れた太陽光パネルの問題や老朽化、さらには団塊の世代のみなさまが85歳を迎え、労働力人口が大幅に減少するといった大きな転換点を迎えています。
我々も非常にもどかしいと感じるところではありますが、重要な課題だと認識されていることは間違いないと思います。
そのきっかけとなるのが、この11月に設置される予定の防災庁だと考えています。30兆円規模の防災対策に関する話をきちんと進め、本当の防災対策につなげてもらいたいという期待を持っています。
質疑応答:化石燃料代替ビジネスによるコスト削減効果について
質問者:化石燃料の代替ビジネスについてです。現状は主に石炭がセメントの焼成工程で使用されているかと思いますが、今後これを廃プラスチックで50パーセント代替、80パーセント代替に移行していった場合に、どれくらいコストの削減が可能なのでしょうか?
また、廃プラスチックを受け入れることで、手数料を受け取れる部分もあるのではないかと想像しています。石炭燃料のコストに関する考え方について、代替を進めていくうえでの影響を教えてください。
回答者1:非常に良いご指摘をいただきました。まず石炭の価格の推移についてお話しすると、実は1980年頃までは日本に到着ベースで20ドルでした。
その後の20年間で石炭価格は平均40ドルに上昇し、その後80ドルまで上がり、20年間で倍々に増加してきました。私は、2020年から先はその倍となる160ドルになってもおかしくないと考えています。
現時点ではそこまでは上がらず、110ドルから120ドル程度です。中東情勢が影響しても、130ドルから140ドル程度だと思いますが、将来的には200ドルに達すると考えています。
その理由として、需要が非常に高まっている点が挙げられます。中国はついこの間まで石炭の輸出国だったにもかかわらず、現在では4億トンから5億トンを輸入する国になっています。インドも4億トン、5億トンを消費していますが、これからさらに増加すると見込まれます。このように、消費が非常に増加しているのは事実です。
一方で供給に関しては、インドネシアでは現在8億トン/年を生産しており、そのうち自国で消費しているのはおそらく2億トンから3億トンで、輸出量は5億トンとなっています。しかし、資源はどんどん枯渇していきます。
そのため、インドネシア政府は、DMO(Domestic Market Obligation)を通じて、輸出価格と国内供給価格に大きな差を設けています。国内向けに確実に石炭を確保する方針を掲げていますが、将来的には輸出キャッピングが起き、輸出量を減らすことになると考えています。
また、世界最大の石炭輸出港であるオーストラリア・ニューサウスウェールズ州のニューカッスル港からは1億5,000万トンが輸出されていますが、ニューサウスウェールズ州では2030年を目標に新規石炭鉱山開発を禁止する方針を打ち出しました。
カーボンニュートラル問題を背景に石炭の開発はどんどん減少している一方で、需要は増加しています。このため、石炭価格は必ず上昇していくと考えており、2030年には200ドルに達すると見ています。
セメントを1トン生産するのに約100キログラムの石炭を使用します。その場合、石炭価格が200ドルだとすると、その10分の1である20ドルが原価に反映されることになります。ですから、どんどん原価が膨らんでいきます。
石炭を100パーセント使用している場合、仮に石炭価格が200ドルから300ドルに上がれば、100ドルの増加となり、原価が10ドル上昇します。しかし、8割をプラスチックに置き換えると、影響は2割で済むことになります。これがまずお伝えしたいポイントです。
現在、石炭よりもカロリー単価が高いプラスチックは受け取りません。経済合理性として、安い燃料をできるだけ活用する方がよいからです。しかし、私は「少し高くても、石炭が先々200ドルになることを考えて、安定供給をしてもらうために受け取りなさい」と伝えています。
プラスチックには、処理費用を受け取りながら引き取るものと購入するものがあり、最近では購入している部分が多くなっています。
それでもプラスチックの調達コストは少なくとも現在の石炭価格よりは安く、石炭換算では1トン当たり100ドル以下で済んでいます。また、これが将来的に200ドルに上がる可能性は低いと考えています。このような価格差が将来的に原価の低減に寄与するだろうというのが私の考え方です。
回答者2:廃プラスチックの処理において、実際に処理を依頼される量を100パーセント処理できているかと言えば、工場側のトラブルや在庫の問題など、さまざまな問題により100パーセントを処理しきれていないのが現状です。
例えば、先ほどお話しした中間処理として、セメント工場以外で廃プラスチックの前処理や在庫管理を行い、かつ当社が保有する複数の工場を活用することで、どちらかの工場が休転している際には別の工場で処理を進めるといった仕組みを組み合わせていくことで、廃プラスチックの燃料代替をさらに強化できると考えています。
先ほど「石炭価格が200ドルに上がる」というお話がありましたが、当社では年間に約100万トン以上の石炭を使用しています。そのため、年間で約300億円の石炭コストがかかります。このうちの10パーセントを代替するだけで、約30億円の削減効果が得られます。このような大まかなイメージで考えていただければと思います。
質疑応答:資源事業の国内価格設定と価格政策について
質問者:資源事業、環境事業の営業利益はそれぞれ100億円規模という点については理解していますが、御社の資源事業のOPマージン(営業利益率)は10パーセントから11パーセントです。一方で、米国の同様の企業であるVulcan Materials社などは、20パーセントを確保している状況です。
常々感じているのですが、日本で唯一自給可能な非常に貴重な資源が、なんとなく安価で売られているのではないかと思っています。この点について、国内の価格設定や価格政策をどのように考えているのか、率直なご意見をお聞かせください。
回答者1:おっしゃるとおりだと思います。米国でなぜ垂直統合を進めたかったかというと、骨材をもっている会社が影響力を持っているため、「骨材を出せない」という事態が起きると、生コンクリートを製造できなくなるということが背景にあります。
日米では構造が大きく異なります。例えば、日本は国土の中で可住域、いわゆる平野部が全体の20パーセントしかなく、山が多い一方で、供給はさまざまな地域で可能ですし、海上輸送もできるため輸送の面では問題がありません。
一方で米国の場合、資源が点在しており、Vulcan Materials社のようにそれを押さえた者が優位に立つ仕組みとなっています。ただし、日本も時代は変わりつつあり、骨材の供給が難しくなってきているのが現状です。
そのため、価格設定については、これらの背景を考慮しつつ、セメントや骨材、砂、混和材といったさまざまな製品の供給を通じて、トータルソリューションとして価値を高めていきたいと考えています。
回答者2:これまで少し価格を安く設定し過ぎてきたのではないかと感じています。実際、この3年から4年で価格の適正化に取り組んできた結果、60億円ほどの営業利益から100億円を超える状況となっています。
考え方として、これまでは骨材がセメントを売るための1つの手段と考えられていたと思います。しかし、例えば1立方メートルの生コンクリートを製造する際、セメント300キログラムに対して骨材は1,800キログラム必要となり、骨材はセメントの約6倍使用されています。
生コンクリート会社にとって、実際に一番の懸念は骨材です。骨材は特に地産地消の側面が強く、容易に代替することができない部分があります。
このような背景を踏まえると、価格を適正化する余地はまだ十分にあります。また、セメント事業と資源事業の営業がさらに連携していけば、お客さまにとっての価値を高めることが可能です。
安定供給を訴求することになりますが、まだ十分に価値を認めていただける余地があると思っています。そのため、先ほどおっしゃっていた数字も十分達成できるレベルだと考えています。